彼女と突然別れて落ち込んでいたはずの俺が、次の日から色んな女の子と仲良くなっているのはなぜだ?

リン

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第二話 新しい日常へ

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   バンッ!!!


「なによそれ!?信じらんない!そんなの絶対におかしいよ!お兄ちゃん!?」


 俺の妹であり昔に比べ大人びてきたしずくはそう叫ぶと、ファミレスのそれも運ばれてきた料理が数多く並ぶその席を興奮冷めやらぬ様子でドンっと勢いよく叩いた。


 ーーザワザワザワ


 すると、その席を叩く音と雫の大声に反応した人たちが、「なんだ、なんだ?」「どうしたの?」と口々に呟き、こちらの様子をチラチラと伺ってくる。

 まだ店員のお姉さんはこちらに来てはいないが、厨房の方からも何人かの店員がこちらの方をジッと見てきていた。

 もしかすると、これ以上雫が声を上げてしまえば、俺たちは店から追い出されてしまうかもしれない。


 そう思った俺は、とりあえず雫を宥めることにする。


「し、雫!俺のためにそこまで怒ってくれるのは嬉しいけど、もう少しここでは静かにしてくれ……。他のお客さんもいるし、いきなりの音にビックリしちゃうからさ……。」


 俺は雫を落ち着かせるようにして雫の手を握り、周りをチラリと気遣いつつ小さな声でそのように注意する。


 すると、その言葉を聞いた雫はハッと辺りを見渡し、自分たちが周りの人達から注目されていることを理解する。

 そして「ごめんなさい……。」と小さな声で俺に謝罪し、その顔を俯かせる。

 その顔は本当に申し訳なさそう表情で、見ているこちらの方が心配になってきた。


 ーーだから俺は、そんな風に俺のために声を上げてくれた雫にそんな顔をさせておきたくはなくて……。


「雫、ありがとな。お前がそんな風に心配してくれるから、俺の重かった気持ちがだいぶ楽になった。周りの人は突然なんだと思ったかもしれないけど、お前がそんな風に声を上げてくれて……正直、俺は嬉しかった。」


 俺は雫にそう伝えると、感謝とあんまり気にするなの意味も込めて、くしゃくしゃっと雫の頭を軽く撫でる。

 すると、暗くなっていた雫の表情は少しずつ明るくなり、再び落ち着いた雰囲気になったタイミングで既に運ばれていた食事にぼちぼち手を付けていく。

 そしてその間にも、少しだけ先程の『別れた話』について、その話の続きについてボンヤリと思い出す。


「(俺なりに麗奈との付き合いも頑張ってた方だと思うんだけどな……。出来る限り一緒にいる時間を作ったり、遊びに誘ってみたりとか……。今となってはもう遅いんだが、あの頑張ってた事とかが麗奈からするとウザかったのかなぁ……。)」


 と、冷静になって俺と麗奈との付き合いを思い出してみると、俺の方に悪いところがあったのかもしれない。


 人生初めての彼女で憧れの生徒会長。そんな彼女と付き合えたということもあり、当時を含め少々俺は舞い上がっていた。

 そのため、彼女のためにと思って動いていた事や彼女と会うために色々犠牲にしていた事、もしかするとそれは、彼女からはしつこいと思われていたのかもしれない。


 などとそんな風にアレコレ考え出すと、どんどん俺の良くなかったかもしれない所などが思い出される。


「(やっぱり、俺と麗奈では釣り合わない関係だったのかな……。同じ学年でも、あっちは学園1・2を争う美人でアイドル的存在、おまけに生徒会長ときている。
 それに比べて俺は成績も並みで、運動神経もそこまで良いわけじゃない。少し良い所をあげても、優しいとこって妹には言われたけど……、それは身内贔屓だしなぁ……。)」


 そもそも立場の全然違う2人。付き合えた事自体が奇跡みたいなものなのだ。


 俺達の関係が始まったのは、なぜか彼女から俺に「付き合いましょう」と言い、それを俺がそれを了承して始まった訳なのだが、もしかすると、俺と付き合ったのは周りからの告白を断るため……、いわば隠れ蓑を作るための行動だったのかもしれない。

ーーていうか、その説が1番濃厚だろう。


「なんかそう考えると、俺がやってきた事って全部無駄だったんだな……。
 別にそれで恨んだりはしないし、すぐに嫌いになんかなれないけど、今はちょっとだけしんどいな……。今までが全部意味なかったなんてそんな風に思うのは。」


 ぐるぐると負の思考が駆け巡る中俺は、少しだけ悲しさがぶり返して、心に浮かんだそんな気持ちが思わず言葉となって口から溢れ出てしまう。

 自分の行動が相手にとっては迷惑であり、煩わしいだけの行動だったのかと思うと、やり切れないような……そんな気持ちになる。


 そうして俺は再び後ろ向きな思考に陥り、そのような思考のままーー時間が経ってカップの中に沈んでいく氷を眺めていると……。


「ーーそんなことない!そんなことないよ!お兄ちゃん!今までお兄ちゃんが頑張ってたこと、その全部が無駄になる事なんて絶対にないよ!
 私はお兄ちゃんがその人と釣り合うために、少しずつでも勉強を頑張ってたことだって知ってる!それに運動だって!体力ないってその人に思われないように走り込みに行ってる事だって知ってるよ!
 だからそんな風にその人のために頑張ってきた……、そんなお兄ちゃんの頑張りがその人一人からの否定だけで全部全部無駄になるなんて絶対にないよ!」


 と、それまで食事後のコーヒーを飲んでいた雫が、俺の弱気なつぶやきを聞き、必死な様子で俺のことを元気付けてくれる。

 流石に2回目という事もあり、声のボリュームはかなり絞られていて、聞き取りづらい声ではあったが……、その言葉はとても暖かく、本当に優しい言葉で……。

沈みかけていた俺の心にはとても温かく、そして力強い言葉としてジンっと響いた。


「だから…ね?元気だしてよお兄ちゃん。
 もし……その人が何も知らずにお兄ちゃんのことを否定してきたとしても……、私はちゃんとお兄ちゃんの頑張りを知ってるし、ちゃんとその努力を認めてるんだから!」


 雫はどこか照れくさそうにそう言うと、先程俺が雫にそうしたように、ゆっくりこちらに手伸ばしてーーその手が俺の髪を撫でる。

 その手自体は多少乱暴ではあったが、確かに雫の温かさを感じられる……そんな優しい手つきだった。


「(そっか……。そんな風に俺を見てくれていて、それを認めてくれてる人がちゃんと近くにいたんだ。それなのにこんな風にくよくよして、今もなお心配させてるなんて……これではどっちが年上か分からないな。)」


 俺はそう思うと、なんだか少し元気が出てきて……、それでいて妹を相手に慰められているというこの状況が、無性に恥ずかしいような気持ちになる。


「はは!そうか、そうか!雫は俺を認めてくれてるんだな!だったらこんな風に……くよくよなんてしていられないな!
 それに思春期真っ只中の妹に認められてる俺って、結構いい男ってことだよな!」


 などと、途端に気恥ずかしくなった俺は冗談めかしてそう言い、仕返しとばかりに雫の頭もくしゃくしゃにする。

 突然の俺の逆襲にポカンとしていた雫だったが、俺がやっと立ち直った事を理解すると、「やめてよ!お兄ちゃん」と小さく微笑んで、くしゃくしゃに頭を撫でる俺の手を剥がそうと奮闘し始める。


 そして俺はそんな雫を見ながら、これからもこれまでの努力を続けて行こうと思った。

「ちゃんと自分を認めてくれる人がいる」それだけで、これからも頑張っていけるようなそんな気がした。

   
「……ありがとな…雫。」


「う?何よ?お兄ちゃん?」


 ーーこれからは麗奈のために頑張るんじゃない。俺自身のため……、そして俺を認めてくれる人に恥ずかしくないように生きていくために頑張ろうとそう思ったのだった……。
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