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どんな時でも手段はひとつ。
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「ーーーーー終わりにしよう」
被害者となった僧侶も、加害者となった男も。
「いつまでこんなことを繰り返してたって救われないよ、誰も」
「ーーーーー瀬津」
そりゃ、状況から見れば悪いのは明らかに僧侶を裏切ったという男だ。
呪われて当然、身から出た錆。
だが、その子孫に一体何の罪があるのだろう。
生まれてきた場所が悪かった?
先祖の罪は子孫の罪?
考え方はいろいろあるが、高瀬としてはあえて断言したい。
「もう潮時でしょ」
いつまでつづけるのかって?
そりゃ、決まっている。
役者は全て集まった。
終焉の時は来ているのだ。
後は、引導を渡すだけ。
「ここでもうおしまい、だよ!」
とう!と声を上げて竜児の腕の中から飛んだ高瀬。
迷いなく進むのは、向かいあう両者の元。
「どうするんだ、嬢ちゃん?」
ニヤニヤと笑い、面白そうな目でこちらを見つめる男。
どうやら何も手出しをするつもりはなさそうだ。
「あっちはもう、頭まで出てきたぞ?」
髑髏のおちくぼんだ眼窩が、遠くからでもはっきりと確認できる。
最も、髑髏は高瀬たちのことなど初めから眼中にない様子ではあるが。
「むしろそれなら好都合」
「ん?」
どういう意味だ、そりゃ、と。
初めて男が不思議そうに首を傾げるが、そんなものは無視して、高瀬はズンズン進む。
男の言うとおり、地面から自力で這い上がった骸骨は既に頭まで露出しており、寺尾少年はガクガクと震えながら必死に念仏と謝罪とを唱え続けている。
これは寺尾少年が、というよりも先祖となった憑依霊が怯えていると言ったほうが正しいのだろう。
そんなに怯えるくらいならやらなきゃよかったのにな、とはいまさら言っても遅すぎる話だが。
「後悔先に立たず、ってね」
いつだって迷惑を被るのは当事者ではなく、その子供たちなのだ。
決着くらいは是非、二人で付けて欲しいもの。
寺尾少年の背後に仁王立ちし、腕を組んだ高瀬。
「……あの嬢ちゃん、一体何をする気だ?」
「おい、瀬津!?」
その一見わけのわからない行動に戸惑う傍観者達。
『きゅ!』
僕はこっち側ですよ!と言わんばかりに駆け寄ってきたハム太郎が高瀬の肩にひょいと飛び上がり、同じようにその短い腕を組む。
「む」
『きゅ!』
互いに頷き合う一人と一匹。
よし、これで百人力だ。
骸骨恐るるに足らず。
覚悟を決めて、高瀬は突っ込む。
背後の不穏な気配にも気づかず、土下座を続ける寺尾少年のその背中に向け、思い切り遠慮ない飛び蹴りを食らわせた!
「…!!」
背中に足跡をつけ、派手に前へとつんのめりながら、思いもよらぬ場所からの攻撃に狼狽する寺尾少年(に憑依した霊)。
だが高瀬のターンはこれで終了ではない。
もう一撃。
無防備にさらけ出した尻を蹴り上げられ、更に前へと飛び出る寺尾少年。
そしてそのすぐ目前には起き上がった骸骨が。
「ーーーーーーーヒィ!!」
「よし、ハムちゃん今だ!」
『きゅ!』
高瀬が寺尾少年へと攻撃を仕掛けていたその時、肩から飛び出したハム太郎が同時に骸骨の露出した頭頂部へと着地。
最高の場所を陣取っていたハム太郎が、止めとばかりにその場で華麗なるジャンプを遂げ、小動物とも思えぬ重厚なるひと蹴りで、髑髏の後頭部を前に叩き出す。
ガシャン······!!
結果起こることはもう想像はつくだろう。
「喧嘩両成敗!!!」
ーーーーーーー寺尾少年と骸骨。
正面からぶつかり上がった両者が、互いにぐらりと揺れ、背後に倒れた。
「嬢ちゃんマジか」
「あいつは······」
「実力行使あるのみ、ですね」
竜児は大体のことが予測できていたのだろう
呆れててはいるものの、驚いた様子はない。
これぞ高瀬クオリティ。
そもそも浄化だのなんだの大層なものを期待する方が間違いなのだ。
そんなのできるか、と声を大にして言いたい。
こちとら単なる素人だ。
念仏唱えるか実力行使か、とれる手段はその二つ。
もはや話し合いでは解決できそうにない現状、とれる手段はただ一つ。
すなわち。
「我が人生に一片の悔いなし!」
『きゅ!』
振り上げた高瀬の拳に、ハイタッチの要領で飛び上がりながらちょんとふれるハム太郎。
うむ。やったな。
きゅ!!
大変満足そうに頷きあう一人と一匹をよそに、深いため息を吐き出したのは龍一だ。
「それを言うなら一遍で台無しの間違いだな」
シリアスな空気が木っ端微塵なまでに破壊された瞬間だった。
被害者となった僧侶も、加害者となった男も。
「いつまでこんなことを繰り返してたって救われないよ、誰も」
「ーーーーー瀬津」
そりゃ、状況から見れば悪いのは明らかに僧侶を裏切ったという男だ。
呪われて当然、身から出た錆。
だが、その子孫に一体何の罪があるのだろう。
生まれてきた場所が悪かった?
先祖の罪は子孫の罪?
考え方はいろいろあるが、高瀬としてはあえて断言したい。
「もう潮時でしょ」
いつまでつづけるのかって?
そりゃ、決まっている。
役者は全て集まった。
終焉の時は来ているのだ。
後は、引導を渡すだけ。
「ここでもうおしまい、だよ!」
とう!と声を上げて竜児の腕の中から飛んだ高瀬。
迷いなく進むのは、向かいあう両者の元。
「どうするんだ、嬢ちゃん?」
ニヤニヤと笑い、面白そうな目でこちらを見つめる男。
どうやら何も手出しをするつもりはなさそうだ。
「あっちはもう、頭まで出てきたぞ?」
髑髏のおちくぼんだ眼窩が、遠くからでもはっきりと確認できる。
最も、髑髏は高瀬たちのことなど初めから眼中にない様子ではあるが。
「むしろそれなら好都合」
「ん?」
どういう意味だ、そりゃ、と。
初めて男が不思議そうに首を傾げるが、そんなものは無視して、高瀬はズンズン進む。
男の言うとおり、地面から自力で這い上がった骸骨は既に頭まで露出しており、寺尾少年はガクガクと震えながら必死に念仏と謝罪とを唱え続けている。
これは寺尾少年が、というよりも先祖となった憑依霊が怯えていると言ったほうが正しいのだろう。
そんなに怯えるくらいならやらなきゃよかったのにな、とはいまさら言っても遅すぎる話だが。
「後悔先に立たず、ってね」
いつだって迷惑を被るのは当事者ではなく、その子供たちなのだ。
決着くらいは是非、二人で付けて欲しいもの。
寺尾少年の背後に仁王立ちし、腕を組んだ高瀬。
「……あの嬢ちゃん、一体何をする気だ?」
「おい、瀬津!?」
その一見わけのわからない行動に戸惑う傍観者達。
『きゅ!』
僕はこっち側ですよ!と言わんばかりに駆け寄ってきたハム太郎が高瀬の肩にひょいと飛び上がり、同じようにその短い腕を組む。
「む」
『きゅ!』
互いに頷き合う一人と一匹。
よし、これで百人力だ。
骸骨恐るるに足らず。
覚悟を決めて、高瀬は突っ込む。
背後の不穏な気配にも気づかず、土下座を続ける寺尾少年のその背中に向け、思い切り遠慮ない飛び蹴りを食らわせた!
「…!!」
背中に足跡をつけ、派手に前へとつんのめりながら、思いもよらぬ場所からの攻撃に狼狽する寺尾少年(に憑依した霊)。
だが高瀬のターンはこれで終了ではない。
もう一撃。
無防備にさらけ出した尻を蹴り上げられ、更に前へと飛び出る寺尾少年。
そしてそのすぐ目前には起き上がった骸骨が。
「ーーーーーーーヒィ!!」
「よし、ハムちゃん今だ!」
『きゅ!』
高瀬が寺尾少年へと攻撃を仕掛けていたその時、肩から飛び出したハム太郎が同時に骸骨の露出した頭頂部へと着地。
最高の場所を陣取っていたハム太郎が、止めとばかりにその場で華麗なるジャンプを遂げ、小動物とも思えぬ重厚なるひと蹴りで、髑髏の後頭部を前に叩き出す。
ガシャン······!!
結果起こることはもう想像はつくだろう。
「喧嘩両成敗!!!」
ーーーーーーー寺尾少年と骸骨。
正面からぶつかり上がった両者が、互いにぐらりと揺れ、背後に倒れた。
「嬢ちゃんマジか」
「あいつは······」
「実力行使あるのみ、ですね」
竜児は大体のことが予測できていたのだろう
呆れててはいるものの、驚いた様子はない。
これぞ高瀬クオリティ。
そもそも浄化だのなんだの大層なものを期待する方が間違いなのだ。
そんなのできるか、と声を大にして言いたい。
こちとら単なる素人だ。
念仏唱えるか実力行使か、とれる手段はその二つ。
もはや話し合いでは解決できそうにない現状、とれる手段はただ一つ。
すなわち。
「我が人生に一片の悔いなし!」
『きゅ!』
振り上げた高瀬の拳に、ハイタッチの要領で飛び上がりながらちょんとふれるハム太郎。
うむ。やったな。
きゅ!!
大変満足そうに頷きあう一人と一匹をよそに、深いため息を吐き出したのは龍一だ。
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シリアスな空気が木っ端微塵なまでに破壊された瞬間だった。
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