令嬢は静かに眠りたい

みさき

文字の大きさ
2 / 3

2

しおりを挟む

「フレンド殿がルーナとの婚約を破棄し、マリアと婚約を結びたいと申し出てきた」


 やっぱり、ね。

 チラリと隣を見れば義妹は頬を赤く染め、嬉しそうに笑っていた。


「承知致しました」


 婚約者を愛していた訳では無いし、これは政略結婚だと分かっていたから悲しくは無い。

 けれど、私のことを勝手に決められるのは癪だわ。


「お父様に1つお願いがあります」

「......何だ」

「私を伯爵家から出してくださいませ」

 どうせ、婚約を破棄させられたらキズものとしてどこかの貴族の後妻に収まるだろう。この父のことだ。そうそうに私を家から出すために縁談をまとめてくるだろう。


「ああ、分かって......」

「勘当してくださいと、申しているのです。縁談などいりませんわ」


 被せ気味に私が答えると、父は不愉快だと眉を寄せる。

 あら、そんな顔怖くわないわ。むしろ、愉快ね。


「何故だ」

「何故、何故ですか。それを私に聞きますか?理由などお父様が1番よく分かっているはずでしょう?まあ、1つ言うなれば、私があなた方の事が嫌いだからですよ」


 ポカンと口を開けて驚く彼らの姿に、脱力しそうになる。

 なぜ、嫌われてないなどと思っていたのだろう。今までの事を思い出せば今でも寒気がする。


「私があなた方の事を好きだとでも?笑わせないでくださいませ。それに、私はお父様の事父とは思ったことなどありません。血の繋がりがあるだけの他人では無いですか」


 この人たちとこんなに喋ったのは初めてだ。


「早く、勘当してください。ああ、対外的にな病気により死んだ、とでもしとけばよろしいのでは?そちらの方があなたがたにも都合がいいでしょう?」

「る、ルーナ。勘当など私は、認め」

「許可はいりません。私が勝手に出ていくので。今さら、何を言われようと私の決意は変わりません。これからもで仲良くお過ごしください」

 それでは、とカーテシーをして背を向ける。

 1つ言い忘れていた。


「お母様はあなたの事を愛していましたよ」


 そう、言ったところで父がどう思うかは知らない。

 けれど、これだけは知っておくべきだ。

 母の想いを。母の憎しみを。


 その日の夜は少しだけ眠れた。

 家を出ることに安心したのだろうか。

 夢の中で、私はお母様と話をした。

 何年ぶりの悪夢ではない夢に嬉しくなった。


 お母様は笑って怒って、私の話をたくさん聞いてくれた。久しぶりの幸福な時間は私を元気づけた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

今、婚約破棄宣言した2人に聞きたいことがある!

白雪なこ
恋愛
学園の卒業と成人を祝うパーティ会場に響く、婚約破棄宣言。 婚約破棄された貴族令嬢は現れないが、代わりにパーティの主催者が、婚約破棄を宣言した貴族令息とその恋人という当事者の2名と話をし出した。

婿入り条件はちゃんと確認してください。

もふっとしたクリームパン
恋愛
<あらすじ>ある高位貴族の婚約関係に問題が起きた。両家の話し合いの場で、貴族令嬢は選択を迫ることになり、貴族令息は愛と未来を天秤に懸けられ悩む。答えは出ないまま、時間だけが過ぎていく……そんな話です。*令嬢視点で始まります。*すっきりざまぁではないです。ざまぁになるかは相手の選択次第なのでそこまで話はいきません。その手前で終わります。*突発的に思いついたのを書いたので設定はふんわりです。*カクヨム様にも投稿しています。*本編二話+登場人物紹介+おまけ、で完結。

拝啓、婚約者さま

松本雀
恋愛
――静かな藤棚の令嬢ウィステリア。 婚約破棄を告げられた令嬢は、静かに「そう」と答えるだけだった。その冷静な一言が、後に彼の心を深く抉ることになるとも知らずに。

婚約破棄裁判

Mr.後困る
恋愛
愛国心溢れる大公令嬢ヴィーナスは 自身の婚約者を誑かしたマーキュリー男爵令嬢を殺害した その裁判が今、行われる・・・

婚約破棄? あら、それって何時からでしたっけ

松本雀
恋愛
――午前十時、王都某所。 エマ=ベルフィールド嬢は、目覚めと共に察した。 「…………やらかしましたわね?」 ◆ 婚約破棄お披露目パーティーを寝過ごした令嬢がいた。 目を覚ましたときには王子が困惑し、貴族たちは騒然、そしてエマ嬢の口から放たれたのは伝説の一言―― 「婚約破棄されに来ましたわ!」 この事件を皮切りに、彼女は悪役令嬢の星として注目され、次々と舞い込む求婚と、空回る王子の再アタックに悩まされることになる。 これは、とある寝坊令嬢の名言と昼寝と誤解に満ちた優雅なる騒動録である。

幸せになれると思っていた

里見知美
恋愛
18歳になったら結婚しよう、と約束をしていたのに。 ある事故から目を覚ますと、誰もが私をいないものとして扱った。

ここへ何をしに来たの?

恋愛
フェルマ王立学園での卒業記念パーティ。 「クリストフ・グランジュ様!」 凛とした声が響き渡り……。 ※小説になろう、カクヨム、pixivにも同じものを投稿しています。

可愛らしい人

はるきりょう
恋愛
「でも、ライアン様には、エレナ様がいらっしゃるのでは?」 「ああ、エレナね。よく勘違いされるんだけど、エレナとは婚約者でも何でもないんだ。ただの幼馴染み」 「それにあいつはひとりで生きていけるから」 女性ながらに剣術を学ぶエレナは可愛げがないという理由で、ほとんど婚約者同然の幼馴染から捨てられる。 けれど、 「エレナ嬢」 「なんでしょうか?」 「今日の夜会のパートナーはお決まりですか?」  その言葉でパートナー同伴の夜会に招待されていたことを思い出した。いつものとおりライアンと一緒に行くと思っていたので参加の返事を出していたのだ。 「……いいえ」  当日の欠席は著しく評価を下げる。今後、家庭教師として仕事をしていきたいと考えるのであれば、父親か兄に頼んででも行った方がいいだろう。 「よければ僕と一緒に行きませんか?」

処理中です...