黒猫だって、恋をしたい!!

かっさく

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二人の出会い

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ホテルへと運んで、さあ目を覚ますかと思ったが全くそんなことは無かった。あれだけ甘い匂いを放っていたフェロモンも、もう一切匂わない。なんだか肩透かしをくらった気分だ。仕方ないので、ズボンの中で窮屈そうにしている息子はトイレで一人で慰めてきた。フェロモンを撒き散らして寝ていたお詫びとして、いつか絶対に抱かせてもらおうと心に決めた。
・・・・それにしても、見事な黒髪だな。と片方のベッドで寝ている猫人を見た。少しくらい白色の毛が入ってそうなものなのに、それもない綺麗な黒。手入れをされていないのか髪にツヤはないが、金をかければどれだけの素質が眠っているのだろう。顔も長い前髪に隠されていて分かりにくいが、可愛い顔立ちをしている。興味本位で髪の先を触ってみると、何かに気がついたのか猫耳をピクピクと震わせた。その様子に素直に可愛いと思ってしまう。
まあしばらく起きる様子はないし、このまま寝かせようか。お腹も空いたし、ホテルの近くのコンビニに夕飯を買いに行くことにした。



帰ってくると、まだ寝ているようだった。一応、お茶やジュースやおにぎりと、この猫人の分まで買ってはいるけれど、起きるかどうかは分からないので一人で先に食べることにした。ワンタンスープを取り出して、ポットにお湯を入れて沸騰するのを待つ。スマホでニュースを確認していると、布ズレの音が聞こえた。ベッドに目を向けると、モゾモゾと寝返りを打ちながら尻尾を揺らしている。目が覚めたかと思い、呼びかけた。

「起きたのか?」

「んん・・・・」

呼びかけてみるがまだ寝ぼけているようだったので、もう一度近づいて言ってみる。

「起きたか?」

「・・・・??」

面倒くさそうに目が半分開いた。蛍光灯の光に当てられ、金色の瞳がキラキラと輝いていた。

「・・・・!!!」

やっと意識がはっきりしたのか、目を丸く開いて驚いた目で俺を見ていた。パッチリとした大きな瞳で、この猫人の困惑を置いておいて綺麗な瞳だなと思った。

「だ、誰・・・ですか?」

「俺は安藤あんどう太樹たきだ」

「へ?あ、俺は黒峰くろみね光希みつきです」

状況が呑み込めていないまま、名前を言ってもらった。

「光希くんか、いい名前だな」

猫人間は、見た目が皆変わらない。全員が二十歳になった瞬間に成長が止まり、それ以上は見た目に変化がないのだ。だからと言って老けない訳ではなく、歳を重ねる事に体は無茶がきかなくなってくるけれど。俺は光希くんの態度や、あとはあんな所でフェロモンを撒き散らす軽率さから自分よりも年下だろうと判断した。

「え、ええ?ありがとうございます」

言葉を素直に受け取り、少し照れているようだった。

「安藤さん、ここは何処なんですか?」

「ここはホテルだよ。君が繁華街の近くで倒れたから、俺が運んできたんだ」

「倒れた!?すいません!!ホテル代は出させてください!!!」

「いいよいいよ、私が払う」

「ええっ?いいんですか!?ありがとうございます!!安藤さんはお優しいんですね」

そう言って顔をほころばせる姿に、『この子は騙されやすそうな子だな』と思った。何はともあれ、今のうちに好感度が稼げたのなら良かった。

「あんな人のいる場所でフェロモンを撒き散らすなんて、本当に危ないよ」

「フェロモン???俺、フェロモン出てたんですか?」

「ああ、そうだよ」

「ほ、本当ですか?」

「どうしてそんなに信じられないんだ?」

「だって俺、フェロモンなんて出したことがないんです」

「え??」
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