愛だけど恋じゃない

隆駆

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果たされなかったプロポーズ

怖い義弟(仮)

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「淳が僕に話があるって?」
「はぁ…」
洗濯物を置きに行ったお隣で、まさかの当人(雅人)とバッティングしてしまった。
そうなれば言わずにいるのもおかしな話かと、淳からの伝言を伝えたのだが。
「…あの…なんでそんなに楽しそうな顔してるんですかね…?」
「そう見える?」
ええまぁ。
というか腹黒さ全開だが。
本当に妹はこれと付き合っているのか…?
騙されてるんじゃないかと本気で心配になる。
「?どうしたの、桜ちゃん」
何か言いたげだね、と言われて口ごもった。
妹との一件、いっそここで問いただすべきか…。
「あの……」
「なんだい?」
ニコニコニコニコ。
「桜ちゃんにはうちの淳がいつもお世話になってるからね。なんでも聞いてよ」
じゃあ遠慮なく…といけたら苦労はない。
「それに淳のやつ、桜ちゃんにプロポーズしたんだろ?君たちが結婚したら、桜ちゃんは僕の義理の妹になるわけだしね」
「それはちょっと気が早いかと…」
「そうなの?」
まだ受けるとは一言も言ってないのに、雅人の中では既に決定事項のようだ。
「でも、義理の姉弟きょうだいになるのは決まったようなものだから、どうせ一緒だよね」

………。

「笑顔で爆弾発言ぶっ込んできましたね」
「だって手放す気ないから」
淳と違って、と。
切り込んだ言葉がさらにばっさり笑顔で切り捨てられ、桜の表情筋が死滅した。
「正体を現したなこのロリコン」
「そう言われる年齢はもう過ぎたよ?それにちゃんと責任も取るし」
「それ…本人にも宣告済みですか」
「勿論。16歳になったら結婚しようねって。…生憎、まだ早すぎるって言われちゃったけどね」
「いつのまにプロポーズまでしてやがった!?ってか断られてるじゃないですか!」
「早いって言われただけだよ。でももう18歳だから、そろそろもう一回…」
「早い早い!!まだ未成年だっつの!」
そう?と平然とした顔で宣う雅人。
「僕も流石に未成年淫行で捕まりたくはないし、早く籍を入れておきたいなって」
「…本音ダダ漏れ!!っていうかやっぱり妹に……!!」
「ん?」
なにか?というその横っ面を思い切り叩いてやれたらどんなにいいだろう。
でもできん!やっぱなんか怖い!!
「…とりあえず、伝言は伝えたんで、私はこれで…」
「うん、わざわざごめんね。明日にでも見舞いに行くよ」
「お願いします…」
なんだかドッと疲れた。
もう帰ろう、そう思い背中を向けたその時。
「僕に何の話か、気にならない?」
意味ありげにかけられたその言葉。
「僕はもう。予想は付いてるけどね」
だったら早く言えよ、と眉間に皺が寄る。
失礼かとは思ったが、振り返りもせずに答えた。
「兄弟2人の会話に口を挟む気はありませんから」
「物分りがいいね、君は」
完全に馬鹿にされてる。
やっぱり相当性格が悪い。
今からでもまだ遅くない、妹を説得しよう。
お姉ちゃん、こんな義弟は嫌だ。
「2年前」
ピクリ。
「あいつはね、2年前、僕が自分に何か言ったんじゃないかと疑ってるんだ」
「……何かしたんですか」
ゆっくり、振り返る桜。
「栞にも同じことを聞かれたよ。さすが姉妹かな…?」
「というか、妹にまで疑われるようなあんたに問題があると思いますが」
よかった、少しだけ安心した。
恋に目がくらんでいるのかと思ったが、妹は意外と冷静な目で雅人を見ているらしい。
「桜ちゃんは、僕が何を言ったと思う…?」
「否定しないあたり真っ黒ですか…。知りませんよ、そんなこと」
ただ、目の前のこの男が明確な敵だということは理解した。
「あいつも今悩んでるだろうね。何を言われて、自分が君を諦めたのかと」
間違っても、楽しそうに言うセリフではない。
「…本当に、性格が悪い」
実の弟を弄んで何が楽しいのだろう。
批判の意を込めた桜の視線もあっさりと交わし、雅人はいう。
「本当に欲しいものを守り続けるには、覚悟が必要なんだ。簡単に揺らいでしまい程度の思いなら、初めから捨ててしまったほうが互いの為だと思わないかい?」
ねぇ?と問いかけられ、ぐっと言葉に詰まる。
確かにその通りかも知れないと、一瞬でも思ってしまったから。
「桜ちゃん、君はもう一度淳を信じられる?」
「………」
「僕はね、決して揺らがないし、揺らがせない。……邪魔しないでね?桜ちゃん」



―――――この人は、やっぱり怖い。
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