令嬢は静かに眠りたい

みさき

文字の大きさ
3 / 3

3

しおりを挟む
 朝。

 今日は、伯爵家を出ていく日。

 行先は決めていないが静かな地に行こうと思っている。

 まだ、あの人達が起きる時間ではないが、急いで準備をして家を出なければ行けない。

 幸い、前から想定していたことで準備はしてある。


「リーナ、今までありがとう。本館の皆にもそうつたえてくれる?」

「もちろんです、お嬢様......。お嬢様、何故お嬢様が出ていかなければならないのですか!出ていくのは!」

「リーナ」


 名を呼び言葉を遮る。

 静かに首を振り、それ以上言ってはいけないと示す。


「リーナ、私は大丈夫。むしろ、せいせいしているくらいよ。だから、ね?」

「......申し訳、ございません」


 ごめんなさいね、リーナ。

 あなたの気持ちは痛いくらい分かる。

 私だって、そうだったもの。

 何度も何度もお母様に伝えてきたことだから。


「あなたにお願いがあるの。お母様のお墓の世話を任せてもいいかしら? あの人達には任せられないもの」

「もちろんです! 使用人一同責任を持って奥様のお墓のお世話をさせていただきます」

「ありがとう」


 胸をはり、にこやかに告げるリーナを見て安心する。あの人たちがお母様のあ墓の世話をするとは到底考えられない。

 平民にくだる私は貴族のお墓を見ることなどこれからは出来ないだろう。

 リーナ達、使用人の皆は安心して任せることが出来る。


「そろそろ、行かなければ。あの人達が起きてくるわ」

「っ、お嬢様。私は、いつまでもお傍におります。この屋敷では、辛い思い出しかなかったとしても私共の事を忘れないでください。お願いします」


 涙をこぼし、頭を下げるリーナ。


「何をいっているの。忘れるわけないじゃない。いつまでも私の大切な思い出よ。でもね? 最後くらいは笑って祝って欲しいわ。私の新しい門出よ? それに」


 言葉を切りリーナの瞳を見つめる。


「これからは、主従ではなく対等な関係。友人としてあなたと接したいわ」


 リーナは、目を見張り口を開く。けれども、すぐに閉じ、顔全体で笑った。


「もちろんです、お嬢様」


 そして、涙をながしながら笑みをつくった。

 涙でぐしゃぐしゃになった顔はとても眩しく感じた。


 ○●○●○


 私は、今港にいる。

 これから、国外行きの船に乗りこの国の出る予定だ。

 どこか自然が豊かなところき行きたいと思っているがまだ、決めていない。

 行き当たりばったりの旅もいいかなと思っている。


 あの後、リーナに別れを告げ屋敷を出ると、古参の使用人達が門の前に集まっていた。それだけでは無い。彼らだけではなく、若い使用人も皆、集まり私を驚かせた。


 皆、私の扱いがおかしいと感じてくれていたらしい。そう、感じてくれただけでとても嬉しいのに。見送りまで。感謝してもしきれない。


 ブー、と汽笛が上がり船が港に入って来たことを知らせる。

 見れば、大きな船が港に付き、たくさんの見物人が訪れていた。

 長い銀髪を真黒に染めて、少し裕福な商人の家の娘が着るような格好をし、大きな旅行カバンを持っている。旅行者に見えているか不安になるけど、堂々としない方が不自然だと思い直す。


 そろそろ、船に乗る時間だ。

 まずは、隣国にでも行ってみようか。

 決めるのはそれからだ。


 これからは、自由の身。ゆっくり、のんびり決めても罰は当たらない。


 私は、これからに思いを馳せ船に乗り込んだ。


 自然に頬が緩み笑顔になった。

 ああ、こんなふうに笑えるのは何年ぶりだろうか。

しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

婚約破棄したら食べられました(物理)

かぜかおる
恋愛
人族のリサは竜種のアレンに出会った時からいい匂いがするから食べたいと言われ続けている。 婚約者もいるから無理と言い続けるも、アレンもしつこく食べたいと言ってくる。 そんな日々が日常と化していたある日 リサは婚約者から婚約破棄を突きつけられる グロは無し

悪役令嬢は殿下の素顔がお好き

香澄京耶
恋愛
王太子の婚約者アメリアは、 公衆の場で婚約破棄される夢を見たことをきっかけに、自ら婚約解消を申し出る。 だが追い詰められた王太子、ギルバートは弱さと本心を曝け出してしまい――。 悪役令嬢と、素直になれない王太子の“逆転”ラブコメディ。

悪役令嬢短編集

由香
恋愛
更新週3投稿の午後10時。(月・水・金) 12/24 一時更新停止 悪役令嬢をテーマにした短編集です。 それぞれ一話完結。

婚約破棄を言い渡したら、なぜか飴くれたんだが

来住野つかさ
恋愛
結婚準備に向けて新居を整えていた俺(アルフォンソ)のところへ、頼んでもいないキャンディが届いた。送り主は一月ほど前に婚約破棄を言い渡したイレーネからだという。受け取りたくなかったが、新婚約者のカミラが興味を示し、渋々了承することに。不思議な雰囲気を漂わす配達人は、手渡すときにおかしなことを言った。「これはイレーネ様の『思い』の一部が入っています」と――。 ※こちらは他サイト様にも掲載いたします。

煤かぶり姫は光の貴公子の溺愛が罰ゲームだと知っている。

朝霧心惺
恋愛
「ベルティア・ローレル。僕の恋人になってくれないかい?」  煌めく猫っ毛の金髪に太陽の瞳、光の貴公子の名を欲しいがままにするエドワード・ルードバーグ公爵令息の告白。  普通の令嬢ならば、嬉しさのあまり失神してしまうかもしれない状況に、告白された令嬢、ベルティア・ローレルは無表情のままぴくりとも頬を動かさない。  何故なら———、 (罰ゲームで告白なんて、最低の極みね)  黄金の髪こそが美しいという貴族の価値観の中で、煤を被ったような漆黒の髪を持つベルティアには、『煤かぶり姫』という蔑称がある。  そして、それは罰ゲーム結果の恋人に選ばれるほどに、貴族にとっては酷い見た目であるらしい。  3年間にも及ぶ学園生活も終盤に迫ったこの日告白されたベルティア、実家は伯爵家といえども辺境であり、長年の凶作続きにより没落寸前。  もちろん、実家は公爵家に反抗できるほどの力など持ち合わせていない。  目立つ事が大嫌いでありながらも渋々受け入れた恋人生活、けれど、彼の罰ゲームはただ付き合うだけでは終わらず、加速していく溺愛、溺愛、溺愛………!!  甘すぎる苦しみが、ベルティアを苦しめる。 「どうして僕の愛を疑うんだっ!!」 (疑うも何も、そもそもこの恋人ごっこはあなたへの罰ゲームでしょ!?)

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

不機嫌な侯爵様に、その献身は届かない

翠月るるな
恋愛
サルコベリア侯爵夫人は、夫の言動に違和感を覚え始める。 始めは夜会での振る舞いからだった。 それがさらに明らかになっていく。 機嫌が悪ければ、それを周りに隠さず察して動いてもらおうとし、愚痴を言ったら同調してもらおうとするのは、まるで子どものよう。 おまけに自分より格下だと思えば強気に出る。 そんな夫から、とある仕事を押し付けられたところ──?

処理中です...