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2R ドローン

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 R-1  変な外人 戦闘で次々強い奴が来る
 R-2  皆んなで海水浴 五人全部で海水浴  男に絡まれる
 R-3  ドローン 産油国王子誘拐救出
 R-4  力の限界 少人数の救出のみ
 R-5  生徒会と喧嘩 喧嘩


 R-1  変な外人

「山香君だな?  ちょっと顔を貸して貰いたい。」
「その名前は、何処で聞いたんだい?」
儚と嘉紀が、高校から帰る途中、変な外人に呼び止められた。そして、人通りの無い裏路地に案内された。その時、突然廻し蹴りが襲う。それを、儚の腕が止める。
「一体、何なのよ。突然蹴るなんて。」
「それを止めるか?  それなりの力は有る様だ。よし、そこのお前、行け!」
そいつは、後に居た、大柄の白人に命令した。
「きえっー。」
その白人は蹴りを放つ。中々速い。それも、儚が腕で払う。次はジャブが来る。
儚の顎に当たったと見えたが、儚の手がはねている。実際は、当たっていても、儚に衝撃は無い。その瞬間に、手ではねれば、儚が払った様にも見える。その次は飛び蹴りが来た。儚の腕が払う。渾身の回し蹴りが襲う。儚は、その脚を蹴り上げた。その男は半回転して、背から落ちた。
「何なんだ、お前達は?  何故ジョアンに勝てる?  プロの州チャンプだぞ。」
「あのね?  我々もプロだよ。これで飯を食ってる身だよ。分かるかな?」
儚が、そいつ等に説明している。
「お前達は、まだハイスクールだろうが?」
「人殺しは、ハイスクールでも、手加減してくれないんだよ。」
「なる程一理は有る。我々の方が甘いのか?  又出直す。」
そう言いながら、男達は、路地の奥に消えた。
「なんか、面倒くさいね?  相手をしていたら、切りがないね?」
「倒せない奴が居ると、落ち着かないんだろうな?  プロの自尊心だな?」


 R-2  全員で海水浴

「山臥さん、皆んなで海へ行こうよ。」
「いいよ、日を決めて置いて。」
儚は、皆に連絡して実行日を決めた。夢とカコには仁美が伝えた。
実行日は、七月の終り頃になる。夏休みになって数日経った頃だ。
海水浴場は、電車で一時間、バスで二十分程の所になった。今回は五人で一泊する。
「この海岸は初めてだね?」
「そう、この後バスに乗る。」
電車が着き、バスに乗り換える。バスは二十分程で旅館に着いた。
「着いたー。久々の海だ。まだ食事には早いわね、ひと泳ぎしようか?」
「部屋に荷物を置いて、着替えて来るわ。」
「お待たせ、海岸に出よう。みんな揃った?」
五人は幾らか泳いで、海の家に上がった。
「おばさん、ミルクティー二つ、レモンティー二つ、珈琲一つをお願いします。」
儚が、皆んなの飲み物を纏めている。
「やっぱり、日本の方がノンビリするな?」
「そうだよね?  やっぱり日本人だね?」
お茶の後も、しばらく泳いで居たが、昼御飯の時間になった。
「そろそろ、昼御飯にしようか?  弁当を取って来るわ。」
儚はそう言って、立ち上がる。
「私も手伝います。」
夢とカコが、一緒に立ち上がった。女性達四人が、弁当を持ってくる。
「ゴザをひくから、場所を明けて。」
仁美が、皆んなに言っている。
「今年は、豪華な弁当になったね?  四人で作れば、流石だな?」
「美味しそうだね。頂きます。」
儚が、音道を取る。
「ヤッパリ山臥さんは、温厚なお兄さんだよね?  どう見ても。」
「山臥さんは、普段はネコ被っているからね?」
夢と儚が、嘉紀について、感想を述べている。
「人の事を、好き勝手言うんじゃ無いよ。」
「済みません、つい本音が出て。」
楽しい昼御飯も終わった。
「山臥さん、凄い筋肉質だよね?  日頃とは別人の様だわ。」
「山臥さんは、あの能力が無くても、一筋縄ではいかないわよ。」
「それでも、大人しやかですよね?」
昼御飯が終わって、皆泳ぎに行く。嘉紀は一番後から水際に行った。
そこで又問題が起きた。儚達四人に、数人の男達が声をかけて来た。
「君達、俺達と一緒に泳ごうよ。」
「遠慮して置きます。まだ仲間も居るし。」
「いいじゃないか、一緒に遊ぼうよ。」
そう言いながら、カコ達に抱きつく男が居た。カコは当然避ける。
「逃げるな!」
嘉紀は、それを動画に撮っている。
「カコ、構わないわよ。」
嘉紀の方を見ながら、儚がカコに許可を出した。
「あ、なるほど。それでは遠慮なく。」
そう言ったカコは、まだ絡んでくる男の腕を掴み、体を腰に乗せ跳ね上がる。
男は、見事に投げ飛ばされた。
「見事見事。カコ、やれば出来るわね?」
「何をしやがる?  優しくしてやれば、舐めやがって。」
怒った男は、カコに掴み掛かる。今度は背負い投げで放られる。
別の男が夢に殴り掛かった。夢はその腕を取り、逆手に捻りながら足を払った。
その男も見事に転ぶ。
「くそ、怒ったぞ。本気で行くぞ。」
「あんたは、私が相手をするわ。」
儚は、そう宣言をして、その男を放る。
「私も混ぜてね?」
仁美も、参加を宣言する。
「舐めるな?」
その仁美に別の男が絡んだ。その男は、仁美の腕をとり、投げに掛かった。
仁美は、そのまま前に進み、大外刈り風に足を刈る。その男も背から地に落ちた。
一瞬に四人を倒され、男達は怯んだ。
「警察が来る。この場は退くぞ。」
リーダーの声で奴等は消えた。
「終わったね。夢もカコもご苦労さん。いい練習になったね?」
「働いて無いのは、山臥さんだけだよ。たまには働きなさいよ。」
「いや、良い動画が取れた。後で見てみよう。」
「私達にも、見せてよね?」
「そうだな、食事の時にでも見ようか?」
皆んな、服を着替えて宿に帰った。風呂に入って潮を落とし、その後夕食を取る。
その食事の時、嘉紀は皆んなに動画を見せている。
「良く撮れて居るわね?  面白いわ。」
「まあ見てくれ。一部分だけだが、夢が殴られているだろう。」
「一度有ったね。あの時、夢は何も感じてなかったね?」
「本当なら体が揺らぐ筈。それが、びくともしていない。これが能力の基本だ。」
「そうだね、殴られても衝撃を感じていないね?」
「それが、一番分かり易いところかな?」
「そう、我々の力は、保存本能しか発動しない代り、保護の力は強力だ。」
嘉紀は、皆に説明をした。この能力は、種族保存本能が基礎になっている事を。
ついでに他保護と自保護の違いについても説明する。
他保護モードは他人を護る力だが、最大半径六米。初めの頃は接触保護、そして、最大半径六米。これは経験に依って伸びる。このモードでは、攻撃力は一切無い。
しかし、自分の意志で切断出来る。
自保護モードは、自分自身を護る能力だが、自分では切れない。
このモードでは、攻撃力は大分有るが、人の命を取れる程には無い。
他保護自保護とも、人は殺せない代わり、自己保護力は強力だ。銃でも死なない。

この、他人も自分も死なせないのが、種族保存本能の基本になる。
「自分は、絶対死なないけど、六米以上の他人は護れないよね?  矛盾しない?」
「仕方が無いよ。自分自身は能力で護れるけど、遠い人には能力が届かない。」
「なる程、自分は近いから届くけど、遠い人迄は、能力が届かないのか?」
その考え方にも疑問は残るが、誰も説明出来ないので、やむを得ず納得する。


 R-3  ドローンで救出

次の日、儚に、組織から連絡が有った。
「山臥さん、依頼が来た。中東の産油国で、その国の王子が誘拐された。」
儚が嘉紀に、詳細を伝える。
「人質の位置は、分かっているのか?」
嘉紀が儚に尋ねる。
「それは、特定されているけど、少し厄介な場所だよ。ビルの三階らしい。」
「そこまで行くのが大変だね?  勝算は有るかな?」
仁美も尋ねて居る。
「有るには有る。ドローンを用いる事にしよう。」
嘉紀は皆に作戦を説明した。最近開発されたドローンを用いる。
形がドローンの様なので、ここではドローンと呼んでいる。
しかし、働きは、空飛ぶ自家用車だ。他保護モードの、半径六メートルに達した者が中央に乗れば、機体全体が保護範囲に入る。中央に乗らないと、機体全体が保護範囲に入らない為、能力者が操縦をする。
幽閉されている三階迄は、ドローンで移動する。それには、三人しか乗れない。二人は歩かなければならない。
「平面図は有るの?  私は歩きでしょう?」
「いや、行きは儚もドローンに乗る。帰りは歩きだけど。」
「いつ出発?」
「明日には出たい。人質は殺され無いとしても、ぐずぐずもして居れない。」
「仁美も行ける?」
「明日からなら行けるよ。」
「今回は、夢とカコも連れて行きたい。儚、連絡を頼む。」
次の日、儚、仁美、夢、カコ、嘉紀の五人は、組織の飛行機の中に居た。
「どのくらいで着くのかな?」
「夕方には着く。夜から動く事になる。今回は少々忙しい。」
「それは、毎度の事だけどね。」
「今回は難しいので、仁美と夢は、建物の入り口で陽動だ。」
「一階からの侵入と思わせるのね?」
「そう、ただ無理をする必要は無い。適当に遊んで居て。」
現地に着いた五人は、軽い食事を取り、直ぐ動く事になった。
近くの広場に、ドローンが着いている。儚とカコと嘉紀の三人が、乗り込んだ。
「帰りも、僕がドローンに乗る。カコはドローンに乗って、王子を見張って居て。」
権力に慣れた者は、見張って居ないと、どんな動きをするか分からない。
「結局、私達は歩きか?」
「儚たち三人は、先の広場迄、歩いて貰わなければならない。」
「敵の中を歩くのは、少々疲れるわね?」
「護る人が居ないから、少しは楽だよ。」
「さあ、行くよ。」
ドローンは直ぐに三階に着いた。今日は、ドローンの音は遮断している。二人を降ろして、一時そこを離れる。
さすがに、三階には警護が少ない。しかし、人質の王子は建物の中央付近に居る。
そこまで、歩かねばならないが、建物の中には、警護員が何人か居る。

同じ服は用意されて居るが、体格も顔の色も違う。普通に歩いても目立ってしまう。遠目には、誤魔化せそうなので、警護が少ない時を狙って一気に動く。
警護が、何人も走って来たが、儚が阻止をして、カコが横側の壁に穴を抜く。
穴は、力押しで破った様に細工はしている。今は五人全部に、そんな能力が付いた。

「居た。」
王子は部屋の中央に居た。拘束はされて居ないが、周囲から銃を向けられて居る。
「あの三人が邪魔だね?」
儚とカコが部屋に突入し、カコが王子の包囲網に飛び込む。これで王子は、カコの他保護範囲に入った。儚は他保護を切り、見張りの三人を殴り倒す。
「ぐぇっ。」
儚は、携帯電話の翻訳機能で、王子に内容を伝え、部屋から廊下に連れ出した。
儚は、直ぐに保護膜を張る。王子を、その保護膜の中に入れ、三人は三階の屋上に出た。直ぐにドローンが下りて来る。
「乗って下さい。」
王子を乗せてドローンは飛び立った。警護達が銃を撃っているが、ドローンは嘉紀の保護圏内に有る。儚は、保護膜を張ったまま、銃弾の中を一階まで降りた。警護達は、広場まで追って来たのだが、儚は、市街地まで何とか逃れた。
儚の身体には、保護機能が付いて居り、弾は届かないのだが、保護膜で護られて居る様に見えている。
嘉紀は取り敢えず、王子を組織に渡し、広場迄ドローンで飛ぶ。
「このドローンには、まだ三人しか乗れないので、夢とカコを乗せる。」
新型のドローンは、四人乗りも有ったが、この古いタイプは三人しか乗れない。
「私達は、結局歩きか?」
「ここからなら、そんなに遠く無い。頑張って歩こう。」
「仕方が無いわね?」


 R-4  力の限界

この事件より少し前、皆の能力に変化が有った。他保護能力が、皆んなに感染った。
儚や仁美が持っていた能力が、皆んなに感応した。皆んな揃って、喧嘩や事件を経験した。皆で訓練もした。それらの努力が、効果をもたらせたので有ろう。
大学受験まで後半年、流石に受験勉強にも、力を入れたい処で有る。
「山臥さん、勉強は捗っている?」
「うーん、程々にやってるけどね?」
「例の依頼が来なければ、勉強も進むけど、突然依頼が来るからね?」

「我々で片付く問題なら、受けてやりたいのだけれど。」
「難しい判断だよね?  大ごとになると、手に負えないし。」
助け得る範囲にも限りがある。拡がり過ぎると、手の付けようが無いのだ。
「我々に手が出せるのは、個人的な案件だけだな?」
「結局そうなるわね。」
結局のところ、この程度が、彼女等の能力の限界で有る。この能力は、一人で沢山の人は護れない。仕事も仕事で有るが、今のところ、大学受験も大事である。

「今のところは、勉強の方を頑張ろう。大学も、近い所に行きたいからね?」
「そうだな、あの大学ぐらいは通って置きたいな?」
「山臥さん、アルバイトも、程々にして置きなさいよ。」
「アルバイトは終る。約束の一年になるからね。当面は受験が大事だ。」
嘉紀のアルバイトは、少し延長して、12月迄になった。
秘密の能力が付いた時、基礎能力が倍加した。これは、体力だけでは無く、脳の方に
も影響した。お陰で試験勉強も、かなり有利になる。


 R-5  生徒会

「正月は、お詣りに行けそうだね?」
「多分ね、スキーにも行けるんじゃ無い?」
正月のお詣りは行けたが、スキーは無理であった。流石に宿は取れなかった。
「久し振りだから、買い物でも行こうか?」
「そうだね、服も買いたいし。その後ご飯にしよう。山臥さん決めて置いて。」
「久し振りに、ノンビリした正月になりそうだね?」
その日は、買い物も済まし食事もした。三人は、本屋でも行こうかと歩いて居ると、声を掛けられた。学校の役員をしている男であった。
「おい、山臥じゃないか?  役員の話を断って置いて、えらいノンビリしているな?」
「あぁ、山脇さんか?  正月ぐらいは、気を抜かないとね。」
三人は、そのままスレ違おうとした。
「おい待て、先輩が話をしているのに、ちゃんと聞け。」
山脇の取り巻きの一人が噛み付いた。嘉紀と同級生だが、話をした事は無い。
「もう済んでるよ。話す事は無いよ。」
「山臥君。話を聞いてくれ。役員を手伝ってくれないか?」
「組の役員も、まともに出来てないのに、これ以上は無理ですよ。では。」
後で、まだ何か言っていたが、嘉紀は無視をした。
ところが、同級の男が嘉紀の肩を掴んだ。嘉紀は、反射的にその手を捻った。
その男は、痛みで膝をつく。
「痛っー。」
「いや、悪い。反射的に捻ってしまった。」
「このー。」
他の取り巻きが、殴り掛かる。嘉紀は、ひょいと避ける。
「山脇さんでしたか?  やめさせた方が良いと思いますよ。怪我をしますよ。」
儚が、山脇に助言をしている。しかし山脇は動かない。儚はそれを、面白そうに眺めている。仁美も同様だ。
「くそっー。」
又、別の奴が殴り掛かる。嘉紀はそれを、チョンとはねる。
「山臥さん、そろそろいいよ。監視カメラに映っているから、正当防衛だよ。」
これは流石に効いた。奴等は、慌てて逃げていった。
「なんだ終ってしまった。面白くなると思ったのに。」
野次馬の奴が言う。
「山臥さんは、喧嘩の元が多いね?」
「そんな積りは無いんだけど、なんか絡んでくる奴が居る。」
「なんとなく、目の上のたん瘤に写るんだよ、きっと。」
と、儚が感想を述べる。
「それは分かる。頭も良いしね?」
仁美まで、そんな風に言う。
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