令嬢は静かに眠りたい

みさき

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 朝。

 今日は、伯爵家を出ていく日。

 行先は決めていないが静かな地に行こうと思っている。

 まだ、あの人達が起きる時間ではないが、急いで準備をして家を出なければ行けない。

 幸い、前から想定していたことで準備はしてある。


「リーナ、今までありがとう。本館の皆にもそうつたえてくれる?」

「もちろんです、お嬢様......。お嬢様、何故お嬢様が出ていかなければならないのですか!出ていくのは!」

「リーナ」


 名を呼び言葉を遮る。

 静かに首を振り、それ以上言ってはいけないと示す。


「リーナ、私は大丈夫。むしろ、せいせいしているくらいよ。だから、ね?」

「......申し訳、ございません」


 ごめんなさいね、リーナ。

 あなたの気持ちは痛いくらい分かる。

 私だって、そうだったもの。

 何度も何度もお母様に伝えてきたことだから。


「あなたにお願いがあるの。お母様のお墓の世話を任せてもいいかしら? あの人達には任せられないもの」

「もちろんです! 使用人一同責任を持って奥様のお墓のお世話をさせていただきます」

「ありがとう」


 胸をはり、にこやかに告げるリーナを見て安心する。あの人たちがお母様のあ墓の世話をするとは到底考えられない。

 平民にくだる私は貴族のお墓を見ることなどこれからは出来ないだろう。

 リーナ達、使用人の皆は安心して任せることが出来る。


「そろそろ、行かなければ。あの人達が起きてくるわ」

「っ、お嬢様。私は、いつまでもお傍におります。この屋敷では、辛い思い出しかなかったとしても私共の事を忘れないでください。お願いします」


 涙をこぼし、頭を下げるリーナ。


「何をいっているの。忘れるわけないじゃない。いつまでも私の大切な思い出よ。でもね? 最後くらいは笑って祝って欲しいわ。私の新しい門出よ? それに」


 言葉を切りリーナの瞳を見つめる。


「これからは、主従ではなく対等な関係。友人としてあなたと接したいわ」


 リーナは、目を見張り口を開く。けれども、すぐに閉じ、顔全体で笑った。


「もちろんです、お嬢様」


 そして、涙をながしながら笑みをつくった。

 涙でぐしゃぐしゃになった顔はとても眩しく感じた。


 ○●○●○


 私は、今港にいる。

 これから、国外行きの船に乗りこの国の出る予定だ。

 どこか自然が豊かなところき行きたいと思っているがまだ、決めていない。

 行き当たりばったりの旅もいいかなと思っている。


 あの後、リーナに別れを告げ屋敷を出ると、古参の使用人達が門の前に集まっていた。それだけでは無い。彼らだけではなく、若い使用人も皆、集まり私を驚かせた。


 皆、私の扱いがおかしいと感じてくれていたらしい。そう、感じてくれただけでとても嬉しいのに。見送りまで。感謝してもしきれない。


 ブー、と汽笛が上がり船が港に入って来たことを知らせる。

 見れば、大きな船が港に付き、たくさんの見物人が訪れていた。

 長い銀髪を真黒に染めて、少し裕福な商人の家の娘が着るような格好をし、大きな旅行カバンを持っている。旅行者に見えているか不安になるけど、堂々としない方が不自然だと思い直す。


 そろそろ、船に乗る時間だ。

 まずは、隣国にでも行ってみようか。

 決めるのはそれからだ。


 これからは、自由の身。ゆっくり、のんびり決めても罰は当たらない。


 私は、これからに思いを馳せ船に乗り込んだ。


 自然に頬が緩み笑顔になった。

 ああ、こんなふうに笑えるのは何年ぶりだろうか。

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