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第3章

路線バスと外国人

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「●●バスですか?ワタシは、エアロ・スミスです。」
「はい。いかがなさいましたでしょうか?」
「日本人は、時間ニ正確だと聞イテ、トテモ楽しみにしてイマシタ。なのに・・・。ファイ!ジャパニーズ・ピーポー!」
「観光でいらしたんですか?何か当社の社員が、失礼な事をしたのですか?」
「私が路線バスを待っていたら、到着時刻が1分モ遅れたんですヨ!1分モ!私の事を蔑ろにシナイデ下さい!日本人はイカナル交通機関デアッテモ、時間に正確だと、ネットに書いてアッタノデ、信ジテイタノニ!」
「それは、混雑時に起こった事ですか?」
「私しかバス停では待ってイナカッタ。デモ、ファイ!ジャパニーズ・ピーポー!運転手は1分モ遅れたのです。私の誇り高きゲルマン民族の血が許しマセン!」
「失礼ですが、別にあなたでなくても、路線バスとなるとそういう事もあり得ます。他に乗客はいましたか?」
「私一人デース!1分も遅れておいて、謝りモしませんデシタ。」
「もし、お急ぎだったのであれば、その旨をお伝えしてもらえば、乗車後になるべく早く到着する努力は、いたしましたのに残念です。そんな時は次回からは、一言お声がけ下さい。」
「急いでナイの!気持ちの問題!せめて交通費くらい奢って欲しかったノニ、悲しいデス!」
「バブル時代の、ワンレンボディコンねぇちゃんじゃないんだから。今は令和。それにあなたは西洋紳士でしょう。交通費を奢れとか言っちゃダメ。」
「私のコトを、ただの外国人だと思ワナイデクダサイ!ゲルマン民族の生き様の美意識ハ、歴史を通じて培われたモノナンデス!」
「ゲルマン民族だから、イケメンなのは分かりましたから。羨ましい限りです。しかし、ここは日本。そして、日本には日本の流儀があります。ネットの情報は参考になることもありますが、それが全てではありません。」
「私は今、ミギの頬を打たれたけれど、ヒダリの頬を差し出す元気もアリマセン。」
「期待を裏切られる出来事もまた、旅の一部ですよ。経験を通じて、世界の多様性を学ぶことができる。それが旅の醍醐味ではないでしょうか。そして、私たち日本人も完璧ではありません。人間はどこにいても不完全ですから。」
「私ニ元気をクダサイ。」
「温かい物を飲まれてはいかがですか?日本では寝る前に温かい麦茶を飲みます。胃に優しいですよ。」
「優しさノ成分デ出来ているのですか?」
「出来てるかもしれないです。今、泊られている宿主に頼めば、どこも置いてありますよ。」
「サンキュー。日本人はやはり良い人達ですネ。」
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