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3H パーティテロ

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 H-1  島国密林火災 組織復元  火災で二人救助
 H-2  龍の島 龍が隠れ棲む島 日本海の孤島
 H-3  淡路島の散策 フェリーで行く  喧嘩
 H-4  パーティ襲撃 階段で武器消去
 H-5  アメリカ主義と闘争


 H-1  島国密林火災

「山雅さん、今何処?」
祥生が、本屋に居る時、彩華から電話が掛かった。
「駅前の本屋に居る。」
「いつもの喫茶店へお願い。」
「分かった。十分程で行ける。」
祥生は本を買い、駅地下の喫茶店に寄った。
「相変わらず読書だね?」
「読書と言う程、立派な本は読んでいないよ。」
「それでも、活字を読んでいるのには、変わりは無いよ。」
「高校も、もう二年生だ。そろそろ、入試の準備をしないとな?」
「そうだねえ、山雅さんは、何処を受験する積もりなの?」
「彩華と同じ大学でいいよ。」
彩華は、隣の県に有る私立大学を受けると言う。そこは、公立では無いのだが、比較的、標準的な学部が揃っている。祥生としては、基本さえ教えてくれれば、どんな大学でも良い。
「山雅さんは、もっと良い大学に行けるんじゃ無いの?」
「いや、彩華より勉強した訳でも無いし、そこでいいよ。」
「何れにしても、もう少し余裕が要るわね?」
「それは言える。もう暫らく勉強を頑張るか?」
彩華と祥生は、そんな話をして、その日は別れた。

その日の夜、彩華から電話が有った。組織の有り方が戻ったと言う。
元の担当者も戻って来た。誰が画策したのか、祥生達には知らされていないが、計画は失敗した。
そう言う話にはなって居るが、その計画は、彩華や祥生達が潰した。
今度の事件も、もう少しで、間に合わなくなる所だった。
「山雅さん、大変だ。東南アジアの島国で、森林火災が起きている。中央部に、火に囲まれた家が有って、段々火が近づいている。ヘリも危なくて近付けない。」
「それなら、アジア支部からだな?  彩華、直ぐ出られるか?  今回は二人で行こう。ドローンも急いで回して貰う。」
「私だけなら何とかする。20分後に、あそこで待つ。」
「了解。」
祥生が、待ち合せの場所に行くと、彩華と彩菜が待っていた。
「山雅さん、彩菜は要らないかな?」
「行けるのなら、手伝って貰いたい。」
「行ける。親を説得した。」
彩菜は、人を助ける手伝いをすると、親を説得した。
「この辺りに、人目の無い所は有るかな?」
「そこの公園の公衆トイレは、殆ど人が来ないよ。」
「そこの裏から跳ぶ。早く行かないと、焼け死んでしまう。」
「私はドローンで行くけど、彩菜と山雅さんは瞬間で跳んで。」
彩華が彩菜に説明をしている。彩菜と祥生は現地の家に翔ぶ。
「彩菜、家の中を幽視して。」
「中の二人は、大分弱っている。瞬間で運んだ方が良さそう。」
彩菜の提案で、祥生が頷く。
「彩華、被害者をドローンに瞬間で運ぶ。そのまま病院に直行だ。」
「了解。用意して置く。」

周囲は火の海の様相で、普通は近づけない。祥生は、瞬間移動で庭に降り、彩菜に言う。
「彩菜、一人ずつ、ドローンに瞬間で運ぶぞ。」
祥生と彩菜は、被害者をドローンに瞬間で運び、記憶を数分消去した。
「彩華、病院に頼むよ。」
「病院に届けたら、直ぐ電話する。」
「彩菜、人の居ない所を探して。そこで、時間をつぶす。」
「西の方向に五キロ。そこは集落が無い。」
祥生と彩菜が移動をした場所は、なだらかな草原で、動物も見当らない。
「草原の先は海か、少しの間、昼寝でもしたい気分だね?」
そんな事を話している時、彩華から電話が掛った。
「山雅さん、今何処?  迎えに行こうか?」
「いや、燃料が勿体ない。こっちから行く。彩菜に見て貰う。」
「今、北の方にいる。あ、彩菜の妖体が来た。ここへ飛んで。」
彩菜も、妖体を出せる様になっている。他人の妖体を感じる事も出来る。
彩菜の情報を元に、二人は、ドローンに瞬間移動をした。
「彩華、この儘では早過ぎる。何処かに下りて時間をつぶす。」
「彩菜、近くで良い所を探して。」
彩華は近くの浜に、ドローンを下ろした。少し時間を調整してから、この島唯一の空港へ移動をする。
「ドローンを空港に残して居ますので、後の処理はお願いします。」
彩華は、組織に連絡を入れた。ドローンを空港に残し、三人は瞬間移動で事務所に戻った。


 H-2  龍の島

そこは、中国大陸の少し東、日本海の中程に有る孤島である。
ある時、嵐に巻き込まれて、島に流れついた男達が居た。その男達は、島の中央付近で、洞窟を見つけた。雨露を避けるため、その洞窟に入ったのだが、蛇の様な動物の集まりを見た。
「おい、龍の子供が居るぞ。」
その蛇たちは、四本の足が生え、伝説の龍を思わせた。ただ、形は二メートル程で、伝説程大きくは無かった。そこ迄は良かったのだが、一人の男が、それを捕まえようとした。
「一匹か二匹、見本に捕まえるぞ。」
「逃げた。捕まえろ。」
その動物は、鳴き声を上げながら、洞窟の奥へ逃げて行った。男達も、それを追って洞窟の奥に入った。
「デッカイのが居るぞ。捕まえられないかな?」
そこには、十数匹の大型獣が居た。形は十メートルを、ゆうに超す。
そんな物は、手に負える筈は無いと思うのだが、最初に見たのが可愛かったせいか、危機感が湧かなかった。しかし、大型龍の尻尾一振りで、ぶっ飛んだ。
昼間は、洞窟の奥に隠れているので、今迄、殆ど見られて居なかった。
飛んているのは、噂に有ったが、噂だけで済んでいた。

「と言う訳で、我々に依頼が来た。真偽の調査だ。」
半端な奴を送ると怪我人が出る。法螺と言う可能性も有る。
「我々は、知性体に遭遇した経験もあるからね?  あの時はドラゴンだったけど。」
「ドラゴンと龍には、どんな違いが有るのよ?」
ドラゴンとは、西欧の物語に良く出てくるが、トカゲを巨大化した様な怪獣だ。龍は、中国の物語に出て来る神獣で、大蛇に足が生えている。

数日後、彩華たち四人は、その島に居た。
「ここか?  こんな小さな島に、龍が住む様な洞窟が有るのかな?」
「報告の島は、この小島だよ。大きい島なら、人が住んでるよ。」
確かに、島の小山の中腹に洞窟は有った。
「あれぐらいしか洞窟は見つからないな?  あそこへ入って見よう。」
「ここら辺りには居ないな?  彩華、妖視を頼む。」
「奥の方に固まっている。隠れているのか眠っているかは判らない。」
とにかく、現物に当たって見ない事には、話が前に進まない。四人は、その洞窟に入る事にした。居た。そこにはニ十数匹の龍が居た。今は眠って居る様子だ。彩華は、その一匹の尻尾を少しだけ、妖力で消去した。
「山雅さん、消滅したよ。少なくとも、人間的な知能は無いらしいよ。」
尻尾を切取られた龍は怒って、彩華に攻撃を掛ける。それを彩菜が防ぐ。
「山雅さん、退治して良いのかな?  この龍たちは?」
「攻撃を掛けて来る奴は、退治しても良い。知能も無い様だし。」
「彩華、外で見張ってくれ。こんな攻撃的な龍に逃げられたら拙い。」
祥生は彩菜と中に残り、龍の消滅を図る。
「彩菜、遠慮は要らない。退治して。」
「分かった。頑張る。」
彩菜と祥生は、洞窟の中で龍と闘う。この洞窟は、出口がもう一つ有るらしい。祥生たちが入った穴は細かった。大型の龍では出られない。
おそらく、島の海中に穴が有る。
「彩華、何匹か外へ逃げたぞ。瞬間で近くに跳び、消滅を図れ。」
彩華は、海辺から出て来た龍の側に寄る。そして、龍の頭を消去する。
「きゆーん。」
他の龍が、奇妙な鳴き声と共に、炎を吹き出した。彩華は、その瞬間に、別の龍の側に跳ぶ。そして、その龍を妖力で消去を図る。
「ぎゆーん」
他の龍からの炎が襲う。彩華は瞬間移動で他の龍に跳び、その頭を消去する。その儘、別の龍の側に瞬間で跳び、火を吹く前に、頭を消去する。
こんな事を繰り返して、逃げた全部の龍を倒した。
「外に逃げた龍は、全部片付けたよ。」
「彩華、お疲れ様。」
彩菜と祥生も、洞窟内の龍を退治する。時々炎を吹かれるが、瞬間移動で別の龍の側に跳ぶ。そして、龍の頭を消去する。そんな事を暫くやって、全ての龍を退治した。結局、彩華の手法と同じ形になった。
「本当に火を吹くなんて、お伽噺みたいだよ。誰も信じないよね?」
「こんな危険な龍は、退治するしか無かった。可哀想な気もするけど。」
「他の人に、被害が及ぶ前で良かったよね?」
彩華は、龍の断片を妖力で掃除する。

ちなみに、彩華や彩菜が使った瞬間移動は、妖能力の一部だ。記憶消去の能力も、妖能力の機能になる。


 H-3  淡路島の散策

「山雅さん、ピクニックに行こうよ。良い季節だよ。」
「何処へ行きたい?  行きたい所は有る?」
「淡路島へ行きたい。まだ行った事が無いのよ。お父さんは忙しいし。」
「橋を渡るバスを探すか、フェリーで渡るかだね?」
「フェリーは、まだ有るの?  橋が出来て、無くなったと思ってた。」
「いや、まだ有る様だ。明石大橋が見える旅館に泊まってもいいな?」
彩華は、旅行会社で調べると言う。
「じゃ、彩菜達も連れて行って。あの子達の好みも有るだろうから。」
「うん、そうする積り。社会勉強にもなるしね?」
次の日、彩華、彩菜、亜香里の三人は、駅前の旅行会社へ出かけた。
結局、明石大橋の全景を、下から見たいと言う事で、フェリーで行く事になった。旅館も、淡路側の橋近くで、予約を取った。
今日は、その旅行の日で有る。亜香里や祥生は、来た事は有ったが、泊まった事は無い。その旅館は橋が良く見え、露天風呂まで有った。
「夕飯には早いので、露天風呂にでも入ろう。そこからも橋が見える。」
祥生の提案に、彩華も賛同する。
「そうしよう。私達が先に入るわよ。山雅さんは後で入ってね?」
「それで良い。テレビでも見ているわ。」
風呂を済ませ、早いめに夕食を頼んだ。夕食をしながら雑談に興じる。
「山雅さん、私達の能力って変な力だよね。何の為に有るんだろうね?」
「亜香里には、まだ言っていなかったな?  少し説明をして見ようか?」

この能力は、昔の能力者の血筋の者が感染しやすい。小説で言うなら、忍者の血筋になる。小説では、忍者、忍びの者、隠密等と呼ばれている。
その昔は、種族保存本能から来る、自己防衛の力と、自己防衛の手段として、敵を倒す為の攻撃力も有ったと思われる。
「しかし、それらの能力者が、権力者と手を組んで、情報収集、暗殺等もやるようになり、種族保存から離れてしまった。」
「そうか、そんな物語りも沢山有るよね? 滅んでも仕方が無いよね?」
そして江戸時代の末期には、殆んどの能力者が居なくなり、名前だけが残った。後には、保護の力だけを持つ能力者が、少しだけ残った。
今の能力者も、保護とは逆の動きをすれば、絶滅する可能性も有る。
「今のところ、分かって居るのは、日本の我々だけになった。外国にも居るかも知れないが、確認出来ていない。あくまで、僕の想像だから、絶対とは言えない。」
「何か、本当に小説みたいですね?」
「まあね?」
「山雅さんは、想像力旺盛だからね?  それでも私は賛成するわ。」
「そうだよね?  想像だとは言っても、他の考え方も出て来ないしね?」
次の日は、淡路インターの食堂街に出掛けた。そこは少し高台になるが、下の町からでも入る事が出来る。
「車で来れば、この駐車場に止まるんだね?」
「そうだよ。車なら速いんだけど、まだ免許が取れないからね?」
「山雅さんが免許を取れば、四国へも行ってみよう。」
皆んなは、適当な食堂に席を占める。楽しい食事の時間も終わり、その辺りをぶらぶら歩く。そんな時、後から声がした。
「ねえちゃん達、何処から来たの?」
そこには、数人の男子学生が居た。女が多いと見て話しかけて来た様だ。
「あなた達こそ何処から来たのよ。何か軽そうだけど。」
祥生は、ニコニコとそれを眺めている。
「そこのニヤついた男、お前は要らないから、向こうへ行け。」
「それでも良いんだけど、僕が居ないと、君達が危ないよ。」
「そんな訳有るか?  こんな可愛い子達ばかりなのに。」
「そうかい。それならご自由に。」
男の一人が、亜香里の腕を取る。亜香里は祥生の方を見た。祥生は頷いた。亜香里は、男の腕を掴み、大内刈風の技を出す。男は一瞬宙に浮く。
側で、彩菜が手を叩いて囃していた。男が怒って彩菜に向かう。そして、彩菜にも投げ付けられた。祥生は、スマホのメールを見る振りをしているが、初めから全部、動画に撮っていた。
「お前は情けないな?  次は俺が行く。」
「じゃ、次は私の番ね?」
彩華は、そう言って、その男に向う。
「女の癖に舐めとんのか?」
「そんなに痛くはしないからね、頑張ってよ。」
「くそ、好き勝手言いやがって。」
その男は、少しは腕に自信が有るらしい。突然彩華に突きを出す。
彩華はその腕を掴み、逆手に捻り足を払った。その男も見事に宙に浮く。
「くそっ。」
他の男が祥生を襲う。祥生は、その腕を避け出足を払う。その男の体も空に浮く。まだ懲りない奴が、亜香里に向かう。亜香里も男の足を払った。
「ぎやっ。」
その男も地に這う。
「君達、手加減はしたからね?  もっと運動をする?」
彩華の声を聞いて、男達は、慌てて逃げて行った。
「何か、お約束だね?  山雅さんは、喧嘩の神様に好かれて居るね?」
「強そうには、見えないものね?」
「好きな事、言っるんじゃ無いよ。これは彩華のせいだよ。」
「違うよ。山雅さんだよ。」
「そろそろ帰ろうか?  お約束の喧嘩も済んじゃったし。」
皆んなは、丁度バスが有ったので、バスに乗って明石海峡を越えた。


 H-4  パーティ襲撃

彩華と祥生は今、アメリカに来て居る。明日にはパーティが有る。
パーティに出る義理は無いのだが、プログラムの解説書が、学校にも出回って居り、PP 出版としても、著者の名前も売りたい様だ。
「山雅さん、明日はパーティだよ。」
「面倒くさいけど、パーティには出るしかないか?」
パーティは明日でも有り、今夜は暇だ。二人は、街のカフェーに行く事にした。ホテルを出て、繁華な方に歩いていると、見た様な顔が有った。
「君達、前に会った事が有るよね、元気かい?」
「あ、この前は失礼した。あの時は少々強引だった。」
「あれは、もう良い。ジョーは元気にしてるか?」
「元気だよ。プログラムに夢中だ。それより、胡散臭い噂が有る。」
彼等の話によると、パーティで、何処かの高官を襲う噂が流れている。
彩華も祥生も、パーティ出席者の詳細は知らない。
「それ、ジョーも知ってる話か?」
「一応、噂は伝えてある。」
「分かった、有り難う。注意をして置く。」
彩華は、彼等と別れてから、組織に連絡を入れた。
「噂なので、どれくらい信用するかですが?」
「パーティ主催社に連絡して置きます。貴方方も注意をお願いします。」
日が変わり、今日はパーティの日だ。パーティは夕方からだが、彩華と祥生は、少し早い目に会場に出向いた。そして、建物の周囲を見て廻る。
今日は、警備を増強している様だ。警備の人間が、やたら目に付く。そろそろ、パーティが始まる。
「彩華、三階に妙な雰囲気が有る。三階なら、あの階段と此の階段だ。」
「危ない雰囲気になったら、直ぐ連絡して。私はあちらに行く。」
「よし、僕はここを見る。入り口の狭い所に来たら、武器を消去する。」
「分かった。武器が無ければ、後は投げ飛ばすだけだね?」
パーティ会場には、飲み物やスイーツが配られている。祥生は、久し振りにジョーと会って、雑談をしていた。
「君のプログラム解説書は、かなりの人気が有るよ。とにかく解りやすいからね?」
「有り難う。僕の本を利用してくれて、、、」
その時、祥生の口が閉ざされた。そして、彩華の背をつつく。彩華は頷いて、向こうの階段へ移動する。祥生も近くの階段の側に行く。
彩華が階段に着いた時、数人の男が現れた。迷彩服を着けている。彩華は、もう少し近付いた。男達の体から武器が消えた。パーティ会場の人達は、気が付かない。
もう一方には祥生が居る。そこにも数人現れた。手を動かそうとしたが、何か戸惑っている。その体から武器が消えたのだ。祥生は他保護を切り、奴等を片っ端から投げつける。そして警備を呼んだ。
彩華の方も同様である。男達の武器が消えたのである。それだけで、奴等の気力が失せている。彩華は、組織に連絡を入れた。騒ぎが起こる迄に、解決してしまったので、殆んどの人は、気が付いていない。
「一体、何だったのだ?」
ジョーが祥生に尋ねてくる。
「いや、暴漢を捕まえただけだ。」
「よく分かったな?  入り口で済んでしまった。」
「昨日、君の友人達に、噂を聞いていたので、警戒をしていた。」
「ふーん。」
ジョーは、何とも、スッキリしない顔をしている。


 H-5  アメリカ主義と闘争

「おい、そこの日本人、勝負しろ。」
「何、私達の事かな?」
今はニューヨーク。声を掛けて来た奴等は、白人と黒人が十数人居る。
パーティも済み、彩華と祥生が、ホテルへの帰る途中の事で有る。
「前の奴は納得したらしいが、俺は納得していない。勝負しろ。」
「彩華、どれの事だろうな、覚えは有るか?」
「アメリカへ来るなって、言ってた奴じゃないかな?」
以前に、そういう奴が居たのは確かだ。アメリカ主義の奴等だろうか?
祥生は、こう言う奴が嫌いでは無い。その気持ちも分かるのである。
しかし、喧嘩の相手をするのは、面倒くさいのも確かだ。
「彩華、頼んだよ。」
「山雅さんも、少しは働きなさいよ。」
「いや、彩華で行けそうだ。」
彩華は、声を掛けた白人の前に立つ。
「あんたが、相手をしてくれるの?」
「女で良いのか?  恨むなよ。女だからって、容赦はしないぞ。」
その白人の体重は、おそらく彩華の倍は有る。
「いっやー。」
突然、男の突きが来る。それは彩華の予測範囲だ。余裕で避ける。
廻し蹴り、アッパー、飛び蹴り、ジャブ、投げ技等、何でも有りの攻撃だが、彩華は全てを逃げて見た。今回の彩華は、投げを打たなかった。この体重差で、彩華が投げてしまえば、目立ってしまうのだ。
「まだ届かぬか? 全て逃げ切るとは相当な腕だな? 今日は退く。」
相手が退いたので助かった。彩華達の能力は、自分の保護には、すこぶる強い。今回の相手は、彩華でも勝てる。しかし、体重差が大き過ぎるので、勝った後には違和感が残る。
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