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2O 儚の景色
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2O 儚の景色 高2 儚の能力 ブラジル M社破壊 スキー1月 儚の景色
O-1 儚や嘉紀の能力
O-2 ブラジル事件 人質事件
O-3 YAグループの実情 YAがM社を潰す
O-4 スキー民宿 夢とカコも参加
O-5 儚の景色
O-1 儚や嘉紀の能力
芙蓉儚は、名の如く儚げな女子高生で有る。ただそれは、あくまで見た目で有って、本当の姿は、普通の武道では、計れない力が有った。儚には妙な能力も有る。怪しげな友達も居る。山臥嘉紀も見た目は優しい。普段は、読書姿しか目にしていない。
しかし、このグルーブで、一番怪しい動きをする。
「山臥さん、そんなに本を読んでて、良く勉強が出来るね?」
「小説が好きだからね? 小説がないと、落ち着かないんだよ。」
嘉紀は、こんな風に言っているが、科学的な本も、結構、読んでいる。
山臥嘉紀は、秘密の組織から仕事を受ける。それを、儚や仁美が助ける。
仁美は、儚の小学時代からの友達である。仁美は、儚から有る力が伝染った。
その能力のお陰で、芙蓉儚や山臥嘉紀の仕事を手伝っている。
「少し落ち着いたわね?」
「事件が無いと、平和でいいんだけどね?」
「世間の常識から見れば、相当ヤバい仕事だよね?」
「絶対、普通の人には言えないんだけどね。」
「山臥さんは、基本的に、悪い事が出来ない性格だから、安心だけどね?」
儚も、その能力の元は山臥嘉紀である。嘉紀は父親から伝染った。
山臥嘉紀が仕事を受けるのは、当面、こちらの正当性が条件である。
「我々が受ける仕事の条件は、かなり厳しい。一方的な都合だけでは受けない。」
彼等の自己保護能力は強大だ。鉄砲でも死なない。しかし、依頼対象は、死の危険が有る。これ等を生存したまま、救助するのが主な目的になる。
「あまり有名になると困るわよね?」
「そう。対策を立てられると、やりにくくなるからね?」
この能力の持ち主は、人間を殺す事が出来ない。自動的に衝撃が緩和されてしまう。
だから、多人数の作戦には参加出来ない。数が多いと面倒が見切れないのだ。
儚は、嘉紀が受ける事案が有れば、それを助ける。仁美も同様だ。
「僕一人の頃は、年に五回程だった。今は、三人で動けるので、大分増えた。」
「山臥さん一人って、中学の頃でしょうが?」
「僕も、その頃には伝染ってたから。」
嘉紀の親は、もっと現場に居た。その頃は、今より複雑な世界であった。
O-2 ブラジル事件
ある日、例の組織から連絡が有った。今度はブラジルで事件だ。
嘉紀達の能力の関係上、どうしても、人質事件が主体になる。
「山臥さん、又、人質だって。」
「人質事件は、再々やられると困るよな?」
その国では、政府と抵抗組織二派との、三者で調停が始まろうとしていた。
その抵抗組織二派は、元々仲が悪く、調停に反対する派閥も有った。その調停反対派が、もう一方と小競り合いの末、人質を取る事態に陥った。
調停を仲立ちしていた、国際機関としては非常に具合が悪い。そこで傘下のある組織に、人質の開放を依頼した。
「もっと考えて行動して欲しいよ。」
「人質は、命が掛かっているだけに困るよね? 放っては置けないし。」
儚は、依頼を受けたのは良いのだが、専用機は予定が詰まって居り、今度の事件には間に合わなかった。
「明日の午前には出発したいんだけど。二人共動けるか?」
嘉紀が、儚と仁美に問う。
「行けるけど、何日間の予定なの?」
「 一般便を使うのなら、時間がかかるわね?」
「四日見た方が無難だね? 睡眠は飛行機の中になるわね?」
直接の航空便は無かったので、ブラジルへは、ニューヨーク経由で行く。
結局、丸一日掛かって現地に着いた。現地事務所は、密林の中に有る。
「ここからだと、現場まで、どのくらいの距離ですか?」
「3キロぐらいですが、車で、1キロまで近付けます。近く迄送ります。」
その後、密林を隠れながら歩けば、300米ぐらい迄は、近づけると言う。
暗視ゴーグルを着けて、夜に動くしか無さそうだった。三人は、情報を書いた、現地語のパネルを用意した。それを見せて、人質達に、信用させなければならない。
「そろそろ時間だね? 行くよ。」
密林の中は、隠れやすいのだが、木の無い広場では、丸見えである。近付きさえ出来れば、難しくない話だが、近付く事自体が難しいのだ。小屋が、所々に有るので、その陰を、進んで行く。たまには、現地人の振りも、しなければならない。
「警護のやり方から推測するなら、あの小屋だけど、見通しが良すぎるね?」
「そうだよね? 見廻りの間隔がもう少し長いと、助かるんだけどね?」
「自然らしく歩きながら、近くまで行き、見廻りが角を過ぎたら即実行だ。」
少し経って、見廻りが行き過ぎた。三人は、その小屋の床下に潜り込む。
「儚、幽視して。どの部屋に居る?」
「三部屋ほど、右の部屋にいる。左隣りには、人が居ない。」
三人は、床下を、そこまで這って行く。
「今度の見廻りが、通り過ぎたら床を抜くよ。」
儚は、部屋の中を幽視して、再度確認する。
「見張りは居ない。今の内だよ。」
部屋に上がり、足音を消して人質に近づく。人質に暗視装置を着けさせ、メモを見せる。人質も頷いた。床下の基礎壁を抜き外に出る。建物の陰を伝い密林に向う。
後100米程の所で、見張りに見つかった。相手は小銃を撃ってくる。嘉紀が保護幕を展開する。その中で儚と仁美が、捕虜になって居た人を掴んで居る。
怯えて外に逃げられると、弾に当たる。下手をすれば死に至る
「この幕の中に居れば、命は保証します。」
周囲を囲まれたが突き進む。嘉紀が中央に居れば、幕の中には銃弾は届かない。
ナイフをかざして、突っ込んで来る奴も居るが、保護範囲では刃は刺さらない。
「貴方達は、何故撃たれない? 何かの魔法か?」
「この黒い保護幕の機能だ。とにかく走れ。」
儚と仁美、そして嘉紀は、そのまま力押しで、密林に走り込んだ。
密林を幾らか進むと、周囲は真っ暗闇だ。その闇に紛れて、遠回りしながら、組織の陣営に走り込んだ。
「お疲れ様でした。」
「申し訳無いのですが、町まで、ジープで送ってくれますか?」
「そこ迄なら大丈夫です。直ぐ行きますか?」
「お願いします。人質の方が、色々尋ねると思いますが、適当にお願いします。」
町で食事を取り、乗り物を乗り継ぎ、やっとニューヨークに辿り着いた。
嘉紀は、久し振りに、ベティに連絡を入れた。
「やぁ、ベティ、嘉紀だけど覚えている? 日本へ帰る途中だけど、ニューヨークで、一時休憩してる。元気にしてるか?」
「私もニューヨーク。一度会いたいなぁ、何時に帰るの?」
「飛行機は四時間後かな? 一本満席だったのでね。」
「飛行場の近くなら会えるわね? 何処かお店で会おうよ。」
「じゃ、飛行場の側にしようか? サタデーと言う店に居るから。」
一時間後に行くと言って、ベティは電話を切った。
「一時間後に、ベティが来るって。」
「えっ、教務省長官の娘さん?」
「そうだよ。10ヶ月振りか? 大分変わってるかな?」
儚達三人は、少し時間を潰した後、約束のサタデーに入った。お茶を飲みながら、話をして居ると。ベティが入って来た。長官も一緒にいる。
「長官も一緒でしたか? ご無沙汰しています。」
「今回は、何処へ行っていたのかな? 三人揃って。」
「ブラジルに、チョット用事が有りまして。」
「相変わらず忙しそうだな? 君達はハイスクールの二年で、良く動けるな?」
「お兄さん達、今度は、ブラジルに行ってたの? 本当に元気だね?」
「お陰様で。ベティも元気そうだね?」
「今度、お祖父ちゃんが、日本に行くかも知れない。その時は一緒に行くから。」
「その時は電話してみて。日本に居たら、会えるかも知れない。」
一時間程話しをして、ベティと長官は帰っていった。今度のブラジル行きは、三日半程で済んだ。仕事自体は短いのだが、往復の時間が長くなってしまうのだ。
O-3 YAグループの実情
「民間の雑務会社が潰れた。SSSの下請けに、ちょっかいを掛けていた様だ。」
「大きな声では言えないが、YAに絡んだと言う事らしい。」
「あそこは、表に出るのは高校生だが、裏組織が有るとも聞く。」
「SSSの何処かから、YAの依頼情報が漏れて居たらしい。」
芙蓉儚は、一見すると儚げながら、中々行動的な性格である。幼少期から、柔刀術の道場に通っている。その道場には、同級生の神園仁美も通っている。
性格は真面目で、勉強も真面目にやる。中学生の頃から、山臥嘉紀との行動が多い。
嘉紀とは、お茶も飲むし、海水浴にも行く。
山臥嘉紀は、押し付けがましく無く、軽くも無く、儚としても付き合いやすい。
儚は、軽い奴は嫌いである。二言目には、口説いて来るのは、見るのも鬱陶しい。
高校になって、嘉紀の仕事を手伝う様になった。仕事は秘密である。
「仁美、今日は道場に行く?」
「行くわよ。山臥さんを手伝うには、体力が必須だしね?」
「それは、そうだね? 私も行くわ。」
道場とは、柔刀術の道場の事を指す。この道場には儚の方が長い。
「山臥さんは、古武術だったよね?」
仁美が儚に聞く。山臥嘉紀は、儚の方が付き合いが長い。
「そう、古武術。天勝流だったかな?」
「本当の武術だから、何でも有りの世界だよね? 反則技も多いし。」
「翔天とか言う、奥義が有っだりするよ。」
儚は、ぼやかして居るが、嘉紀と一緒の時は、奥義を使う。
「山臥さん、アルバイトにも行ってたよね?」
「今は毎日詰めてる。仕事で休んだ分を、補完してるのよ。」
「プログラムの勉強を兼ねてるって言ってたけど、良くやるわ。」
儚も勉強に忙しい。仕事の無い時は、真面目に勉強を励む。
急な仕事で、いつ呼び出しが掛かるか分からない。この仕事は、人命に係わる事件が多い為、聞いた限りは、断りにくい。
アフリカなんかで仕事が有れば、片道だけで20時間以上も掛かる。
山臥嘉紀は、変な能力が有る為に、在るシークレットサービスを通じて、仕事の依頼が来る。儚も仁美も、その仕事に協力をする。ただ、妙な能力の事は秘密である。
そのグループに頼めば、不可能そうな事件でも、何故か解決する。
「最近は、結構仕事をしてるよね?」
「これでも、山臥さんが抑えているらしい。」
「刺激は有るけどね? スーパーアイドルの気分になれるわ。」
「本来は、命掛けの仕事だよ。だから、私達に廻って来るんだけどね?」
「このまま、正月を越してくれれば、良いんだけど?」
今回は、無事正月も過ぎ、お宮さん詣りも済んだ。
O-4 スキー民宿
「山臥さん、今年はスキーがまだだよ。年に一度ぐらいは、スキーに行こうよ。」
儚の提案であるが、嘉紀も、それは考えていた。たまには遊びたい年頃だ。
今年は、今からスキーの計画をする。急な計画なので多分民宿になる。
「夢とカコ達も誘おうか?」
「まだ、身体が空いてればね? あの子達も年頃だから、どうだかね?」
「儚、都合を聞いて置いて。来週の土曜と日曜ぐらいだな?」
その計画で宿を探したが、やはり民宿しか空いていなかった。
その夜、儚は夢とカコに電話をした。来週は空いていると言う。
「山臥さん、夢もカコも空いてるって。」
「じゃ、詳しい話をして置いて。費用は心配しなくても良いからって。」
「分かった。時間と宿泊先の説明をして置く。」
そのスキーの日が来た。いつもの街の駅に、皆んな集まった。
「おはよう。皆集まってるか?」
「山臥さんが一番最後だよ。皆んな揃ってるよ。」
「じゃ、ホームに上がろうか?」
「荷物は忘れないようにね?」
ホームに上がり、しばらくして電車が着いた。
「ここからだと、どのくらい乗るんですか?」
カコが尋ねている。
「一時間半ぐらいだね。それからバスに乗り継ぐ。」
儚が答えている。
二時間近く掛かって、やっと民宿に着いた。
「昼ご飯はどうする? ここで食べて行くか、ゲレンデの下の食堂にするか?」
「ここで食べようよ。ここなら、装備をする前に食べられる。」
「じゃ、部屋に荷物を置いて、貴重品は、宿に預けるか身に着けるかにして。」
半時間後に、食堂に集まる事にして、部屋に荷物を置きに行く。
「山臥さんは、大人しいですね? 仕事の時と、印象が違う様な?」
「この人は、普段は猫を被っているからね? まるで人が違うよ。」
「口は、実力と比例しないんですね?」
「まあ、山臥さんを、基準には出来ないけどね?」
「僕の悪口は、このぐらいにして、スキーの話をしよう。」
食事の後、それぞれスキーやスノーボードを借りて、ゲレンデに出ていった。
夕方の五時には、皆んな宿に帰って来る。
「六時から食事にするから、それまでに、お風呂を済まして置いてね?」
儚が皆を取りまとめている。
六時に、皆んなは女子部屋に集まった。既に夕飯の準備は出来ている。
晩御飯のひと時は、久し振りに話が盛り上がった。
次の日は朝から滑り、午後の中頃に宿を出る。
「皆集まったか? バスに乗るよ。」
バスを降り、電車に乗ってからは、皆疲れて、居眠りをしている。
「久し振りに楽しかったね、今度は海水浴だね?」
「多分ね、しかし、そろそろ仕事が来る予感がする。」
O-5 儚の景色
「山臥さん、この前の放送を見たわよ。かなり屁理屈言ってたわね?」
儚が、感想を述べている。
「屁理屈では無い。ちゃんとした理屈だ。」
嘉紀も、反論を試みる。
これは、皆んなには隠しているが、某放送局での座談会の事だ。変装をして出演したのだが、バレると拙いので、儚と仁美にしか言わなかった。
嘉紀との間が縮まったお陰で、儚の景色が変わった。
嘉紀は、一見真面目だが、相当な変人である。妙な能力も有る。
お陰で、自然に色が鮮やかになる。感性も豊かになった。
嘉紀が受注する、秘密の仕事を手伝う事で、全地球が、儚の世界になった。
行動の世界が極端に拡がった。この地球全体が、儚の景色だ。
O-1 儚や嘉紀の能力
O-2 ブラジル事件 人質事件
O-3 YAグループの実情 YAがM社を潰す
O-4 スキー民宿 夢とカコも参加
O-5 儚の景色
O-1 儚や嘉紀の能力
芙蓉儚は、名の如く儚げな女子高生で有る。ただそれは、あくまで見た目で有って、本当の姿は、普通の武道では、計れない力が有った。儚には妙な能力も有る。怪しげな友達も居る。山臥嘉紀も見た目は優しい。普段は、読書姿しか目にしていない。
しかし、このグルーブで、一番怪しい動きをする。
「山臥さん、そんなに本を読んでて、良く勉強が出来るね?」
「小説が好きだからね? 小説がないと、落ち着かないんだよ。」
嘉紀は、こんな風に言っているが、科学的な本も、結構、読んでいる。
山臥嘉紀は、秘密の組織から仕事を受ける。それを、儚や仁美が助ける。
仁美は、儚の小学時代からの友達である。仁美は、儚から有る力が伝染った。
その能力のお陰で、芙蓉儚や山臥嘉紀の仕事を手伝っている。
「少し落ち着いたわね?」
「事件が無いと、平和でいいんだけどね?」
「世間の常識から見れば、相当ヤバい仕事だよね?」
「絶対、普通の人には言えないんだけどね。」
「山臥さんは、基本的に、悪い事が出来ない性格だから、安心だけどね?」
儚も、その能力の元は山臥嘉紀である。嘉紀は父親から伝染った。
山臥嘉紀が仕事を受けるのは、当面、こちらの正当性が条件である。
「我々が受ける仕事の条件は、かなり厳しい。一方的な都合だけでは受けない。」
彼等の自己保護能力は強大だ。鉄砲でも死なない。しかし、依頼対象は、死の危険が有る。これ等を生存したまま、救助するのが主な目的になる。
「あまり有名になると困るわよね?」
「そう。対策を立てられると、やりにくくなるからね?」
この能力の持ち主は、人間を殺す事が出来ない。自動的に衝撃が緩和されてしまう。
だから、多人数の作戦には参加出来ない。数が多いと面倒が見切れないのだ。
儚は、嘉紀が受ける事案が有れば、それを助ける。仁美も同様だ。
「僕一人の頃は、年に五回程だった。今は、三人で動けるので、大分増えた。」
「山臥さん一人って、中学の頃でしょうが?」
「僕も、その頃には伝染ってたから。」
嘉紀の親は、もっと現場に居た。その頃は、今より複雑な世界であった。
O-2 ブラジル事件
ある日、例の組織から連絡が有った。今度はブラジルで事件だ。
嘉紀達の能力の関係上、どうしても、人質事件が主体になる。
「山臥さん、又、人質だって。」
「人質事件は、再々やられると困るよな?」
その国では、政府と抵抗組織二派との、三者で調停が始まろうとしていた。
その抵抗組織二派は、元々仲が悪く、調停に反対する派閥も有った。その調停反対派が、もう一方と小競り合いの末、人質を取る事態に陥った。
調停を仲立ちしていた、国際機関としては非常に具合が悪い。そこで傘下のある組織に、人質の開放を依頼した。
「もっと考えて行動して欲しいよ。」
「人質は、命が掛かっているだけに困るよね? 放っては置けないし。」
儚は、依頼を受けたのは良いのだが、専用機は予定が詰まって居り、今度の事件には間に合わなかった。
「明日の午前には出発したいんだけど。二人共動けるか?」
嘉紀が、儚と仁美に問う。
「行けるけど、何日間の予定なの?」
「 一般便を使うのなら、時間がかかるわね?」
「四日見た方が無難だね? 睡眠は飛行機の中になるわね?」
直接の航空便は無かったので、ブラジルへは、ニューヨーク経由で行く。
結局、丸一日掛かって現地に着いた。現地事務所は、密林の中に有る。
「ここからだと、現場まで、どのくらいの距離ですか?」
「3キロぐらいですが、車で、1キロまで近付けます。近く迄送ります。」
その後、密林を隠れながら歩けば、300米ぐらい迄は、近づけると言う。
暗視ゴーグルを着けて、夜に動くしか無さそうだった。三人は、情報を書いた、現地語のパネルを用意した。それを見せて、人質達に、信用させなければならない。
「そろそろ時間だね? 行くよ。」
密林の中は、隠れやすいのだが、木の無い広場では、丸見えである。近付きさえ出来れば、難しくない話だが、近付く事自体が難しいのだ。小屋が、所々に有るので、その陰を、進んで行く。たまには、現地人の振りも、しなければならない。
「警護のやり方から推測するなら、あの小屋だけど、見通しが良すぎるね?」
「そうだよね? 見廻りの間隔がもう少し長いと、助かるんだけどね?」
「自然らしく歩きながら、近くまで行き、見廻りが角を過ぎたら即実行だ。」
少し経って、見廻りが行き過ぎた。三人は、その小屋の床下に潜り込む。
「儚、幽視して。どの部屋に居る?」
「三部屋ほど、右の部屋にいる。左隣りには、人が居ない。」
三人は、床下を、そこまで這って行く。
「今度の見廻りが、通り過ぎたら床を抜くよ。」
儚は、部屋の中を幽視して、再度確認する。
「見張りは居ない。今の内だよ。」
部屋に上がり、足音を消して人質に近づく。人質に暗視装置を着けさせ、メモを見せる。人質も頷いた。床下の基礎壁を抜き外に出る。建物の陰を伝い密林に向う。
後100米程の所で、見張りに見つかった。相手は小銃を撃ってくる。嘉紀が保護幕を展開する。その中で儚と仁美が、捕虜になって居た人を掴んで居る。
怯えて外に逃げられると、弾に当たる。下手をすれば死に至る
「この幕の中に居れば、命は保証します。」
周囲を囲まれたが突き進む。嘉紀が中央に居れば、幕の中には銃弾は届かない。
ナイフをかざして、突っ込んで来る奴も居るが、保護範囲では刃は刺さらない。
「貴方達は、何故撃たれない? 何かの魔法か?」
「この黒い保護幕の機能だ。とにかく走れ。」
儚と仁美、そして嘉紀は、そのまま力押しで、密林に走り込んだ。
密林を幾らか進むと、周囲は真っ暗闇だ。その闇に紛れて、遠回りしながら、組織の陣営に走り込んだ。
「お疲れ様でした。」
「申し訳無いのですが、町まで、ジープで送ってくれますか?」
「そこ迄なら大丈夫です。直ぐ行きますか?」
「お願いします。人質の方が、色々尋ねると思いますが、適当にお願いします。」
町で食事を取り、乗り物を乗り継ぎ、やっとニューヨークに辿り着いた。
嘉紀は、久し振りに、ベティに連絡を入れた。
「やぁ、ベティ、嘉紀だけど覚えている? 日本へ帰る途中だけど、ニューヨークで、一時休憩してる。元気にしてるか?」
「私もニューヨーク。一度会いたいなぁ、何時に帰るの?」
「飛行機は四時間後かな? 一本満席だったのでね。」
「飛行場の近くなら会えるわね? 何処かお店で会おうよ。」
「じゃ、飛行場の側にしようか? サタデーと言う店に居るから。」
一時間後に行くと言って、ベティは電話を切った。
「一時間後に、ベティが来るって。」
「えっ、教務省長官の娘さん?」
「そうだよ。10ヶ月振りか? 大分変わってるかな?」
儚達三人は、少し時間を潰した後、約束のサタデーに入った。お茶を飲みながら、話をして居ると。ベティが入って来た。長官も一緒にいる。
「長官も一緒でしたか? ご無沙汰しています。」
「今回は、何処へ行っていたのかな? 三人揃って。」
「ブラジルに、チョット用事が有りまして。」
「相変わらず忙しそうだな? 君達はハイスクールの二年で、良く動けるな?」
「お兄さん達、今度は、ブラジルに行ってたの? 本当に元気だね?」
「お陰様で。ベティも元気そうだね?」
「今度、お祖父ちゃんが、日本に行くかも知れない。その時は一緒に行くから。」
「その時は電話してみて。日本に居たら、会えるかも知れない。」
一時間程話しをして、ベティと長官は帰っていった。今度のブラジル行きは、三日半程で済んだ。仕事自体は短いのだが、往復の時間が長くなってしまうのだ。
O-3 YAグループの実情
「民間の雑務会社が潰れた。SSSの下請けに、ちょっかいを掛けていた様だ。」
「大きな声では言えないが、YAに絡んだと言う事らしい。」
「あそこは、表に出るのは高校生だが、裏組織が有るとも聞く。」
「SSSの何処かから、YAの依頼情報が漏れて居たらしい。」
芙蓉儚は、一見すると儚げながら、中々行動的な性格である。幼少期から、柔刀術の道場に通っている。その道場には、同級生の神園仁美も通っている。
性格は真面目で、勉強も真面目にやる。中学生の頃から、山臥嘉紀との行動が多い。
嘉紀とは、お茶も飲むし、海水浴にも行く。
山臥嘉紀は、押し付けがましく無く、軽くも無く、儚としても付き合いやすい。
儚は、軽い奴は嫌いである。二言目には、口説いて来るのは、見るのも鬱陶しい。
高校になって、嘉紀の仕事を手伝う様になった。仕事は秘密である。
「仁美、今日は道場に行く?」
「行くわよ。山臥さんを手伝うには、体力が必須だしね?」
「それは、そうだね? 私も行くわ。」
道場とは、柔刀術の道場の事を指す。この道場には儚の方が長い。
「山臥さんは、古武術だったよね?」
仁美が儚に聞く。山臥嘉紀は、儚の方が付き合いが長い。
「そう、古武術。天勝流だったかな?」
「本当の武術だから、何でも有りの世界だよね? 反則技も多いし。」
「翔天とか言う、奥義が有っだりするよ。」
儚は、ぼやかして居るが、嘉紀と一緒の時は、奥義を使う。
「山臥さん、アルバイトにも行ってたよね?」
「今は毎日詰めてる。仕事で休んだ分を、補完してるのよ。」
「プログラムの勉強を兼ねてるって言ってたけど、良くやるわ。」
儚も勉強に忙しい。仕事の無い時は、真面目に勉強を励む。
急な仕事で、いつ呼び出しが掛かるか分からない。この仕事は、人命に係わる事件が多い為、聞いた限りは、断りにくい。
アフリカなんかで仕事が有れば、片道だけで20時間以上も掛かる。
山臥嘉紀は、変な能力が有る為に、在るシークレットサービスを通じて、仕事の依頼が来る。儚も仁美も、その仕事に協力をする。ただ、妙な能力の事は秘密である。
そのグループに頼めば、不可能そうな事件でも、何故か解決する。
「最近は、結構仕事をしてるよね?」
「これでも、山臥さんが抑えているらしい。」
「刺激は有るけどね? スーパーアイドルの気分になれるわ。」
「本来は、命掛けの仕事だよ。だから、私達に廻って来るんだけどね?」
「このまま、正月を越してくれれば、良いんだけど?」
今回は、無事正月も過ぎ、お宮さん詣りも済んだ。
O-4 スキー民宿
「山臥さん、今年はスキーがまだだよ。年に一度ぐらいは、スキーに行こうよ。」
儚の提案であるが、嘉紀も、それは考えていた。たまには遊びたい年頃だ。
今年は、今からスキーの計画をする。急な計画なので多分民宿になる。
「夢とカコ達も誘おうか?」
「まだ、身体が空いてればね? あの子達も年頃だから、どうだかね?」
「儚、都合を聞いて置いて。来週の土曜と日曜ぐらいだな?」
その計画で宿を探したが、やはり民宿しか空いていなかった。
その夜、儚は夢とカコに電話をした。来週は空いていると言う。
「山臥さん、夢もカコも空いてるって。」
「じゃ、詳しい話をして置いて。費用は心配しなくても良いからって。」
「分かった。時間と宿泊先の説明をして置く。」
そのスキーの日が来た。いつもの街の駅に、皆んな集まった。
「おはよう。皆集まってるか?」
「山臥さんが一番最後だよ。皆んな揃ってるよ。」
「じゃ、ホームに上がろうか?」
「荷物は忘れないようにね?」
ホームに上がり、しばらくして電車が着いた。
「ここからだと、どのくらい乗るんですか?」
カコが尋ねている。
「一時間半ぐらいだね。それからバスに乗り継ぐ。」
儚が答えている。
二時間近く掛かって、やっと民宿に着いた。
「昼ご飯はどうする? ここで食べて行くか、ゲレンデの下の食堂にするか?」
「ここで食べようよ。ここなら、装備をする前に食べられる。」
「じゃ、部屋に荷物を置いて、貴重品は、宿に預けるか身に着けるかにして。」
半時間後に、食堂に集まる事にして、部屋に荷物を置きに行く。
「山臥さんは、大人しいですね? 仕事の時と、印象が違う様な?」
「この人は、普段は猫を被っているからね? まるで人が違うよ。」
「口は、実力と比例しないんですね?」
「まあ、山臥さんを、基準には出来ないけどね?」
「僕の悪口は、このぐらいにして、スキーの話をしよう。」
食事の後、それぞれスキーやスノーボードを借りて、ゲレンデに出ていった。
夕方の五時には、皆んな宿に帰って来る。
「六時から食事にするから、それまでに、お風呂を済まして置いてね?」
儚が皆を取りまとめている。
六時に、皆んなは女子部屋に集まった。既に夕飯の準備は出来ている。
晩御飯のひと時は、久し振りに話が盛り上がった。
次の日は朝から滑り、午後の中頃に宿を出る。
「皆集まったか? バスに乗るよ。」
バスを降り、電車に乗ってからは、皆疲れて、居眠りをしている。
「久し振りに楽しかったね、今度は海水浴だね?」
「多分ね、しかし、そろそろ仕事が来る予感がする。」
O-5 儚の景色
「山臥さん、この前の放送を見たわよ。かなり屁理屈言ってたわね?」
儚が、感想を述べている。
「屁理屈では無い。ちゃんとした理屈だ。」
嘉紀も、反論を試みる。
これは、皆んなには隠しているが、某放送局での座談会の事だ。変装をして出演したのだが、バレると拙いので、儚と仁美にしか言わなかった。
嘉紀との間が縮まったお陰で、儚の景色が変わった。
嘉紀は、一見真面目だが、相当な変人である。妙な能力も有る。
お陰で、自然に色が鮮やかになる。感性も豊かになった。
嘉紀が受注する、秘密の仕事を手伝う事で、全地球が、儚の世界になった。
行動の世界が極端に拡がった。この地球全体が、儚の景色だ。
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