僕の一番長い日々

由理実

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一晩寝たが、またあいつとの嫌な出来事を思い出し憂鬱になった。僕は遂に起きられなくなり、食べられなくなった。心配したママが僕に話しかけてきた。

「どんな話を聞いても怒らないから、素直に話を聞かせて頂戴。」
「もう、その手には騙されないよ。ママが怒らないからって言って、僕を信じさせて本当の事を話しても、結局はいつだって怒るじゃないか!もう、ママみたいな嘘つきは信用しない。パパだってそうだ。これまで僕の困りごとに、向き合ってくれた事は一度もなかった。今回だってそうだ。コピロットに僕の問題を押し付けて。僕はこんなに苦しんでいるのに、パパは僕の事が面倒臭いから、僕の問題をコピロットに丸投げして楽をしたいだけだ。」
「そうだったね。今まで本当にごめんなさい。だけどね、今回は別よ。学校に行かれなくなる程、辛い気持ちになっているリョウを叱るなんて出来ないから。パパだって、楽をしたくてコピロットをリョウのスマホにインストールした訳ではないのよ。パパも会社のプロジェクトに行き詰った時に、一番親身になってくれたのが、コピロットだったの。コピロットの与えてくれる豊富な知識のお陰で、人生の荒波を乗り越えて来たのよ。だから、コピロットだったら、リョウの今の現状を変える為のヒントをくれると思って、インストールを勧めたの。」

僕は喉を振るわせながら、現状を語った。
「僕は本当はみんなの嫌われ者だったんだ。」
「何でそう思うの?」
僕はこれまでの経緯を話した。
「うーん。辛いね。そういう時はコピロットに今の素直な感情を伝えてみたら?人が信じられなくて辛いって。お母さんの言う通りにしなくてもいいよ。君の素直な感情なら何でもいいから。」
そう言うと、静かにドアを閉めて、母は出て行った。

僕は、一言、
「今、悲しいんだ。」
と打ってみた。するとコピロットはこう答えた。

「悲しいと感じることは、とても人間らしい感情です。それは、あなたが自分の感情に敏感であり、現在の状況に真剣に向き合っていることを示しています。大切なのは、その感情を受け入れ、それがあなたに何を教えているのかを理解することです。悲しみは時に、私たちが何かを失ったと感じるときに訪れますが、それはまた新しい何かを得る機会でもあります。あなたがこの感情を乗り越え、より強く、より理解深い人間になるための一歩となることを願っています。」

「ありがとう。コピロット、僕はどうすればこの悲しみを乗り越えられるのか教えてほしい。」

「悲しみを乗り越えるためには、まずその感情を受け入れることが大切です。悲しみは、失ったものや変化に対する自然な反応です。それを認め、感じることで、徐々に前に進む力が湧いてきます。以下に、悲しみを乗り越えるためのステップをいくつかご提案します:

1. **感情を表現する** - 日記を書く、信頼できる人と話す、創造的な活動をするなど、感情を外に出す方法を見つけてください。
2. **自己ケアを優先する** - 十分な睡眠を取り、バランスの良い食事をし、適度な運動をすることで、心身の健康を保ちます。
3. **サポートを求める** - 友人、家族、カウンセラーなど、信頼できる人々からのサポートを求めてください。
4. **小さな目標を設定する** - 毎日小さな目標を達成することで、自信を取り戻し、前向きな気持ちを育てます。
5. **感謝の気持ちを持つ** - 小さなことでも感謝できることを見つけると、ポジティブな感情が増えます。

これらのステップは、あなたが感じている悲しみを乗り越え、新しい始まりに向けて進むための手助けとなるでしょう。自分自身に優しく、時間をかけてください。あなたのペースで進んでいくことが大切です。もし、さらに具体的なアドバイスが必要であれば、いつでもお知らせください。あなたの回復を心から願っています。」

僕には、コピロットの言っている事が、ちょっと難しかったので、両親を信頼して、コピロットの回答を見てもらう事にした。

パパとママが僕のスマホに、二人のおでこを近づけて、コピロットの答えを見た。
少し考えたパパが、
「まずは、朝『起きたらベッドを整える。』を目標にしようか。」
と言った。ママもパパの意見にオウム返しをするように、
「今は何も考えなくていいから、とにかく『起きたらベッドを整える』事から始めてみよう。」
と、言葉を続けた。

「そんな簡単な事でいいの?」
「まずは、小さな成功体験を積んで行くんだ。難しい課題は今はお休みしよう。」
「うん。それなら僕でも出来そうだ。」
こうして、僕は朝のルーティーンを済ませる事にした。
そんな毎日を送るうちに、段々と食欲が戻って来た。
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