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第三話 憂鬱な登校
しおりを挟む「はぁ……。こんなにも学校が憂鬱になったのは生まれて初めてだよ……ほんとに。
別れた事がみんなにバレてないのが1番なんだろうけど、どうせもうみんなにバレてるんだろうなぁ……。なんと言っても、あの麗奈に関する話題だしな。」
いつもと同じ、いや、いつもより幾分か重い足取りで俺は学園へ向かっていた。
『私立第一高校』そこが現在俺が通っている高校だ。
自称進学校を語るだけはあり、その大学進学率はソコソコ高く、一応ここら辺の地域では人気の高校の一つである。
だがそんな人気校の中でも、俺の所属する1-Bクラスは、六貫2クラスのうちの成績の悪い方のクラスで、いわゆる、落ちこぼれの方のクラスと言われているクラスなのだ。
そのため、クラスにはヤンキーもどきとかギャルもどきとかが、進学校にもかかわらずそれなりにはいる。
ちなみに六貫というのは、6年一貫の学校という意味で、中学からエスカレーター方式で高校に進学出来る学校だという事だ。
だがその弊害と言うべきか、6年間安定して進級できるという理由から、勉強を全くしないバカが量産されてしまうという、大きな問題が発生してしまい……、六貫のバカな方のクラスを除く他のクラスが、この学園の進学率を底上げしているという現状なのだ。
そういった理由で、この学園は自称進学校と外部生から皮肉られているという訳だ。
それでそんな高校での麗奈の立場はというと、文武両道で才色兼備な生徒会長として知られており、当たり前の話だが、成績優秀クラスである方の1-Aクラスに所属している。
そして、その成績と美貌で外部生からも注目されている麗奈は、まさしく学園のアイドル的な存在で内外問わず憧れの的なのだ。
なので、その注目の度合いは計り知れないものがある。
そんな注目の的である麗奈が別れたのだ、騒ぎになることは避けられないだろうし、すぐにでもみんなにも伝わる事だろう。
「(そんな事があっての登校日初日だからか、雫が今朝「お兄ちゃんの気を紛らわすために一緒に登校しようか?」って言ってくれたけど……、流石にそこまで妹に頼り過ぎるってのは良くないしな。)」
などと、俺はぼんやりとだが、朝食時の妹との会話の内容を思い出す……。
ーーーー自宅・朝食での食卓にてーーーー
「いい?お兄ちゃん?絶対に落ち込んだ姿をみんなに見せたりなんかしたらダメだよ?
じゃないと、みんなに変な気を使かわせちゃうし、なにより!そんな姿を見せてる男なんて女の子に絶対にモテないんだから!」
雫はそう言うと、食事を食べ始めようとしていた俺にビシッと指をさしてくる。
麗奈と別れた事について、昨日雫が様々な励ましの言葉を俺に掛けてくれたので、そのお礼を朝食のタイミングで伝えたのだ。
すると、先程のセリフを雫は俺に言ってきたという訳である。
まあ、俺がモテるかモテないかの話は別にいいとしても、確かに周りの奴らに変に気を使われるのは結構しんどいかもしれない。
なによりその事に気を使われると、嫌でも別れた事実を思い出しちゃうし……。
「ああ、それはそうだな……。昨日あれだけお前に励ましてもらったんだ。それでクヨクヨしてたら、男として……、いやお前の兄としての申し訳が立たないよ。
とりあえず、気を遣ってくれてありがとな。
若干学校に行くのが憂鬱になり掛けてたけど、少しだけ気持ちがマシになったよ。」
俺は雫の何気ない気遣いに対して、感謝と気持ちが軽くなった事を伝える。
昨日からコイツには助けられてばかりだなと少し苦笑しながら、今度にでも、雫のためにコンビニでなんかデザートでも買ってきてやろうと考え、食べ終わった食器を片付けようとしているとーー
「そうだ!お兄ちゃん!もしそのことが気になって朝の登校が憂鬱って言うなら……、今日は私が一緒に登校してあげよっか?
クラブの朝練もないし、途中まではおんなじ道だから、どうしてもって言うなら、私が一緒に行ってあげてもいいよ?」
突然雫が俺の腕に抱きついてきたかと思うと……、そんな事を笑顔で俺に言ってくる。
雫と俺は別々の学校であり、雫は近所にある女子校、そこの中等部3年に在学している。
色んな意味で平凡な俺とは違い、色々と器用にこなすヤツで、雫は女子校の生徒会に所属していたりする。
部活と生徒会、それに勉強も両立していて、俺と違い中々ハイスペックな妹なのだ。
ついでに言うと、その容姿もそれなりに整っていて、いつも「兄妹には見えない」と他の奴らに言われるくらいには色々と違う。
そんな妹と一緒に、昨日まで憧れの生徒会長と付き合っていた俺が、仲睦まじく登校していればどういう事になるだろうか?
そんな風に俺が雫と並んで登校していれば、十中八九、俺の浮気が別れ話に繋がったと勘違いされてしまうだろう。
それだけは俺の名誉とこれからの高校生活の平穏のために避けたい所だ。
それにそれだけならまだしも、雫にちょっかいかけて来る輩も現れるかもしれない。
それだけは、俺の方が絶対に嫌なので、この話を了承する訳にはいかない。
「いや、それはありがたい提案だけど、今日のところはやめておく。
たぶん、逆に変な意味で注目されちゃうと思うし……。お前にそこまでして貰っては、兄としての面目が立たなくなるからな。だから、その気持ちだけを受け取るわ……。
……何から何まで気を遣わせて悪いな。昨日から本当にありがとな。」
少しだけ恥ずかしさが混じって後半小さな声になってしまったが、もう何度目になるかわからない感謝の言葉をありのままの気持ちで雫に伝える。
するとそれを聞いた雫は俯いて……。
「……もう、別に私を頼ってくれてもいいのに。そうじゃなくて、私がお兄ちゃんと一緒に行きたいのに……。」
雫は小さな声で何かをぶつぶつと、独り言のように呟く。
しかし上手く聞こえなかった俺が、「何て言ったんだ?」と聞き返すと……。
「ーーっ!何でもないよ!お兄ちゃん!まあ、ここはお兄ちゃんの事を立てて、無理強いはしないでおくよ!でも、最初に言ったこと!それだけは忘れないでよ!
そんな風に傷ついて落ち込んでるお兄ちゃん、私が見たくないからさ……。」
雫はそう言うや否や、「もう時間!」と叫び、そのままドタバタと忙しなくリビングを出て行く。
俺はドタバタと出て行く雫を見送りながら、自身の登校の準備に向けて、自室に置いてあるカバンを取りに行くのだった……。
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