暴力みたいな恋でした(完結)

回想～母の想い～

｢来たか…｣
父は私をソファーに座るよう促すと机の引き出しから一通の手紙をとり出した。
｢本来ならお前が成人した時に渡したかったんだが…｣
そう言うと私の手に手紙を預けると部屋を出ていった。

　　　　アーシャへ
貴方がこの手紙を読んでいるという事は、私はもう貴方の側にいないのでしょう。
アーシャ、貴方にとって私はどんなお母さんでしたか？
ちゃんと貴方の事を見ていましたか？
ちゃんと貴方の話を聞いていましたか？
ちゃんと貴方を愛せてましたか？
貴方と出会うまでお母さんは、とても欲張りで傲慢だったの。
そのせいで、本当に大好きだった人達を追いつめてしまったの。
自分の想いばかり相手におしつけて、それが愛だと疑いもせずに。
でも、貴方とお父さんが教えてくれたの。
愛とは相手に求めるものではなく、ただあたえればいいと。
貴方が手を広げれば抱きしめ
貴方が乳を欲しがればあたえ
貴方が眠くなれば子守唄を歌い
貴方が泣いた時は泣き止むまで背をさすり
そう、あたえるだけで良かったの。
見返りなど求めずに
貴方とお父さんが私に教えてくれたの。
貴方のこれからを一緒に過ごせないことが本当に悔しくて悲しいわ。
でもね、お母さんはいつも一緒よ。
貴方は貴方のまま羽ばたいてね。
いつか貴方がお婆ちゃんになってこちらに来た時、貴方がどう生きたのか教えてね。
それまで少し離ればなれだけど、アーシャ、貴方の幸せを願っています。
私の希望アーシャへ

｢うっ…｣
ポロポロと涙が頬をつたう。
温かくて優しい涙
｢私、ちゃんと愛されてたんだ｣
母の想いが私をそっと抱きしめる。

トントン
ドアがノックされ父が入ってくる。
泣いている私を優しく見つめ、
｢少し昔話につきあってくれないかい？｣
と微笑む。

父は少し困ったように笑いながら
｢アーシャの夢を壊しちゃうかも知れないけどね。でもちゃんと話しておかないと
私と母さんの昔話をね。｣
そう言うと父は話し始めた。