異世界に転移したんだけど……、自由に生きてもいいよね?

リン

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スライムって実は最強なのでは?

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 13「スライムって実は最強なのでは?」

  ギルドで冒険者について色々聞いた俺は、昼食を食べたのちに、町から少し遠い位置にある森の中を探索していた。


「俺の力がどんなものなのか、それを試すの忘れてたからな……。」


  女神さまから力を貰ったものの、その力はどういったものなのかを試さないといけない。

  今まではテキトウに走ったり、殴ったりしていたけれど


「俺に必要な事であれば……、それを叶えるために力が使えるって言ってたような?」


  そういえば忙しくて忘れていたが、お城の女性はどうなったのだろう?

  俺の力が発動した感覚は、ちゃんとあったのだが……

 またいつか彼女に会って、直接話をしたいものだ。


「……っと!まあ今は、力の方を試さないとな。」


  そんな思考は一旦置いておき、俺は力を試すためのモンスターを探す事にした。


  うーん、なんかそこら辺を探してみたけど、思ったより周りにモンスターがいない。

  ここまで歩いているのだけど、まだモンスターらしきモンスターに遭遇していないのだ。

  小動物などの日本でも見たことあるやつは、そこら辺にいるんだが……


  どうにか楽にモンスターだけを見つからんねーかなぁ


  そんな事をふと俺が考えてみた。その瞬間!


「えっ? なんだこれ!」


  頭付近に変な違和感を感じたと同時に、視界に人型のシルエットや透明な丸い塊などがバァっと映り込んだ。

  それも森にある木が透過して視界に映っており、モンスターと思われるシルエットだけが赤い点滅と共に視界に映り込んでいる。


「これも女神さまの力なのか?」


  先程、楽にモンスターを見つけたいと俺が願った事で、すぐに敵(魔物)を見つけられるようにと視界が変化したようだ。


  俺は気になって試してみたところ、視界のオンオフもすぐに出来るみたいだ。

  ずっとこのままの視界だと気持ち悪いしね……。


「だがこれがあれば、楽々狩りが出来そうだなぁ。」


  ウロウロとしていた俺の視界に映り込む、人型のシルエット、おそらくゴブリンと思われるエネミーの所に俺は走っていく。

  そして俺はふといたずら心が湧いて、木の後ろから突然「ワッ!」とそのゴブリンに声をかけてみる。


「ゴウワァァ!?」


  するとゴブリンはとてつもなく驚いて、ものすごい勢いで木にぶつかっていった。
  
  「おいおい、すごい音したけど大丈夫かよ……」と思い、ゴブリンの顔を覗き込んでみると

  そのゴブリンは「グエ」と一声鳴いたのち、ピクリとも動かなくなってしまった。
  

 ……えっ?


「もしかして……死んでる……?」


  俺はあまりにもアッサリとゴブリンが動かなくなってしまったので、恐る恐るその姿を確認してみると……、見事に死亡している。


  えっと、これは……


  俺は何とも言えない気持ちになり、もう一人の方……、丸い塊の方に歩いて行った。


  すると奴はこちらに気づいていないのか、岩場でコケをはむはむしている。
  

 おお!中々カワイイなこいつ!


  俺は不覚にもカワイイと思ってしまったが、敵である事には変わりがない。

 可愛そうだとは思うが、ここは拳で語り合うことにしよう……。

 まあ、スライムには手はないんだけどね(笑)


  俺はそいつを倒すべく、女神の力を意識して右手に力を込める。

  すると、意識し始めると同時に拳に金色の光が収縮していき、次第にピカーっと手のひらが輝きだす。


「おお!これが女神さまの力か!
  なんか今なら、どんな奴でも簡単に倒せそう!」


  俺はそう呟きながら拳の狙いをゆっくりと、未だ俺に気づかずプルプルしているスライムに向かって定める。


「すまないスライム……。君に恨みはないが死んでもらう!」


  俺はそんな言葉とともに、スライムに向けて勢いよく拳を振り下ろす。


  ドカーン!!!


  スライムがいたところに向かって拳を振り下ろした所、その場からモワモワと砂煙が捲き上る。
  

「やったか!?」


  俺は思わず、どこぞの某◯ンダムパイロットのような、フラグ建設用のセリフを言ってしまう。


  あっ、これダメな奴だ……


  そして俺は案の定、そのフラグを回収してしまい

  俺が殴った所の岩は粉々になっていたのだが、そのスライムはまさかの無傷で生還していたのだ。


  そして、突然襲われたそのスライムは不満なのか、俺の足に向かって体当たりをかましてくる!

 まさに 逆襲の◯ャアならぬ、逆襲のスライムだ。


「痛っ!痛い!ごめん、ごめん! もう狙わないから!お願いだから、やめてくれ!」


  と、俺が慌ててスライムに謝ると
  
  「うん?」とスライムはそれに反応し、「どうしよっかなぁ?」とでも言う様子で、その小さな体を揺らしている。


  俺はこれはチャンスだ!と思い、昼飯に買っていたモンスターの肉をスライムに与えてみる。

  するとスライムは嬉しそうに串に近づき、はむはむと差し出した肉を食べ始める。


  お~、やっぱりカワイイなぁ……。
  

 しかしそれを見た俺は、そんな無邪気なスライムの姿に完全に襲う気が失せてしまった。

  俺は仕方ないかと思い、ゴブリンの牙だけを回収して、そのまま町に帰ろうと歩みを進めた。

  ゴブリンは個体数の多さから、その牙だけが買い取りしてもらえるみたいなのだ。


  そうして俺はゴブリンの牙を片手に、町に向けてその歩みを進めていた。

  そして森を抜け切ったあたりの俺の視界には、もう一つの特殊な反応が存在していた。

 なぜか俺の視界の端には、ピカピカと緑色の反応が浮かんでいるのだ。

  赤ではなく緑の表示なので、敵ではないと思うんだけど……


  しかし、その反応が俺のちょうど後ろにまで近づいて来たため、バッと俺は勢いよく後ろを振り返った。


  するとそこには……


「おろ?なんでここにいんの?」


  なんと、先程のスライムが町の付近にまでついて来ていたのだ。

  そしてスライムは俺の足にすり寄って来て、そのまま体全体を使ってムギュムギュと抱きついてくる。
  

「もしかして、俺について来たいの?」


  俺が「まさかなぁ」と思いながらも、そのようにスライムに尋ねてみると……


  ふるふると首とも体とも言えない部分を縦に振り、ぴょんと、俺の足の上に乗ってくる。


  ええっと、これは……


「スライムゲットだぜ?」


  俺が新しい世界に来て初めての同行者が、まさかのその瞬間に誕生したのだった……。
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