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朝ごはんおいちぃ(語彙力)

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10「朝ごはんおいちぃ(語彙力)」

ちゅんちゅんちゅん


外から鳥の鳴き声が聞こえてくる


うーん、もう朝か?


 昨日は、夜遅くまで少女たちを家まで送り届け、その全員送り終えると…そのまま家に帰って、すぐにでもベッドにダイブした

 あのときは疲労のピークで、何もせず…、服も昨日のままで眠りについた程だ



 正直…寝足りないし、このままベッドとともにもう一日ぐらい引っ付いていたい


 しかし今日は、お金を稼ぐ当てをどこかで探して来ないといけない

 でないと…、いつここが警備に知られて、突然追い出されるのか分かったものじゃないのだ


「あっ!そういえば昨日殴った野郎ども…、あいつらのことどうしよう……」


 目が覚めてようやく思い出したが、この家の玄関付近に…何十人もの縛った野郎どもをそのまま放置していた

 流石にこのままで放置するのは鬱陶しいし、かといって見逃すと後々面倒になりそうだし…

奴らをどうにかしたいものである


あっ!いいこと思いついた!


 俺は思い立ったら吉日、あることを実行すべく寝室を出て…、俺は奴らの待つ玄関のところまで、スタスタと歩いて向かっていくのだった……




 その日の午後、何故かボロボロな姿で泣きながら、自分たちの罪を自白しに来た男たちが警備室に殺到したという話は…、俺とは関係のない事だろう


・・・
・・



えっ?僕は説得(物理)をしただけなんですけど…何か問題ありましたか?

もちろん、この場所のことを奴らにバラさないように約束させましたが…何か?








うむ、家の問題も(拳で)解決したし…、早速朝ごはんでもどこかに食べに行くか!


家にも一応の食料は、あったにはあったのだが…

 俺はこの街の情報収集も兼ねて、今日は朝ごはんを外に食べに行く事にした


「ここの近くにお店は…っと……
おっ!ちょうど良さげなところが、そこにあるじゃん!」


 と、俺は家から出て少し道を歩いていると…、ある程度歩いた所に古民家風の食事処を発見した

 ここまで来ると色々なお店が見えて来るのだが…、俺の宿泊施設の近くには何もないのだ

まあ、犯罪者達の溜まり場だったんだから、そりゃお店だってないよね…


それにしても、うーん……
この小汚い店の外観、小綺麗な場所よりここの方が気楽でいいか?


 俺は少し悩んだのだが…、近いし安そうだからという理由で、ここで朝ごはんを食べる事にするのだった……


・・・
・・



 店に入ってみるとお客さんが1人…、冒険者風の女性が1人で食事をしているだけであった

 すると俺が入って程なくして…、奥から30代ほどの若い女性が1人、俺の目の前に現れた


「いらっしゃいませ、食事処 "月下亭"へようこそ」


 と、女性はこちらに向かって一礼し、落ち着いた声色で挨拶をしてくれた


 なんかおっとりした感じの女性だな…
すごい落ち着いていて、年上のお姉さんって感じがする

ていうか、その顔になんか見覚えがあるような?


なぜか女性に謎の既視感を感じるが…

まあいいか…、まずは普通に朝ごはんを食べることにしよう


「ああ、ありがとう…店員さん
朝の朝食を食べに来たんだが…、何かオススメの朝食はあるかな?
俺は少し前…ここに来たばかりなんだ」


「そうなんですか…、この町は活気のある町ですので、ゆっくりして行ってくださいね?
それとオススメの朝食はですね…、値は少々張りますが、オーク肉オススメですよ
ちょうど今朝、オークを仕入れたばかりなので…、新鮮で美味しいですよ」


 と、言って営業スマイルを見せながら、俺にオススメを教えてくれる


 値は少々張ると言ってはいるが…、店員さんのオススメというのであれば、味については間違いないだろう


つーか…、メニュー表もないし、ここのはどういうシステムなんだ?


 多少店のシステムについて疑問に思うこともあったが…、ここは店員さんのオススメの定食にしておこう


「じゃあ、その定食をお願いする
……それにしても、あんまり今日は人がいないみたいだけど、ここの食事処のこの時間は大体こんなものなのか?」


 とまあ、情報を聞き出すにも初めは世間話からだと思い、注文すると同時に…そう女性に話しかける

すると女性はそれを聞いて…


「いえ……、いつもと言いましても…
実は今日、久しぶりにこのお店を開けたばかりなのです
ですから、あちらのお客さまとお客さまが、お店を再開してからの久しぶりのお客さまなのです」


 と、女性は少し暗い顔をしてそう答えてくれる
 その表情からは、何か面倒な理由があったのだと伺える


へー、ならそんなドンピシャのタイミングで来れた俺は、ある意味ラッキーだったのかね…


「そうなのか……そりゃまたご苦労なこった
ちなみになんだが、なんでこの店を一度閉める事になったんだ?
あっ、言いたくなかったら別に言わなくてもいいんだけど」


 と、俺は世間話をする程度の軽い感じで、そう尋ねてみると…


「実はですね……、少し前くらい…一ヶ月前頃くらいから、この付近に人攫いが出没するようになっているらしいのです
そして、その人攫いにうちの娘も攫われてしまいまして……
正直、その状況ではお店どころではなくなってしまったのです
ですが…、そんな攫われていたうちの娘が…、なんと昨晩うちに戻って来てくれたのです!
それで帰ってきた娘も含めて、再びこのお店を…、本日から再開したという訳なのです」


 と、暗い顔から一転、その女性はとても嬉しそうに、娘が帰ってきたという事を俺に報告してくる


ほえー、なんか昨日の人攫いの奴らみたいなのが、他にもこの街にはいるんだなぁ

昨晩この食事処の近くに、女の子を送り届けたような気がするが…

 その時出てきたのは、クマみたいな大きなおっさんだったような気がするし、多分これとは関係ない話だろう

ていうかあれ?

昨日、娘たちを家に送った際…、家から出てきたのはどれも男ばかりだったような?

まあ、そんな事は今はどうでもいいか
そもそも男とか基本どうでもいいし……


 まあ、娘が帰って来たと言うのであれば、まあそれは普通にいい事だろう


「そうか…、それは大変だったな……
引き止めて悪かった、美味しい料理を期待している」


 と、若い女性…その娘の母親の気持ちを考え、早めに話を切り上げる

 というか、朝から重い話など聞きたくないのだ


 すると彼女は、「わかりました」と俺に言うと、厨房の奥に消えていった


あー、お金稼ぎについての話を聞けなかったのは少々痛いが……

 今で精一杯な彼女に、そこまで色々と話を聞き出そうとするは酷な話だろう


 俺はそう思い、「この後…冒険者ギルドにでも行ってみるかなぁ」など考えて、食事が運ばれてくるのを待っていると…


少し経って……


「おまたせ致しました
ご注文のオーク定食です」


 先程の女性が、出来立てのオークの肉とパンとスープで構成されたオーク定食をこちらに運んでくる

 その定食からはモヤモヤと白い湯気が立ち昇っていて…、見ただけで食欲のそそられる美味しそうな食事だ


おお!何かスゲー美味そうな朝食じゃないか!


 昨日から何も食べてなかったから、尚更美味しそうに見える

 俺は女性に「ありがとう」と礼を言い、運ばれて来た朝食を勢いよく食べていく


「おっ!このオーク肉!
日本でいう豚肉とイノシシの肉を足して割ったような味だな…
脂が乗ってて、柔らかいし…
これはマジで美味しいなぁ」


 と、俺はそう呟きながら…、最低限のマナーを守りつつ、物凄い速さでその食事を平らげていく

 その食事のどれも美味しく、一度も手を止める事なく俺は食べ進め続けた


 そして、最後のスープを飲もうと器に手を伸ばした…その瞬間


「ああー!!あの男の人!」


 突然そんな声が聞こえたかと思うと…、厨房の奥にいた若い女の子がヒョコッと厨房からその顔を出す

 俺はその声に反応して、そちらのほうを伺うと…、何と見覚えのある少女がこちらをビシッと指差していた


ゲッ! しかもあの子は…


 昨日、俺が女の子たちとその後の予定について話をしていた際…、みんなの意見をまとめていた女の子だったのだ


マジか!あの子ここの娘だったのかよ!


 すると先程の女の子の叫びによって、先客の女性がジッと、「何があったのだ?」と伺うような視線で、こちらを見つめてきていた


マズイ!!


 俺はこのままでは色々とマズイと思い…、すぐさま「ご馳走さま!」と言って、伺うような視線から逃れるように…勢いよくその場を飛び出した

 そして、その去り際…娘の母親に「美味しかった」とだけ伝えて、そのまま止まる事なく走り去る


クッソー! こんな所にまで包囲網が!


 俺は内心そんな悪態をつきながら…、とりあえずは自宅に向けて、その足を進め…、早足にその場から退散するのだった……








ーーーー月下亭・食堂にてーーーー

「こら!アルノ!!突然叫んでどうしたって言うの! お客さんも私もビックリするじゃない!」


 と、そんな風に母親が先程大声で叫んだ娘を注意するが…、アルノと呼ばれた娘は興奮した様子で、その注意もどこ吹く風だ


「あの人よ!あの人なのよ!!
昨日、私たちを助けてくれた男の人……"英雄さま"は!」


 と、興奮冷めやまないといった様子でそう母親にまくし立てる


 するとそれを聞いた母親も「えっ!?」と驚き…


「あの方が…、昨日あなたを助けて、家まで送り届けてくれた"英雄さま"だったの!?
でもあの方は、そんなこと一言も……」


 驚いた母親がそう信じられないといった顔で呟くと


「ええ…、あの方は昨晩も私たちに何の見返りも求めなかったわ
どんな事を要求されてもおかしくない…、絶対的優位な状況にもかかわらずね……
しかもあろう事か、私たち1人1人を家まで全員送って下さったわ……
それはもう…、英雄さまと呼ばれるに相応しい、素晴らしいお方だったわ」


 と、アルノは夢見る少女のようなうっとりした顔で、彼の事をそう絶賛し続けるのだった




 そして、そんな2人を…、食堂のテーブルから眺める冒険者が1人


「"英雄さま"?」


 彼を除いた唯一のお客さん…、先客でまだ食事処にいた彼女の呟きを、誰一人として聞いたものはそこにはいなかったのだった……
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