暴力みたいな恋でした(完結)

チョコパイ

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回想~愛は形ないもの~

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父との話し合いの後から、私は昔のように食堂でご飯を食べるようになった。
数か月ぶりに帰宅した継母とも
普通に話せるようになった。
領地課への編入試験も無事終わり、テオとの婚約式の準備にかかる。
でもその前にしなくてはならないことがある。

「お招き有り難う。」
シルビアの表情が暗い。
侍女に退室を促し、シルビアの隣に座る。
シルビアの手を優しく握り息を吐く。
シルビアも握った私の手の上に自分の手を乗せ軽く息を吐く。
「シルビア、私にとって貴女はとても大切な友人であり、親友であり、愛すべき人よ。
貴女が居たから立ち上がれたことも沢山あったし、貴女が居たからこそ私がいるの。
シルビア、私は貴女を1人の人として愛してるわ。
でも、それは多分シルビアが抱く私に対する愛とは違うものかも知れない。
でも、言わせてシルビア、私は貴女を愛してるわ」

シルビアの瞳から涙の雫がキラリキラリと輝いてみえる。

「私、テオと婚約するの
それは愛とは違うけど、可能なら愛にしていきたいの。
今は全然でも、気持ちは変わるわ。いつか愛に変わるかも知れない。
だからねシルビア、私は貴女に貴女の思う愛は返せない。」
涙で滲む大きな目がより一層大きく見開かれる。

「えぇ…わかっているわ。私も辺境伯の後継として、婿をとって代を引き継がなくてはならないもの。
わかっているのこの気持ちは何も生まないし、苦しいだけだって………
でも、アーシャ私は貴女が大好きなの。愛してるの」

本当は何処かで理解している。
私達の気持ちは多分同じものだと。
でもそれは決して口にはしない
私達は違う愛に生きるのだ。

シルビアに唇に唇をよせる。
もう2度と触れることのない愛すべき人の唇に


テオとの婚約式が終わり
婚約者として初めての2人だけの時間。
私は母の話をした。
テオは最後まで何も語らなかった。
まぁ、婚約式の後に話す事じゃなかったわよね。
なんだかいたたまれなくて、冷めた紅茶を1口飲みこむ。

「なんだか剣の打ち合い稽古みたいな恋だったんだな。」
ポツリとテオが話し出した。
「剣の打ち合い稽古?」
私の問いにコクりとうなずく。
「押すだけで引かない、そんな強引で単調な剣では勝てないだろう?
君の母上は、初めての剣をどう扱っていいのかわからなかったんだろうね。
だから所かまわず剣を振り回したんだよ。
まぁ、君は剣すら握らないのだからある意味似た者親子かな。」
テオは意味深に笑う。

「知ってた?
俺、入学式からアーシャ、君の事が好きだったこと…」
テオは急に真面目な顔になって私の目を片手でふさぐ。

チュッ
シルビアとは違う唇が私の唇をふさいだ。
次の瞬間、テオの指が私のクチの中に差し込まれ、そのまま舌がヌメリと入り込む。
初めての感覚にテオの胸を思いきり押しかえす。

舌は遠慮なく私の口内を這いまわる。
息があがり、どちらのものともわからない涎が首筋を這う。

「シルビアと比べてどうだった?」
肩をすぼめて話すテオは
「ちゃんと俺の事、好きになってね」と笑う。
「こう見えても騎士なんで、剣には自信あるんで…
覚悟しておいてね」と
くしゃりと笑った。



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