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ランズベリーの義妹は愛していない
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登場人物
クロエ(語り手・14歳)——没落した小貴族の娘。母エレーヌとともにランズベリー公爵家に迎え入れられる。
クラリス・ランズベリー(16歳)——ランズベリー公爵令嬢。クロエの義姉。
ロバート・ランズベリー——ランズベリー公爵。クロエの母の再婚相手。
エレーヌ——クロエの母。ロバートの後妻。
レオノール殿下(17歳)——王太子。クラリスの婚約者。
ダリウス——侯爵家嫡男。王太子の取り巻き筆頭。
オスカー——伯爵家次男。王太子の取り巻き。
ヒューゴ——子爵家長男。王太子の取り巻き。三人の中で唯一まとも。
1.新しい家族
私の名前はクロエ。つい半年前まで、没落した小貴族の娘だった。
父が亡くなってから、母のエレーヌと二人で細々と暮らしていた。使用人も屋敷もなくなって、それでも母は一度も愚痴をこぼさなかった。私も泣かなかった。泣いても何も変わらないと、子供ながらに分かっていたから。
転機はある日突然やってきた。
ランズベリー公爵——ロバート様が、母に縁談を申し出てきたのだ。
父とロバート様はかつての同僚だったらしい。父が亡くなったと聞いて、ずっと気にかけていてくださったとのことだった。ロバート様も奥様を亡くされて間もなく、事情が事情だけに、互いの利害が一致したというか……なんというか。
母は最初、何度も断った。
「身に余るお話です」
それが母の口癖だった。でも最終的には受け入れた。私のためだと、分かっていた。だから私も何も言わなかった。
こうして私たちはランズベリー公爵邸に移り住むことになった。
公爵邸は広かった。
廊下を歩くたびに迷子になりそうで、最初の一週間は母の部屋から一人で出るのが怖かった。
そして公爵家の令嬢、クラリスお姉様。
初めて顔を合わせた時、私はてっきり冷たくされると思っていた。突然押しかけてきた他所の母娘なのだから、歓迎されるはずがない。そう身構えていた。
ところがお姉様は私をじっと見て、一言こう言った。
「よろしく、クロエ」
それだけだった。余計なことは何もない。愛想よく笑うわけでも、わざとらしく優しくするわけでもない。ただ、当たり前のことのように「よろしく」と。
なぜかその一言が、一番ほっとした。
母とロバート様の関係も、最初はぎこちなかった。母は何かにつけて「申し訳ありません」と言い、ロバート様は少し困ったような顔をしていた。でも季節が一つ変わる頃には、食卓の空気がずいぶん柔らかくなっていた。
そして春。私はクラリスお姉様と一緒に、貴族学校へ通い始めた。
2.半歩うしろ
貴族学校に通い始めて、三ヶ月が経った。
私は今日も、お姉様の半歩うしろを歩く。
別に遠慮しているわけじゃない。ただなんとなく、この距離が居心地いい。お姉様はランズベリー公爵家の令嬢で、私はその義妹。立場がどうこうではなく、ただそれが自然な気がするのだ。
「クロエ、そんなに遅れないで」
振り返ったお姉様が苦笑する。
「遠慮じゃないんですけど」
「じゃあ、なに?」
「……習慣です」
お姉様はしばらく私を見て、それからため息をついた。呆れたのかと思ったら、すっと手を差し出してきた。
「ほら。遅れるなら繋いでおく」
少し照れくさそうなお姉様を見て、私は思わず笑ってしまった。
こうして半歩うしろを歩く習慣は、あっさり矯正されてしまったのだった。
3.図書室の王太子
貴族学校には王太子殿下も通っている。
といっても、私のような身分の者が直接お目にかかる機会はそうそうない。殿下は上級生で、取り巻きの令息たちを引き連れて颯爽と廊下を歩く。遠目に見ても分かる、いかにも「王太子」という佇まいだ。
クラリスお姉様は殿下の婚約者である。
婚約者、とはいっても、お姉様が殿下の話をする時はいつも少し他人事のような顔をしている。
「殿下はご立派な方よ」
と、お姉様は言う。褒めているのか何なのか、よく分からない言い方で。
私がある日、殿下と初めて遭遇したのは、ごく普通の午後のことだった。
図書室で調べ物をしていた私は、目当ての本を棚の上段に見つけた。背伸びをしても届かない。踏み台を探して辺りを見回していたら、すっと手が伸びてきて、あっさり本を取ってくれた。
「これか?」
見上げると、見知らぬ上級生が本を差し出していた。整った顔立ちに、少し退屈そうな目。
「あ、ありがとうございます」
受け取って会釈した。それだけのつもりだった。
「見ない顔だな。何年生だ」
「二年です」
「名前は」
「クロエと申します」
「家は?」
少し畳み掛けるような聞き方だったけれど、悪意は感じなかった。ただ純粋に、気になっただけという感じ。私は正直に答えた。
「ランズベリー公爵家にお世話になっております」
その瞬間、上級生の表情がかすかに変わった。
「……ランズベリー? クラリスの?」
「義妹です」
上級生はしばらく私を見ていた。何か言いたそうな顔をして、でも結局何も言わず、「そうか」とだけ言って立ち去った。
後から廊下で一緒になったお姉様に話したら、お姉様は少し目を細めた。
「それ、レオノール殿下よ」
「え」
「婚約者の私より先に、義妹と図書室で話すのね」
呆れているのか笑っているのか分からない顔で、お姉様はそう言った。
私は何とも言えない気まずさを覚えながら、でも同時に思った。
——殿下、婚約者のお姉様にああいう顔を向けたことは、あるのだろうか。
4.勘違いの芽
それから殿下は、ちょくちょく図書室に現れるようになった。
最初は偶然かと思っていた。でも三回、四回と続くうちに、さすがに私も気づいた。
偶然ではない。
取り巻きの令息たちも一緒に来る。殿下が本棚を眺めるふりをしている横で、令息たちは私をちらちら見ながら何やらこそこそ話している。
——あれがランズベリーの義妹か。
——確かに可愛らしいな。
——殿下がお目をかけるわけだ。
聞こえていますよ、と言いたかったけれど、言えなかった。相手は王太子殿下とその取り巻きだ。私ごときが口を挟める雰囲気ではない。
殿下は毎回、当たり前のように話しかけてくる。
「今日は何を読んでいる」
「歴史書です」
「難しいものを読むんだな」
「授業の課題です」
会話といえば、だいたいこんな調子だった。殿下が話しかけて、私が短く答える。殿下はそれで満足そうな顔をしている。取り巻きたちはその様子を見て、またこそこそする。
私にはさっぱり分からなかった。
殿下にはクラリスお姉様という婚約者がいる。お姉様は美しくて聡明で、どこに出しても恥ずかしくない公爵令嬢だ。なのになぜ、私などに時間を割くのか。
ある日、思い切って聞いてみた。
「殿下は、クラリスお姉様とはよくお話しされるのですか」
殿下は少し間を置いた。
「……クラリスは、隙がない」
「はい?」
「いつも完璧なんだ。何を言っても正しい返事が返ってくる。話しているというより、謁見している気分になる」
それはお姉様が婚約者として礼を尽くしているからでは、と思ったけれど、黙っていた。
殿下は続けた。
「お前は違う。話しやすい」
——ああ。
私はその時、なんとなく理解した。そして同時に、静かに思った。
——これは、まずい方向に向かっている。
案の定、お姉様はすでに把握していた。
その日の帰り道、お姉様は前を向いたまま静かに言った。
「殿下、また来ていたわね」
「……お姉様、見ていたんですか」
「図書室の前を通っただけよ」
お姉様は少し間を置いて、それから小さくため息をついた。
「クロエ、あなたは何も悪くないから」
「でも——」
「何も悪くない」
繰り返すお姉様の声は、怒ってもいないし、悲しんでもいない。ただ静かに、少し、疲れたような色があった。
私は俯いた。
この状況をどうにかしたいけれど、どうにもできない。私が殿下に無礼を働くわけにはいかないし、かといってこのまま続くのも困る。
「お姉様は……嫌ではないんですか」
「嫌よ」
即答だった。
「でも今は静観する。殿下がどこまでおバカなのか、見極めてから動いた方が得策だもの」
お姉様はそう言って、すっと私の手を取った。
「それより早く帰りましょう。今日のお茶、クロエが選んでいいわよ」
——この人は本当に、と私は思った。
怒る場面で怒らず、慌てる場面で慌てず。ただ静かに、先を読んでいる。
私がお姉様を好きな理由が、また一つ増えた気がした。
5.取り巻きたち
レオノール殿下の取り巻きは、主に三人だった。
一人目はダリウス。侯爵家の嫡男で、取り巻きの中では一番頭が回る。回るのだが、その頭を全て殿下の顔色を読むことに使っている、残念な人物だ。
二人目はオスカー。伯爵家の次男で、人当たりがよく誰とでも仲良くなれる。ただし風向きを読むのが得意すぎて、強い方に必ず流される。
三人目はヒューゴ。子爵家の長男で、三人の中では一番素直だ。素直すぎて、殿下が白と言えば白、黒と言えば黒になる。
三人とも、悪人ではない。
ただ揃いも揃って、殿下に本当のことを言える人間ではなかった。
この三人が問題だと私が認識したのは、ある昼食の場でのことだった。
中庭で私がクラリスお姉様と昼食をとっていたところへ、殿下が取り巻きを連れてやってきた。
「クロエ、ここにいたのか」
——なぜ私の名前で来るんですか。婚約者のお姉様がいるのに。
心の中で呟きながら、私は立ち上がって会釈した。お姉様も静かに会釈する。
「殿下、本日はよいお天気ですね」
お姉様の声は完璧だった。婚約者として申し分ない、穏やかで品のある挨拶。
殿下は「ああ」と短く返した。そしてなぜか、お姉様ではなく私に向かって言った。
「一緒に食べないか」
取り巻きの三人がニヤニヤしているのが視界の端に映った。
お姉様は表情一つ変えなかった。
「殿下、私どもはもう食事を終えるところでございます。またの機会に」
穏やかに、しかし明確に断った。殿下は少し不満そうな顔をしたが、それ以上は言わなかった。
三人が立ち去った後、私はそっとお姉様の顔を見た。
お姉様は残りのサンドイッチを静かに口に運んでいた。
「……お姉様」
「おいしいわね、今日のサンドイッチ」
「お姉様」
「ハムとチーズの比率が絶妙」
——怒っていない、とは言わせませんよ。
「お姉様、怒っていいんですよ」
お姉様はようやく私を見た。
「怒るほどのことでもないわ。ただ——」
少し間があった。
「あの三人が厄介ね」
「取り巻きの方たちが?」
「殿下一人なら、まだ御しやすい。でもあの三人が囃し立てる限り、殿下は自分の勘違いに気づかない。むしろどんどん確信を深めていく」
お姉様は静かに続けた。
「ダリウス君は殿下の歓心を買うためなら何でも利用する。オスカー君は流れに乗るだけ。ヒューゴ君は疑うことを知らない」
「……お姉様、いつの間にそこまで」
「観察は大事よ、クロエ」
お姉様はそう言って、紅茶を一口飲んだ。
「三人とも、本来は悪い子たちじゃないと思う。ただ王太子の取り巻きという立場が、彼らをそうさせている」
——お姉様は殿下にも取り巻きにも、怒りより分析を向けている。
私はそれが少し怖かった。
怒っている人間は、感情が先走って隙ができる。でもお姉様のように静かに観察して、静かに考えている人間は——
いざとなった時、本当に強い。
「クロエ、また難しい顔」
「……お姉様が少し怖いと思っていました」
お姉様は一瞬きょとんとして、それから小さく笑った。
「それは褒め言葉として受け取っておくわ」
6.ダリウスの策略
問題が起きたのは、それから間もなくのことだった。
放課後の廊下で、私は偶然ダリウスと二人になった。
正確には偶然ではなかったかもしれない。今思えば、向こうは計算していたのだと思う。
「クロエ嬢」
ダリウスは人当たりのいい笑顔で話しかけてきた。
「殿下があなたのことを大変気にかけていらっしゃる。ご存知ですよね」
「……はい」
「殿下のお気持ちに、応えて差し上げてはいかがでしょう」
私は一瞬、耳を疑った。
「……それはどういう意味ですか」
「殿下はあなたに好意をお持ちです。身分がどうこうは、殿下のお気持ち次第でどうにでもなる」
笑顔のまま、さらりと言った。
——この人は今、婚約者であるクラリスお姉様の存在を完全に消した。
私は深呼吸を一つした。
「ダリウス様」
「はい」
「殿下にはクラリスお姉様という婚約者がいらっしゃいます」
「それはそれ、これはこれということもございます」
「私にはございません」
ダリウスは少し眉を上げた。想定外の返答だったのかもしれない。
私は続けた。
「私はランズベリー公爵家にお世話になっている身です。その公爵家の令嬢であるクラリスお姉様を差し置いて、殿下のお気持ちに応えるなど、あり得ません。身分以前の問題です」
ダリウスはしばらく私を見ていた。
それから笑顔のまま、すっと引いた。
「……失礼しました」
立ち去る背中を見ながら、私は静かに息を吐いた。
——この人は今ので諦めない。むしろ殿下に「クロエは奥ゆかしくて健気だ」とか吹き込みに行くに決まっている。
予感は翌日、的中した。
図書室に現れた殿下の目が、以前より熱を帯びていた。
「クロエ、昨日ダリウスに何か言ったそうだな」
「はい。身分を弁えたことを申し上げました」
「……それでいい」
殿下は静かに言った。
「無理強いするつもりはない。ただ——」
そこで少し言いよどんで、続けた。
「俺はお前のことが、気になっている」
——ああ、殿下。
私は心の中で深くため息をついた。
ダリウスの思惑通りだ。私が断れば断るほど、殿下の中で私の株が上がっていく。奥ゆかしい、健気だ、と。
「殿下」
私は真っ直ぐ殿下を見た。
「私はクラリスお姉様の義妹です。それ以上でも以下でもありません。どうかそのようにお考えください」
殿下は何か言いたそうな顔をした。でも私の目を見て、黙った。
——少しは伝わっただろうか。
その晩、お姉様に報告すると、お姉様は静かに聞いていた。
全て話し終えると、一言だけ言った。
「ダリウス君、思ったより早かったわね」
「お姉様、怒らないんですか」
「怒っているわよ」
「……全然そう見えません」
「怒りはエネルギーよ、クロエ。無駄に使うものじゃない」
お姉様は扇を取り出して、ゆっくりと開いた。
「ここから先は、少し本気を出すわ」
7.クラリス、動く
「本気を出す」とお姉様が言った翌日から、何かが変わり始めた。
変わったといっても、傍目には何も変わっていない。お姉様は相変わらず完璧な公爵令嬢として、優雅に学校生活を送っている。殿下への態度も、取り巻きへの態度も、何一つ変わっていない。
ただ——
「クロエ、今日の午後は一緒に図書室へ行きましょう」
「クロエ、放課後は私と一緒に帰るわよ」
「クロエ、昼食は中庭より室内にしましょう」
私の行動範囲が、さりげなく管理され始めた。
要するに、お姉様は私が殿下と二人になれる状況を、静かに全て潰していたのだ。
鮮やかすぎて、最初は気づかなかった。
殿下の側も、私に近づこうとするたびにクラリスお姉様が自然な形でそこにいる。廊下で話しかけようとすれば、お姉様がすっと隣に立っている。図書室に来れば、お姉様も一緒にいる。
殿下は困惑しているようだった。
取り巻きの三人も、どうにかお姉様を出し抜こうとあれこれ画策しているらしかった。でもお姉様の先読みの前では、ことごとく空振りに終わった。
ある日の放課後、オスカーが私に近づいてきた。
「クロエ嬢、実は殿下からお手紙が——」
「まあオスカー様」
横からお姉様の声が入った。
「殿下から義妹へのお手紙でしたら、私がお預かりしますわ。家族ですもの、私から渡します」
笑顔だった。完璧な笑顔だった。
オスカーは引きつった顔で「いえ、その……」と言いよどんで、結局手紙を差し出した。
その場を離れてから、私はそっとお姉様を見上げた。
「……お姉様、その手紙」
「後で読むわ。参考資料として」
「捨てないんですか」
「証拠は取っておくものよ」
さらっと恐ろしいことを言って、お姉様は歩き続けた。
その頃から、取り巻きの三人の間に微妙な空気が漂い始めた。
ダリウスは相変わらず策を弄しているようだったが、どこか焦りが見え始めた。オスカーはお姉様の笑顔が怖いのか、私への接触を避けるようになった。
一番変化が大きかったのは、ヒューゴだった。
ある日の昼休み、ヒューゴが一人で私に近づいてきた。
珍しく、取り巻きの顔をしていなかった。
「クロエ嬢、少しよろしいですか」
周囲を確認してから、小声で言った。
「……僕は、この状況がよくないと思っています」
私は少し驚いた。
「殿下は悪い方じゃない。ただ、誰も本当のことを言わないから、どんどん方向がおかしくなっていて」
ヒューゴは困ったような顔で続けた。
「僕には止められないんです。殿下に意見できるような立場じゃないし、ダリウスには丸め込まれてしまうし」
——この人は、まともだ。
「ヒューゴ様」
「はい」
「その話、クラリスお姉様にしていただけますか」
ヒューゴは少し目を見開いた。
「……クラリス嬢に?」
「お姉様は怖くないですよ」
少し間があった。
「……本当ですか」
「怒りをエネルギーに変える方なので、無駄に使いません」
お姉様の言葉をそのまま伝えたら、ヒューゴは不思議そうな顔をした。でも、小さく頷いた。
その日の夕方、お姉様はヒューゴと短い時間、言葉を交わした。
内容は教えてもらえなかったけれど、お姉様は戻ってきた時に扇を開きながら言った。
「内側に一人、確保できたわ」
「ヒューゴ様が?」
「あの子は使える。というより、最初からまともだったのね」
お姉様は少し目を細めた。
「ダリウス君とオスカー君は、そろそろ自分たちが間違った馬に乗っていることに気づき始めている。人間、追い詰められると保身に走るものよ」
「……お姉様、全部見えているんですか」
「全部ではないわ」
お姉様は窓の外に目を向けた。
「ただ、もうすぐ殿下が動く気がする。それまでに準備を整えておきたいだけ」
——もうすぐ、殿下が動く。
その言葉が、胸の奥に静かに落ちた。
嵐の前の静けさ、とはこういうことを言うのだろうか。
私はその夜、なかなか寝付けなかった。
8.学期末夜会
嵐は、学期末の夜会という形でやってきた。
王立貴族学校恒例の、学期末夜会。生徒とその家族が一堂に会する、年に一度の正式な社交の場だ。ロバート父様もエレーヌ母様も出席する。当然、王家も来る。
「クロエ、今日は私の隣から離れないで」
会場に向かう馬車の中で、お姉様は静かに言った。
「離れません」
「何があっても」
「何があっても」
私が頷くと、お姉様は満足そうに前を向いた。
エレーヌ母様が心配そうな顔で私を見ていた。ロバート父様は無言だったが、いつもより目が鋭かった。二人とも、この数週間の状況はある程度把握しているはずだった。
「エレーヌ」
ロバート父様が静かに言った。
「何かあれば、私が動く」
母様は小さく頷いた。
馬車の中の空気は穏やかだったけれど、全員が静かに戦闘態勢に入っていた。
夜会は華やかだった。
煌めくシャンデリア、色とりどりのドレス、あちこちで交わされる社交の言葉。普段なら少し圧倒されるような光景も、今夜は全て遠い景色のように感じた。
殿下はすぐに見つかった。
正装姿のレオノール殿下は、率直に言って凛々しかった。隣にはダリウスとオスカー。ヒューゴは少し離れた場所に立っていて、私と目が合うと小さく頷いた。
準備はできている、という合図だと受け取った。
殿下はしばらく王の隣で来賓の挨拶を受けていたが、やがて人の波をかき分けてこちらに向かってきた。
真っ直ぐに、私を見ながら。
——来た。
お姉様の手が、そっと私の手に重なった。
殿下は私たちの前に立った。ダリウスとオスカーが後ろに控えている。
「クラリス」
殿下はお姉様を見た。
「今日は話がある」
お姉様は完璧な笑顔で答えた。
「まあ殿下、改まってどうされましたか」
殿下は一度深呼吸をした。
——ああ、殿下。やめてください。お願いだから。
私の心の中の声など届くはずもなく、殿下は口を開いた。
「クラリス、俺はお前との婚約を——」
「殿下」
お姉様の声が、静かに遮った。
笑顔は消えていた。代わりに、私が初めて見るお姉様の顔があった。怒りでも悲しみでもない。ただ純粋に、呆れた顔。
「続きは聞かなくても分かります」
殿下が一瞬、たじろいだ。
「ただ、ここは夜会の会場です。父も母も、王様もいらっしゃる。続きをお話しになるなら、全員に聞こえる形でどうぞ」
お姉様は扇を開いた。ゆっくりと、丁寧に。
「それでもよろしければ、どうぞ続けてください、殿下」
殿下の顔が、微かに赤くなった。
周囲の視線が、じわじわと集まり始めていた。
ダリウスがすかさず前に出た。
「クラリス嬢、殿下のお言葉には深い御考えが——」
「ダリウス様」
私は一歩前に出た。
自分でも驚くくらい、声が落ち着いていた。
「殿下のお言葉を補足されるということは、殿下の婚約破棄にダリウス様も賛成していらっしゃるということでしょうか」
ダリウスが固まった。
「そ、それは……」
「はっきりおっしゃってください。後で言った言わないになっても困りますので」
周囲の視線が今度はダリウスに集まった。ダリウスの顔から、すっと血の気が引いた。
オスカーはすでに半歩後ろに下がっていた。
遠くでヒューゴが、静かに壁際に移動するのが見えた。
——離脱完了。
殿下は、もはや完全に孤立していた。
「……俺は」
殿下がようやく口を開いた。
「俺はクロエのことが——」
「愛していません」
殿下の言葉に、私は被せた。
静かに、はっきりと。
「これまでも何度も申し上げました。私は身分が違います。殿下が私に向けてくださっていたものは、私には受け取れません」
「しかし、お前の態度は——」
「礼儀です」
「え?」
「殿下が王太子殿下だから、礼を尽くしていただけです。好意とは別物です」
シャンデリアの光の下、夜会の会場がしんと静まり返った。
殿下は何も言えなくなっていた。
お姉様が静かに前に出た。扇を閉じながら、まるで世間話でもするように言った。
「殿下、私からも一言よろしいですか」
殿下が頷く。
「私はこの数週間、殿下がどこまでおバカなのか静観しておりました」
会場のどこかで、誰かが小さく咳をした。
「結論が出ました。想像より、だいぶおバカでした」
ダリウスとオスカーが石になった。
お姉様は続けた。
「婚約者である私より義妹と話したがり、取り巻きの言葉を鵜呑みにし、夜会の場で公衆の面前で婚約破棄を切り出そうとする。王太子妃教育を真剣に受けてきた私への敬意は、どこにいったのでしょう」
殿下の顔が、真っ青になった。
「こちらから願い下げ、と言いたいところですが——」
お姉様は一度だけ、私を見た。
私は小さく頷いた。
「——それは父に判断を委ねます。ただし、慰謝料はきっちり王家に請求させていただきます。義妹を巻き込んだ分も含めて」
静寂の中、足音が聞こえた。
ロバート父様だった。
父様はゆっくりと殿下の前に立ち、静かに、しかし会場中に聞こえる声で言った。
「殿下。我がランズベリー家への王家からの援助は、本日付けで全て辞退させていただきます」
殿下が息を呑んだ。
「それはどういう——」
「援助とは信頼の証。その信頼が、今夜ここで失われました」
父様は一礼して、下がった。
最後にエレーヌ母様が、ゆっくりと扇を開きながら殿下を見た。
「殿下、うちの娘たちに恥をかかせておいて、その顔は何かしら」
にっこりと、完璧な笑顔で。
その後、国王陛下が殿下を連れて奥の間に消えていった。
どんな雷が落ちたかは、想像にお任せする。
9.その後
翌日、王家から父様に丁重な詫び状が届いたと聞いた。
取り巻きのその後は——ダリウスは父親に呼び戻されて一週間登校しなかった。オスカーは登校してきたものの、しばらく誰とも目を合わせなかった。
ヒューゴだけは翌日普通に登校してきて、私に深々と頭を下げた。
「クロエ嬢、この度はご迷惑を——」
「ヒューゴ様は止めようとしてくださっていたでしょう」
「それでも、もっと早く動くべきでした」
真剣な顔だった。私は少し考えて、言った。
「ではこれからはっきり言える人になってください。それで十分です」
ヒューゴはもう一度、深く頭を下げた。
そして殿下は——。
数日後、殿下は改まった様子でクラリスお姉様の前に現れた。取り巻きも連れず、一人で。
「クラリス、この度は……本当に、申し訳なかった」
お姉様はしばらく殿下を見ていた。
それから扇を開いて、口元を隠しながら言った。
「反省していらっしゃるなら、結構です」
「婚約については——」
「それは父と王様にお決めいただくことです。私の一存ではなんとも」
殿下はまだ何か言いたそうだったが、お姉様は続けた。
「ただ殿下、一つだけ申し上げてもよろしいですか」
「……なんだ」
「私が完璧に見えたのは、殿下の婚約者として恥ずかしくないよう努力してきたからです。それを『隙がない』と感じて遠ざかり、努力もせず話しかけやすい相手に気持ちを向けるのは——」
お姉様は一拍置いた。
「少し、失礼だと思いませんか」
殿下の顔が歪んだ。
反論できなかった。
正しいことを言われたから。
「……そうだな」
絞り出すような声だった。
「お前の言う通りだ」
お姉様は扇を閉じた。
「分かっていただければ、それで十分です」
その様子を少し離れた場所から見ていた私は、隣に来たエレーヌ母様にそっと耳打ちした。
「お姉様、怖いですね」
母様はくすりと笑った。
「クラリス様はね、クロエのこととなると特に怖いのよ」
「……え」
「気づいていなかったの?」
母様は穏やかな目で、お姉様の背中を見ていた。
「あの子、あなたのことを本当に大切にしているから」
私は思わず、お姉様の背中を見た。
殿下と向き合って、静かに、でも真っ直ぐに立っているお姉様の背中。
——知っていた。
でも改めて言葉にされると、目の奥が少し熱くなった。
「……母様」
「なに」
「私、この家に来てよかったです」
母様は何も言わなかった。
ただ、そっと私の肩を引き寄せた。
それから数週間後。
婚約は継続されることになった。
王家からの正式な謝罪と、慰謝料に相当する「特別な贈り物」も届いた。父様は受け取ったが、笑顔は少しも見せなかったと聞いた。
殿下は以来、別人のように大人しくなった。
クラリスお姉様と話す時は、以前より少しだけ、ぎこちない。でも今度は遠ざかるのではなく、向き合おうとするぎこちなさだった。
ダリウスとオスカーは戻ってきたものの、すっかり大人しくなった。ヒューゴは殿下に以前より率直に意見するようになったと、後になって聞いた。
10.カモミールのお茶
そして私は今日も、お姉様の隣を歩いている。
半歩うしろではなく、ちゃんと隣を。
「クロエ」
「なんですか」
「今日のお茶、何にする」
「……クロエが選んでいいんですか」
「毎回聞かないの。いいから選んで」
私は少し考えて、言った。
「じゃあカモミールで」
「珍しい。どうして」
「なんか、ほっとしたい気分なので」
お姉様は少し目を細めた。
「そうね」
それだけ言って、お姉様は前を向いた。
穏やかな午後の光の中を、二人で並んで歩いた。
クロエ(語り手・14歳)——没落した小貴族の娘。母エレーヌとともにランズベリー公爵家に迎え入れられる。
クラリス・ランズベリー(16歳)——ランズベリー公爵令嬢。クロエの義姉。
ロバート・ランズベリー——ランズベリー公爵。クロエの母の再婚相手。
エレーヌ——クロエの母。ロバートの後妻。
レオノール殿下(17歳)——王太子。クラリスの婚約者。
ダリウス——侯爵家嫡男。王太子の取り巻き筆頭。
オスカー——伯爵家次男。王太子の取り巻き。
ヒューゴ——子爵家長男。王太子の取り巻き。三人の中で唯一まとも。
1.新しい家族
私の名前はクロエ。つい半年前まで、没落した小貴族の娘だった。
父が亡くなってから、母のエレーヌと二人で細々と暮らしていた。使用人も屋敷もなくなって、それでも母は一度も愚痴をこぼさなかった。私も泣かなかった。泣いても何も変わらないと、子供ながらに分かっていたから。
転機はある日突然やってきた。
ランズベリー公爵——ロバート様が、母に縁談を申し出てきたのだ。
父とロバート様はかつての同僚だったらしい。父が亡くなったと聞いて、ずっと気にかけていてくださったとのことだった。ロバート様も奥様を亡くされて間もなく、事情が事情だけに、互いの利害が一致したというか……なんというか。
母は最初、何度も断った。
「身に余るお話です」
それが母の口癖だった。でも最終的には受け入れた。私のためだと、分かっていた。だから私も何も言わなかった。
こうして私たちはランズベリー公爵邸に移り住むことになった。
公爵邸は広かった。
廊下を歩くたびに迷子になりそうで、最初の一週間は母の部屋から一人で出るのが怖かった。
そして公爵家の令嬢、クラリスお姉様。
初めて顔を合わせた時、私はてっきり冷たくされると思っていた。突然押しかけてきた他所の母娘なのだから、歓迎されるはずがない。そう身構えていた。
ところがお姉様は私をじっと見て、一言こう言った。
「よろしく、クロエ」
それだけだった。余計なことは何もない。愛想よく笑うわけでも、わざとらしく優しくするわけでもない。ただ、当たり前のことのように「よろしく」と。
なぜかその一言が、一番ほっとした。
母とロバート様の関係も、最初はぎこちなかった。母は何かにつけて「申し訳ありません」と言い、ロバート様は少し困ったような顔をしていた。でも季節が一つ変わる頃には、食卓の空気がずいぶん柔らかくなっていた。
そして春。私はクラリスお姉様と一緒に、貴族学校へ通い始めた。
2.半歩うしろ
貴族学校に通い始めて、三ヶ月が経った。
私は今日も、お姉様の半歩うしろを歩く。
別に遠慮しているわけじゃない。ただなんとなく、この距離が居心地いい。お姉様はランズベリー公爵家の令嬢で、私はその義妹。立場がどうこうではなく、ただそれが自然な気がするのだ。
「クロエ、そんなに遅れないで」
振り返ったお姉様が苦笑する。
「遠慮じゃないんですけど」
「じゃあ、なに?」
「……習慣です」
お姉様はしばらく私を見て、それからため息をついた。呆れたのかと思ったら、すっと手を差し出してきた。
「ほら。遅れるなら繋いでおく」
少し照れくさそうなお姉様を見て、私は思わず笑ってしまった。
こうして半歩うしろを歩く習慣は、あっさり矯正されてしまったのだった。
3.図書室の王太子
貴族学校には王太子殿下も通っている。
といっても、私のような身分の者が直接お目にかかる機会はそうそうない。殿下は上級生で、取り巻きの令息たちを引き連れて颯爽と廊下を歩く。遠目に見ても分かる、いかにも「王太子」という佇まいだ。
クラリスお姉様は殿下の婚約者である。
婚約者、とはいっても、お姉様が殿下の話をする時はいつも少し他人事のような顔をしている。
「殿下はご立派な方よ」
と、お姉様は言う。褒めているのか何なのか、よく分からない言い方で。
私がある日、殿下と初めて遭遇したのは、ごく普通の午後のことだった。
図書室で調べ物をしていた私は、目当ての本を棚の上段に見つけた。背伸びをしても届かない。踏み台を探して辺りを見回していたら、すっと手が伸びてきて、あっさり本を取ってくれた。
「これか?」
見上げると、見知らぬ上級生が本を差し出していた。整った顔立ちに、少し退屈そうな目。
「あ、ありがとうございます」
受け取って会釈した。それだけのつもりだった。
「見ない顔だな。何年生だ」
「二年です」
「名前は」
「クロエと申します」
「家は?」
少し畳み掛けるような聞き方だったけれど、悪意は感じなかった。ただ純粋に、気になっただけという感じ。私は正直に答えた。
「ランズベリー公爵家にお世話になっております」
その瞬間、上級生の表情がかすかに変わった。
「……ランズベリー? クラリスの?」
「義妹です」
上級生はしばらく私を見ていた。何か言いたそうな顔をして、でも結局何も言わず、「そうか」とだけ言って立ち去った。
後から廊下で一緒になったお姉様に話したら、お姉様は少し目を細めた。
「それ、レオノール殿下よ」
「え」
「婚約者の私より先に、義妹と図書室で話すのね」
呆れているのか笑っているのか分からない顔で、お姉様はそう言った。
私は何とも言えない気まずさを覚えながら、でも同時に思った。
——殿下、婚約者のお姉様にああいう顔を向けたことは、あるのだろうか。
4.勘違いの芽
それから殿下は、ちょくちょく図書室に現れるようになった。
最初は偶然かと思っていた。でも三回、四回と続くうちに、さすがに私も気づいた。
偶然ではない。
取り巻きの令息たちも一緒に来る。殿下が本棚を眺めるふりをしている横で、令息たちは私をちらちら見ながら何やらこそこそ話している。
——あれがランズベリーの義妹か。
——確かに可愛らしいな。
——殿下がお目をかけるわけだ。
聞こえていますよ、と言いたかったけれど、言えなかった。相手は王太子殿下とその取り巻きだ。私ごときが口を挟める雰囲気ではない。
殿下は毎回、当たり前のように話しかけてくる。
「今日は何を読んでいる」
「歴史書です」
「難しいものを読むんだな」
「授業の課題です」
会話といえば、だいたいこんな調子だった。殿下が話しかけて、私が短く答える。殿下はそれで満足そうな顔をしている。取り巻きたちはその様子を見て、またこそこそする。
私にはさっぱり分からなかった。
殿下にはクラリスお姉様という婚約者がいる。お姉様は美しくて聡明で、どこに出しても恥ずかしくない公爵令嬢だ。なのになぜ、私などに時間を割くのか。
ある日、思い切って聞いてみた。
「殿下は、クラリスお姉様とはよくお話しされるのですか」
殿下は少し間を置いた。
「……クラリスは、隙がない」
「はい?」
「いつも完璧なんだ。何を言っても正しい返事が返ってくる。話しているというより、謁見している気分になる」
それはお姉様が婚約者として礼を尽くしているからでは、と思ったけれど、黙っていた。
殿下は続けた。
「お前は違う。話しやすい」
——ああ。
私はその時、なんとなく理解した。そして同時に、静かに思った。
——これは、まずい方向に向かっている。
案の定、お姉様はすでに把握していた。
その日の帰り道、お姉様は前を向いたまま静かに言った。
「殿下、また来ていたわね」
「……お姉様、見ていたんですか」
「図書室の前を通っただけよ」
お姉様は少し間を置いて、それから小さくため息をついた。
「クロエ、あなたは何も悪くないから」
「でも——」
「何も悪くない」
繰り返すお姉様の声は、怒ってもいないし、悲しんでもいない。ただ静かに、少し、疲れたような色があった。
私は俯いた。
この状況をどうにかしたいけれど、どうにもできない。私が殿下に無礼を働くわけにはいかないし、かといってこのまま続くのも困る。
「お姉様は……嫌ではないんですか」
「嫌よ」
即答だった。
「でも今は静観する。殿下がどこまでおバカなのか、見極めてから動いた方が得策だもの」
お姉様はそう言って、すっと私の手を取った。
「それより早く帰りましょう。今日のお茶、クロエが選んでいいわよ」
——この人は本当に、と私は思った。
怒る場面で怒らず、慌てる場面で慌てず。ただ静かに、先を読んでいる。
私がお姉様を好きな理由が、また一つ増えた気がした。
5.取り巻きたち
レオノール殿下の取り巻きは、主に三人だった。
一人目はダリウス。侯爵家の嫡男で、取り巻きの中では一番頭が回る。回るのだが、その頭を全て殿下の顔色を読むことに使っている、残念な人物だ。
二人目はオスカー。伯爵家の次男で、人当たりがよく誰とでも仲良くなれる。ただし風向きを読むのが得意すぎて、強い方に必ず流される。
三人目はヒューゴ。子爵家の長男で、三人の中では一番素直だ。素直すぎて、殿下が白と言えば白、黒と言えば黒になる。
三人とも、悪人ではない。
ただ揃いも揃って、殿下に本当のことを言える人間ではなかった。
この三人が問題だと私が認識したのは、ある昼食の場でのことだった。
中庭で私がクラリスお姉様と昼食をとっていたところへ、殿下が取り巻きを連れてやってきた。
「クロエ、ここにいたのか」
——なぜ私の名前で来るんですか。婚約者のお姉様がいるのに。
心の中で呟きながら、私は立ち上がって会釈した。お姉様も静かに会釈する。
「殿下、本日はよいお天気ですね」
お姉様の声は完璧だった。婚約者として申し分ない、穏やかで品のある挨拶。
殿下は「ああ」と短く返した。そしてなぜか、お姉様ではなく私に向かって言った。
「一緒に食べないか」
取り巻きの三人がニヤニヤしているのが視界の端に映った。
お姉様は表情一つ変えなかった。
「殿下、私どもはもう食事を終えるところでございます。またの機会に」
穏やかに、しかし明確に断った。殿下は少し不満そうな顔をしたが、それ以上は言わなかった。
三人が立ち去った後、私はそっとお姉様の顔を見た。
お姉様は残りのサンドイッチを静かに口に運んでいた。
「……お姉様」
「おいしいわね、今日のサンドイッチ」
「お姉様」
「ハムとチーズの比率が絶妙」
——怒っていない、とは言わせませんよ。
「お姉様、怒っていいんですよ」
お姉様はようやく私を見た。
「怒るほどのことでもないわ。ただ——」
少し間があった。
「あの三人が厄介ね」
「取り巻きの方たちが?」
「殿下一人なら、まだ御しやすい。でもあの三人が囃し立てる限り、殿下は自分の勘違いに気づかない。むしろどんどん確信を深めていく」
お姉様は静かに続けた。
「ダリウス君は殿下の歓心を買うためなら何でも利用する。オスカー君は流れに乗るだけ。ヒューゴ君は疑うことを知らない」
「……お姉様、いつの間にそこまで」
「観察は大事よ、クロエ」
お姉様はそう言って、紅茶を一口飲んだ。
「三人とも、本来は悪い子たちじゃないと思う。ただ王太子の取り巻きという立場が、彼らをそうさせている」
——お姉様は殿下にも取り巻きにも、怒りより分析を向けている。
私はそれが少し怖かった。
怒っている人間は、感情が先走って隙ができる。でもお姉様のように静かに観察して、静かに考えている人間は——
いざとなった時、本当に強い。
「クロエ、また難しい顔」
「……お姉様が少し怖いと思っていました」
お姉様は一瞬きょとんとして、それから小さく笑った。
「それは褒め言葉として受け取っておくわ」
6.ダリウスの策略
問題が起きたのは、それから間もなくのことだった。
放課後の廊下で、私は偶然ダリウスと二人になった。
正確には偶然ではなかったかもしれない。今思えば、向こうは計算していたのだと思う。
「クロエ嬢」
ダリウスは人当たりのいい笑顔で話しかけてきた。
「殿下があなたのことを大変気にかけていらっしゃる。ご存知ですよね」
「……はい」
「殿下のお気持ちに、応えて差し上げてはいかがでしょう」
私は一瞬、耳を疑った。
「……それはどういう意味ですか」
「殿下はあなたに好意をお持ちです。身分がどうこうは、殿下のお気持ち次第でどうにでもなる」
笑顔のまま、さらりと言った。
——この人は今、婚約者であるクラリスお姉様の存在を完全に消した。
私は深呼吸を一つした。
「ダリウス様」
「はい」
「殿下にはクラリスお姉様という婚約者がいらっしゃいます」
「それはそれ、これはこれということもございます」
「私にはございません」
ダリウスは少し眉を上げた。想定外の返答だったのかもしれない。
私は続けた。
「私はランズベリー公爵家にお世話になっている身です。その公爵家の令嬢であるクラリスお姉様を差し置いて、殿下のお気持ちに応えるなど、あり得ません。身分以前の問題です」
ダリウスはしばらく私を見ていた。
それから笑顔のまま、すっと引いた。
「……失礼しました」
立ち去る背中を見ながら、私は静かに息を吐いた。
——この人は今ので諦めない。むしろ殿下に「クロエは奥ゆかしくて健気だ」とか吹き込みに行くに決まっている。
予感は翌日、的中した。
図書室に現れた殿下の目が、以前より熱を帯びていた。
「クロエ、昨日ダリウスに何か言ったそうだな」
「はい。身分を弁えたことを申し上げました」
「……それでいい」
殿下は静かに言った。
「無理強いするつもりはない。ただ——」
そこで少し言いよどんで、続けた。
「俺はお前のことが、気になっている」
——ああ、殿下。
私は心の中で深くため息をついた。
ダリウスの思惑通りだ。私が断れば断るほど、殿下の中で私の株が上がっていく。奥ゆかしい、健気だ、と。
「殿下」
私は真っ直ぐ殿下を見た。
「私はクラリスお姉様の義妹です。それ以上でも以下でもありません。どうかそのようにお考えください」
殿下は何か言いたそうな顔をした。でも私の目を見て、黙った。
——少しは伝わっただろうか。
その晩、お姉様に報告すると、お姉様は静かに聞いていた。
全て話し終えると、一言だけ言った。
「ダリウス君、思ったより早かったわね」
「お姉様、怒らないんですか」
「怒っているわよ」
「……全然そう見えません」
「怒りはエネルギーよ、クロエ。無駄に使うものじゃない」
お姉様は扇を取り出して、ゆっくりと開いた。
「ここから先は、少し本気を出すわ」
7.クラリス、動く
「本気を出す」とお姉様が言った翌日から、何かが変わり始めた。
変わったといっても、傍目には何も変わっていない。お姉様は相変わらず完璧な公爵令嬢として、優雅に学校生活を送っている。殿下への態度も、取り巻きへの態度も、何一つ変わっていない。
ただ——
「クロエ、今日の午後は一緒に図書室へ行きましょう」
「クロエ、放課後は私と一緒に帰るわよ」
「クロエ、昼食は中庭より室内にしましょう」
私の行動範囲が、さりげなく管理され始めた。
要するに、お姉様は私が殿下と二人になれる状況を、静かに全て潰していたのだ。
鮮やかすぎて、最初は気づかなかった。
殿下の側も、私に近づこうとするたびにクラリスお姉様が自然な形でそこにいる。廊下で話しかけようとすれば、お姉様がすっと隣に立っている。図書室に来れば、お姉様も一緒にいる。
殿下は困惑しているようだった。
取り巻きの三人も、どうにかお姉様を出し抜こうとあれこれ画策しているらしかった。でもお姉様の先読みの前では、ことごとく空振りに終わった。
ある日の放課後、オスカーが私に近づいてきた。
「クロエ嬢、実は殿下からお手紙が——」
「まあオスカー様」
横からお姉様の声が入った。
「殿下から義妹へのお手紙でしたら、私がお預かりしますわ。家族ですもの、私から渡します」
笑顔だった。完璧な笑顔だった。
オスカーは引きつった顔で「いえ、その……」と言いよどんで、結局手紙を差し出した。
その場を離れてから、私はそっとお姉様を見上げた。
「……お姉様、その手紙」
「後で読むわ。参考資料として」
「捨てないんですか」
「証拠は取っておくものよ」
さらっと恐ろしいことを言って、お姉様は歩き続けた。
その頃から、取り巻きの三人の間に微妙な空気が漂い始めた。
ダリウスは相変わらず策を弄しているようだったが、どこか焦りが見え始めた。オスカーはお姉様の笑顔が怖いのか、私への接触を避けるようになった。
一番変化が大きかったのは、ヒューゴだった。
ある日の昼休み、ヒューゴが一人で私に近づいてきた。
珍しく、取り巻きの顔をしていなかった。
「クロエ嬢、少しよろしいですか」
周囲を確認してから、小声で言った。
「……僕は、この状況がよくないと思っています」
私は少し驚いた。
「殿下は悪い方じゃない。ただ、誰も本当のことを言わないから、どんどん方向がおかしくなっていて」
ヒューゴは困ったような顔で続けた。
「僕には止められないんです。殿下に意見できるような立場じゃないし、ダリウスには丸め込まれてしまうし」
——この人は、まともだ。
「ヒューゴ様」
「はい」
「その話、クラリスお姉様にしていただけますか」
ヒューゴは少し目を見開いた。
「……クラリス嬢に?」
「お姉様は怖くないですよ」
少し間があった。
「……本当ですか」
「怒りをエネルギーに変える方なので、無駄に使いません」
お姉様の言葉をそのまま伝えたら、ヒューゴは不思議そうな顔をした。でも、小さく頷いた。
その日の夕方、お姉様はヒューゴと短い時間、言葉を交わした。
内容は教えてもらえなかったけれど、お姉様は戻ってきた時に扇を開きながら言った。
「内側に一人、確保できたわ」
「ヒューゴ様が?」
「あの子は使える。というより、最初からまともだったのね」
お姉様は少し目を細めた。
「ダリウス君とオスカー君は、そろそろ自分たちが間違った馬に乗っていることに気づき始めている。人間、追い詰められると保身に走るものよ」
「……お姉様、全部見えているんですか」
「全部ではないわ」
お姉様は窓の外に目を向けた。
「ただ、もうすぐ殿下が動く気がする。それまでに準備を整えておきたいだけ」
——もうすぐ、殿下が動く。
その言葉が、胸の奥に静かに落ちた。
嵐の前の静けさ、とはこういうことを言うのだろうか。
私はその夜、なかなか寝付けなかった。
8.学期末夜会
嵐は、学期末の夜会という形でやってきた。
王立貴族学校恒例の、学期末夜会。生徒とその家族が一堂に会する、年に一度の正式な社交の場だ。ロバート父様もエレーヌ母様も出席する。当然、王家も来る。
「クロエ、今日は私の隣から離れないで」
会場に向かう馬車の中で、お姉様は静かに言った。
「離れません」
「何があっても」
「何があっても」
私が頷くと、お姉様は満足そうに前を向いた。
エレーヌ母様が心配そうな顔で私を見ていた。ロバート父様は無言だったが、いつもより目が鋭かった。二人とも、この数週間の状況はある程度把握しているはずだった。
「エレーヌ」
ロバート父様が静かに言った。
「何かあれば、私が動く」
母様は小さく頷いた。
馬車の中の空気は穏やかだったけれど、全員が静かに戦闘態勢に入っていた。
夜会は華やかだった。
煌めくシャンデリア、色とりどりのドレス、あちこちで交わされる社交の言葉。普段なら少し圧倒されるような光景も、今夜は全て遠い景色のように感じた。
殿下はすぐに見つかった。
正装姿のレオノール殿下は、率直に言って凛々しかった。隣にはダリウスとオスカー。ヒューゴは少し離れた場所に立っていて、私と目が合うと小さく頷いた。
準備はできている、という合図だと受け取った。
殿下はしばらく王の隣で来賓の挨拶を受けていたが、やがて人の波をかき分けてこちらに向かってきた。
真っ直ぐに、私を見ながら。
——来た。
お姉様の手が、そっと私の手に重なった。
殿下は私たちの前に立った。ダリウスとオスカーが後ろに控えている。
「クラリス」
殿下はお姉様を見た。
「今日は話がある」
お姉様は完璧な笑顔で答えた。
「まあ殿下、改まってどうされましたか」
殿下は一度深呼吸をした。
——ああ、殿下。やめてください。お願いだから。
私の心の中の声など届くはずもなく、殿下は口を開いた。
「クラリス、俺はお前との婚約を——」
「殿下」
お姉様の声が、静かに遮った。
笑顔は消えていた。代わりに、私が初めて見るお姉様の顔があった。怒りでも悲しみでもない。ただ純粋に、呆れた顔。
「続きは聞かなくても分かります」
殿下が一瞬、たじろいだ。
「ただ、ここは夜会の会場です。父も母も、王様もいらっしゃる。続きをお話しになるなら、全員に聞こえる形でどうぞ」
お姉様は扇を開いた。ゆっくりと、丁寧に。
「それでもよろしければ、どうぞ続けてください、殿下」
殿下の顔が、微かに赤くなった。
周囲の視線が、じわじわと集まり始めていた。
ダリウスがすかさず前に出た。
「クラリス嬢、殿下のお言葉には深い御考えが——」
「ダリウス様」
私は一歩前に出た。
自分でも驚くくらい、声が落ち着いていた。
「殿下のお言葉を補足されるということは、殿下の婚約破棄にダリウス様も賛成していらっしゃるということでしょうか」
ダリウスが固まった。
「そ、それは……」
「はっきりおっしゃってください。後で言った言わないになっても困りますので」
周囲の視線が今度はダリウスに集まった。ダリウスの顔から、すっと血の気が引いた。
オスカーはすでに半歩後ろに下がっていた。
遠くでヒューゴが、静かに壁際に移動するのが見えた。
——離脱完了。
殿下は、もはや完全に孤立していた。
「……俺は」
殿下がようやく口を開いた。
「俺はクロエのことが——」
「愛していません」
殿下の言葉に、私は被せた。
静かに、はっきりと。
「これまでも何度も申し上げました。私は身分が違います。殿下が私に向けてくださっていたものは、私には受け取れません」
「しかし、お前の態度は——」
「礼儀です」
「え?」
「殿下が王太子殿下だから、礼を尽くしていただけです。好意とは別物です」
シャンデリアの光の下、夜会の会場がしんと静まり返った。
殿下は何も言えなくなっていた。
お姉様が静かに前に出た。扇を閉じながら、まるで世間話でもするように言った。
「殿下、私からも一言よろしいですか」
殿下が頷く。
「私はこの数週間、殿下がどこまでおバカなのか静観しておりました」
会場のどこかで、誰かが小さく咳をした。
「結論が出ました。想像より、だいぶおバカでした」
ダリウスとオスカーが石になった。
お姉様は続けた。
「婚約者である私より義妹と話したがり、取り巻きの言葉を鵜呑みにし、夜会の場で公衆の面前で婚約破棄を切り出そうとする。王太子妃教育を真剣に受けてきた私への敬意は、どこにいったのでしょう」
殿下の顔が、真っ青になった。
「こちらから願い下げ、と言いたいところですが——」
お姉様は一度だけ、私を見た。
私は小さく頷いた。
「——それは父に判断を委ねます。ただし、慰謝料はきっちり王家に請求させていただきます。義妹を巻き込んだ分も含めて」
静寂の中、足音が聞こえた。
ロバート父様だった。
父様はゆっくりと殿下の前に立ち、静かに、しかし会場中に聞こえる声で言った。
「殿下。我がランズベリー家への王家からの援助は、本日付けで全て辞退させていただきます」
殿下が息を呑んだ。
「それはどういう——」
「援助とは信頼の証。その信頼が、今夜ここで失われました」
父様は一礼して、下がった。
最後にエレーヌ母様が、ゆっくりと扇を開きながら殿下を見た。
「殿下、うちの娘たちに恥をかかせておいて、その顔は何かしら」
にっこりと、完璧な笑顔で。
その後、国王陛下が殿下を連れて奥の間に消えていった。
どんな雷が落ちたかは、想像にお任せする。
9.その後
翌日、王家から父様に丁重な詫び状が届いたと聞いた。
取り巻きのその後は——ダリウスは父親に呼び戻されて一週間登校しなかった。オスカーは登校してきたものの、しばらく誰とも目を合わせなかった。
ヒューゴだけは翌日普通に登校してきて、私に深々と頭を下げた。
「クロエ嬢、この度はご迷惑を——」
「ヒューゴ様は止めようとしてくださっていたでしょう」
「それでも、もっと早く動くべきでした」
真剣な顔だった。私は少し考えて、言った。
「ではこれからはっきり言える人になってください。それで十分です」
ヒューゴはもう一度、深く頭を下げた。
そして殿下は——。
数日後、殿下は改まった様子でクラリスお姉様の前に現れた。取り巻きも連れず、一人で。
「クラリス、この度は……本当に、申し訳なかった」
お姉様はしばらく殿下を見ていた。
それから扇を開いて、口元を隠しながら言った。
「反省していらっしゃるなら、結構です」
「婚約については——」
「それは父と王様にお決めいただくことです。私の一存ではなんとも」
殿下はまだ何か言いたそうだったが、お姉様は続けた。
「ただ殿下、一つだけ申し上げてもよろしいですか」
「……なんだ」
「私が完璧に見えたのは、殿下の婚約者として恥ずかしくないよう努力してきたからです。それを『隙がない』と感じて遠ざかり、努力もせず話しかけやすい相手に気持ちを向けるのは——」
お姉様は一拍置いた。
「少し、失礼だと思いませんか」
殿下の顔が歪んだ。
反論できなかった。
正しいことを言われたから。
「……そうだな」
絞り出すような声だった。
「お前の言う通りだ」
お姉様は扇を閉じた。
「分かっていただければ、それで十分です」
その様子を少し離れた場所から見ていた私は、隣に来たエレーヌ母様にそっと耳打ちした。
「お姉様、怖いですね」
母様はくすりと笑った。
「クラリス様はね、クロエのこととなると特に怖いのよ」
「……え」
「気づいていなかったの?」
母様は穏やかな目で、お姉様の背中を見ていた。
「あの子、あなたのことを本当に大切にしているから」
私は思わず、お姉様の背中を見た。
殿下と向き合って、静かに、でも真っ直ぐに立っているお姉様の背中。
——知っていた。
でも改めて言葉にされると、目の奥が少し熱くなった。
「……母様」
「なに」
「私、この家に来てよかったです」
母様は何も言わなかった。
ただ、そっと私の肩を引き寄せた。
それから数週間後。
婚約は継続されることになった。
王家からの正式な謝罪と、慰謝料に相当する「特別な贈り物」も届いた。父様は受け取ったが、笑顔は少しも見せなかったと聞いた。
殿下は以来、別人のように大人しくなった。
クラリスお姉様と話す時は、以前より少しだけ、ぎこちない。でも今度は遠ざかるのではなく、向き合おうとするぎこちなさだった。
ダリウスとオスカーは戻ってきたものの、すっかり大人しくなった。ヒューゴは殿下に以前より率直に意見するようになったと、後になって聞いた。
10.カモミールのお茶
そして私は今日も、お姉様の隣を歩いている。
半歩うしろではなく、ちゃんと隣を。
「クロエ」
「なんですか」
「今日のお茶、何にする」
「……クロエが選んでいいんですか」
「毎回聞かないの。いいから選んで」
私は少し考えて、言った。
「じゃあカモミールで」
「珍しい。どうして」
「なんか、ほっとしたい気分なので」
お姉様は少し目を細めた。
「そうね」
それだけ言って、お姉様は前を向いた。
穏やかな午後の光の中を、二人で並んで歩いた。
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