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魔女の選んだ指輪の話①
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ここで、話は少し遡る。
たくさんのデザイン画を前に途方にくれたレジーナは、現実逃避をするように店内を見渡し、始めに挨拶をした男女二人の店員の姿に目を止めた。
「……………?」
「どうしたの?麗ちゃん」
店長らしき男性を見たまま訝しげに首を傾げたレジーナに、「折角だから何か頼みましょうか?」とラミネートされた店のメニュー表を差し出す帝。
すると、それまでニコニコとした笑顔を崩さなかった目の前の男が、何も頼んでいない事に今気づいたとでも言うような素振りで、「気が利かず申し訳ない!どうぞ好きなものを頼んで下さい!!」と、ゆっくりメニューを見るように促しながら、片手をあげて。
「お~い!!ヒヨコちゃん!!注文を頼むよ!」と、満面の笑顔で女性店員に向かって両手を振る。
「…………ひよこちゃん?」
今、何か妙な言葉を聞いたような気がする。
「………雄次郎さん。妙な名前で呼ぶのは止めてくださいとあれほど言って……」
ブツブツとした不満を呟きながら、やって来た女性店員。
「雄次郎さん………?」
いかにも親しげに呼び会う二人に、眉を寄せるレジーナ。
そこでようやくレジーナの疑問に気がついた帝が「そういえば言い忘れてたわねぇ」と小さく呟き。
「嫌だなぁひよこちゃん。僕のことはお義父さんって呼んでくれっていつも言ってるじゃないか」
「お義父さん……!?」
驚愕の目で二人を交互に見つめるレジーナ。
どちらかと言えば童顔で賑やかな印象の浅井と、全体的に落ち着いた雰囲気を持つこの目の前の女性とは、正直言って全く似ても似つかないように思える。
どちらかと言えばむしろ、あちらの男性店員の方がーーー。
「紹介が遅れましたが、ここはうちの息子の店なんですよ。彼女は息子の嫁で僕の義娘のひよこちゃんーーーー」
「じゃなくて雛子です」
変な名前を教えないで下さい!と腹をたてる女性。
しかし初対面の客であるレジーナに対してはすぐにその表情を変え、曇りない営業スマイルで「ご注文は決まりましたか?」とニッコリ微笑む。
それは、女性であるレジーナですら一瞬ドキリとするような笑顔で。
「あなた………とても綺麗な人ね」
「え?」
思わず漏れた本心に、戸惑った様子の女性。
美人であるのは間違いないが、彼女の持つ雰囲気自体がとても特殊だ。
どことなくだが、一族の占術者達とも似たその気配。
ーーー本当に、ただの人間かしら。
もしかして、同族………?
怪しみながら、とりあえず店のおススメとかかれた本日のコーヒーを人数分注文すれば、レジーナの分だけは帝によって「カフェオレにして貰えるかしら?」と有無を言わさずミルクの追加がされていた。
納得はいかないが、確かに普通のコーヒーよりはカフェオレの方が好ましい。
そんなちょっとした嗜好すら把握されている事に呆れてしまうが、目の前の彼女は寧ろそれを微笑ましく思ったらしく、小さく笑いながらオーダーを用紙に記入していく。
「あ、ひよこちゃん。僕にはサンドイッチ追加ね」
「いつも代金を踏み倒す雄次郎さんは、今日の賄いの残りで我慢してください」
「ハハハ!!全然いいよ!!」
薫の賄いは売り物レベルだしね!とあくまで軽い調子の浅井。
そこに何処からともなく飛んできたのは白いナフキン。
「雛ちゃん!そんなワガママ親父の相手はしなくていいから!」
早く戻ってきて!とカウンターの奥から叫ぶ店員。
「息子よ。僕からの忠告だが、心の狭い男はすぐに飽きて捨てられるぞ?」
「黙れくそ親父っ!!」
「ちょ、薫さんっ!お客さんの前で…!」
一気に騒がしくなる店内。
客の誰もが気にした様子を見せないところを見ると、これは彼らにとっての日常茶飯事なのだろう。
あぁそうか。
「よく似た親子ね」
そしてやっぱり、帝の知り合いにはまともな人間が一人も居ないのだろうかと、少し切なく思うレジーナであった。
たくさんのデザイン画を前に途方にくれたレジーナは、現実逃避をするように店内を見渡し、始めに挨拶をした男女二人の店員の姿に目を止めた。
「……………?」
「どうしたの?麗ちゃん」
店長らしき男性を見たまま訝しげに首を傾げたレジーナに、「折角だから何か頼みましょうか?」とラミネートされた店のメニュー表を差し出す帝。
すると、それまでニコニコとした笑顔を崩さなかった目の前の男が、何も頼んでいない事に今気づいたとでも言うような素振りで、「気が利かず申し訳ない!どうぞ好きなものを頼んで下さい!!」と、ゆっくりメニューを見るように促しながら、片手をあげて。
「お~い!!ヒヨコちゃん!!注文を頼むよ!」と、満面の笑顔で女性店員に向かって両手を振る。
「…………ひよこちゃん?」
今、何か妙な言葉を聞いたような気がする。
「………雄次郎さん。妙な名前で呼ぶのは止めてくださいとあれほど言って……」
ブツブツとした不満を呟きながら、やって来た女性店員。
「雄次郎さん………?」
いかにも親しげに呼び会う二人に、眉を寄せるレジーナ。
そこでようやくレジーナの疑問に気がついた帝が「そういえば言い忘れてたわねぇ」と小さく呟き。
「嫌だなぁひよこちゃん。僕のことはお義父さんって呼んでくれっていつも言ってるじゃないか」
「お義父さん……!?」
驚愕の目で二人を交互に見つめるレジーナ。
どちらかと言えば童顔で賑やかな印象の浅井と、全体的に落ち着いた雰囲気を持つこの目の前の女性とは、正直言って全く似ても似つかないように思える。
どちらかと言えばむしろ、あちらの男性店員の方がーーー。
「紹介が遅れましたが、ここはうちの息子の店なんですよ。彼女は息子の嫁で僕の義娘のひよこちゃんーーーー」
「じゃなくて雛子です」
変な名前を教えないで下さい!と腹をたてる女性。
しかし初対面の客であるレジーナに対してはすぐにその表情を変え、曇りない営業スマイルで「ご注文は決まりましたか?」とニッコリ微笑む。
それは、女性であるレジーナですら一瞬ドキリとするような笑顔で。
「あなた………とても綺麗な人ね」
「え?」
思わず漏れた本心に、戸惑った様子の女性。
美人であるのは間違いないが、彼女の持つ雰囲気自体がとても特殊だ。
どことなくだが、一族の占術者達とも似たその気配。
ーーー本当に、ただの人間かしら。
もしかして、同族………?
怪しみながら、とりあえず店のおススメとかかれた本日のコーヒーを人数分注文すれば、レジーナの分だけは帝によって「カフェオレにして貰えるかしら?」と有無を言わさずミルクの追加がされていた。
納得はいかないが、確かに普通のコーヒーよりはカフェオレの方が好ましい。
そんなちょっとした嗜好すら把握されている事に呆れてしまうが、目の前の彼女は寧ろそれを微笑ましく思ったらしく、小さく笑いながらオーダーを用紙に記入していく。
「あ、ひよこちゃん。僕にはサンドイッチ追加ね」
「いつも代金を踏み倒す雄次郎さんは、今日の賄いの残りで我慢してください」
「ハハハ!!全然いいよ!!」
薫の賄いは売り物レベルだしね!とあくまで軽い調子の浅井。
そこに何処からともなく飛んできたのは白いナフキン。
「雛ちゃん!そんなワガママ親父の相手はしなくていいから!」
早く戻ってきて!とカウンターの奥から叫ぶ店員。
「息子よ。僕からの忠告だが、心の狭い男はすぐに飽きて捨てられるぞ?」
「黙れくそ親父っ!!」
「ちょ、薫さんっ!お客さんの前で…!」
一気に騒がしくなる店内。
客の誰もが気にした様子を見せないところを見ると、これは彼らにとっての日常茶飯事なのだろう。
あぁそうか。
「よく似た親子ね」
そしてやっぱり、帝の知り合いにはまともな人間が一人も居ないのだろうかと、少し切なく思うレジーナであった。
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