異世界に転移したんだけど……、自由に生きてもいいよね?

リン

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解放された女性たちは

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9「解放された女性たちは」

 今日の宿泊場所を手に入れるため、この街の屋敷に不法占拠していた男を追っていた俺は、見事その男たちのアジトを発見し、中にいた男たちをあっという間に掃除した

 そして俺はようやく眠れると、男たちを縛りつけた玄関から抜け出し、部屋に入ろうとした訳であるが……
 突如として部屋から出てきた1人の少女の「あなたは悪い人?」という質問とともに、それが叶わぬことだと理解した

 どうやらその少女は、先程の男たちに連れ去られてきたこの街の女性の1人みたいだ

 そしてその子の他にも捕まっていた女性たちがその扉の先にいるらしく、俺はその子に連れられて女性たちが待つ居間に入ってきた

 入ってきた訳であるが……
 しかし、なんだろう…この圧迫感……

 ずらっと並んだ女性たちのこちらをジッと見てくる視線の圧力は、先程の野郎どもに囲まれたとき以上の圧を感じる

「そ、それで……、あなたは悪い人…なんですか?もしそうなら、何が目的で……」

 と、先程俺を居間に連れてきた少女が怯えながらもそう問いかけてくる

 まあ、ここで「はい、そうです!私が悪い人です」って言ってみるのも面白そうではあるが、今日は疲れたし早く寝たいなぁ…

 真剣な少女たちには悪いが、今の俺はものすごく眠いのだ
 なので、テキトウにでも彼女たちを説得して、なんとかそれぞれのお家に帰っていただきたい

 そう思い立った俺は、善人ぶった演技で彼女たちが自然に帰ってくれるよう説得を始める

「いや、俺は奴らを倒して、君たちを助けに来ただけの普通の冒険者なんだ
 奴ら町で女の子を攫おうとしてたからさ…、それを倒して後を追って来たら、ここに辿り着き、そして君たちが居たって訳なんだ」

 と、いかにも正義感溢れる冒険者を装って、少女たちには自分が無害であることをアピールする
 ここで、変に疑われて後で通報なんかされたら、これまでの努力が水の泡になるからだ

 そして俺の目論見通り、それを聞いた少女たちは、ざわざわしだして互いに顔を見合わせている

 また、玄関に縛られた野郎どもを確認した少女たちが口々に「本当かもしれない」と呟き、その呟きを聞いた彼女たちの瞳には微かな希望の光が灯る

「じゃ、じゃあ……、私たちはこの後どうなるんですか?」

「もしかして、お家に帰れる…の?」

 と、我慢できなかった少し幼い少女たちが、ワッと俺に殺到しそう問いかける


 うんうん、いい流れだ!

 このまま上手くやり過ごせば、みんなすぐにでも帰ってくれて、今日中にでも眠ることも可能になるかもしれない!

 乗るしかないこのビッグウェーブに!

「ああ、君たちはすぐにでも帰れるよ
 この屋敷には嫌な思いがあるだろうから……、帰れる子からすぐにでも帰ったほうがいいよ
 でも、今日は夜も遅いし、そんな夜道に女性1人ってのは危ないだろう
 だから君たちが良かったらだけど、俺が用心棒として1人1人家までちゃんと送るよ」

 と、ある意味手間も時間もかかる方法をあえて自分から申し出る

 これは彼女たちを目の届く位置で送ることで、警備のものをここに呼ばせないためだ

 ここでもし、それを呼ばれてしまえば、俺の存在がバレて…、もしかしたら捕まってしまうかもしれない
 なんなら、この屋敷も犯罪者たちのアジトとして衛兵に押さえられて、使えなくなってしまうかもしれない

 そうならないためにも、多少面倒ではあるが彼女たち、大体20人ほどなので頑張れば数時間で送り届けることが出来る人数を、わざわざ送ると申し出たのだ


 だがそんな俺の内心を知らない少女たちは、俺の言葉に無邪気に歓喜している

 飛び上がって喜ぶ子、感動のあまり泣いてしまっている子、事態が読み込めないのかアタフタしている子と様子は色々だ

 そして最初に俺に話しかけた少女は、他の子たちの意思確認をして、その総意を俺に伝えてくれる

「あの!ありがとうございます!
 私たちを代表して言わせてもらいます
 ここに捕まっていた全員に確認したところ、全員早く家に帰りたいみたいです
 お手数だとは思うんですけど…、私たちを送ってもらえませんか?
 あなたでないと、みんな安心出来ないみたいなので……」

 代表の少女がそう言うと、そうだそうだと言わんばかりに、周りの少女たちはうんうんと頷いている

 俺はそれを聞いて、「ああ、じゃあ送ることにするよ」と、至って冷静にそう返したのだが…、内心は歓喜で震えていた

 よしよし、これで目論見通りみんな帰宅してくれるみたいだ!時間は結構かかったが…、これで安心だ!

 俺は内心ガッツポーズでそのまま少女たちを連れて、屋敷を飛び出す
 そして彼女たちの自宅に向けて、俺はその歩みを進めていったのだった…




 そのあと俺は、帰宅希望の子たちを連れて1人1人の家に訪問して行った

 突然帰って来た娘たちに、皆の家族の反応は様々だったが…、皆一様に俺への感謝とお礼がしたいと申し出てきた

 しかし、あまり大ごとになると王さまの耳にも伝わる可能性があると考え、俺は日本人らしく「気持ちだけで結構」だと伝えることにしておいた

 ホントはお金と食事が欲しかった(泣)

 しかし、なんだかんだで皆に感謝されたし、俺は宿泊出来るしでまあいいかと、帰路に着く頃にはそう思う様にもなっていた

 そして全員を送り届けた俺は、野郎たちのアジトだった場所、今日の宿泊施設に帰るのであった……




 しかし彼は気づかなかった

 彼のその側からみれば謙虚にしか見えない行動によって、目立たなくなるどころか、むしろ注目される事態になってしまっていたということを……
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