暴力みたいな恋でした(完結)

チョコパイ

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追想~愚か者は誰2~

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従者にここで待つよう指示し私は教会近くに設置されている密告箱に手紙をおとす。

もう後戻りはできない。
賽は投げられたのだ。

数日後、私は知ることになる。
私が犯した過ちが何をもたらしたのか。

泣き叫ぶ声と行き交う怒号。
シルヴィの領地にある別邸に並べられた2人は柔らかな笑みを浮かべている。
「何故こんなことに…」
シルヴィの父親が冷たくなった息子の頬に手をあてる。

離れぬよう互いの手と足に固く結ばれた紐はまるで運命の赤い糸のように2人を結びつける。

「教会から異教尋問されたらしい。」
国教では同性愛は禁忌であり、異教尋問で罪が認められると処罰される。
アリアはことの重大さがわかってはいなかったのだ。
ただ少し困らせたかっただけなのだ。
何も2人の死など望んでもいなかった。

2人が身を投げた橋の上にはシルヴィの愛馬が手すりに繋がれていて愛馬の首もとに巻かれた布の中からシルヴィとテオグランの遺書が添えられていた。
そこには皇太子にお願いして、自分達の死をもって家紋には迷惑をかけないこと。
アリアを裏切り傷つけてしまった事への謝罪。
そして最後に2人の遺体を一緒に火葬して欲しいと書かれていた。

アリアは2人が安置されている寝台にすがりついた。
「ごめんなさい。こんなことになるなんて知らなかったの。
ごめんなさい。ごめんなさい」

父親に頬をうたれ、シルヴィの両親に暴言をはかれても、アリアはその場から動けなかった。

バチバチと燃え上がる炎の中
遺言通り2人は灰へと変わっていく。
身体中の水分がなくなるまで
泣き叫ぶアリアの贖罪の声に応えるかのように一際炎が高く上がる。
 
静かに夜の闇が包み込む頃、
炎は静かに役目を終える。
背中にぬくもりを感じ顔を上げるとライルが隣にいた。
「君のせいではないよ。
ただ2人、生まれた場所が悪かったんだ。帝国なら2人は結ばれる事ができたのだから。」
ライルの言葉にアリアは首を横にふった。
「私がシルヴィ様を愛さなければ、2人を許すことができたならば…私が…私が…」
枯れてしまったと思っていた涙が溢れてくる。
「それでも兄を愛してくれたのだろう。こんなにボロボロになるほど...」
ライルはハンカチを取り出すと
私の涙をぬぐった。
「さあ顔を上げて、兄もテオグランもこれじゃ天国にいけないよ」

空を見上げるとそこには数多の星が瞬く。
「知ってる?今瞬いている星の光は過去の光なんだ。兄もテオグランも消えてしまったかのように見えるけど、その光は時が経ってもまた光輝く事ができるんだよ。アリア、君はその光を見守らないとね。きっとそれが君の贖罪になるんじゃないのかな」
ライルは私の背を優しくなでる。
星達は瞬く
シルヴィとテオグランの星は
今、宇宙へとむかった。
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