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第十二話 分岐する道
しおりを挟む「じゃ、じゃあ……、ただ先輩が放課後に先生から学級の仕事の手伝いを頼まれただけってことですか?それで今日は俺と一緒に帰れないからと、深刻そうな顔を……?」
俺は1-Bの教室を急いで出てから、改めて先輩が先程深刻そうな顔をしていた理由について質問し、先輩の答えたその回答に俺は驚いてしまったため、再び先輩にその回答の真偽について問い質していた。
先程の俺は1-Bの教室で、先輩に恥ずかしいプロポーズ紛いの言葉をそのまま伝えてしまい、恥ずかしいやら、照れ臭いやらで、穴があったら入りたいような気分にそのときの俺はなっていたのだが……。
ーーそれを聞いた先輩が、それに対して満更でもない様子で俺に応えてしまったため、一時その場が騒然となったのだ。
そのため、俺と先輩はこれ以上目立たないようにと教室の外に出て気を取り直し、最初に先輩が俺のもと訪れた理由である『先輩の俺にどうしても伝えなければならない話』について質問していた訳なのである。
しかしながら、まさか俺と一緒に帰ることが出来ないからとあれ程までの深刻そうな顔をしていたなんて……。
「そ、そうですよ!仰る通り、せっかく仲良くなれた相太くんと今日一緒に帰れたら、またゆっくりお話出来きるなん思っていただけなのですよ!
それなのに……、今日に限って先生のお手伝いを頼まれてしまうなんて……。」
俺のその言葉に先輩は口を尖らせ、少し拗ねたような表情でぶつぶつと手伝いの間の悪さについての不満を口にしている。
そんな拗ねた先輩の表情も新鮮で、とても可愛かったのだが……、ここはちゃんと言っておいた方がいいだろう。
こんな調子では、その先生の手伝いでさえまともに手がつかないかもしれない。
「先輩のお言葉はありがたいですが……、ちゃんと手伝いの方には行って下さいね?確かに俺も先輩と一緒に帰りたかったことは否定しませんが……、それは絶対に今日じゃなくても大丈夫でしょう?俺か先輩、2人が望む限りは一緒に帰る機会だってこれからも沢山あるんですから。
なので先輩、今日は先生の手伝いの方を優先して下さい。明日の放課後は、俺から先輩のことを教室まで迎えに行きますから……。だから……今日はね?」
そして俺は先輩に次の機会が必ずあるということを強調して伝えることにする。
いつでも自分と一緒に帰れるということをダシに先輩を説得するなど、「自惚れているのか!」と、自分でも突っ込みたくなる程のキザな説得の仕方だとは思う。
しかし先輩が俺と一緒に帰りたがっている今では、その事を……いつでも2人さえ望めば一緒に帰る事が出来るという事を、あらかじめ伝えておいた方がいいと考えたのだ。
俺は先輩と長く、皆に納得はされなくても一定理解してもらえる関係でいたい。
「俺が近くにいるから先輩がダメになった。」などと、先輩が周りから批判されるのだけは何としても避けたいと思う。
そう思うからこそのこの説得なのだ。
するとその説得が功を奏したのか、「そうでした……。また明日、その次の機会だってちゃんとありますよね……。」と、先輩はそう小さく呟やいてーー
「分かりました。相太くん。私、今日は先生のお手伝いの方に行ってくる事にします。一緒に帰宅出来ないのは残念ですが……相太くんの言う通り、明日もその次もありますしね。
だから今日は、相太くんが明日私を迎えに来てくれる事で満足しようと思います。」
先輩は最後にはそう言って、ちゃんと先生の手伝いの方を優先してくれることを俺に約束してくれたのだった。
そして先輩は少々名残惜しそうだったが、俺に「バイバイ」とその手を振りながら、そのまま二階に繋がる階段の方向に背を向けて歩き出す。
階段で姿が見えなくなる一歩手前、一瞬くるりとこちらを振り向くとーー
「また明日!約束ですよ!相太くん!」
先輩はそれだけ言って、眩い程の素敵な笑顔を俺に見せ、それ以降は振り返る事なく階段の方に消えていったのだった……。
それに対してこちらも笑顔で応え、先輩の見送り終わると、再び俺は教室にカバンを取りに戻る事にした。
そして俺が教室に戻ると、三葉先輩との関係について、1-Bの生徒達に問い詰められたという事は言うまでもないだろう……。
・
・・
・・・
・・
・
ーーーー放課後・生徒会室にてーーーー
「ーー以上で、本日の生徒会の活動は終了とします。本日の戸締りは私が最後まで残って行いますので、皆さんはもう帰って貰って構いません。……本日はお疲れ様でした。」
ーー放課後、私は本日の生徒会、その活動の終わりを告げる言葉と共に他のメンバーへと帰宅を促した。
今日1日、昼間の相太との一件で周囲から伺うような、何かを探るような視線に晒されて辟易としていた私であったが……、放課後にはそんな視線も少なくなり、いつもの調子を取り戻した私は、本日も行われていた生徒会に顔を出し、その活動を全うしていた。
正直、相太の事を考えていると、なぜか胸の辺りがズキズキと痛む今の私にとっては、それを考えないで済む、今日の生徒会での活動はとても助かったというのが私の本音だ。
そして、活動がひと段落したという段階で書類に承認印を押していた私は、その手をぴたりと止めて、先程の言葉を他の役員に声掛けたという訳だ。
いくら今の私に助かる仕事量の多さと言っても、他の役員では話が違う。
普通にしんどいだろうし、もう今日は帰りたいというのがみんなの本音だろう。
私はそう考え、みんなの帰宅を促して、他の役員はそれに従い「お疲れ様でした!」と、私に一声を掛けてから、続々と帰宅をしていく中ーートントン。
「ねぇ……麗奈?ちょっといいかい?少し今日の事、正確には昼休みに起きた事について少し聞きたいから、この後、みんなが帰った後にちょっとボクに時間をくれないかな?」
不意に私に近寄ってきた副会長、生徒会副会長である長谷川 詩織先輩が私の肩をトントンと叩くと同時にそう声を掛けてきた。
私はそんな詩織先輩の言葉を聞いて、「しまった……。生徒会にはこの先輩がいたんだ。」と、少し嘆息してしまった。
今日の生徒会では、昼間の一件について触れてくる者、それに関して何か探りを入れてくるような人は誰一人としておらず、私は少し安心して活動に励んでいたのだが……。
やはり付き合いの1番長い、生徒会の中で最も私の事をよく知る詩織先輩の目は、そう簡単には欺く事は出来なかったようだ。
私と先輩以外に他の誰も居なくなって生徒会室で私に話しかけてくる詩織先輩は、現高校2年生の先輩で私とは中学の時から付き合いのある一個上の先輩だ。
そんな詩織先輩は生徒会と歌唱部を兼任して所属していて……、その容姿と歌声の美しさから『私立第一高校』の姫、『四詩の歌美姫』と周囲から称されている。
本人はそのことについて、特に気にしていないようではあるが、私から見てもとても綺麗で素敵な先輩だと思う。
それに部活と生徒会の両立をしていて、周囲からの評価もかなり高い事から、私にとっても信頼出来る先輩である事は間違いない。
しかし、そんな完璧で一見隙のないように見えるこの先輩の、唯一欠点と言わざるを得ない、そして私がこの先輩に声を掛けられて思わず嘆息してしまう、そんな原因となっている要因はーー
「さて……、やっと二人っきりになれたね?
じゃあ、昼休みに1-Bで起きた出来事について、詳しくボクに聞かせて貰えないかな?もちろん麗奈が言いたくないなら……、その限りではないけどね?」
そう言った詩織先輩はスタスタと私の方に歩み寄ってくると、なぜか私の肩にポンと手を置いて、そのまま休息兼仮眠用に置かれている生徒会室の備品の一つであるベッドの方に案内してくる。
そしてそこに腰かけた詩織先輩と私は、そのベッドにてとても近い距離で向き合う格好になってしまう。
すると意外に近いその距離を認識した詩織先輩は、「ふふ!」と微笑み……。
「なんだかこうしていると……、ボクと麗奈が恋人みたいに見えるね?もちろん、ボクと麗奈はそんな関係じゃなくいけど……、ちょっとドキドキするシュチュエーションじゃないかな?この状況?」
などと、聞いてるこっちが恥ずかしくなるような、そんなキザったらしい質問を軽いウィンクと共に私にしてくるのだった。
私は「思いませんよ……詩織先輩。」と返しながら、改めて詩織先輩の対面に座り直す。
私はそんな冗談を言ってくる、詩織先輩の悪癖について溜息を吐きたい気分だった。
そう……、これが長谷川 詩織先輩の唯一の欠点、そして私がこの先輩をどこか苦手に感じてしまう原因の一端なのだった。
彼女自身はそういう趣味はないと言っているのだが、よくそのように聞こえる言動、彼女が女性を口説いていると勘違いされるような言動を何気ない会話をするような形で平然と行なっているのだ。
私自身、中学の頃から詩織先輩の事はよく見てきているが、先輩が女性に対して普通の言動を行なっている所をかつて一度も見たことがなかった。
そしてその問題の言動は、女性である私にも当然行われるため……。
また対応に困る行動をされるのでは?と思い、私は詩織先輩に声を掛けられた際、思わず嘆息してしまったのだった。
でもそんな詩織先輩の悪癖を除けば、私にとっても非常に頼りになる信用出来る先輩なので……、私の異変に気付いて声を掛けられた時点で、私は先輩には自分から心の中のモヤモヤについて話そうと思っていた。
ーーなので、私はスッと居住まいを正す。
「では……、冗談はそれぐらいにして……。
今日、昼休みの1-Bの教室で起こった出来事についてお話し致します。」
私は改めてきちんと居住まいを正して、詩織先輩に話を切り出す。
正直、今日の出来事について詩織先輩に話して、今のこのモヤモヤした気持ちの理由について、先輩からの助言を貰いたい。
するとそれを聞いた先輩も、さっきのふざけた雰囲気とは一転、真剣な顔をして頷く。
「うん、麗奈にはちゃんと聞かせて貰うよ。
なんで君が昼休みに、君の運ぶ必要がない荷物を一人でここまで運んで来ていたのか?
そしてなぜそんなにも、今の麗奈には心の余裕がない状態なのかを……ね?」
詩織先輩は私の何もかもを見透かすような、全てを知っているのではないかと疑ってしまう程の的確な問いを、私に尋ねてくるのであった。
こうやって詩織先輩に昼間のそれを話した事によって、私の気持ちに何かしらの変化が起こるかは……、今はまだ分からない。
でも……、それでも私は……。
今日の昼間の光景を目の当たりにして、何も出来なかった理由を、私自身の心がなぜこんなにも痛むのかを少しでも理解出来たらと、そんな風に思うのだった……。
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