好感度0になるまで終われません。

チョコパイ

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From The Past To The Future

守るということ…

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私が十歳の時、皇帝である父に病が見つかった。
帝国中の医師や魔術師が集められ、父の治療方針について幾度も話し合いがもたれた。

そんな時、ティセ王国の聖女の血の話が出た。
聖女の血を飲めばどんな病も治療できると…

莫大な金額を支払い購入した聖女の血は父の体に入った途端、病を打ち消した。

聖女が天に召されると父は私に執拗に聖女を見つけて結婚するよう命じた。

二十歳の時、ティセ王国の王女との婚姻話がもちあがった。

忘れもしない…父の生誕パーティーで彼女を一目見た時のときめきを…
可憐に微笑む姿に心を鷲掴みされたことを…

と…同時に魔道具の指輪が冷たく光った。

父の言葉が脳裏に浮かぶ。

「聖女を娶れ……」

もし父に彼女が聖女だとバレたら…
可憐に微笑む彼女はどうなるのだろうか……

話しかける勇気もなく時間だけが過ぎていく。
ノーマン公子との噂がたつ頃、ようやく私は自分が彼女に寄せる想いが愛であることに気がつく。

ノーマン公子の隣で微笑む彼女を遠くから見つめる。

これでいい……
彼女の微笑みを蝕むくらいなら…私のものでなくても……

皇帝である父に言われて彼女の様子を探りにいく。

それは父が他界し自分が皇帝になっても変わらなかった。

月に一度、彼女を見つめることが出来るだけで幸せだった。

そんな中、フレイヤと出会った。
魔道具が共鳴するほどの力を持つ少女は彼女を凌駕する美しさと魅力があった。

間違いなくフレイヤは聖女だ。

息子に会わせたのは息子の器の大きさを知りたかったのと息子の反応を見たかったからだ。

息子が生まれてすぐ、魔塔主によって息子の踵に魔よけと厄除けの印をむすんでもらった。

父のように愚かな人にならぬように…
すべては彼女の微笑みを守るために……

息子は私よりかなり計算高い。

フレイヤは知らぬだろうが、表向きはフレイヤは自由に振る舞っているように見える。

でもそれは絶え間ない息子の献身あってのことだ。

将来フレイヤの邪魔になる男爵家の娘を家門ごと取り潰し、平民を学園に入学することを認めると同時に牽制しやすい上位貴族だけの校舎を作り、
あちらこちらに魔術避けの印をほどこす。

そして……魔術学部を作ったのだ。

「聖女と呼ばれる者が少ないから皆が欲しがるのです。
ならば聖女を量産すればいいのです。
聖女の価値を下げればいいのです。
私は聖女を好きになったのではなくレイヤを好きになったのですから…」

息子は小声で私にだけ聞こえるように話す。

「父上もこうすれば良かったんですよ。
本気で惚れていたなら…」
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