彼女と突然別れて落ち込んでいたはずの俺が、次の日から色んな女の子と仲良くなっているのはなぜだ?

リン

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第三十三話 大切にするという事/誰かに向けられたアドバイス

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「では相太くん。私は2年の教室に向かいますがくれぐれも猫井さんとの……、忘れないようにお願いしますね?
 私も具体的には話さないつもりでいますが、何処と無くそういう関係を匂わせる感じでいきたいと思います。それでは……、またお昼休みに会いましょう。今日も和葉と一緒にそちらの教室に向かいますので。」

「はい!分かりました!こちらも何処と無く匂わせるだけにしようと思っています。猫井会長の指示とはいえ、無神経に言いふらす必要はないですし。では、先輩の方にも悪い噂が立ちかねないですしね。」


 俺と三葉先輩が二人で一緒に学校に登校し、学年が違うため別々の階で別れる事になったちょうどそのタイミングで、先輩は俺に確認の意味も込めて念を押した。


 俺と三葉先輩はこの体育祭期間中。訳あって、男女のを偽装する事になっているのだが……、今朝の登校時を含め、とてつもない注目を俺達二人は集めていた。

 そのため、この後二人別れてそれぞれの教室に向かうつもりではあるが……、そこで二人の関係についての質問を多くされる事は目に見えているので、予め二人でどのように対応するのかを話し合っていたのだ。


 そして、直接的には先輩に言わなかったが、先輩の悪い噂を出来るだけ作るまいとそう伝えたのだが……、どうしたのだろう?

 先輩はそれまでの笑顔から一転、頬をぷくっと膨らませ、『私は怒っています!』という意思を分かりやすくその顔に表している。

 それに俺は思わず、「ど、どうかしまたか?何か俺……、変な事言いましたか?出来るだけ先輩の悪い噂が立たないように思ってるんですけど……。」と、少し困惑しながらそのように先輩に尋ねてみた。


 すると、先輩は相変わらず頬を膨らませたまま、でも俺の事をしっかりとその目で捉えながら先輩は口を開く。


「そう!ですよ!相太くん!ここまで一緒にお話ししてきた中でもずっと私は感じでいましたが……、いつも相太くんの考えの中には、いつだってがその考えの中に含まれていません!
 麗奈さんの話でもそうでしたが……、今だって私の心配ばかりで、自分にも悪い噂が立って、周りから嫌がらせを受けてしまう可能性を考えていません!
 勿論、そうして相太くんが私の事を心配してくれてるのはすごい嬉しいんですけど!」


 先輩はそこまで言って破顔し、俺の方に手を伸ばすと「相太くんが私にそうであるように、私だって相太くんの事が心配なんです。」と続け、大切なものを扱うような、そんな優しい手付きで俺の頭を優しく撫でてくれる。

 さわさわと頭を撫でるその手に、俺は思わず顔がニヤけてしまいそうになるが……、何とか口角を上げないようにと食いしばる。


「(先輩は本当に俺の事を心配してくれたからこそ、わざわざこんな風に言って、俺の事を守ろうとしてくれているんだ。
 それを真摯に受け止めてその気持ちを大切にしないと、和葉ちゃんや雫、それに先輩自身にも顔向け出来なくなるよな……。)」


 それに雫もよく言っていたのだ。「お兄ちゃんの計算にはいつも自分が勘定から抜けてるの。もっと自分を大切にして?」と。

 俺はいつも『自分は雫の兄貴だから。』『男の自分が耐えればいい事』だと、気をつけていなかったのだが……、それは違った。

 俺が自分を大切にしない事で傷つく人がいるという事を。自己犠牲の精神が時には相手の事まで傷つけてしまうという事を。

 俺はこの時になって、先輩に直接指摘される事で初めてそれを自覚した。


 そして、俺は思わぬ先輩の優しさに上手く言葉が思いつかず、ただ頭を撫でられるだけになっていたのだが……、その様子を見た先輩は軽く微笑み、そのまま言葉を続ける。


「ありきたりな言い方にはなりますが、私はずっと相太くんの味方です。相太くんが正しい方向に向かえば私はそれに連れ添いますし、逆に間違っていればそれを伝えて、私も一緒に立ち向かいます!
 だからどうか。私や他の人達だけでなく自分の事も考えて……、
 それが私の唯一感じている、相太くんの直して欲しい所だと思っています。」


 微笑みながらも真剣な眼差しで紡がれたその言葉は、言葉の意味を考える以上に、心に直接染み渡るような……、心に直接訴えかけられているそんな暖かな言葉で。

 改めて、俺はこの人と出会えて、こんな風に本音を話せるような関係になれて、ホントに良かったと心からそう思えた。


 だから俺は「……本当にありがとうございます。先輩。ではまた、お昼休みに。」と言葉短くそう言って、先輩からの返事も待たず、そのまま早足で自身の教室に向かう。

 ーーもう、この人の前では涙は見せないとそう心に決めていたから……。



 ・
 ・・
 ・・・
 ・・
 ・



「「「「一体どういう事だぁ!!相川ぁ!!」」」」

「あー、色々と言いたい事はあるが……、まあ、みんな一旦落ち着いてくれ。みんなで一斉に俺を取り囲むな。普通に怖いわ。
 ……あと西田。その振り上げた英和辞典をサッサと下ろせ。昨日の実行委員決定を告げた時に見せた殊勝な態度を取り戻せ……。」


 一体この落差はなんなんだろうか?


 先程三葉先輩からの優しくて暖かい、心温まる言葉を聞いてから早10分。

 俺が教室に入った瞬間、俺を取り囲んで来た面々(主に非リア同盟とか言っていた男子達)を前にして、先程から自分の顔がスンと真顔になっているという事を、実際に鏡を見ていなくてもハッキリと分かった。


 前は「彼女と別れてざまぁ!」などと散々な事を言って、「俺達はやっぱり仲間だよな。」「勿論、相川はこちら側に戻ってくるって……、みんな信じてたぞ!」などと、腹立つ事を言って喜んでた奴らが、手のひら返しからのこのキレっぷりとは……。

 相変わらず、残念を地で行くような奴らだ。


 そして一応の説得に応じた西田達は、その手に持つ武装(英和辞典)をしまうが俺への包囲網は中々解こうとしない。

 また、その包囲網の中の一人、クラスでもあまり目立つ方ではない木村が、俺に鼻息荒く詰め寄って来る。うん、普通にキモい。


「あ、相川!お、お前……、大岡先輩と一体どこで知り合ったんだよ!2年の!それも学校でも1・2を争うような美人と!
 黛の時も思ったけど……、何でお前だけにそんな美女との縁があるんだよ!!羨ましくて、妬ましいけど……。何かコツがあれば教えて下さい!お願いします!」


 またも見事な手の平返しを炸裂させ、ついでに土下座までして俺に頼み込んでくる。

 それを見て俺はドン引きしているのだが、なぜか他の奴らもそんな木村に続いて、「俺達にもお願いします!」と、食い気味に言ってみんな仲良く土下座をキメ込んでいる。

 流石のそれには、俺達の事を遠巻きに見ていた女子も普通にドン引きである……。


 俺はこの雰囲気が居た堪れなかったので、木村達に土下座を止めてもらい、1つだけアドバイスを……、「参考になるか分からないけど。」と、先に断りを入れてから話す。


「まあ、そうだな。とりあえず、お前達に言える事は今みたいにな気持ち悪い事を止めろって言いたいけど……、真面目にアドバイスするなら、相手の事を考えて、それから行動するって事かな。平たく言えば、『相手の気持ちを考えて行動しろ』って事だけど……、1つ大切なのは、相手を考えると同時にもちゃんと考えて行動するって事だな。
 一応これが、俺の経験則…なのかな?」


 これは先程俺が三葉先輩から教えられた大切な事であり、これからも先輩と一緒にいられるように、大切にしていく事だ。

 コイツらの場合はそれ以前の話かもしれないが……、相手の気持ち、ひいては周りの人達の気持ちを考えて、自分達が周りからどう見られるかを想像すれば、少なくとも今のような変な行動はせず、ハナから女子達から距離を取られるような事にはならないはずだ。

 そうすれば、コイツらにもきっとーー


 俺はそんな気持ちで、意外にも真面目なアドバイスを木村達にした所……、ガシッ!


「すまなかった!!お前がそんなに俺達の事を考えて、こんなにもしっかりしたアドバイスまでくれるなんて……。
 俺達はお前の事を完全に誤解していた!ありがとう!相川!お前のアドバイス、しかと胸に焼き付けたぞ!」


 木村達はなぜか感激した様子で俺の手を強く握り締めて、「心の友よ!」などと言いながら、感涙に咽び泣いている。

 すると周りからは、今度は別の意味でコチラに注目が集まってしまっている。……勿論、悪い方の意味でだ。

 それに俺は『こういう行動が、気持ち悪いと女子から避けられる原因なんだけどな。』と、嘆息しながらも、とりあえず角が立たないようにと、その握手には苦笑いで応じておくのだった……。



 そしてその後、少し遅めの登校してきた和樹が俺の事を呼び出し、和樹の口からあまり聞きたくなかった事を聞いてしまった話は……、また次の機会にしておこう。

 それらも含めて俺にはーーいや、俺達には、考える事も時間も必要なんだから……。

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