訳あり高校生 ヨシオの変骨騒動記 (ヨシオはプログラム解説書を出版した。お陰で色々な奴等に絡まれる。)

ヨシオ ヤマモト

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 K-1  小説は娯楽 悲劇は不要、娯楽に涙は要らない
 K-2  解説書と小説
 K-3  映画 賀生と瞳の映画観賞
 K-4  不良達と遭遇 映画の帰りに不良と喧嘩
 K-5  プログラムの評価 初歩者に分かり易い
 K-6  スキー合宿 二つのグループで合宿

 
 K-1  小説は娯楽

山賀賀生は、悲劇も涙も嫌いだ。しかし、悲劇の無い物語りを探すのは難しい。
賀生は、文学性も要らない。娯楽が欲しいのである。と理屈を捏ねてはみたものの、楽しいだけの物語りは中々見つからない。今日も賀生は小説をあさっている。
「山賀さん、今日も小説?」
その声を聞いて振り向くと、瞳の顔が有った。
「びっくりした。誰かと思った。」
「今日は暇だから、お茶しよう。」
「ちょっと待って。」
賀生は、手に取った本を、レジに持って行った。同じ本が2冊有る。
「これを下さい。袋は別々にして下さい。小説はカバーでいいです。」
賀生は、本の勘定を済ませて、瞳をうながした。
「さあ、行こうか?」
「山賀さんは、本当に本が好きだねぇ?」
「本を読んでいる間は、何もかも忘れられるからね。」
賀生の家は、母親の再婚先でも有り、義理のお婆さんが居たりして、何かと複雑な事情も有る。その為、小説で心を癒やしている。
「山賀さんでも、忘れたい事が有るんだね?」
「誰だって有ると思うよ。いつ生じるか分からないし。」
「それは、そうだよね?」
「いつもの所でいいか?」
「お茶さえ飲めれば、何処でもいいわよ。」
瞳が良いのならと、賀生はいつもの喫茶店に向かう。
「今日は、どんな本を買ったの?」
「時代小説を買った。しばらく読んで居なかったので。」
「毎日読んでいて、よく飽きないね?」
「選ぶのに苦労をしてるよ。出来るだけ、悲劇の無い物を選んでるので。」
「悲劇は駄目なの?  それじゃ、物語りが平坦になってしまうでしょう?」
そうなのだ、作者たちは、悲劇を入れる事によって、物語りの深みを作っている。
両親の死亡から始まる物語りも多い。こんな物は、代表的な悲劇で有る。
「そうなんだけど、悲劇が絡むと、心が暗くなるから嫌なんだよ。」
「そうかぁ、山賀さんは、心がのめり込むタイプかぁ?」
「弱い者が虐げられている小説を読むと、何とも気分が悪い。」
本来は、現実と小説は違うので、気にする必要は無いのかも知れないが、賀生は結構気にするタイプだ。
「山賀さんは、何処までも、弱い者の味方だね?」
「自分自身が、そんな立場になった場合を想像すると、心がふさがるよ。」
「なるほどねぇ、山賀さんの性格が分かる話しだね?」
山賀賀生は、泣ける話しも嫌いである。娯楽に涙は要らない。賀生は、悲劇の少なさそうな小説を探している。二回目に読む事が有れば、悲劇の部分は飛ばして読む。
喫茶店に着いた二人は、いつものミルクティーとコーヒーを頼んだ。
「山賀さんの読んでる本は、あまり文学性は無い様だね?」
「そうだよ、僕の読書の目的は、あくまで娯楽だもの。娯楽に尽きる。」
「それ、偉そうに言える事なの?」
「そんな気は無いんだけど、僕の好みの問題だから。」
賀生も、そんなに深く考えている訳では無いが、言葉にすれば、そうなるのだ。
「この間の喧嘩は、大丈夫?」
「あの後で、書店で出くわしたけど、お互いに、知らない振りをしていた。」
「あれから、又、本屋に行ったの?」
「買い忘れた本が有ったので。」
賀生の読書は娯楽で有る。楽しい気分を求めている。文学性等は求めていない。
残虐な物や悲しいものも、求めていない。
「山賀さんは、馬鹿なのか賢いのか、分からないわね。やっぱり変人だわ。」
瞳が結論付ける。
「だけど、そんなに特別な事や、変わった事は言って居ないよ。」
賀生が何故、娯楽にこだわるかと言うと、心に残るものが嫌いなのである。
読んだ後は、すっぱりと忘れたいのだ。小説は、読んで居る間が楽しければ良い。
「山賀さんて、幾ら考えても、変人としか言い様がないわ。」
「だけど、理屈は外してないよ。」
「聞いた時は、納得出来るんだけどね?」
何度も言うが、賀生は、あくまで娯楽として本を読んでいる。小説から迄、不幸な話を望んで居る訳ではない。
賀生は、現実の生活でも、嫌な事は、出来るだけ忘れる様に努力をする。
「山賀さんは、嫌な事は心に残して居ないから、匂いがしないのね?」
「中々面白い分析だね。」
心に残こして居ないから、匂いがしない、と言う分析は初めてだけれど、面白い見方ではある。好意的な見方でもあった。


 K-2  解説書と小説

「今度は、何処か違う所へ食べに行こうか?」
「いいわね、 何処がいい?」
「この前は、東の方へ行ったから、今度は西の方へ行ってみるか?」
「又、喧嘩を吹っ掛けられない?」
「そう何度も、無いだろうよ。」
瞳も賀生も、力は有るのだが、出来るだけ喧嘩は避ける。
出来る事なら、平穏に暮らしたい。喧嘩は、大ごとになる可能性も有るのだ。
「又、空いている日に電話して。」
「分かった、一日か二日したら電話する。」
「そうだ、これはプレゼント。この間から言ってた本、それは三巻まで有る。」
賀生は瞳に、先程買った本を手渡した。
「ふーん、これがあの本?」
「僕が書いたプログラム解説書だから、読んで見て。」
他にも有るのだが、代表的な三冊を説明して置いた。

その夜、賀生が小説を読み終えたのは、午前三時を廻っていた。次の日、授業時間になると、やっぱり眠気が襲って来た。教師の声が子守唄の様だった。 
「山賀君、授業は終わったよ、帰ろうぜ。」
授業が終わった時、隣の子が起こしてくれた。 
昨晩は、二冊も読んでしまった。ネットの本も来てるし、真っ直ぐ家に帰ろう。
そう思って門を出た所へ、電話が掛かってきた。瞳からである。
「もしもし、山賀さん今何処?」
「学校を出たところだけど。」
「駅前へ来れる?  来れるのなら、例の所へお願い。」
「分かった、十分あまり掛かるよ。」
真っ直ぐ帰るつもりだったが、特別な用事はないし、瞳に付き合う事にした。 
「お待たせ。コーヒーをお願いします。」
「山賀さんは、昨日も読書?」
「昨日は、悲劇も無いし、情も残らない本だったから、一気に読んでしまった。」
「心に残るのを、良い小説と言うんだよ。普通は。」
瞳が解説をする。しかし賀生は、読んだ後は、すっぱり忘れたいのだ。
「僕には、心に残らないのが良い小説。」
「全く変な人だね、山賀さんは?」
「変かなあ?  そんなに変わった事を、言ってる積もりは無いんだけど。」
賀生はそう言うが、普通の人と比べると、賀生は、相当に変な部類に属している。
しかし、山賀賀生にとっては、小説が、一番手軽な癒やす手段でもある。
「いつか、映画を見に行かない?」
「いいよ。余程ひどいので無ければ見れる。」
「じゃ、資料を集めて置く。それと、前の説明してよ。本の説明。」
「分かった。あれは、僕が書いたのは分かるね?」
「それは、分かったけど。」
「あれは、プログラム初歩の解説書で、全部で三号まである。」
「私は、読んで居ないので、何も解らないけどね?」
「あの本は、アメリカでも発売されている。」
「それで良く成績が落ちないわね?」
「翻訳は、出版社がするので、僕の手は要らない。」
「ふーん、無理をしないでよ。」
「それは、大丈夫。」
瞳は、怪訝な顔をして帰っていった。

その夜の夕食時、瞳の家族三人で、賀生の本を囲んでいた。
「これを、あの子が書いたのか?」
「そうなのよ、既に三冊出ているらしいわよ。」
「解説は日本語だが、英語の式らしき物が、沢山出て来るな?」
「プログラムの解説だから、読んで見ないとね?」
「あの歳で凄いな?  成績は大丈夫か?」
「成績はむしろ上がってる。」
「訳の解らない子だな?」
「そうなのよ。中学の時から、訳の解らん奴だよ。」
「この本を借りるよ。会社の若い奴に聞いて見る。」
「お願い。」


 K-3  映画

その二日後、又、瞳から電話が掛かって来た。映画の資料が集まった様だった。
「どれがいい?」
瞳は、映画のチラシを、五枚程出してきた。
「これで、いいか?  」
賀生が選んだのは、何の変哲もない恋愛映画だった。
「こんなので、いいの?」
「ハッピーエンドらしいから、見られるかなと思って。」
賀生は、恋愛映画でも見られるが、三角関係や、失恋の多い物は嫌いである。
「じゃ、これにするよ。」
「いつ行くの?  映画館は家から近いから、いつでもいいよ。」
「じゃ、決めたら電話するね?」
瞳は、結構嬉しそうだった。本も恋愛物を読むと言っていたし、あれが見たかったのかも知れない。それにしても、賀生の時間は、最近、瞳にかなり侵食されて居る。
そう言えば、瞳の提案を断った事が無い。 次の日、その瞳から電話があった。
「はい。あっ瞳。」
「瞳だけど。今度の映画の事だけど、日曜日でいい?」
「日曜だね?  別に構わないけど。」
「今度の日曜日の、十時半に映画館前でお願い。」
次の日曜日、賀生は、ゆっくりと家を出た。その映画館は、駅よりは近い。歩いて十分あまりである。しかし、映画館への途中の路地で、知った顔が遠目に見えた。
前の喧嘩の相手である。
賀生は、男達が居る路地を避けて、違う路地から映画館へ向かった。
映画館では瞳が待っている。待ち合わせ時間に行かなかったら、心配するだろう。
賀生は、不良達とは会わずに済んだ。
「おはよう。」
「あっ、おはよう。」
「券は買った?」
「まだだよ。」
賀生は二人分の券を買ってきた。
「私の分はいいのに。」
「アルバイトをしているから、このぐらいは大丈夫。」
「分かった、そしたらお菓子を買うわ。」
瞳は、近くの売店で、お菓子を買ってくる。
しばらくして、交代の時間が来た。二人は揃って中へ入る。
「そろそろかな?」
「もう始まるよ。」
その後、直ぐに映画は始まった。瞳は熱心に画面を見入っている。
その映画は、普通の恋愛ものだったが、それなりの冒険も有り、結構楽しめた。
これを、選んだのは正解だった。賀生も、その映画は抵抗なく楽しめた。
映画は、約一時間半の長さが有ったが、賀生は居眠りをしなくて済んだ。

賀生は、うっとうしい内容の映画は嫌いである。小説もそうだが、悲劇や涙は不要である。作り物の世界にまで、悲劇や涙は要らない。
賀生は、喧嘩になっても、怪我人が出ないように、極力用心をする。
出来れば喧嘩はしたく無い。しかし、不幸な事に、何故か喧嘩に遭遇する。
この前も、アメリカ教務省長官の事件に遭遇した。
「時間は早いから、お茶でも飲むか?」
賀生は、瞳に聞いた。
「そうだね。この近くにいい所は有る?」
「有るには有るけど、駅に遠くなっても構わないか?」
駅の反対方向へ、少し歩いた所に、以前行った喫茶店が有る。
「後で、駅まで送ってくれるでしょう?」
「分かった。じゃ、そこにしよう。」
賀生は、瞳を案内して、そちらの方に向かった。


 K-4  不良と遭遇

しかし、運の悪い事に、少し歩いた所で、不良共と出くわした。
不良達は、その路地に移動をしていたのだ。
「おい、やっぱり山賀じゃないか?」
「すみません、どちらさんですか?」
取り敢えず、とぼけて見る。
「いい加減に覚えろ、ついこの間、城の近くで会ったろうが?」
「あっ、あの時の兄さん達か?  髪型が変わっていて、分からなかった。」
「そこの女、横に退いていろ、怪我するぞ。」
あれ、瞳の顔は知らないらしい。瞳がらみじゃないのか?  
数が増えて、気が大きくなったか?  随分余裕の有る様子だった。
「今日は連れが居るので、喧嘩沙汰はちょっと。」
「落着いているな、余裕じゃないか?  先輩頼みます。」
あぁ、先輩が居るのか、それで、こいつ等も余裕があったのか? 
「先輩、こんな喧嘩に巻き込まれて、大丈夫なんですか?」
「お前に関係ない。」
「バレても良いんなら、いいんですけどね?」
その先輩が、つかつかと賀生の方へ寄ってくる。そして、胸に手を伸ばした。
今までの奴等と違って、隙が少ない。あっ、こいつは柔道か?  
足の運びに、柔道の癖が見える。体重に相当の差が有るが、何とかなりそうだ。
そこへ、大人しくしていた瞳が介入する。数が多いので心配になったらしい。
賀生は、瞳に向かって首を降る。しかし、瞳も首を振って、近くの男を転がす。
まぁ仕方が無いか。瞳は傍観しておれない性格である。
賀生は、胸ぐらを掴んでいる奴の手を取り、逆手に捻り体重を掛ける。男は痛みに耐えかねて、横に倒れる。
「ぐぉっ。」
賀生は、ついでに腹に当て身を入れて、戦闘力を無くしておく。
「うっつう。」
賀生はそのまま、スッと男達の後ろへ体を移し、次の二人の男を無力化する。その間に、瞳も二人ほど放っている。
「ぎやっ。」
一瞬に五人を倒されて、男達は気力が失せた。
「腕を痛めて居るかも知れないから、氷で冷やした方がいいよ。」
賀生はそう言って、瞳と共にその場を離れた。
「おかしいわね?  お父さん、喧嘩の原因が解ったので、止めて置いたと言ってたんだけど、間に合わなかったのかな?」
「えっ、お父さんが関係してるの?」
「お父さんは、護身術の道場で講師をしているのよ。私もそこへ通ってた。」
「あっ、それで瞳は、あんなに強かったのか?」
「隠してて御免、こんな事になるとは、思わなかったので。」
「すると、一件に限らないよ。」
「どう言う事?」
「瞳を、見守っていたんだと思う。その元は一人とは限らない。」
「そうだよね、私は誰とでも話して居たけれど、塾に派閥も幾らか有ったし。」
二人は、もう少し様子を見る事で、合意をした。
「瞳、あの男達の中に、知った顔は有った?」
「無かったわよ。」
「そうか、誰も瞳には気がつかなかった。道場に来ている奴はいないな?」
「私絡らみにしては、私の方に、何のアクションも無いのよね?」
「多分、門下生の誰かの手下だな?  中には、喧嘩が強くなる為に通う奴もいる。」
これは当分、謎のまま置いておくしかない。そのうち分かるだろう。
それから数分歩いて、いつもの喫茶店に着いた。
「あいつらに、初めて絡まれたのは、中学三年の時だった。」
「え、そんな前。補習の頃だね?  どこで会ったの?」
「運動場の片隅。その時は、神衣と話しをするなっ、だった。」
「補習授業中に、何故山賀さんが運動場に居るのよ?」
「気分転換をしていたんだよ。」


 K-5  プログラムの評価

この事件から数日後、神衣真路が勤めている会社の昼休み。
真路が、本を一冊、皆んなに見せていた。
「この本が、どうしたんですか?」
「娘の友達が買ってたので、借りてきた。今流行りだと言うので。」
その本の表紙には、[山香が書くプログラムの初歩]とあった。
「この本は、今有名なんですよ。」
「何故、有名なんだ?」
「初心者にも、良く解ると評判なんですよ。この本のお陰で、プログラムの挑戦者が増えた、と言われる程ですよ。」
「どれどれ、あっ、この本だ。私も買いました。」
「どうだった。」
「初心者にも解り易いんですよ。有名ですよ。物凄く売れてるらしいです。」
物凄いと言っても、小説等に比べれば、それ程でも無い。しかし、この手の技術書としては、相当に良く売れている。
「この人、雑誌にも連載してますよ。そこで有名になったんですよ。」
「雑誌にも、書いているのか?  凄い人だな?」
「普通の同類の本は、初心者向けとなっていても、解らない所が有るんですよ。」
「この本は、疑問が後へ残らないんです。それで有名になったんですよ。」
「ふーん!」
賀生は最初、初歩の初歩と言う事で、軽い気持ちで書き始めた。
正直、こんなに売れるとは、思わなかった。
最近の、ブログラミング人気で、初心者が増えた結果だと、賀生は思っている。
初級編は、内容は薄いが、解り易いのは抜群である。中学生でも解る内容だ。
その上、価格が安いので買いやすい。一冊読んで、気にいったのなら、続きを読めば良い。そう言う選択が出来るので、初心者に売れたのだろう?
余談にはなるが、最近は、量子コンピューターが進歩をして、普通の会社でも、利用可能になりつつ有る。しかし、個人が直接触れられる訳でも無い。大量の演算は量子コンピューターに任せ、従来のコンピューターを介して、利用する事になる。


 K-6  スキー合宿

今日も、瞳と賀生は、いつもの如く、駅前の喫茶店でお茶を飲んでいる。
「そろそろ何処かに行かない?」
と瞳が言う。
「この時期だとスキーぐらいだよ。そうなると、日帰りは難しい。」
「そうだよね、そうすると、流石に二人でって訳には、行かないよね?」
個人的な旅行の場合は、賀生はあまり役に立たない。友達付き合いが無いからだ。
「瞳は、知り合いに、あては無い?」
「女の子ばかりの中に、山賀さん一人が男の子、と言うのも無理が有るし。」
スキーの事は、後で連絡をすると言い残して、瞳は帰っていった。
そして三日後、二人は、駅前の喫茶店で、お茶を飲んでいた。
「スキーの事だけど、男の子が一人と女の子二人が、計画を立てているらしいよ。」
「それ、良いんじゃ無い?」
「私達三人が参加すると、男の子が二人になって、実行出来るらしいのよ。」
「それは、ちょうど良いのが有ったね?  それに参加させて貰おう。」
「分かった、今日中に連絡を入れて置く。」
結局、その六人で行く事になった。冬休みになって初めての、土曜と日曜に行く。
計画は、向こうのグループに任せる事になった。当日の宿泊は、旅館が混んでいるので、民宿になると言う。
やがて、その日が来た。土曜日の朝早くに、瞳から電話が掛かって来た。
「山賀さん起きてる。九時に待ち合わせだよ、遅れないでね?」
「分かった、遅れないように行く。」
賀生は、九時ちょうどに、駅前に着いた。もう皆んな揃っていた。」
「おはよう。待たせてしまった。」
「いや大丈夫。皆んな、今来たところだから。」
向こうのグループの、男の子が返事をした。
「そろそろホームへ上がろうよ。もう少しで電車が来るよ。」
皆がホームに上がって、数分後に電車が来た。電車を一時間程乗り、バスに乗り継いで民宿に着いた。幸いな事に、部屋に余裕が有り、男女別々の部屋になった。
「雑魚寝でなくて良かった。山賀さんに脅されていたからね?」
「その可能性は有ったんだよ。部屋に余裕が有ったから良かったけど。」
向こうのグループの、女の子が言った。
その日の午後と、次の日の午前中が、スキーの時間である。
「荷物を置いたら、滑りに行くよ。その前に昼食を取るから、食堂に集まって。」
向こうのグループの橋本君が、皆んなを取りまとめている。
程なく、皆は食堂に集まった。
「山賀です。よろしくお願いします。」
「橋本です。こちらこそ、よろしく。」
その後、みんなも自己紹介をした。
「山賀さんは、瞳に聞いていたのより、大人しいわね?」
「普段は、猫をかぶって居るのよ。」
「失礼だな?  これが普通の僕だよ。」
「二人共、こんな所まで来て、漫才はやらないの。」
英子が、口を挟んだ。話しは弾んだが、スキーの時間になった。
「スキーを借りに行こうか?」
スノーボードも有ったが、三人ともスキーを借りた。
「皆んな、五時に帰ってきてね?」
結局、五時前には、皆んな帰ってきた。遊び疲れた様子だ。
「風呂に入って、男子部屋で食事にするから。あまり長湯はしないように。」
向こうのグループの橋本君が、皆んなをまとめている。
「いただきまーす。」
「山賀さんは、想像していたのと、印象が違うわね?」
「揉めなければ、大人しいわよ。」
「瞳、ここ迄来て、悪口は言わないように!」
「生徒会で、いつも文句を言ってるのは、山賀さんだもの。」
英子まで、そんな事を言う。
「はい、僕の悪口はここ迄。」
話しは盛り上がったが、明日も、昼過ぎ迄スキーをするので、早い目に就寝する。

次の日の帰りの電車で、みんな疲れて、居眠りをしている。
その中で、瞳と賀生が話している。
「良く遊んだな?  疲れた。」
「面白かったけどね。次は、正月のお宮さん参りだね?」
「毎年、同じ神社になってしまうね?」
「この近くで、大きな神社は、あそこしか無いしね。」

楽しいスキーも終わり、もう直ぐ正月である。来年からは、本格的に勉強だ。
賀生が、その気になるか、瞳には、一番の心配事であった。
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