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指輪と首輪とコーヒーと~変態の知り合いにはろくな人間がいない~
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ほとんど押し負けるような形で頷いたレジーナを待っていたのは、帝からの激しい抱擁。
そして、訳もわからぬままに連れてこられたのは、とある一軒の喫茶店。
「喫茶店?宝飾店じゃなくて?」
レジーナが首をかしげたのも当然だった。
指輪を買うのではなかったのか。
「宝飾店なんて行っても売ってるのは既製品だけでしょ。
私があんたにそんなものを選ばせるわけないじゃない」
「……?既製品じゃない?」
「そうよ。婚約指輪が気に入ったら、今度は結婚指輪も作って貰いましょうね?
時間もあるし、こっちはあんた好みに石から気に入ったものをゆっくり吟味できるわよ」
「……………一から、じゃなくて石から?」
聞き間違いではないかと淡い期待を抱いたレジーナだが、「どんな石がいいかしらねぇ」と、うっとり微笑む帝を前に、一気に沈黙せざるを得なくなった。
「今回は時間もないし、石は私の好みで選ばせてもらったわ。
間に合わにしてはなかなかいいものが手に入ったから、まずは見てのお楽しみね」
ふふ、と笑う帝を前に、嫌がおうにも高まる不安。
「……これから、本当にここで婚約指輪を選ぶのよね?」
念の為にと確認をすれば、何を今さらとあきれた表情をみせる帝。
「あんたねぇ、この期に及んでちょっと往生際が悪すぎるんじゃない?」
何か不満なのと問いかけられ、この対応に関して疑問を感じているのは私だけなのかと不安になった。
ーー何が常識だかわからなくなってきたわ。
あの言い方では、宝石の種類を選ぶというより、そもそもの原石から選んできたとでもいうような……。
「嘘でしょ?」
果してこれから何がが起こるのか。
不安を抱えながら潜った入り口の先で。
「「いらっしゃいませ」」
息のあった、落ち着いた男女の掛け声と共に漂う、ふんわりとしたコーヒーの薫り。
なんだ、普通の喫茶店じゃないかと。
安心した次の瞬間、聞こえてきたのは「アメーーーージング!!」という謎の男性の叫び声。
驚いてそちらを見れば、喫茶店の奥の席から中年の男性客が一人、立ち上がってこちらに向かい両手を広げている。
「あら。もう準備万端みたいね」
「…………え?」
そのままツカツカと男性に向かって歩み寄る帝。
呆気に取られていれば、いつの間にか目の前には、先ほどの声の主とおぼしき中年男性がレジーナに向かってその右手を差し出しており。
「麗ちゃん。
この人はね、必要とあらば自らどんな場所にでも飛んで才能のあるモノや人間を探してくるプロなの。
今回指輪を作るにあたって、あなたの写真と元になる原石をモデルにいくつかデザイン画をおこしてきてもらったのよ。
彼のお抱えのデザイナーはなかなか偏屈な人間が多いんだけど、あなたの写真はみんな一目で気に入ったそうよ」
よかったわね、と。
なにがよかったのかすらさっぱり把握できぬまに事態は進み。
気がつけば、促されるままに男性との握手に応じ、名刺を渡されている自分がいて。
「個人輸入の雑貨店を営みます、浅井雄次郎と申します。
いやぁ、近くでみるとまるでダイヤの原石のようなお嬢さんだ。
あなたの指輪作りを任されるなんて、こんなに光栄なことはないなぁ」
にこにこと笑うその人物を前に、どこか帝と同じ臭いを感じたのは、果してただの気のせいか。
…………まともな知り合いは一人もいないのかしら。
それともこれが俗にいう「類は友を呼ぶ」という現象なのか。
恐ろしいと思うレジーナだったが、彼女が真に大変な目に遭遇するのはこの後。
全てレジーナをイメージして書かれたという、膨大な量のデザイン画を見せられてからのことだった。
そして、訳もわからぬままに連れてこられたのは、とある一軒の喫茶店。
「喫茶店?宝飾店じゃなくて?」
レジーナが首をかしげたのも当然だった。
指輪を買うのではなかったのか。
「宝飾店なんて行っても売ってるのは既製品だけでしょ。
私があんたにそんなものを選ばせるわけないじゃない」
「……?既製品じゃない?」
「そうよ。婚約指輪が気に入ったら、今度は結婚指輪も作って貰いましょうね?
時間もあるし、こっちはあんた好みに石から気に入ったものをゆっくり吟味できるわよ」
「……………一から、じゃなくて石から?」
聞き間違いではないかと淡い期待を抱いたレジーナだが、「どんな石がいいかしらねぇ」と、うっとり微笑む帝を前に、一気に沈黙せざるを得なくなった。
「今回は時間もないし、石は私の好みで選ばせてもらったわ。
間に合わにしてはなかなかいいものが手に入ったから、まずは見てのお楽しみね」
ふふ、と笑う帝を前に、嫌がおうにも高まる不安。
「……これから、本当にここで婚約指輪を選ぶのよね?」
念の為にと確認をすれば、何を今さらとあきれた表情をみせる帝。
「あんたねぇ、この期に及んでちょっと往生際が悪すぎるんじゃない?」
何か不満なのと問いかけられ、この対応に関して疑問を感じているのは私だけなのかと不安になった。
ーー何が常識だかわからなくなってきたわ。
あの言い方では、宝石の種類を選ぶというより、そもそもの原石から選んできたとでもいうような……。
「嘘でしょ?」
果してこれから何がが起こるのか。
不安を抱えながら潜った入り口の先で。
「「いらっしゃいませ」」
息のあった、落ち着いた男女の掛け声と共に漂う、ふんわりとしたコーヒーの薫り。
なんだ、普通の喫茶店じゃないかと。
安心した次の瞬間、聞こえてきたのは「アメーーーージング!!」という謎の男性の叫び声。
驚いてそちらを見れば、喫茶店の奥の席から中年の男性客が一人、立ち上がってこちらに向かい両手を広げている。
「あら。もう準備万端みたいね」
「…………え?」
そのままツカツカと男性に向かって歩み寄る帝。
呆気に取られていれば、いつの間にか目の前には、先ほどの声の主とおぼしき中年男性がレジーナに向かってその右手を差し出しており。
「麗ちゃん。
この人はね、必要とあらば自らどんな場所にでも飛んで才能のあるモノや人間を探してくるプロなの。
今回指輪を作るにあたって、あなたの写真と元になる原石をモデルにいくつかデザイン画をおこしてきてもらったのよ。
彼のお抱えのデザイナーはなかなか偏屈な人間が多いんだけど、あなたの写真はみんな一目で気に入ったそうよ」
よかったわね、と。
なにがよかったのかすらさっぱり把握できぬまに事態は進み。
気がつけば、促されるままに男性との握手に応じ、名刺を渡されている自分がいて。
「個人輸入の雑貨店を営みます、浅井雄次郎と申します。
いやぁ、近くでみるとまるでダイヤの原石のようなお嬢さんだ。
あなたの指輪作りを任されるなんて、こんなに光栄なことはないなぁ」
にこにこと笑うその人物を前に、どこか帝と同じ臭いを感じたのは、果してただの気のせいか。
…………まともな知り合いは一人もいないのかしら。
それともこれが俗にいう「類は友を呼ぶ」という現象なのか。
恐ろしいと思うレジーナだったが、彼女が真に大変な目に遭遇するのはこの後。
全てレジーナをイメージして書かれたという、膨大な量のデザイン画を見せられてからのことだった。
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