暴力みたいな恋でした(完結)

チョコパイ

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回想~手折れぬ想い1~

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トントン……
執務室の扉をノックする。
父の秘書官が静かにドアを開け
私をソファーへとエスコートし静かに部屋を出ていく。
「すべて聞きました」
私の言葉に
「そうか…」
と父が小さな声で応える。

「こんな形でしか君を守れなくてすまない。
君が結婚に夢を描いていた事を知っていたからこそ、相手を自分で選べるよう後継に指名したのに、結局はそれすら出来なかったよ。」
父の震える声に私は首を横にふる。
「私こそすいませんでした。」
父は大きく息をはくと
「母さんが生きていた頃、君はよく父様と母様みたいな仲良しな夫婦になりたい。そう言っていたよな。テオ殿は君の願いを叶えてくれそうかい?」
父の問いに私は静かに笑ってみせた。
今、何を言っても嘘になるから。。

翌日の放課後、私はシルビアを誘ってカフェの個室へと入った。
卒業試験を受けないこと。
そのかわり領地管理課程に進むこと。
そしてテオと婚約すること。
シルビアは真っ直ぐ私を見つめ話を聞いている。
「そう。アーシャはそれでいいのね。」
シルビアの問いに私は頷くと
「アーシャ、私は貴方がどんな選択をしても応援するわ。だって私は貴方が大好きなんですもの。」
真っ直ぐ見つめるシルビアから思わず目を反らすと、シルビアは私の頬を優しく包み込むように両手を添え視線をあわせる。
「私はアーシャが好きなの。
多分、気が狂うくらいアーシャ貴方が好きなの。」
拒めなかった。拒めるはずがなかった。
私はシルビアの気持ちを知っている。
恋に身を焦がし、もがき苦しむ想いを…
霞かかった記憶の中の誰かが叫ぶ。
私を愛してと
私だけを愛してと
気がつくと私達は唇を重ねていた。何度も何度も……
 
帰り際、シルビアは私の手をとり
「何があっても今日の事は誰にも話さないわ。命がつきるまで私の想いはアーシャ、貴方だけだと誓うわ。」
熱い唇が私の手におとされる。
ドクン…ドクン...
胸が苦しくなる。
「シルビア、私は……」
「大丈夫、アーシャが私と同じ気持ちではないことはわかってるから。」
そう笑うシルビアの表情は切なくてやるせないものだった。
まるで夢の中の誰かみたいに。



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