黒猫だって、恋をしたい!!

かっさく

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二人の出会い

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フェロモンを出したことがないなんて、それはおかしい。普通は中学生の声変わりの時期と同じくらいに、突然ムズムズとしてフェロモンが出るようになるものだ。だから、光希のそれは異常な事だった。

「どうしてだ?なにか、病気でもあるのか?」

光希が首を振る。

「分かりません。でも別にフェロモンが出なくても、困ることなんてないので」

「ある」

「へ?」

「いや、なんでもない」

俺としては、初めて相性のいい相手と出逢えたんだからその相手が病気かどうかは重要な事だ。

「病院に行ったことはあるのか?」

「いえ、ないです」

「何故だ?」

そう聞くと、少し罰が悪そうな顔をした。

「お金を掛けたくないですし、それにフェロモンが出なくても困ることは無いので」

「フェロモンが出ないと、相手は誘えないだろう?」

「別に、誘う相手もいないので」

「・・・・そうか」

つまり、光希くんに彼氏は居ない、ということか。これは俺にとってはいい知らせだった。

「倒れた時にフェロモンが出ていたから、出ない、という事は無いはずだよな。一度病院に行った方がいい」

「でも、行くにも時間とか、お金とか、無いですし」

「お金か?」

確かに、光希の格好は白のTシャツにジーパンというラフな格好だったが、両方ともかなり着古しているようだった。それでも手入れがいいのかあまり古いという印象は感じない。

「お金がないなら、私が出す。明日は暇か?」

「え?まあ、朝なら時間はありますが・・・」

「何時なら大丈夫だ?」

「八時までなら」

「分かった。なら、その時間までで行ける病院を探そう」

「あの!どうして俺にそこまでしてくれるんですか?」

「そうだな・・・、私は今まで、フェロモンが反応する相手が居なかったんだ」

「そうなんですね」

「・・・・??   口説いているんだが、気付かないのか?」

「口説いて・・・えっ、口説いてる!?」

顔を真っ赤にして慌てた。

「口説いてるって、俺ですか!?こんな、黒猫なのに??いいんですか??」

光希は、自分が黒猫なことを気にしているようだった。確かに、一部には黒猫は不吉の象徴と呼ばれているがそれで差別するようなことはしない。

「黒猫かどうかなんて、関係ない。それに、光希くんは綺麗だから」

「き、綺麗???あ、ありがとうございます・・\\」

照れながら俯いてしまった。

「それでも、安藤さんはロシアンブルーの純血でしょう?雑種と番になっても大丈夫なんですか?」

「まあ、出来れば同じ純血が良かっただろうが、今までどんな相手にも反応しなかったからな」

同じ純血の相手と何度もお見合いをしたが、誰とも相性が合わなかった。だから、光希くんと出逢えたことは運命だ。

「取り敢えず、明日、病院に行こう」

「はい」

その時、
ぐうううう
と大きな音が鳴った。

「ごめんなさい\\」

顔を赤くして俯く。今の音は、光希くんのお腹の音だったらしい。

「ふっ、あはは!!コンビニに行ってきたんだ、何か食べたいものはあるか?」

「ありがとうございます、貰います。お金は幾ら渡せばいいですか?」

「いいよ、奢るから」

二人で夕飯を食べる事にした。

「俺、口説かれたの初めてです」

「そうなのか。なら、私と付き合ってはくれないか?」

光希の右手を持ち、口を付ける。ありふれた口説き文句だが、それにも顔を赤くして慌てふためいた。

「まだ、もう少し仲良くなってからお願いします!!\\\」

「ん、分かった」

子孫のためにも、絶対に落としてやろう。そう決心した。
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