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第1章 神は死んだ。十年前に。
第20話 精密検査を受けよう
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大学病院で考え得る限りの検査という検査を受けたが、医者の見解はただ健康体である、というだけのことだった。
もちろん即日結果の出ない検査などもあるが、とりあえず問題は無いということで、僕の身柄は橿原市役所の新分庁舎へと移送された。4階のコンベンションルーム用の控え室で斉藤さんから調書を取られる。
とは言っても僕の主張は変わらない。
ミミックに食われて、気が付くとその場から誰も、ミミックすらいなくなっていた。というものだ。
それを斉藤さんが独特な言い回しに変えて、それでいいか僕に確認を取る。そしてまるで僕がそう語ったかのように文章に落とし込んでいった。
僕はそんな言い方はしないとか、思うことは色々あるが、大筋では僕の主張が文章に変わったと考えていい。要所は妖精の小径に入ろうと主張したのは檜山であり、宝箱を開けるように指示したのも檜山だということだ。
ここは斉藤さんも繰り返し間違いないですね? と確認を取ってきた。
僕の主張が通ったところで檜山たちが罪に問われることはないが、両者が食い違う主張をしているという記録は残る。今はそれで良しとするべきだ。
何故なら本当の要点は、僕がこの1ヶ月と少しの間、別の世界に行っていたということなのだ。それを隠すためにも檜山たちとの主張の食い違いこそが重要であるかのように振る舞う。
「私が考えるに、本当に重要な点は食い違っていませんね」
「どういうことですか?」
「柊さんがミミックに丸呑みにされた、ということです。もちろん過去にミミックに丸呑みにされた探索者は柊さんだけではありません。すぐにミミックを倒せれば無事に助け出せることも分かっています。一方で丸呑みにされて時間の経った探索者の死体が見つかったという例はありません」
「一度も無いんですか?」
「ええ、ダンジョン管理局の把握している限りただの一度も。柊さんが経験したように時間を超越するということが本当に起きるのであれば、今後ダンジョンの何処かに死んだはずの探索者が突然現れる、ということが起きるかも知れません」
そう言って斉藤さんはペットボトルのミネラルウォーターに口を付けた。
「時間を超越するということであれば、場所も超越するかも知れません」
僕は表情が動かないように必死に堪えなければならなかった。
「そもそもミミックは神出鬼没です。本物の宝箱もそうなのですが、いきなり現れて、いきなり消える。ミミック自体が場所を超越する能力を持っているとも考えられます」
「でも……」
口を開いてから、これが誘導尋問なのではないかと気付く。迂闊なことは言えない。僕は少し考えた。
「それは飛躍した考えではありませんか? 少なくとも僕の場合は違いますし」
「そうですね。私の妄想でした。すみません」
斉藤さんはすぐに自分の意見を撤回した。
「状況として分かることは、柊さんが1ヶ月と少しの間、ダンジョン内から出ること無く生存していた、ということです。付け加えることがあるとすれば柊さんが居たと主張する妖精の小径を、その間、誰も発見していないということですね」
「ポータルからそれほど離れていないですから不自然ですね」
「あるいは発見していてもマップの抜けだと判断して報告しなかった、ということも考えられます。第3層を探索するのは週末探索者が多いですからね。そこは確認のしようがありません」
「僕が出た後、妖精の小径は消滅しましたから、今からでは確認できませんしね」
「まあ、そんな感じです。長々とありがとうございました。今日はこの辺りで終わりにしましょう。橿原ダンジョンまでは原付かなにかで?」
「あ、バスです」
「それならお家まで送らせてください。届けている住所に変更はありませんか?」
「ありません。それと帰る前に家族に連絡を取りたいのですが。どうやらいきなり帰ったら驚かれそうなので」
「登録されている緊急連絡先で構いませんか?」
緊急連絡先は母のスマホになっていたはずだ。いつも通りならまだ仕事中のはずだが、連絡くらいは取れるだろう。
「それでお願いします」
「まず私の方から状況を説明しますね。いきなり柊さんが電話をしてきては、結局混乱させてしまうでしょうから」
「確かにそうですね。お願いします」
もちろん即日結果の出ない検査などもあるが、とりあえず問題は無いということで、僕の身柄は橿原市役所の新分庁舎へと移送された。4階のコンベンションルーム用の控え室で斉藤さんから調書を取られる。
とは言っても僕の主張は変わらない。
ミミックに食われて、気が付くとその場から誰も、ミミックすらいなくなっていた。というものだ。
それを斉藤さんが独特な言い回しに変えて、それでいいか僕に確認を取る。そしてまるで僕がそう語ったかのように文章に落とし込んでいった。
僕はそんな言い方はしないとか、思うことは色々あるが、大筋では僕の主張が文章に変わったと考えていい。要所は妖精の小径に入ろうと主張したのは檜山であり、宝箱を開けるように指示したのも檜山だということだ。
ここは斉藤さんも繰り返し間違いないですね? と確認を取ってきた。
僕の主張が通ったところで檜山たちが罪に問われることはないが、両者が食い違う主張をしているという記録は残る。今はそれで良しとするべきだ。
何故なら本当の要点は、僕がこの1ヶ月と少しの間、別の世界に行っていたということなのだ。それを隠すためにも檜山たちとの主張の食い違いこそが重要であるかのように振る舞う。
「私が考えるに、本当に重要な点は食い違っていませんね」
「どういうことですか?」
「柊さんがミミックに丸呑みにされた、ということです。もちろん過去にミミックに丸呑みにされた探索者は柊さんだけではありません。すぐにミミックを倒せれば無事に助け出せることも分かっています。一方で丸呑みにされて時間の経った探索者の死体が見つかったという例はありません」
「一度も無いんですか?」
「ええ、ダンジョン管理局の把握している限りただの一度も。柊さんが経験したように時間を超越するということが本当に起きるのであれば、今後ダンジョンの何処かに死んだはずの探索者が突然現れる、ということが起きるかも知れません」
そう言って斉藤さんはペットボトルのミネラルウォーターに口を付けた。
「時間を超越するということであれば、場所も超越するかも知れません」
僕は表情が動かないように必死に堪えなければならなかった。
「そもそもミミックは神出鬼没です。本物の宝箱もそうなのですが、いきなり現れて、いきなり消える。ミミック自体が場所を超越する能力を持っているとも考えられます」
「でも……」
口を開いてから、これが誘導尋問なのではないかと気付く。迂闊なことは言えない。僕は少し考えた。
「それは飛躍した考えではありませんか? 少なくとも僕の場合は違いますし」
「そうですね。私の妄想でした。すみません」
斉藤さんはすぐに自分の意見を撤回した。
「状況として分かることは、柊さんが1ヶ月と少しの間、ダンジョン内から出ること無く生存していた、ということです。付け加えることがあるとすれば柊さんが居たと主張する妖精の小径を、その間、誰も発見していないということですね」
「ポータルからそれほど離れていないですから不自然ですね」
「あるいは発見していてもマップの抜けだと判断して報告しなかった、ということも考えられます。第3層を探索するのは週末探索者が多いですからね。そこは確認のしようがありません」
「僕が出た後、妖精の小径は消滅しましたから、今からでは確認できませんしね」
「まあ、そんな感じです。長々とありがとうございました。今日はこの辺りで終わりにしましょう。橿原ダンジョンまでは原付かなにかで?」
「あ、バスです」
「それならお家まで送らせてください。届けている住所に変更はありませんか?」
「ありません。それと帰る前に家族に連絡を取りたいのですが。どうやらいきなり帰ったら驚かれそうなので」
「登録されている緊急連絡先で構いませんか?」
緊急連絡先は母のスマホになっていたはずだ。いつも通りならまだ仕事中のはずだが、連絡くらいは取れるだろう。
「それでお願いします」
「まず私の方から状況を説明しますね。いきなり柊さんが電話をしてきては、結局混乱させてしまうでしょうから」
「確かにそうですね。お願いします」
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