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2章

95 シグル王国侵入編③平原での戦い

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首都シグル近くの平原、他の兵より豪華で歴戦の戦士の雰囲気を発している目がうつろな男が他の兵士に号令を発する。彼の名はユージ、この国の兵士を束ねる総将軍である。



「全員進軍。私達には邪神様の加護が付いておる。臆さず進め」



 ユージの後ろに控える黒服のローブの一団から一人の男が近付いてくる。



「ユージ、兵士の状態はどうなんだ?予定通りに行きそうか?」



「はい、キラ様。兵士たちの士気も高く、この行軍速度であれば邪神様が与えてくださった兵器のおかげで3日で付きそうです」



 彼の名はキラ、この国の数人いる元副将軍の一人。もともと野心家で嫉妬深く自分より地位の高いユージを妬ましく思っていた、その醜い心と軍事力に目を向けられアグリにより邪神教に入る。現在は他国への侵略幹部として軍を指揮している。



(これこそが俺にふさわしい場所だ。これからこの兵器を使い全ての大陸を征服してやる)



 キラの頭の中では大陸を征服し周りに美女をはべらせ笑っている姿があり、歪んだ笑みを浮かべる。ただその幻想はすぐに壊れてしまう。









真保とミーシャは平原を歩きながら話している。



「でどうするの~、真保~?」



「戦車は私が相手するわ。ミーシャはそれ以外をお願いしてもいい?」



「OK」









 キラの下に兵士が近寄ってくる。



「10m先の森の中から何者かが向かってきます」



 兵士の話を聞きキラは魔力で視力を強化し森の方を見た。そこには極魔本マギクリスタを取り出し、ミーシャは背中から翼を広げ両手に破銃ジャッジメントを持ち駆けだしていた。その姿を確認したキラはすぐに号令を出す。



「直ちに砲撃を開始せよ。標的は目前の2人」



 その号令を聞き兵士たちは直ちに攻撃を行った。







 真保は戦車が突然動きを変えたことでこっちに気づいたことが分かった。そして



ドドドーン



 弾幕の雨が降ってくる。真保は手を前に構え魔法を放つ。



「【マグネティック・コア】」



 真保の手前の空間に多数の磁力を発する球体が多数現れた。戦車から発射された弾丸はその磁力の球体に吸い込まれていき一つの球体となり地面に落下していった。



 一方先に駆け出したミーシャは砲弾の雨を時には躱し時には撃ち落とし、戦車部隊を通り抜け兵士の下に迫った。それに気づいた兵士たちはミーシャに向けて銃を発射するが、ミーシャはその球を魔力で強化した翼ではじきとばした。その光景を見て



「なっ!」



 兵士たちは驚き一瞬動きを止める。その隙にミーシャは銃を乱射する。ミーシャの球を受けた兵士は突然倒れだす。よく見ると体がマヒして動けないようだ。ミーシャが使ったのは当たれば耐性を無視して2時間は動けなくなる魔力弾だった。ミーシャにより兵士たちは次々無力化される。



 その動きを見てキラは叫ぶ。



「なんだ、あのでたらめな戦い方は!」



 そうであろう。なぜならあの銃の威力は普通の人が使えばC級クラスの魔物も倒せて、魔法に長けた者が使えば一人でA級クラスの魔物とも戦えるようになる。キラ本人も銃を使えばSランクの魔物を倒すことができた。しかし勘違いしてはいけない。今彼らが敵としているのはSランクの魔物を数体相手しても倒せる人物なのだから。



「くっ!あの天族に戦車の攻撃を集中させろ」



 キラは戦車部隊に目を向け命令するが、すでに戦車は全て空中に浮かんでいた。その光景を見てキラは



「は?」、



 戦車が何故宙に浮いているかは理由がある。それは真保の仕業である。



 真保は弾丸の雨を無力化した後、今度は戦車に向けて魔法を放つ。



「【ゼログラビティ】」



【ゼログラビティ】の効果で戦車は浮かび上がり上空1000mまで達する。その時戦車内では兵士たちが慌てふためいていた。



「車輪が動かない。どうなっている」



「何!車体が浮いてる」



 そしてさらに魔法を2つ使用する。一つ目は【シールド】。この魔法は対象の周りに壁を作り込められた魔力分の外からのダメージを無効化する。この魔法を戦車の兵士たちに使用する。そして



「【グラビトン・プレス】」



 戦車全体に重力を100倍にする魔法をかける。そして同時に【ゼログラビティ】を解く。すると戦車は100倍の重力+落下によりすごい速度で地面に激突する。



ドシーン



 そこには巨大なクレーターが出来上がり中心には1枚の鉄の板となった戦車と【シールド】に守られた兵士がいた。そして真保はとどめの魔法を使う。



【スリープ】。対象を深い眠りに導く魔法。その魔法を【シールド】内の兵士たちに使用した。そしてミーシャと合流しユージとキラの下に近づく。



 キラは内心焦っていた。それはそうだろう、シグル王国の全兵力をを一気につぶされたのだから。さらに後でこの損害の責任を取らされて幹部から降格されてしまう。そこでキラは手元にある魔道具を見つめ、一つの策を思いつく。真保とミーシャを捕獲して邪神に差し出すという策を。その策を実現するために安堵した顔で2人に話しかける。



「ああ救世主様、助けていただきありがとうございます」



 大げさに歓喜の声を上げながら黒いローブの一団は2人を囲んだ。2人は特に迎撃することもなく待っている。そして



「今だ」



 キラの号令の下黒いローブの一団は魔道具を発動する。魔道具からは黒い腕が飛び出て2人にまとわりつく。その様子を見てキラは高笑いする。



「アハッははは、油断したな、その腕は邪神様以外の力を吸い取り動けなくする。その状態でこの奴隷の首輪をするとどうなると思う?何の抵抗もできずに奴隷化するんだ」



 キラは完全に安心し聖に、ユージはミーシャに近づき奴隷の首輪をつけようとする。その時



「【ホーリーバインド】」



 聖とミーシャの周囲にの地面から光のロープが現れ、キラたちを拘束する。するとロープが触れた場所から黒い煙が霧消していき周囲から



「ぎゃああああああ」



 と悲鳴が聞こえる。その苦痛に顔を歪めながらキラはまだ無数の黒い腕にとらわれている2人に向けて問いただす。



「なぜ、魔法が使える?神の加護も消え去り魔法も使えないはずだ。優斗の時もそうだったのに」



「残念ながら今の私たちに全く効かないわ」



 2人は身体全体から魔力をあふれ出し黒い腕を振りほどく。そしてミーシャは上空へ向けて以発の弾丸を打ち出す。その弾丸は上空の黒い雲に吸い込まれると一気に雲を吹きとばした。そして



「やめろぉぉぉぉぉぉぉ」



 キラの絶叫が響く中、白い光が当たりを包み込み邪神の加護をうけたキラ含む黒いローブの一団は塵となり散っていった。

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