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うらにわのこどもたち3 空中楼閣
世界の断片・6
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上手く呼吸ができない。初めに感じたのはそれだった。何かに首を締め上げられているような感覚。一体何が起こっているのかと必死で目を凝らす。
闇だ。闇。星の無い空よりも深い闇。あとは、赤。鮮血よりも赤い光。
自分の身体は仰向けのまま動かない。闇と光は交互に自分の視界を襲う。その度に恐ろしく思う自分と、安堵する自分と、悲しんでいる自分とで心が酷くかき乱される。抵抗しなければと思う自分と、これは自分の意思だと思う自分。それら全てを俯瞰する自分。思考も感情も何もかもばらばらだ。
指先が冷たい。血の気が引き痺れているのが分かる。腕が重い。だらりと垂れたまま力が入らない。次第に手足の感覚が消えてゆく。身体までばらばらになった感覚。死ぬ。死ぬ。死ぬ。このままでは。
無数のイメージが頭の中に沸きあがる。素足でクローバーを踏む感触。目の前で死んだ実験体の顔。初めて歌えるようになった歌。掴まれた腕。淋しげにくすんだ青い花。誰かが笑っている。大切な本の古ぼけた表紙。殴られた頬の痛み。頭を撫でる手の愛おしさ。ほとばしる鮮血。白衣の匂い。誰かの泣き声。祈りの言葉。耳鳴りがする。ブラウン管のテレビから聞こえるような砂嵐の音。
これは何?
この感覚を知っている。この映像を知っている。これは何の記憶?これは誰の自我?
ばらばらに、断片的に再生される、この情報は何?
こんな記録は知らない。
誰かが呼んでいる。自分の名前を。
ぽたり、ぽたりと、頬に首筋に、温かい光が落ちる。
あの時――それがいつの事だったのか思い出せないけれど――あの時と同じように、伝えたい言葉があるのだ。ああ、今腕が動いたら、この光の先に手を伸ばせるのに。首を締め上げる力がなければ、伝えることができるのに。
…………一体何を? 一体誰に?
「思い出すよ。きっと、もうすぐ」
誰かの声が聞こえた。自分を呼ぶ声とは別の声が。それが何処から発せられたものなのかは、遂に分からなかった。
闇だ。闇。星の無い空よりも深い闇。あとは、赤。鮮血よりも赤い光。
自分の身体は仰向けのまま動かない。闇と光は交互に自分の視界を襲う。その度に恐ろしく思う自分と、安堵する自分と、悲しんでいる自分とで心が酷くかき乱される。抵抗しなければと思う自分と、これは自分の意思だと思う自分。それら全てを俯瞰する自分。思考も感情も何もかもばらばらだ。
指先が冷たい。血の気が引き痺れているのが分かる。腕が重い。だらりと垂れたまま力が入らない。次第に手足の感覚が消えてゆく。身体までばらばらになった感覚。死ぬ。死ぬ。死ぬ。このままでは。
無数のイメージが頭の中に沸きあがる。素足でクローバーを踏む感触。目の前で死んだ実験体の顔。初めて歌えるようになった歌。掴まれた腕。淋しげにくすんだ青い花。誰かが笑っている。大切な本の古ぼけた表紙。殴られた頬の痛み。頭を撫でる手の愛おしさ。ほとばしる鮮血。白衣の匂い。誰かの泣き声。祈りの言葉。耳鳴りがする。ブラウン管のテレビから聞こえるような砂嵐の音。
これは何?
この感覚を知っている。この映像を知っている。これは何の記憶?これは誰の自我?
ばらばらに、断片的に再生される、この情報は何?
こんな記録は知らない。
誰かが呼んでいる。自分の名前を。
ぽたり、ぽたりと、頬に首筋に、温かい光が落ちる。
あの時――それがいつの事だったのか思い出せないけれど――あの時と同じように、伝えたい言葉があるのだ。ああ、今腕が動いたら、この光の先に手を伸ばせるのに。首を締め上げる力がなければ、伝えることができるのに。
…………一体何を? 一体誰に?
「思い出すよ。きっと、もうすぐ」
誰かの声が聞こえた。自分を呼ぶ声とは別の声が。それが何処から発せられたものなのかは、遂に分からなかった。
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