訳あり能力者 芙蓉儚の幽能力世界 (ハカナは国連傘下組織の依頼により、普通では解決困難な事件を担当する。)

ヨシオ ヤマモト

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2N 洞窟の奇跡

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 N-1  洞窟の奇跡 幻覚の瞬間移動
 N-2  民間雑務屋M 戦闘 やっぱり潰すと言う刃銃 奥義
 N-3  九州で山崩れ 特殊能力で救助
 N-4  東欧で将軍救助 人質の将軍救助


 N-1  洞窟の奇跡

「山臥さん、妙な洞窟か有るって。」
「何が有った?」
「同じ洞窟の中だけど、瞬間に違う場所に転移してしまう。」
その洞窟に入った人達が、ある枝道に入った。それから二ヶ所程、分岐を選び、少し広い所に着いた。一服していたところ、気が付いたら、景色が変わっていた。
彼等は迷った挙句、やっと外に出たのだが、山の反対側に出てしまった。
「散々迷って、外には出られたんだけど、別の入口に出てしまったらしい。」
「出られたんなら、それでいいんじゃないか?」
そんな事件が、何度も重なった。そのままでは、やがて被害者が出る。
「その現象を、被害者が出る前に、解明して置きたいってさ。」
確かに、放っておいたら、事件になる可能性は高い。
「分かった。その謎の事件を受けて見よう。」
「仁美も誘って見ようか?」
三人で行った方が、解決策の選択肢は増える。
「頼むわ。明日の朝から出よう。」
そこは、中央アメリカの小さな国であった。直通便が無い為、ニューヨーク経由で、行く事になる。
「今回は関空から一般便で行く。緊急性は低いので、普通の便で行く。」
「分かった、いつもの所へ来て。」
次の日の朝、九時に儚の家近くの道路に着いた。
「来たよ。出られるか?」
「直ぐに行く。」
結局、十七時間程で中米の国に着いた。そこからジープで洞窟に向かう。
「この洞窟か?  中に入ってみよう。」
中に入って見たのだが、特別変わった様子は無い。今迄の話を聞いて、洞窟の分岐を三ヶ所程通り、儚たちは、少し広い洞窟に着いた。側に地下水流が流れている。
「儚、この場所の特徴を覚えてくれるか?  他からの幽視でも解る様に。」
「なるほど、それは良い考えだね?」
そんな話をして居ると、いつの間にか景色が変わっていた。
「儚、何か変だよ。洞窟が変わった。」
仁美が言った。儚も周囲を眺めている。
「ここは何処? やっぱり跳ばされた。」
周囲をみてみると、ここにも地下水流が有る。
「元の場所を幽視で見るわ。あれ、あの場所は直ぐそこだよ。」
「何メートルぐらい離れている?」
「五メートルも離れていないよ。地下水流の側まで寄ってみて。」
仁美は、水流の側に行って、左右を眺めている。そして、靴を脱いで水流を少し下った。その右側に、何とか人の通れる穴を見つけた。穴の入り口から数メートル入り、声を上げた。
「儚、私の声は聞こえる?」
「聞こえるわよ。えっ、これは直接の声だよね?」
ほんの十数メートルで、最初に行った場所に行き着いた。その場所から素直に見れば、地下水脈しか見えない。洞窟の入り口が有る様には見えなかった。
この場合は、地下水脈を通ったところが、幻惑で消されていた。時間を少し誤魔化せば、瞬間移動で飛ばされた様にも感じる。
「規模の小さな幻覚だね?  水脈に入る発想も消されていた様だよ。」
「つまり、水流に入る発想、水流を通った事実、それに使った時間の、三点を幻惑で誤魔化されていた事になる。」
「三点とも、小さな幻覚ばかりだね?」

小さな事ばかりだが、他の場所にも有るかも知れない。この幻惑を潰して置かないと、下手をすれば事故を起こす。帰り道を間違えれば、訳が解らなくなってしまう。
儚たちの、他保護の範囲に取り込めば、人間以外なら消滅出来る。この程度の強さなら、幽力は要らない。
「仁美、少しだけど、そっちへ逃げたよ。他保護に取り込めば消滅出来るよ。」
「了解。捕まえる。山臥さん、上の奴をお願い。」
「儚、そっちへ行ったぞ。」
「捕まえた。消滅しておく。」
「山臥さん、少しは、上に逃げたよ。」
スルリスルリと逃げる幻惑の元を、三人で追い回した。
「何とか消えたね?  皆んなご苦労さま。」
今回は、あまり強くない思念だったので、基礎能力の、他保護に取り込んて消滅を図った。しかし、強い思念だと手に余る。その場合は、幽能力を使う事になる。


 N-2  民間雑務屋M

今回は、民間の雑務屋M社が絡んだ。SSS の下請けにも雑務屋が有る。それは、WS 社と言い、YAグループを欲しがって居た。危機処理もやりたくなったのだ。
しかし、その会社は今は無い。邪魔が過ぎるので、やむを得ず嘉紀たちが潰した。
良く似た雑務屋が、民間にも有った。そこも、同じ様な理由で、YA グループを欲しがった。儚や嘉紀達のグループは、成功率が、飛び抜けて良かったからだ。
それは、隠しては居るが、彼等は妙な能力を持っている。人間の命を護る力で有る。
人間は、敵も味方も殺せないと言う、片寄った能力でも有った。
「まだ、我々に協力出来ないのか?  それなら、どんな事をしても潰すぞ。」
「儚、何か格好良さそう事を言ってるぞ。参加したいか?」
「冗談! そんな事に関わる暇は無いわよ。」
「そこの人達、そう言う事だから、消えてくれるかな?」
そいつ等の一人が、突然殴り掛かった。前に居た儚が手ではじく。そいつは、儚の胸元を掴みに来る。儚は、その腕を取り背負いで放る。それを見た、大柄の黒人が儚に向かう。
「お前達は、そんな力が有るのに、試合で見た事が無いぞ。」
「そんな物に、出ている暇は無いよ。我々はアマでは無いわよ。」
「そうか、プロなら遠慮なく潰せるな?」
「儚、又、格好良さそうな事を言ってるよ。潰されない様にね?」
「山臥さんも働きなさいよ。面倒くさいんだから。」
その男は、突然回し蹴りを掛ける。儚は、それを腕で止めた。次は、後蹴りが来る。
それは、手ではねる。今度はボクシングのアッパーが来る。儚は、それを後ろにそって避けたが、足でその男の、みぞおちを蹴り上げた。何とか、それは届いた。
「うっつー、負けた。君は想像以上に強い。今日は退く。」

奴等の半分程は、退いて行ったのだが、まだ残った奴等がいる。
「まだ、用事が有るのかい?  退くとか言って、半分は帰ってしまったけど。」
「あいつ等の事は知らん。たまたまM社で一緒になっただけだ。」
M社の下には、別の何組かが居るらしい。
「それじゃ、我々も帰るからね?」
「帰るな。俺達の用事が有る。」
面倒くさい奴が居る。まだ用事が有ると言う。
「一体、何の用事だ?  我々も帰りたいんだが?」
「言う事を聞かなければ、潰せとの命令だ。まだ、協力出来んか?」
「いや、君達は勇気が有る。褒めて置こう。それで、これからどうするんだい?」
「もう一度言う。M社の下に入れ。」
こいつ等も、あまり現実感が無い。儚や嘉紀は、軍隊とも戦って居る、そんな脅しでは効果が無い。
「それは、出来ない相談だ。そんな寝言は、寝てから言え。」
それを聞いて、横に居た奴が、突然殴り掛った。それは、無茶苦茶では有るが、変則的で、中々強い。前の儚が、その腕を叩き落とす。横の奴の蹴りが来る。儚はその時、後に害意を感じた。
「天勝流翔天!」
儚が武術奥義を唱える。
儚の身体が横に跳ぶ。儚の横をナイフが通る。嘉紀の方には銃弾が襲う。
「翔天!」
嘉紀も奥義を唱える。。嘉紀は身体が折り曲がる。その隙間を弾が流れる、その不安定な身体に、飛び蹴りが襲う。それを、嘉紀の手がはねのけた。次々と変則攻撃が続く。今度は、儚に銃弾が襲う。その寸前、儚の身体は横に飛ぶ。足が地に着いた途端、儚の体が、横に反る。儚の身体の脇を弾が掠める。
「くそっ。それは何の術だ?  こんな奴と戦った事がないぞ。」
「引け! 警察が来ると拙い。」
奴等が退いていった後、儚と嘉紀も、そこを離れた。

「儚、器用な避け方をしていたね?」
嘉紀か儚に感想を延べる。
「半分、演技だけどね。避けた様に見えるでしょう?」
儚や嘉紀に銃弾が当たっても、体に触れる瞬間に弾は消滅する。それが彼女達の基礎に有る自保護能力であった。しかし、当たらない振りをしている。
儚や嘉紀の場合、時によっては、その保護能力を、武術の奥義に偽装する。この能力は、他の人達に悟られる訳には行かない。


 N-3  九州で山崩れ

今日も、儚、仁美、嘉紀の三人で、お茶を飲んでいる。
儚は、新聞を読んで居たところ、九州で、山崩れのニュースが載っていた。
「九州で山崩れだって。人が三人閉じ込められている。」
「助かるの?」
「難しいらしい。掘った後から崩れて来るので、工事が長引く。」
「水無しで助かるのは、三日程でしょう?」
「そうらしいね?」
人間は食料は無くても、もっと長く保つが、水が切れると、そんなに保たない。
「山臥さん、九州へ行って見よう。夢とカコにも、声をかける。」
「儚、突然どうした?」
「私達が、やらなければと、突然頭に浮かんだ。これから助かる方法を考える。」
「組織からの連絡は?」
嘉紀が、組織の事を尋ねた。
「まだ依頼は無いけど、多分来ると思うわ。」
儚に依ると、災害救助は、担当が違うのだが、最近は、受ける事例が増えた。
「助けられたら、その後で観光するのも、気分がいいわよ。」
そんな話をしている時、組織から連絡が来た。現場は困難を極めている。
とにかく現地へ行って、方法を探す。
「しかし、人には見せられないわよ。超能力かインチキかと言う話になるわ。」
仁美が、そんな風に言う。
「どうしてよ?」
「崩れる土砂に穴を開け、上からの土砂を、止めて置かねばならないんだよ。」
「本当だね?  コンクリートの壁とは違うわね?」
と、儚も言う。
「コンクリは、穴を抜いても崩れて来ないので、特殊装置と誤魔化せるけどね?」
今度は、閉じ込められた人達も、誤魔化さなければならない。夜中に、周囲の皆んなを排除した後、作業をする。
「一人が穴を空けて、そのまま留まり、他の者が奥の人を助ける。数分の勝負だ。」
程なく夢とカコも集まって来た。
空港迄の時間や、飛行機の時間待ちを考えるなら、新幹線の方が早い。
「メディアが、張り付いて居なければ良いんだけどね?」
「夜中の仕事になるけど、地元の関係者は居るかもね?」
結局、夜中の休憩の間、交代すると言う事で、数分の時間を確保した。
五人は暗視ゴーグルをかけた。
「今の間に片付けるよ。中には三人居ると言ってたね?」
「仁美、二米ぐらいの穴を開けて。後の四人で人を助け出す。」
儚は、仁美に穴を頼んだ。儚や仁美は、半径六米の他保護範囲を持つ。最大で十二米の穴を空けられる。長径はそのままで、巾だけ縮める事も出来る。
幽力を使えば、その二倍は確保出来る。
「分かった。穴を空けるよ。」
仁美が穴を空けた後、儚、夢、カコが、怪我人を助け出す。
「一人ずつ助け出して。僕は、残って居ないか調べる。」
「了解。」
「暗視ゴーグルを着けて、暗いまま作業をする。」
三分程で全員助け出した。残って居ないか確認をした嘉紀は、仁美に合図をした。
仁美は、ゆっくり穴から外へ出た。その後から、上の土砂が落ちて来て、元の山崩れの状態に戻った。その土砂に、組織が用意をした、頑丈な鉄骨を何本か混ぜておく。
その音を聞いて、皆んなが戻って来た時には、儚達五人は消えていた。
後には、三人の怪我人が残されていた。その三人も、暗闇の中なので、よく分からない様だった。その人達には、助かったと言う意識だけが残って居る。
次の日のニュースに、大きく取り上げられたが、要領は得ない話になった。
その頃、嘉紀、儚、仁美、夢、カコの五人は、別府温泉に浸かっていた。
「作戦は成功したし、気持ち良かった。美味しい物でも食べよう。」
「そうだな、何が良い?」
「分厚いステーキと刺し身。」
「儚、取り合わせが変だよ。それ。」
「じゃ、取り敢えず、ステーキにしよう。」
今回の事で、夢とカコも本当の仕事をした。
幾ら、優れた能力が有ったとしても、やはり現場は経験だ。


 N-4  東欧で将軍救助

半月が過ぎ、SSS から連絡が来た。東欧で事件が有ったと言う。
「遠いね?  何時間ぐらい掛かるのかな?」
「現地迄、25時間は掛かると思う。往復で50時間だね?」
儚と仁美が、話している。
「早くて三日か?  寝るのは飛行機の中だね?」
「 SSS の直行便だと、もっと速いんじゃない?」
東欧でゴタゴタが有り、小さな戦闘が有った。その時、視察に来ていた、ある将軍が捕虜にされてしまった。それを取り返したい。との事なのだ。普通は、そんな遠方の事件は、依頼されないのだが、YAグループは成功率が高い為、時々依頼が来る。
「僕だけでも良いが、その場合、軍の方に、怪我人が出る可能性が高い。」
「今回、儚たちはやめて置くか?  ややこしい所だし、遠いし。」
「山臥さんだけで、やり切れるの?」
「以前は、僕だけで行っていたから、やれない事は無い。」
「三日や四日で片が付くなら、私も行くわよ。仁美にも相談をする。」
儚は、そのまま仁美に連絡を入れた。幸い仁美は家に居た。
「と言う訳なんだけど、遠いから仁美は無理かな?」
「早くて三日か?  そのぐらいなら問題ないけど、三人分も費用は出る?」
儚は、再び嘉紀に電話をした。
「山臥さん、仁美も行けるけど、どうする。三人分も費用は出る?」
「それは大丈夫だけど、ややこしい所だよ。」
嘉紀の説明に儚が答える。
「こちらの命が、保証されてるなら大丈夫だよ。」
「それでは、直ぐに迎えに行くから、いつもの所で頼む。」
今は、SSS の飛行機の中で有る。三人は食事をしている。急いで居たので、昼食を取っていなかった。途中のコンビニで弁当を買っておいたのだ。
「人質の命は大丈夫なのかな?  時間が掛かり過ぎだよ。」
向こうでは、今の処、膠着状態の様だ。まだ命は有るらしい。
「今の内に一眠りしよう。寝るしか時間が過ごせない。」
三人は、時間が来るまで、寝て過した。
通ったルートは分からないが、手続きは全てSSS がする。
「もう着くよ。準備をしよう。」
「もう着くの?  仁美も起こそう。」
現地へ着いた三人は、早速、現地の担当者に様子を聞く。
「人質は、どんな所に居ますか?  周囲の兵士の数は、どうですか?」
人質は、500米ほど先の小屋に隔離されている。兵士の数は不明だ。そこ迄は隠密に行くしか無い。これからルートを探さねばならない。
「向う側の兵士の服は有りませんか?  現地まで、誤魔化したいので。」
「二着は捕虜の分が有るが、一着足りない。」
「二着でも無いよりはいいです。それを借ります。」
この服は、儚と嘉紀が着る。仁美は外国の知人のふりをする。
「さあ行くよ。仁美は後から付いて来て。」
出来るだけ、人の少ない所を自然に歩く。近所話をする如く歩く。二人ぐらいと、すれ違ったが、怪しまれなかった。後少しで着く。やっと小屋の近くに着いて、周囲の様子を探る。横手の方は、時々人が通っているが、居ない時もあった。
「横手から壁を抜く。世間話をする振りをしてて。」
「今だ、入るぞ。急いで人質を探して。」
儚が幽視をして居る。
「あの部屋に居る。側面の方が手薄のようよ、あちらの壁を抜こう。」
「分かった。儚、壁を抜いてくれ。僕が先に入る。」
「了解。せーの、抜けた。仁美、私達も行くわよ。」
中には、初老の軍人が居た。顔をスキャンする。一致した。
「間違いは無い、この人だ。将軍、すぐ出ますよ。急いで下さい。」
外に出ると、壁の穴に気が付いた兵士が、駆けつけて来る。
「儚、仁美、離れないように。一緒に行くぞ。」
「いっぱい来たわね、強行突破しか無いか?」
結局、以前の人質開放事件と同じ状況になった。嘉紀は、保護幕を展開する。
その幕には、所々透明の窓が有り、進む方向は見える。この保護幕は、本来何の実態もない。他保護範囲の内側に、光の遮断層を展開している。その黒い壁が、あたかも硬い構造物に見える。嘉紀達の他保護能力を、その構造物の力と誤魔化す為に展開している。その遮断層の中で、儚と仁美が将軍を護る。
「このまま押し切るぞ。将軍は掴んで居てよ。外へ出すなよ。」
動くのに、力は要らないのだが、前に廻られると、気分的に鬱陶しい。
他保護を展開すれば、人を押し退けられる。将軍が敵に怯えて、逃げ出さない様に気をつける。誰かの他保護範囲の中に居る限り、命に危険は無い。
何とか雑木林に着いた。後は雑木に紛れて、そこを離れた。
充分離れた所に指揮所が有る。そこまで将軍を案内して、一休みをした。
「君達はなんだね?  あの弾幕の中で、何故撃たれない?」
「黒い膜を張ってたでしょう?  あれが弾除けです。」
将軍を、SSS の担当者に預け、休憩の為その場を離れた。
しかし、その後彼等を見た者は居ない。既に SSS の車で空港に向っていた。
「やっぱり遠いな?  上空を通れない国が有るから、遠廻りをする事になる。」
「それでも三日で済んだ。飛行機の中で寝られたからね?」
「このぐらいなら、周囲を誤魔化せる。土日を挟めたのは大きい。」
帰りは、二十時間程で済んだ。
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