わらしな生活(幼女、はじめました)

隆駆

文字の大きさ
18 / 290

腹黒い出来杉君と綺麗なジャイアン①

しおりを挟む
「助けてどら○もーん」
「…そんな態度でごまかせると思っているんですか?え?僕にいくら借りがあると思ってるんです?いっそまとめて体で返しますか?」
「ギャ~~~人身売買される~~~」
「人聞きの悪い。せめて犯されると叫びなさい」
「oh破廉恥」
狭い事務所の部屋の中。
幼女とサシで語り合うのは、いかんもインテリといった様子のイケメン青年。
爽やかさよりも腹黒さが前面に出てしまうあたりはご愛嬌だが、これでも仕事中はそれなりな爽やかさを演出しているらしい。
なんだろう。爽やかさって、実は後付けのエフェクトの一種かなにかだったのだろうか。
それなら是非私にも妖艶さとか愛らしさとかを販売して欲しい。
言い値で買おう。
「んで……聞きたいのは例の神佑地のことですか」
「しんゆうち?」
「……いわゆる神が在所する土地という意味ですよ。まぁ、造語のようですがね」
「ほぇ~」
「相変わらずのバカ面……。僕の下僕として終身雇用してあげるつもりだったのに、最近とうとう正社員になったんですってね。どうせすぐクビになると思いますけど」
「決め付けないでー。これでも頑張ってるんですぅ~」
「君の頑張りなどタカがしれてます」
「バッサリ!」
さすが幼馴染、遠慮というものは既にゴミ箱に打ち捨てられている。
「というか、なんで知ってんの?正社員になったの」
「君の所属してる派遣会社の顧問をしているもので」
「一契約社員の個人情報を垂れ流さないで~」
情報漏えいしてますYO!!
「僕は顧問ですよ?……まぁ、君の情報以外なんの興味もありませんがね。で、今更あの土地のことで何を聞きに来たんですか?君を正社員として雇った勇気ある会社なら、もうあの件からは手を引いたはずですが」
「うん、会社の方はそうなんだけど、ちょっと別件で」
「別件?」
訝しげな表情を浮かべる竜児。
さすがにそれ以上の調べは付いていないようだ。
「ところで君、机の上に座るのはやめなさい。行儀が悪い」
「だって視線が合わないんだもん」
椅子に座っても合わない視線を調節するために机に直接腰かけていたのを咎められ、ペロッと舌を出す。
「ならここにきなさい」
「膝の上はちょっと……」
「僕の膝を断ると?タカ子の分際で」
「謹んでご遠慮させていただきます…」
「遠慮は要りません、話を聞きたかったらこっちに来なさい」
「うぅっ…」
なぜだ。好条件のイケメンの膝の上なのに、気分は売られる仔牛。
「せめておいしく食べて…」
「なら本体を出しなさい本体を。隅々までいただきますよ」
「絶対嫌」
本気で食われるわ。
「冗談はそこまでとして…。まさか君、あの男と関わっているんじゃないでしょうね」
「…?もしかして知ってんの?あのエセ霊能力者」
「……似非どころではありませんよ。関わりあいがあるのなら今すぐやめなさい。君には向いていない世界です」
「どゆこと?」
さっぱりわけがわからない。
「僕からすれば敵方の人間ですから。直接関わりがあるわけではありませんが、多少調べはしましたよ。それで出て来ただけでも、えらく物騒な一族の出身のようで」
首を傾げる高瀬に言い聞かせるように、「いいですか?」と竜児は言う。
「呪いごとのプロフェッショナル。一言で言えばそういうことになります。
いわくつきの土地や、元々祟が噂されている土地などの祓いを行ったり……逆に相手を呪うこともある。なにしろ、呪い代行なんてものがネットビジネスになる時代ですからね」
「呪い代行……」
「君なんていいカモにされるだけですから、くれぐれも気をつけなさい」
「……」
「まさかもう何か手を貸したんじゃ…」
無言の高瀬に竜児の目尻が釣り上がる。
「う~ん…。協力というか……取引?」
「取引?一体何を」
「……まぁ、犯人逮捕の……?」
「そういえば最近、子供をひき逃げした犯人が、霊に取り憑かれたと騒いで自首する騒ぎがありましたね…。それですか」
おぉ、さすが弁護士、推理が冴えている。
「まったく…。僕に言えばすぐにでもなんとかしたものを…」
「それも考えたんだけど、本当にたまたまそういうことになったんで……」
偶然です偶然と言い張れば、真顔になった竜児は言う。

「前にも言ったかもしれませんがね。この世に偶然は存在しません。重なる偶然は全てが必然か、誰かの策略です」

――――――必然。その通りかも知れない。
「揃いすぎてるよね…色々」
幼馴染二人に職場の上司、そして知り合ったばかりの男。
何かが動き出した。そんな気がする。
しおりを挟む
感想 40

あなたにおすすめの小説

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~

吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。 結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。 何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

27歳女子が婚活してみたけど何か質問ある?

藍沢咲良
恋愛
一色唯(Ishiki Yui )、最近ちょっと苛々しがちの27歳。 結婚適齢期だなんて言葉、誰が作った?彼氏がいなきゃ寂しい女確定なの? もう、みんな、うるさい! 私は私。好きに生きさせてよね。 この世のしがらみというものは、20代後半女子であっても放っておいてはくれないものだ。 彼氏なんていなくても。結婚なんてしてなくても。楽しければいいじゃない。仕事が楽しくて趣味も充実してればそれで私の人生は満足だった。 私の人生に彩りをくれる、その人。 その人に、私はどうやら巡り合わないといけないらしい。 ⭐︎素敵な表紙は仲良しの漫画家さんに描いて頂きました。著作権保護の為、無断転載はご遠慮ください。 ⭐︎この作品はエブリスタでも投稿しています。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

処理中です...