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2W 地震で家埋没

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 W-1  二回目大学入試
 W-2  大学面接 前の大学をやめた理由等
 W-3  地震で閉込められる 埋もれた家に閉じ込められる
 W-4  岩塩洞窟崩落


 W-1  二回目大学入試

儚と嘉紀は、今日もお茶を飲んでいる。今日も仁美が一緒に居る。三人共、大学をやめているので、暇を持て余している。
「山臥さん、これから、どうするの?」
儚が嘉紀に尋ねている。
「違う大学を受け直す。一次試験の申し込み迄に時間は有る。何処がいいかな?」
「西の県にしたら?  良い大学が有るよ。」
「受験は難しいのか?」
嘉紀が尋ねる。
「前の大学よりは、易しいらしいよ。」
儚が答える。
「都会から離れるけど、そこにするか?  シャカリキになる必要は無いな?」
「三人の成績なら大丈夫だよ。私もそこにする。仁美はどうする?」
「ここまで来たら一蓮托生だよ。私もそこにする。学部は前と同じだね?」
仁美も言う。
「同じ学部が有る様だよ。私と山臥さんは理工。仁美は経営だね?」
もう少ししたら受験の申請だ。そして、年の初めに共通一次試験が有る。
去年の試験から、一年しか経って居ないし、勉強もしている。
組織からの仕事は、相変わらず来るが、夢達に助けられて、何とか、こなしている。


 W-2  大学面接

その大学は、二次試験も合格したが、三人共、特別面接を課せられた。
前の大学を、三人一緒に辞めて居るので、疑問を持たれている様だ。
その日が来た。三人は、受け付けに寄って、要件を告げた。
「少々お待ち下さい。聞いています。そこの喫茶室で30分程お待ち下さい。」
「分かりました。」
時間が過ぎ、放送で呼び出された。
「お待たせしました。わざわざ済みませんね?  大した事では無いんですが、なぜ辞められたのかを、一応、聞いて置こうと思いまして。」
それに、嘉紀が代表で答えている。
「はい。原因は交流会です。初めは、役を断って居たんですが、押し切られまして、一応引き受けたんですが、たまたま三度続いて、自宅に居ませんでした。」
「三度も続きましたか?」
「はい二回は外国で、一回は四国に行っていました。」
「外国へは良く行かれるんですか?」
「二ヶ月に一度は行っています。」
「勉強に、差し支えませんか?」
「うーん、それは言い難いんですが、どの程度で良しとするか、ですから。」
「それはそうですね?  一応調べましたが、前の学校では、山臥さんが、飛び抜けて居られた様です。それで二番と三番が、後の御二人でした。」
「山臥さんが、一番仕事をしてるのに、凄いね?  プログラムの本まで書いてるし。」
儚が嘉紀のプログラムに言及する。
「あれは、中学の時に大方出来てたよ。高校では何も書いていないよ。」
「ちょっと待って下さい。プログラムの本と言えば、アメリカの出版社で、山香ヨシオさんと言う方が、書いて居られますね?」
「済みません。あれは僕です。ただ、秘密にして欲しいんですが?」
「何故秘密に?」
「なまじ顔が知られると、何かと煩いので隠しています。その本の講習にも行きます。それらとぶっかると、休む事になります。他の仕事も有りますし。高校の時からやってるので、それ等は断われ無いんです。」
「大体の事情は分かりました。後の御二人は、やっぱり仕事ですか?」
「プログラムの講習は、山臥さんと一緒に行きます。講習の助手もしています。アメリカでのパーティ等も有りますし。」
儚が答えている。
「なるほど、大体分かりました。それで大学も、主席から三位迄独占とはね?」
「勉強をする時間は、有りますので。」
「 一応会議に掛けます。しばらく待って下さい。又、マイクで呼びます。」
「プログラムは、言う気が無かったのに、バラしてしまった。」
「ゴメン、つい口に出た。」
「聞けば聞く程忙しいよね?  学校の用事まで手が回らないよ。」
コーヒーを飲んで居ると、マイクで呼び出された。又面接室に行く。
「お待たせしました。学校の用事以外は、問題有りませんね?  学校の用事も、義務では無いので大丈夫です。出来るだけ入学式は出て下さい。あっ、それと、前と一緒で、山臥さんが一位です。後は、神園さんが二位で、芙蓉さんが三位で、全く前の学校と一緒です。ここでは、三人の成績が飛び抜けています。」
「分かりました。通って良かったです。来年又受験するのも、面倒ですし。」
三人は胸を撫で下ろした。一時はどうなるかと思った。
「今度は、初めから言ってるので、邪魔は入らないわね?」
「そうだね。正式に入学出来るね?」
「しかし、夢やカコと、同じ学年になってしまった。あの子達、大学はどこかな?」

「先輩、こんな所で、何をしているんですか?」
「えっ、夢とカコ、あなた達こそ何なのよ?」
「私達は、この大学に受かったんですよ。」
「うそっ、私達もこの大学で、特別面接をしてたのよ。」
儚が、夢たちの疑問に答える。
そう言えば、夢達の進路を聞いて居なかった。自分達の受験に忙しかったのだ。
まさか、前の大学を、やめる羽目になるとは、想像もして居なかった。
「特別面接って何ですか?。」
「前の大学は、学長と喧嘩をして、やめてしまったのよ。それで他の公立を探したのが、この大学だった。前の大学をやめた理由が、聞きたかったらしいね?」
「奇遇ですよね?  そんな事になっているなんて?」
「あははは、お恥ずかしい限りで。彩はどうしたの?」
「彩もこの大学ですよ。私達、先輩達と一緒で、成績が同じ程度なので。」
「又全部一緒になったか、因縁があるわね?  それと、もう先輩じゃ無いからね?」
「だって年上だし、経験だって、格段の差が有るしね?」


 W-3  地震で閉込められる

今日も、儚と嘉紀は、お茶を飲んでいる。
「やっぱり、彩に能力が感染った。この前見ていたけど、そんな風に見えた。」
「多分な?  眼の前で、喧嘩でもしてくれれば、分かり易いけどな?」
「喧嘩をしてくれとは言えないしね?」
「夢とカコにも、観察する様に言って置いて。」

数日後の土曜日、九州で地震が起こった。
「山近くの村で、土砂で10軒ほど埋まった。人が閉じ込められて居る。」
儚に連絡がつかなかった為、組織から嘉紀に電話が掛かった。
少し前に有った現場と、全く同じだった。日本は地震が多く、同じ様な案件が多い。
「分かりました。行ける人をかき集めます。ジャッキを十個程、集めて下さい。」
嘉紀は、直ぐ儚に電話を入れた。
「九州で家が埋まった。中に残された人もいる。急いで行きたい。皆に連絡をしてくれるか?」
「又地震か?  分かった。皆に電話をする。」
日本は、火山が多く、こんな被害が頻繁に起こる。
儚の話では、皆んな行けると言う。八時には皆んな、儚の家に集まった。
「来たよ。出られるか?」
「分かった、直ぐ出る。」
皆んな儚の家から、急いで出て来た。そのまま組織の車で、新幹線の駅に行く。
「彩も来てくれたのか?  有り難う。」
「山臥さん、20分で列車が来るよ。弁当を買って行こうよ。」
儚が提案している。
「そうだな?  皆んな、そこの売店で選んで。」
嘉紀も一個選んだ。
「電車は、もう直ぐ来るから、列に並ぶよ。」
幸い、下り電車には空きがあった。皆んな固まって座れた。
「今のうちに、弁当を食べて置こう。」
「山臥さん、どんな状況?」
「何人かが、家ごと埋まって居る。土砂を退けようとすると、かえって崩れて来る。うっかり重機を使うと、家を潰す。」
「後ろが山だから、無理は出来ないね?  昔の村は、山の際が多いからね?」
仁美が、状況を確認する。
「毎度、同じ様な状況か?  で、今度はどう誤魔化す?」
儚も、疑問を口にする。
「ジャッキを幾らか集めた。それで誤魔化す。」
「どう、誤魔化すのよ?」
「適当に噛まして、効いた振りをする。」
今回は、日中の仕事なので、完全に隠す訳には行かない。夜を待つ訳にも行かない。
それでジャッキ作戦にした。その辺りに、嘉紀達の一人がもぐり、家を支える。
「難しいが、何とか誤魔化して。シャッキの辺りには、一人が居て家を支える。」
「なる程そう言う作戦か?  二人で一組だね?  分かった、頑張る。」
「自分で目線をさえぎって、木材を消去する必要も生じるかも知れない。」
「そうか、柱で抑え付けられて居れば、そんな事も有りそうだね?」
「家を、持上げる訳にも行かない。その時点で家が崩れる。他の人が助からない。」
大体、考えられる限りは考えた。後は現場を見て判断する。
そろそろ着く時間だ。皆んな、荷物を片付けている。
「規模は小さいが、今迄で一番難しいかも知れない。皆んな頑張って。」
新幹線を降りて、タクシーで現場に走る。
現場を眺めると、あちこちで、家に土砂が被さっている。
人が大勢居るが、手を付けられない状態だ。
「被害者は何処に居ますか?  生きて居られますか?」
「この家に一人残っている。」
「儚とカコ、この家の担当。直ぐ取り掛かって。ジャッキは、これ。」
その現場に、ジャッキを三台残して置く。
「他の家に、人は残って居ませんか?」
「こっちの家にも居るが、君達は何だ?」
「疑問は後にお願いします。方法が有るのなら、我々は引きますが?」
「いや、それは、無いんだが?」
「仁美と夢と彩、ここの担当を頼む。」
「他に、家に人は残って居ませんか?」
そうする内に、儚が声を上げた。
「この人は助かったよ。怪我は有るけど。」
「了解、次を探して。」
今度は仁美が声を出した。
「こっちは二人だよ。骨折されてる。医療班急いで。」
「よし、次を探して。近くへ行けば気配を感じる筈。」
「了解。探して見る。あっ、ここの中に人が居る。」
こうして、皆んなが呆気に取られている間に、10人余りを助けた。そして、残って居ないか、順番に家を覗いて回った。
「生きている人は、助けた積りですが、残って居ませんか?」
「いや、そんなものだろう?  助かった。」
「次が有りますので、直ぐ出ます。怪我人は任せましたよ。」
儚たちと嘉紀は、有無を言わさず、そこを去った。そこに居れば、色々聞かれるのは目に見えている。仕事が済めば、早急にそこを去る。それにメディアは煩い。
「依頼は済んだ。皆んなが騒いで居る間に片付いた。ついてたな?」
「そうだね?  お前等はなんだ、とか言ってる人も居たけど、無視をした。」
「僕も言われたが、作戦が有るなら引くって言ったら、引っ込んだ。」
「儚と山臥さんは、強引だね?」
「愚図々々やってたら人が死ぬ。そんな事に、拘って居られないよ。」
仕事が早く済んだ事だし、後は温泉に行く予定だ。今回は、指宿まで足を伸ばした。
夢、カコ、彩は、久し振りの温泉で、思わぬ、お年玉になった。
次の日の新聞に、12人が助かったと書いて有ったが、詳しい情報は出ていない。
助けた人達が、居なくなったので、情報の取りようが無かったのだ。


 W-4  岩塩洞窟崩落

その半月後、組織から連絡が来た。東欧で、岩塩の洞窟が崩れ、人が取り残された。
「山臥さん、今度東欧だって。岩塩の洞窟が崩れた。」
儚が、組織からの依頼を説明する。
「東欧か、遠いな?  まあ、以前から、そう言うニュースが有ったけどな?」
岩塩を取り除くのは簡単だが、後から後から崩れてきて、あまり除き過ぎると、洞窟の大崩壊を起こす。やむを得ず、SSS に救援要請が有った。本来目的が違うのだが、実績が認められて、ここ最近、災害依頼が増えた。
「明日の朝から出られますか?  人質よりは、緊急性は小さいのですが、食料も水も切れるので、ゆっくりは出来ません。」
「分かりました、その様に手配します。何人要るでしょうか?」
「最低三人、出来れば五人用意した方が、無難でしょう。」
「分かりました。今から人を集めます。」
儚は、一斉メールを、皆んなに送った。
先ず最初に、仁美から返事が来た。いつでも行けると言う。夢から連絡が来た。
夢もカコも行けるという。夢からは、彩にも能力が有る様なので、連れて行きたいと言う要望が有った。
「山臥さん、夢が、彩を連れて行きたいと言うんだけど、どうかな?」
「能力が有りそうなので、連れて行こう。向こうでも確かめる。」
「分かった、結局、全部で六人だね?」

組織の専用機で行ったのだが、やっぱり、20時間は掛かった。
「直ぐに、現場へ行って見ましょう。この辺りは、いつ暗くなるんでしょうか?」
「我々に明かりは必要ない。それより人目が気になる。」
「岩塩の洞窟は危ないから、人を入れないように手配しよう。」
その洞窟は、岩塩を多く含み、地層は弱い。圧力の歪が出れば、壁が崩れる。洞窟の全面に、補強はして有るのだが、歪が大きくなると、それでも崩れる。
「彩は、夢かカコの側にいて。」
「儚、穴を空けて見て。一人で足りるか?」
「一人じゃ難しい、幽力でも、もう一人要るわね?」
「仁美、頼む。儚から、20米以上離れない様に気を付けて。」
「二人なら余裕が有るよ。」
嘉紀は、儚達の横を通って、洞窟の奥に入った。10人ぐらいの被害者が居た。
「これで全部か?」
  嘉紀は、スマホと称する、携帯端末のアプリで翻訳している。これで全部だそうだ。合計11人居たが、重傷者は居なかった。
「彩も手伝って。カコの後に付いて人を誘導する。暗視ゴーグルだけに限定だ。」
一般人に、洞窟の穴の状態は見せられない。全員を助け出して、仁美を後退させる。
次に、儚を後退させたら、穴は無くなる。
「ゆっくり、穴をすぼめて。そう。全員後退。何度かに別けて順番に後退だ。」
「よし、直ぐにここを出るよ。騒ぎになる前に撤退だ。」
「怪我人が居るぞ。」
翻訳アプリで声を掛けた後、全員消えた。彼等は、作業始めの連絡もせずに、人が見ていない間に仕事を済ませた。例によって、土砂の中に頑丈な鉄骨を混ぜて置く。
「助けてくれた人達は、何処に行った。」
「何処にも居なくなった。何処かに消えてしまった。」
ここに儚たちが居ると、どの様にして助けたのか?  穴の空け方は、どの様にしたのだ?  皆に説明をしてくれ等、煩い事になるのは必定だ。
「皆んな、どう解釈するだろうね?  壁は脆そうだったけど。」
「いつもの様に、鉄骨を残して置いた。鉄骨で穴の補強の振りをする。」
「実際に役に立つの?」
「いや、難しい。だけどそんな振りをするしか無い。」
「多分怪しまれているよ。他の人が手を付けられない案件を、高校生が解決しているんだから、何か他の手を考えないとね?」
「そこなんだよね? 真剣に考えて見よう。」
その後、組織の車で現場から外れ、近くの空港に向かった。そして、組織の手配をした航空券で、日本に帰って来た。日本を出てから帰るまで、結局三日間掛かった。
予想よりは早く済んだ。
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