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果たされなかったプロポーズ
迫られた決断。
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「決着をつけてきた」
そう言って淳が家までやってきたのは、その日の夕方だった。
「え…。ちょっとあんた、まさかまた病院を抜け出してきたんじゃ…」
「違う。今日で退院になった」
「そう…。それならいいけど」
ということは、特に脳に異常は見られなかったということなのだろう。
まずは一安心だ。
「決着って……何かわかったの?」
今日、雅人が病院へ見舞いに行ったことは間違いない。
その上で決着、ということは…。
「2年前、何があったのか聞いた」
「!」
「……馬鹿だったのは俺だ」
すまなかった、と頭を下げられて驚く。
「家の中……入る?」
「いや、ここでいい」
すぐ終わる、というその答えに、桜は自嘲する。
結局、2年前と答えは変わらなかったということか。
「プロポーズは撤回……?」
またあの女の人とヨリを戻すの?
「いや、撤回はしない」
「?」
「桜、聞いてくれ。……俺は、きっとお前を不幸にするだろう」
「え…?」
「幸せには、してやれない」
だが。
「ちょ…!淳…!なんしてんのよ…!」
「俺にお前をくれ」
土下座。
玄関先に手を付いて、淳が頭をこすりつける。
「頼む。今ここで決めて欲しい」
「そんな乱暴な……!」
「助けてくれ、桜。頭が狂いそうなんだ」
「何を言ってるの…?頭あげてよ……!」
こんなところで、何を。
「お前の側を離れていた2年間、俺はやっぱり頭がおかしくなっていたようだ。――――理由も全部、思い出した」
この2年間の、記憶を。
「それで、退院が許可されたんだ」
「……そう」
ぐっと、唇を噛み締める。
「それで、話してくれるつもりはあるの?」
「必ず。……だが、先に答えが欲しい」
「そんなむちゃくちゃな……」
「頼む」
「とりあえず頭をあげ……」
「お姉ちゃん?あっくんも……」
「栞!」
妹が、帰ってきた。
こんな玄関でそんなことをしていれば当然だ。
だが、淳は頭を上げることすらしない。
「あっくん、何して……」
「栞、お前も聞いてくれ。お前の姉は、俺がもらう」
そう言って淳が家までやってきたのは、その日の夕方だった。
「え…。ちょっとあんた、まさかまた病院を抜け出してきたんじゃ…」
「違う。今日で退院になった」
「そう…。それならいいけど」
ということは、特に脳に異常は見られなかったということなのだろう。
まずは一安心だ。
「決着って……何かわかったの?」
今日、雅人が病院へ見舞いに行ったことは間違いない。
その上で決着、ということは…。
「2年前、何があったのか聞いた」
「!」
「……馬鹿だったのは俺だ」
すまなかった、と頭を下げられて驚く。
「家の中……入る?」
「いや、ここでいい」
すぐ終わる、というその答えに、桜は自嘲する。
結局、2年前と答えは変わらなかったということか。
「プロポーズは撤回……?」
またあの女の人とヨリを戻すの?
「いや、撤回はしない」
「?」
「桜、聞いてくれ。……俺は、きっとお前を不幸にするだろう」
「え…?」
「幸せには、してやれない」
だが。
「ちょ…!淳…!なんしてんのよ…!」
「俺にお前をくれ」
土下座。
玄関先に手を付いて、淳が頭をこすりつける。
「頼む。今ここで決めて欲しい」
「そんな乱暴な……!」
「助けてくれ、桜。頭が狂いそうなんだ」
「何を言ってるの…?頭あげてよ……!」
こんなところで、何を。
「お前の側を離れていた2年間、俺はやっぱり頭がおかしくなっていたようだ。――――理由も全部、思い出した」
この2年間の、記憶を。
「それで、退院が許可されたんだ」
「……そう」
ぐっと、唇を噛み締める。
「それで、話してくれるつもりはあるの?」
「必ず。……だが、先に答えが欲しい」
「そんなむちゃくちゃな……」
「頼む」
「とりあえず頭をあげ……」
「お姉ちゃん?あっくんも……」
「栞!」
妹が、帰ってきた。
こんな玄関でそんなことをしていれば当然だ。
だが、淳は頭を上げることすらしない。
「あっくん、何して……」
「栞、お前も聞いてくれ。お前の姉は、俺がもらう」
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