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第一章 MA・DA・O ~マトモに生きないダメ男~
第8話 Help me, MARINNNNNN!!
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「ぐッ、目が、目があっ・・・・・・ちょっと、光るなら光るって事前に言っといてくれません!?」
唐突な閃光に目を眩まされ、格ゲーで言うところの「ピョった」状態になった勇氏は怒鳴り、立ち上がる。ガヤガヤうるせえ、どこだここ?
「いや、正直こんくらい言わなくても余裕で対応出来るだろって思ってたもんでな。・・・・・・ってかお前ほんとにあの「白面」なのか? それとも尾ひれがついただけで、元からこの程度のもんか?」
「ああ、期待に添えなくて悪うございましたねぇ、最近ろくに動いてないから勘も身体も鈍りに鈍ってんですよッ! 麻婆神父だって十年動かなきゃただの泥投げおじさんになるんだから当然でしょうよォ! ってか人を試すような真似して何が楽しいですか、ええッ!?」
あまりの怒りに繕った敬語が剥げ落ち、元に戻りそうな口調を必死に押さえ込む勇氏。しかし対するフーバルトは特に悪びれた様子もなく、サングラスを外して冗談交じりに言葉を返す。
「おいおいそう怒るなよ、だったらなんだ、滅びの呪文でも言っとけってか? ラピュタ王家の末裔でも、第一飛行石も持ってねえ俺には無理な話だぜ?」
「んなこたぁどうだっていいんですよッ! でっけえ積乱雲見て「あの中にラピュタが・・・・・・」って思う奴はみんなラピュタの民なんです、心の中に飛行石持ってんですッ! ・・・・・・くそっ、あ~くらくらす、る・・・・・・、ッ?」
文句を言いながらも鮮明になっていく視界であたりを見渡し、勇氏は気付く。
そこには自分の腰ほどの高さの机が・・・・・・ってかこれ教卓じゃん。んで一段下がった床には机がずらっと並んでる、そしてその机には、ヒソヒソと話す少年少女たちが座って・・・・・・ってこれ、教室? え、いきなりすか。
「はいはい、注~目~! 俺がこの学校の校長兼担任、フーバルトだ。そしてこいつが一週間、お前らを率いる隊長の・・・・・・ほら、さっさと言いたまえ」
気付いたかとでも言うかのように、ニヤリと笑みを浮かべるフーバルトを軽く睨んでから、しかし言われたとおり自己紹介に乗っかる。思惑に乗せられたようで苛立ちはするものの、それ以上にこの場で言ってみたいセリフがあったからである。
「東中出身、我張勇氏《がはりゆうじ》。ただの人間には興味ありません、この中に宇宙人、未来人、異世界人がいたら、俺様の所へ来やがれ。以上ッ!」
・・・・・・しーんと静まりかえる教室、ほう、と眉を細めるフーバルト。そう、これはこのふざけた野郎に逆らえない俺の、ささやかな意趣返しである。
さて、それじゃあ振り返ってみよう。ついさっき、ラノベで言うなら数十行ほど前にこいつは言ったはずだ。従わない奴、逆らう奴がいたら片っ端から切って捨てて良いと。ならばこちらから積極的に猜疑心を抱かせ離反させればいい。んで自己紹介しろとくればこの文句、言うには絶好の機会である。
・・・・・・SOS団団長が放ったあの言葉で、クラスメイトの認識は一瞬にして「美」人から「変」人に変わった。他人の群れがそうまで忌避を覚えたのだ。直属の上司となろうものがこんなことを言って、信じるやつがいるだろうか? いやない。
(・・・・・・ああ、そうさ。たとえ異世界の門があって、魔法が使えて、闇の組織が跋扈していたとしても。・・・・・・このくだらねえ世界に、俺にとってのキョンはいてくれやしねえんだよ・・・・・・)
・・・・・・しかし、その時だった。冷めた心で一人思い耽り、諦観のため息をつく勇氏に、訝しみの欠片もない疑問は投げかけられた。
「え~、・・・・・・これ、笑うとこ?」
・・・・・・ん? 待て。そのセリフ、まさか――
驚愕に跳ねる眉。同時に、聞きなれたバックミュージックが何処からか流れ出す。
“テュイン♪ テュイン♪ テュイン♪ チャンチャランチャラチャ♪ チャンチャランチャララ~”
「えらいイケメンがそこにいた」
“~パンパンパン♪ パパパパンパン♪ パパパパンパン パパッパッ♪ チャーッチャーッ~”
「ああ、じゃあ次」
フーバルトの声と共にがたんと立ち上がり、自己紹介。マジか、あのワンシーンから座席の配置まで考察してんのか。
「東中から来ました、谷口です。趣味は・・・・・・・」
「結果から言うと、それはギャクでも笑いどころでもなかった。勇氏はいつも大マジなのだ」
“~トゥイイイイン バァアアン♪ トゥイイイン♪ バァアアン~”
「こうして俺たちは出会っちまったぁ~」
「しみじみと思うっ! 偶然だと信じたいと!!!」
“~チャラッチャー♪ チャラチャー♪ チャラチャ♪ チャンチャン♪ ・・・・・・・・トゥルルルルル チャーン~チャーンチャーン~”
「はい、それじゃあこのままAメロいきますっぜ! あワン☆ ツー♪ スリー? フォー! こたぇえええぇはぁああ~ いつもぉ わぁああぁたぁしぃいいの~・・・・・・・」
「いや待て、その前にすることがあるだろ」
「それもそうだな、んじゃあ野郎ども! しょっぱなからこんなドハデな自己紹介をしてくれやがった隊長殿に、惜しみない拍手を送ろうじゃねえか!」
「了解ですキャプテンバギー、皆の者ォ、起立ゥ!」
「むねにぃいいいいいぃ・・・・・・って、え?」
(歌っていた一名を除く)全員が揃って立ち上がり、始まるスタンディングオペレーション。たった三十秒の間であの伝説の始まりを再現され、勇氏は驚きに固まってしまっていた。
「いよっ、一週間よろしく頼むぜ大将!」「なあ、さっき“白面”って聞いたが、マジであんたがそうなのか!?」「なあ、どうしてみんな乗ってくれなかったんだ!? 一人だけ歌うのすっげえ気まずいんだけど!?」「シブイねェ・・・・・・まったくおたくシブいぜ」「やりますねぇ! やりますやります!」・・・・・・・ガヤガヤワイワイ以下略。
拍手の間に入り混じる挨拶が(挨拶なのかこれ?)、頭に入ってくるようで入ってこない。そうだ、これはあれだ、エヴァの最終話と同じだ。いきなり拍手からの賞賛で混乱してるみたいだ俺。そりゃあ混乱するわ、おめでとうって何がだよ。教えてくれよ庵野監督。
(何がなんだか分からんが、とりあえず絶対に言えることがひとつ。・・・・・・参ったな、こいつら筋金入ったバカだ・・・・・・)
“涼宮ハルヒの憂鬱”。今では教科書に載ってる程の作品だ、一般人でも名前を聞いたことくらいはあるだろう。
・・・・・・とはいえ、その第一話のプロローグを一言一句違えず再現したとなれば話は別である。先ほどから聞こえる会話の端々に混ざる言葉も、相当深い沼に沈んでなければ普通は出てこない。ってか一人HOMOがいる。誰だか知らんがとっとと出てきて、どうぞ。
(・・・・・・あー、それにしても困った、こいつらどうやって離反させんだよ・・・・・・はぁ、どしよ・・・・・・)
歓声と拍手があがる中、勇氏は困惑にぼりぼりと頭を掻く。極まったヲタクと言うのは、ある意味探求者と同じである。未知の物に忌避を覚えず、くだらない先入観やカビの生えた古い考えをぶち壊していく馬鹿野郎共である。そんな奴らに対し自分がどう応じようと、「そんな考えもあるのか!」と納得されて関の山になるのは目に見えている。
・・・・・・しかしなにより困ったことは、自分がこいつらを嫌いになれそうにないことである。こうなってしまえばどうしようもない。仕方なく、勇氏は一週間拘束される事実を受け入れた。
・・・・・・そういえば、先ほどから隣のおっさんが無言である。気になってその様子を見ると、フーバルトはこちらをじっとりと見つめ、何か言いたげな顔をしていた。
「・・・・・・なんです? 人が楽しそうな顔してるの見るのお嫌いで? 貴方は人の苦痛に愉悦を感じるフレンズだった、と」
「人をどこぞの外道神父みたいに言うな、あとケモフレの話はすんじゃねぇ。・・・・・・・そうだな、口で説明するよりも見せたほうが早いか。ってかお前を引っ張ってきたのはぶっちゃけそれが理由だし」
「いや面倒くさがらないで説明してくださいよ。大体見せるって一体何を・・・・・・」
「おーいてめえら、よく聞けー」
勇氏の言葉を無視し、フーバルトは問いを投げる。
「・・・・・・最近のFGOって、どう思う?」
・・・・・・その声量は決して大きいものではなかったが、喧騒は一瞬にして静まり返る・・・・・・
『最高に』
『『何を今更。そんなの』』 『『 決まってんじゃん』』
『最低に』
『『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、は?』』
・・・・・・が、しかし。それは単なる、嵐の前の静けさに過ぎなかった。
「大体まず前提として女体化しすぎ。なんでアーサー王が女なのよ。正直意味分からんね」
「・・・・・・おい、正気かお前。zeroもfateルートも一緒に見たじゃねえか、何でそんなことが言えるんだよ」
「第一zeroを並べることが論外だろ。staynightとの設定がガッバガバで気になって仕方なかった」
「はん、きのこの言葉を信じるようじゃまだ型月厨としては三流だな。矛盾? ゼロが後出なんだから設定そっちにかぶせれば良いだけじゃん。そう思い込め、思い込め、ほら思い込んだ! 僕って単純、偉いッ!!」
「ってかfgoの話だろ。何でstaynightの話になってんだ、ちなみに俺は凜派だ」
「凜? ふざけんな。桜ちゃんに決まってんだろ」
「ちがうね、凜は全ルート最高なんだよ。fateでは士郎の相棒、ubwでは恋人、hfではヒロインの姉! お前horrowの濡れ場見たか!? あのエロかわいさ脳味噌溶けるかと思ったわ殺す気か畜生ッ!」
「違うし、桜のほうが良いし! マシュを遥かに凌駕するTHE・後輩! 士郎を唯一人間に戻せる存在! 分かるか! 分かれよ!? 分かったと言えッ!!」
「・・・・・・ん? で、何を見せてくれるってんで? 何も起こらねえじゃないすか」
「良いから黙って見てろって」
「分かってねえな、ああ、てめえらぜんっぜんわかってねえ。いいか、アルトリアたんは女の子じゃないとだめなんだよ、武内の一言が奇跡を生んだんだ! んじゃなきゃあんな神キャラできやしねえ! 孤独と寂しさを背負ったあの小さな身体ッ!! ああああああおかわりちょうだいなぁッ!」
「いいや伝承なんてマシなほうだ、それよりも史実の人間の方がひでえよ! かわいい鯖だな♪ってネットで引いたら、出てきたのはおっさんの肖像画ッ! なあ、このやるせない気持ちを俺は一体どこに向ければ良いんだ!?」
「馬鹿野郎、発想の転換だ。バ美肉と同じなんだ」『バ美肉といえばかみやん。おいそこのお前、あの虹塗り美少女VTUBERに含まれるおっさん率は妻子持ちおっさん一人分だぜ!』『あああ・・・・・・あの嫁との惚気と哲学がすこなんじゃぁ・・・・・・』『本人の経歴振り返るとその分泣けるよなぁ・・・・・・』「クッパ姫と同じだ。『あったなそんなの・・・・・・』元がおっさんだと思えば鬼畜系の同人誌読んでも罪悪感薄れるようになるじゃねえか。ほら、いんぐりもんぐりし放題だろ」「なんて奴だ、コイツ天才か!?」
「・・・・・・ってか、なんか色々声が混ざってきてんですけど。これアレだよ、文章に書き起こしたらどうなるか全然分からなくなるやつじゃないです?」
「んなこたぁ当然じゃねえか。大勢が話す議論や会話が一つにまとまるなんてこたぁあるわけねえだろ。DON'T THINK, FEEL.ってやつだ」
「話を逸らすな、それじゃ根本的な解決になってない! 要は女体化させるんだったらそれなりの理由引っ張って来いって話なんだよ! リオ鯖はメイドインUDONだからOK!武蔵ちゃんはパラレルだし、ダヴィンチちゃんは本人じゃなくてモナリザだからこれもオーケー、ドレイクは黒ヒゲに免じて許すッ!『髭ドレ尊すぎィ!』『はっ、ニワカが。ドレイク初出はEXTRAからだっつの』三蔵ちゃんもノッブも頼光ママも何とかぎりぎり耐えられる解釈だし、沖田も女説出たのつい最近だけど寛大な心で認めてやる!『半世紀ってつい最近って言うんだっけ』・・・・・・だけどなぁ、だからって荊軻と義経も女なんだよわっけわっかんねえよ、あれのどこに女要素があるんだよ東出さんよぉッ!」『俺がいいたいのは最近実装されたガレスちゃんよ。円卓女体化は当然、ってか? あん? 手が綺麗だから女体化とかふざけすぎだろプレイヤー舐め腐りやがって。自分《てめえ》の設定《ケツ》も説明できねえタコ共が・・・変身の指輪でTSできるとかできただろ。恥を知れ恥を』『こんなんじゃ偉人デリヘルバトルなんて言われても弁解の仕様がないよねぇ・・・・・・』『まあまあ、作家の尻拭いをするのもわたしたちファンの仕事じゃない。どんな性別でも異世界パラレルかホムンクルスに脳内変換しとけば無問題よ』「まあ東出が作った鯖だから仕方ないと思え。始皇帝の件もそうだろ」「貴様ッ、御朕朕ランドの住民たる我を侮辱するか!?」「東出どれだけ書いてると思ってんだ、少しは休ませてやれよ!?」「そうだそうだ! それに東出は設定下手じゃねえ! 大英雄とか盛らないのだって、原作キャラを立てるためだッ! まさに書き手の鑑じゃねえか!」「アニメアポカリファの監督の件は? 原作とは違うようにするって言ってたのに?」「あの件は忘れろ!」
「・・・・・・それにしても、いきなり二十人近くとかキャラ出すぎじゃありません? これアレですよ、読者が頭パンクして“はい無理クソー”とか言い出すパターンですよ?」
「大丈夫だ、もしそうだとしてもんな竹書房にケンカ売る自称クソマンガみたいな反応はされねえ。それにスリーサイズまで決まってるネギまよりかはマシだ。暗殺教室だって売れただろ、読者を信じろ」
「・・・・・・いやぁ、でもあれどっちも中学生って設定無理がありません? なんか読んでてリーダー伝たけしを思い出すんですが・・・・・・」
「まぁわからなくもないわな。ボンチュー7歳、マミーですら中学生・・・・・・。あれは流石に無理があったが、マジでカッコよかったよ。年甲斐もなくおっさん興奮しちゃったね」
「ええ、バーバリアン編のボンチューは読んでてどこぞの大罪司教並に脳が震えましたよ……。最近の漫画家にもあれくらい中身のあるもん書いて欲しいですよほんとに。・・・・・・まあ、ジャンプには載ってないんですけど」
「しまぶーは“ハメた”っつーより“嵌められた”からなあれ、ご愁傷様だよかわいそうに・・・・・・。だがおかしな話だよ、なにも連載打ち切りにしなくてもいいだろが。作者が何しようとその作品の素晴らしさには関係ないに決まってる。 妻の危篤に不倫旅行に出かけたドストエフスキーもそう、2チャンでやらかした杉太と支蔵も然りだ」
「……最後の2つ、言う必要ありました? あと支蔵氏は無関係だっつってんのに正気ですかアンタ」
「いやぁあれはクロだと思うね俺は。被害者がそう言ったら誰だって加害者、世の中そんなもんだ。・・・・・・で、それがどうした? 逆に心が汚れてる奴こそ美を知り、尊い世界を作るのかもしれねえぞ? だったらクズさまサマってもんだなぁハッハー! 作品完結させたら作家は用済みなんだよ、だれもクリエイター本人に興味なんてありゃしねえんだ!」
「・・・・・・アーハイハイソウデスネー」
基地外の相手は面倒なので棒読みで対応しつつ、勇氏は目の前の喧騒を見やる。バカどもの狂宴は留まるところを知らず、言葉の数は増える一方であった。
「文句があるならまず桜井を責めろよ、俺は二章四章のことは忘れてねえぞ!?」「戦犯桜イエェ゛エエエエエエエァッ!!」「いい加減にしろ、桜井は悪くねえだろうが!? あれは単に文字量たりなかっただけだっつの、これ以上ほじくりかえすんじゃねぇッ!!」「それでも二章四章の罪は消えんよ、だって所詮碩学だし笑」「・・・・・・貴様、スチームパンク信者の俺に言ってはならないことを言いやがったなッ!? いいだろう表に出ろっ!!」「良いぜ、上等だ!」
「くそっ、三田と成田のダブル田さんに任せておけばこんなことにはッ!」「そいつは無理な幻想だな。東出には放り投げて桜井は共犯に巻き込んで三田に後押し付けて成田を後ろから刺す。これがfateの現状だ」「やめて、成田のライフはもうゼロよ!」「宙ぶらりんになったfakeキャスター・・・・・・岩窟王書きたくてわざわざ著者出したんだろうに・・・・・・(泣)」「成田は二次書く暇あったら早くバッカーノとデュラララ出してくれよ・・・・・・待ってんだよ・・・・・・」
「・・・・・・才ある者が造った世界には魂が宿る! トロッコ問題で作家一人と一般人五人を選べといわれたら、おいちゃんは迷わず作家を助けるね! 何のために生きているのか分からないような奴らをトロッコで轢き潰してでも読みてえんだよ読者は!
・・・・・・それなのにッ、あいつら作家はその覚悟があるのか!? 生み出したキャラクターの命を保障するのが作家の義務であり責務だろうがッ! 物語を紡ぐために、どんなことでもする覚悟があるのかッ!? 読者は作家の前じゃゴミになる! だがなぁ、書かねえ作家はそれ以下のゴミに決まってんだろうがよぉ!
・・・・・・七不思議オーバータイムから音沙汰ナシッ・・・・・・ 期待してんだよ待ってんだよ助けてくれよ谷河ッ、頼むから進捗報告ぐらいするのが筋ってもんだろうがよぉっ・・・・・・かのこんの西乃もストブラの神埼も何やってんだよッ・・・・・・人間いつ死ぬか分からないんだよ、はやく終わらせて俺を安心させろよ畜生ッ! 書けないなら書けない理由書きやがれ、そんでもって誰かに作品引き継がせろよ・・・・・・こっちは生きた心地しねえんだよ・・・・・ッ」
「まあまあ、いいじゃないすか書いてるらしいですし。まあ、あと五年かかる可能性も無きにしも非ずですがねぇ。・・・・・で、これいつまで続けるんです? さっきから呪いの館かってくらい昇天するヤツがいるんですが」
早口でサイコパスな思想を吐き散らすおっさんに、ポイント真ん中にすればトロッコは脱線して止まるぞと心中で突っ込みつつ、勇氏は気だるげに問う。
「ああ、もういいぞ? 見てみろ、それ」
涙目になったフーバルトに指さされ、勇氏は足元を見て・・・・・・首を傾げる。こうしてちゃんと立っているのだ、必ずあるはずの自分の足が透明になっているわけが・・・・・・いや、違う。存在、していない。
「は、い・・・・・・?」
「大体全部きのこが悪いんだ、自分の作品ならちゃんと自分で責任持って書き上げるべきだろうが!?」「フェイトらしくなくなったらすぐに軌道修正しろよ! なんのための監修なんだよ!」「フェイトこそがきのこ、きのここそがフェイト! というわけで、無能なクリエイターはさっさとお引取りくださいませぇ!」「っていうか本ッ当に月姫まだなのッ!? どれだけ待たせてるのッ!?」「リメイクするって言うから、待ちに待ったよこの十年!」「さっちんルートまだなの!? なあ、伝説のさっちんルート実装まだァ!?」「なあ武内よ、きのこを早く急かしてくれ! あれは二人の思い出の作品だろう!?」「それもまだカレー使徒の件根に持ってるの!? なあ!?」「なんでもいいからアニメリメイクはよしてくれ! “好きだから吸わない”がないとか頃すぞマジで!? 黒歴史をそのままにしないでくれッ!」「頼むよ、なあ頼むよ!? 親子でずっと心待ちにしてるユーザーだっているんだぞっ!? 金ならいくらでも積むから! なんなら好きな宝具一つ言って! 英雄王から貰ってきてそれあげるから! この雑種の命と引換に貰ってくるから!」
「うおおおおっ、なんだこれ!? 霊体化してる、俺の下半身霊体化してんだけど!!?? 」
「そりゃあそうだろ、今や天下のfate様にケチつけるなんてふざけた真似、業界やファンが許すと思うか?それに楽しまないユーザーは切り捨てるって発言した運営が、俺たちか弱い一般人を消さないわけがねえ。レイシフト決定だよんなもん」
「いやあれは違う意味・・・・・・って、それよりこれどうすればいいの、消えてる消えてる消えてるよ!? ってかあんたも消えてんじゃねえか他人事みたいに言ってんじゃねえ!」
「パニクんなよみっともねえ。さっき未練ないとか言ってたじゃねえか。・・・・・・・まあ俺のさっきの暴論も関係なきにしも非ずだが」
「いや絶対アンタも関係あるだろふざけんなッ!? いいからさっさとどうすりゃいいか教えてくれません!? 」
「おいおい忘れたのか? 夏に咲いた満開の桜並木も、白くなった神社のドバトもいっぺんになかったことにする魔法の言葉があるだろ」
「・・・・・・! そ、そうかっ、その手があったか!」
「そうそう、AUOといえば最近ごめんなさい事件があったな。みんなはあれ、どう思った?」「どうもこうもねえだろ、我らがギルガメッシュ様が謝罪なんてする訳ねえだろがダボ」「誰が書いたか知らんが命拾いしたな、名前なんか出してたら・・・・・・」「ってか批評がコワくて名前も出せねえビビリはライター辞めろ。責任持てなくて何が作家だ、氏に晒せ」「こんなんだからイキリ鯖太郎って言われんだよ・・・・・・」「はっ、まだまだ甘いなニワカども。ギルのキャラ崩壊は今に始まったことじゃねえ。そんなこと言うなら公式のタイころやトラぶる花札、カニファンなんて目も当てられねえよ」「型月厨は黙ってろ、きのこに調教されすぎだてめえら」
「この物語はフィクションです! 実在の人物、作品、エトセトラには一切関係ありません! この物語はフィクションですッ! 実在の人物、作品、エトセトラにはいッッさい関係ありませんッ!!!」
「そうだそうだ、大体ギャグのノリを本編に持ち込むのが間違ってる」「カニファンも花札も最初からギャグだろが」「 ホロウギルは?」「あれも事故だ忘れろ」「いや別に子供に優しいのはアリじゃね?」「 目が腐っているのか貴様。先ほどからふざけたことを抜かして、覚悟はできているんだろうな?」「ジーザス! どうかお許しを!」「私は許そう。・・・・・・だがトミーガンが許すかな!?」
「この物語はフィクションです! 実在の人物、作品、エトセトラには・・・・・・っておい、何も変わんねえじゃねえか!? もう足どころか腰まで消えてんだけどッ!?」
「いや、別にそれで治るとは一言も言ってねえし。 ってお前あれか、テンパるとスペックダダ落ちするタイプか。それよりお前の“どこか影がある俺TUEEE”的なキャラ、もうボロボロだぞ? 取り繕わなくていっいのっかな?」
「そんなこたぁどうでもいいですよっ! 気に障ったのなら謝りますから、ほらこのとーり! だから早くなんとかしてくださいよっ!」
「・・・・・・まったくぅ、しょうがないなぁのび太くんはぁ。・・・・・・ちなみに正解はこうするのでしたー」
一瞬の躊躇もなく勇氏は土下座する。頭上からフーバルトの得意げに鼻を鳴らす音が聞こえ、ぱちぱち手を叩く音が続く。
「へー、そうか。お前らそんなにfate嫌いなんだな。こりゃすまんかった」
『んなわけねえだろうがぁああああああああああッッ!!!!!』
・・・・・・自らの起こした騒動に終焉をもたらすべく口を開き、そして、その場の全員を叫ばせた。
「嫌い、嫌いだと!? そんなわけがあるかッ! fateこそは至高、fateこそが真理ッ! fateのブランドを下げるようなことはあってはならない!」「そう、だからこそ彼ら製作陣には2部や1.5部のライター、鯖の設定作成者を晒す義務がある! 自分の名前が載らないという責任逃れにはクオリティの低下が伴う! そこらのクズカスソシャゲと同格に成り下がってもらっては困るのだよ」「 一人の男が一人の天才を世に知らしめるべくその身を削り、会社を作った! それこそが型月、それこそがタイプ・ムーン! いい加減誰かこいつら書籍化してくれよ、空の境界初版七部しか売れなかったんだぞ! 一体何のサクセスストーリーだよ泣くわこんなんッ! リアルガチバクマンじゃねえか!?」「きの×武か武×きのか…悩みどころだわね・・・・・・」「いっそどっちかTSさせたらどうだ? 歴史の人物散々女体化させといて、自分たちはされないとか思ってるわけねえだろうし、なぁ?(ニチャァ)」「放課後☆路地裏同盟ッ!」「あああ武内いいい、きのこぉおおおお!!!!! お前ら最高だよ、愛してるッ!」「き☆み☆とッ、 一緒がぁあ・一番ッ! 好きよってぇ・、もっとぉッ! ぎゅううっ☆とねッ♪」「ネコネコアルク、ネコアルクッ! フォオオオオオオオッ!」「あなたの心にッ、マーブル☆ファンタズムッ!」「気まぐれな野良猫ぉおのようにぃいい、いたずらなまなぁああざぁしぃいいいい♪」
「お、おお・・・・・・? 戻ってる、なんで?」
じわじわと色が戻る自らの身体に、勇氏は次第に落ち着きを取り戻す。そしてそんな勇氏を見ながら、フーバルトはやれやれと言わんばかりにため息をついた。
「アホか、マイナス積んだらその分プラス積むのが定石だろうが」
「いや、それ以前にどうしてこんな摩訶不思議なことが起こるんですか・・・・・・」
「だからこいつら全員“特別”だっつったろ? 発したその言葉が互いに重なり合って、おれたち異世界人に直接干渉しちまうんだよ。ああ、お前がこうして異変に気づけるのは、こいつらより力が強いからだな。こいつら自身は何が起こってるかなんて知りもしねえだろうよ」
「 ・・・・・・だけどその言い分だと、お宅も僕と同じだけ強い能力を持ってるってことになるんですがね?」
「ああ、あるぜ? とびきりスペシャルなマジックパワーが。当ててみるか? 正解だったら答えてやるよ」
「いや、いいです。時間勿体ないんで遠慮しときます・・・・・・」
「なんでだ、なんで士凛本が少なねえんだよ!? セイバーや桜はあるのに、なんで凛だけアーチャーなんだよ! いや厳密に言えば同じかもしれないけどさぁ、違うんだよ! なんか違うんだよッ!」「切嗣も士郎もカッコよすぎるんだよちくしょうッ!!正義の味方とか反則だろ正義の味方とかよぉッ!!」「戦車男いつアニメ化するの!? なあ!?」「ああぁ、ウェィバーたん……あんなに立派になって…… 」「イリヤイリヤイリヤイ゛ェァアアアアアア!!!!!」「見つけたぁあああああ♪ プゥウウウウリィイイズゥウウムのなかぁあああああああぁ♪」
「・・・・・・いやいや、でもそれじゃ今までどうしてたんですか? こいつらの様子を察するに、こんなこと何度もあったでしょう?」
「それを制御してたとある兄妹がな、いま門の検問で引っかかってんのよ。こいつらも大概だが、そいつらは更にチート級でな。こっちに来るのにいろいろ制約かけなきゃいけねえ。で、その間の埋め合わせがお前ってわけ」
「なんつー行き当たりばったりな・・・・・・、僕がマンガもラノベも知らなかったらどうしてたんです?」
「なに、そんな時は固有名詞や人名ディスり始めたら止めるよう言うだけの話だ。まあお前のやってること事前に調べてたからな、その可能性はないだろうって決めつけてたが」
「まあそりゃあそうですね。自分でやってて何ですが、「あんなこと」マトモな人間はしようと思いませんから。・・・・・・それよりてめえら、さっきから一人めちゃくちゃ声がでけえ奴がいるが・・・、どいつだ?」
あまりに五月蝿かったので気になり、勇氏は連中に声を投げる。すると喧騒はぴたりと止み、一人の大柄な少年を口をそろえて指差した。
『あ、こいつです』
「なんでさ!? いや確かにそうだけど、そんな口を揃えて密告しなくてもっ・・・・・・うぉっ!?」
ガンガン耳に響くので、早速その広い背中に蹴りを入れる。スマホを見て確認確認、えーっと赤髪で筋肉質のコイツは・・・・・・
「うるせえ黙れ。・・・・・・えーっと、てめえがマックスでいいんだな?」
『ランサーが死んだ!? この人でなし!!』
「死んでないし勝手に殺さないでくれるかな、 俺の幸運Eじゃないっての!っていうかそれが言いたかっただけだよな!?」
そう言うと、勇氏が蹴った少年・・・・・・マックスは何事もなかったかのようにポンポンと膝を払い立ち上がった。
「……それにしてもひでぇなぁ、いきなり蹴り倒さなくてもいいじゃねえか!」
「いや悪い悪い。流石にそこまでするつもりはなかったんだが、お前の背後にいる奴らがこぞって “try kick hard ”→ って書いたパネル持ち始めたもんで、つい」
「はっはっは、冗談はやめてくれよ。そんなことあるわけが…ってあれぇー!? みんななにやってんのさ!?」
「しょうがないじゃないか、だってそこにいるのはうわさの英雄だろ!?」「だったらこの中で一番強いお前と一体どっちが強いのか、比べたくなるのが男ってもんじゃないか!」「それこそがロマン! あぁ、ドクターぁあ・・・・・・」「・・・・・・マックス、お前頭まで筋肉になっちまったのか・・・・・・」「こんな大事なことまで忘れるほどプロテインが好きか。はっ、見損なったぜ・・・・・・」
「え、はい、え、えっ? ……ま、まあ、しょうがないなぁ! 俺のこのッ、鍛え上げられた肉体がッ、どのくらい強いのかっ、試してみたかったっていうんだろう!? まったく、ほんとにッ、しょ、う、が、な、い、やつらだなぁ!」
その顔に満面の笑みを浮かべ上着を脱ぎ、言葉と共に何度もマッスルポーズを決め始めるマックス。なるほど確かに、こいつはしょうがないってレベルのバカだ。拍手や賞賛の声でいい気になって、誰1人としてまともに見てないのに気付いていな……
・・・・・・いや、いた、いたよ。これまたガタイのいい男が一人ガン見して頬を染めてる。えーっとこいつは・・・・・・・、おっと、確認確認っと・・・・・・。
とにかくこの連中を早急に把握せねば、そのうち面倒事が増えるのは目に見えている。先ほど身に染みて感じた恐怖を再び味わってなるものかと勇氏が手に取った端末を、しかしフーバルトはぶんどり、自らのポケットに突っ込んだ。
「あーもうまどろっこしい、確認のたびに画像とにらめっこするつもりかよおまえは? それにあいつは女だ。渡したデータなんか見てても分からねえよ」
「は、女??あのガチムチが??? 」
「ふっふっふ、そうだよ(便乗)! ・・・・・・おやぁ、もしやその心疑ってるね!? いいよ、それじゃ今から変身してみせたげようじゃないか! ヘクター、ランベール、頼むよ!」
「ほう、面白そうだねぇ。いいよ、手伝ってあげる」
「 OK、あのBGMだね」
「ふふっ、ふふふふふっ。見とけよ見とけよ~」
どこからか聞こえ始めたプリキュアの変身シーンな音楽にノリながら、どこからか出てきた光を纏いくるくる回り出すイイ男。勇氏は混乱した。なんだこれ、いやほんとになんだこれ。どうリアクションすればいいのだろうか。
「・・・・・・あの、何か始まったんですけど」
「んなのほっとけ時間の無駄だ。そんなことより喜べ、1回だけ俺が全員の名前教えてやる。・・・・・・だがその代わり、1度で覚えられなかったらこれ没収な。人の携帯潰しといてタダで済ますほど、おっちゃんは甘くねえ」
「・・・・・・あー、そのご好意返品できません?」
「残念だがこちらの商品クーリングオフ対象外となっております。というわけで早速行くぞ。今くるくるボン・クレーみたいに回ってるのがセシル。んであそこでニヤニヤしてんのがヘクター、エア演奏してるのがランベールな」
「お待たせしました、じゃーんじゃじゃーん! どうだ、すごいだろう ・・・・・・って、あっ! 元に戻るの忘れてた! これはちょっとまずいですよ・・・・・・」
現れたのは魔法少女……の服装を着てミッチミチのパッツンパッツンになったオニーサン(元のままである)。そして同時に同じ顔をした二人がダガン、と揃って机に頭を打ち付けた。とんだピタゴラスイッチである。見ている分には楽しいのだが、自分が引率すると考えればあら不思議、みるみるメンタルが削れていくではありませんか。教えてください百科おじさん。僕百科事典読めますから。
「うぉぇえっ、なんつーもん見せやがる! さっきの絶対わざとだろう、謝って!? わかってても毎回変身シーンから目を離せない、可哀想な俺たち双子に謝って!?」
「そうだそうだ、これじゃ“魔法少女 俺” だよ、“これはゾンビですか?”だよ!? ほら、欲しいのは何だ、チャカか手榴弾かミストルティンか、それともハルナちゃんお手製エクスカリバーマサムネか!?なんでも出してやるからさっさとメガロなり妖魔なり戦ってきやがれってのちくしょう!」
「っていうかよく見たら服着たまま着替えたのかよ、喧嘩売ってんのか、あぁん!? 見えそうにも見えないチラリズムくらい楽しませてくれてもいいじゃんかよ!」
「おいアホ妹、早くあいつに触って女にして服ダボダボにしてこい! あとついでに雰囲気エロスもよろしくぅ! ダンス用のポールなら兄ちゃんたちが用意するから!」
同じ顔が同時に机から上がり、交互に文句をムチピチイケメンにぶつけ始める。・・・・・・が、その矛先は突如、1人の少女に向けられる。・・・・・・え、妹? あのザ・カースト上位っぽい系女子とお前らが? えー?
「……おほほほほ、いきなり何を仰るのですかお兄様方、わたくしではなくソレイユに頼めばいいではないですか。それに、そんなこと言われてもわたくし全然意味がわかりませ・・・・・・」
「とぼけんじゃねぇ! この後に及んで我関せずなんて許さねえぜ、自分だけ清楚ぶりやがって!」
「ああ、死なばもろともってなあ! 『バラされたくなかったらあたしにも読ませろ。ってか今あるのこれだけ? 早く続き買ってきて』って脅して、俺たちが隠してた“ふたりエッチ”を読み漁ってた奴がなに言いやがる!?」
「・・・・・・しーん・・・・・・」
「んん、いっいのかなーサラよぉ、無視なんかしちゃってぇ!?」
いや無視してねえだろ、「しーん」って言ってるだろ。ってかそこは突っ込まないのね。
「おいサラ、てめえ俺たちがやった数々の成年コミック、同人誌の恩を忘れたのか! てめえも百合好きなら自分で百合百合しろよ!?」
「・・・・・・あ゛~、あ゛ッ、 う・る・さ・いぃッ!! リアルと2次元の区別ぐらいつけてよクズ兄貴’s!そんなんだから彼女もできないんだよばーかばーかッ!!」
「あんだとてめえ、やんのか!?」
「おう、久しぶりに泣かせてやる!」
「はっ、上等! 丸々太ったヒキニート2匹に私が負けるわけないっての! かかってきなさい、リア充の恐ろしさを教えてあげるから!」
「・・・・・・んで、いまアホな会話繰り広げてんのがある一家の長男ロベルト、次男レイボルト、そんでその妹のサラだ。見ての通りあの二人一卵性双生児だからな、違いがわからないから気をつけろ」
「たった数日の付き合いでしょう、だったら見分ける必要なんかありませんよ」
「そっか。・・・・・・ま、おまえがそういうんならそれでいいさ」
「それよりおいレイボルト、喧嘩ごときでポンポン銃火器を出すな!? なんだこのメチャクチャな構造、暴発したらどうする!? 」
「ああ大丈夫、別にブラザーが大して力込めてないからその心配はないぜ。仏作って魂入れずってやつだ」
「だとしてももうちょっと真面目にイメージしろ! なんだこの殺る気のない手榴弾、スーパーの果物売り場に置いてあっても気が付かんぞ!? 大体マジカル☆チャカは弾数無限設定だろうが! リボルバーかフルオートなら分かる、だがなんでよりにもよってフリントロックなのだ!」
「まあ、まあ、落ち着いて、グスタフ、ね? そんな怖い顔しないでよ・・・・・・」
「五月蝿い止めるなクリス、これは冒涜である! 貴様に分かるように言うなら、自称戦車ガチ勢がティガーのことをタイガーと呼ぶほどのな!」
「・・・・・・なにぃ、そいつぁあ許せねえ! これだから自分のことガチ勢言い出す輩は嫌いなんだ、てめえら大概ニワカだろが! 本当の玄人だったら知れば知るほど自分が知らないことが多いことに気づいて、口が裂けてもそんなふざけたこと言えねえんだよぉ!」
「まるで羽川翼みたいな事言うなぁ。・・・・・・そういえば僕以前羽川をはがわって呼んでたんだけど、どうしてだっけな、忘れてしまった。なあアレックス、よかったら一緒に考えてくれないか?」
「ん?あー、ごめん、寝てて聞いてなかった。・・・・・・はぁ~、腹減った・・・・・・」
「だったら俺がつきあってやるよ。だがその前にギャンブルだ。表、裏、どっちがいい? お前が勝ったら話を聞いてやる。負けたらジュース1本な」
「んで、どう見てもミリオタな坊主頭がグスタフ、キレてべらんめぇ口調になったナヨナヨ目隠れがクリス。いきなり話題を変えた不思議長髪がテオドールで机と同化してる太ましい天パがアレックス、そしていまコイントスしてるボサボサ頭のギャンブル狂がギルザックだな」
「・・・・・・えーっと、今何人目ですかね? 人の顔と名前覚えるの死ぬほど苦手なんですが」
「なに、ここにいるのはあと3人だ。 ってか、このくらい出来て当然だろう? この年いったおっちゃんでもできるんだぜ?」
「はっ、買いかぶらないでくださいよ、誰にだって得意不得意はあるでしょうに・・・・・・それより、フーバルトさんでしたっけ」
「フッさん、な」
「・・・・・・じゃあ、フッさん。さっきからあんたの頭の上から文房具が現れては降ってくるのはどうしてです?」
「ああ、これは金よこせって急かしてんだよ、・・・・・・って危ねえ、コンパスはやめろコンパスは。おっちゃんが悪かったから、な、ルシール」
瞬間、勇氏の目の前からフーバルトが消えた。・・・いや違う、教室の隅に座るジト目のヘアバン少女の所にいる。フーバルトが動いたのではない。あの少女、ルシールが何か能力を使ったのだろうか?
「そう思うんなら早く支払いなさいよ。 地獄の沙汰も金次第っていうでしょ」
「あー、10万だっけ、そんくらいお安い御用だ。えーと確か、右のポケットに・・・・・・ああ、あったぜ。ほらよ」
そう言ってフーバルトは、ルシールの手のひらに何かを乗せる。なんだろうか? 小さすぎてよく見えない・・・・・・って、あ。
「なんのつもり、この小さな紙切れの束? こんなもの貰うためにアタシは何千kmも飛ばしてやったわけじゃない。取引反故にするつもりなら・・・・・・血の雨降らすけど?」
怒りを覚えたのか、声のトーンを下げるルシール。対するフーバルトはわざとらしくぶんぶんと両手を振り、その疑念を否定する。
「いやいや、それ本物だって。だが残念、なんという偶然だろうか。悲しいことにおっちゃんのポッケに入ってたものは全部、あそこにいるチミたちの隊長殿に先ほどにこんなふうにされちゃったからねぇ」
にやにやと笑いながら、こちらを指さしてくるフーバルト。こいつ俺のせいにするつもりでいやがると悟った勇氏は即座に弁明を試みようとするが、開こうとした口は喉元に突きつけられたカッターに閉ざされる。数メートル離れていたルシールがいま目の前にいることから察するに、どうやら自分もフーバルトと同様に彼女に引き寄せられたようだった。
「別に説明なんて求めてない。どういういきさつでこうなったかなんて、そんなことはどうだっていい。・・・・・・アタシが知りたいことはオニーサンがこれ戻せるのかってことと、できなかった場合払ってくれるのかってこと。ここの学長だっていうこのおっさんがケチるような額じゃない。そして、こんなことができるヤツはアタシらの中にいない。・・・・・・だったら消去法でオニーサンってことになるよね?」
責を問うような鋭い語気のせいか、ぷつんぷつんと切れる言葉。これから自分の上司になる者に対する態度ではない。
・・・・・・とはいえ非はこちらにあるわけだし、なにより相手は大貴族のご令嬢。一旦落ち着いてもらうため謝罪し、勇氏は自らを正当化する「弁明」から、正当な理由を提示する「弁解」に発言の方針を切り替えた。
「あー、いやー、すまん」
「謝罪はいらない。質問に答えて」
「いや、だがその、だな・・・・・・」
「だから、質問に答えて。戻すの、払うの、どっち?」
しかし言葉を探す数秒間も与えてはくれずに、目の前のデコ出し少女は高圧的な言葉を会話に差し込んでくる。
「・・・・・・確かにそれをやったのは俺だし、悪いとも思ってる。・・・・・・が、払う気も戻す気もねぇよ。第一てめえらが結んだ取引だ、フっさんから金をせしめるのが妥当だろうが」
「そうね。でも、今ここでアタシが引き下がったとして、この男が踏み倒さない可能性は? オニーサンにも不手際があるなら、建て替えるのが道理のはずでしょ?」
じっとりした目から放たれるいらだたしげな視線は、止むことなく勇氏を刺してくる。うーん、これが男ならうるせえタコと即座にケンカ売ってるもんだが、女子に正論振りかざされるとどうしようもない。
・・・・・・かといっておっさんには弱み握られてるから、カツアゲするわけにもなぁ。あれ? もしかして俺詰んだ?
なんにせよ最近ワインをアホほど買ったばかりだ、金の持ち合わせなどない。とりあえずこの場をやり過ごそうと媚びた笑みを浮かべ、頭を下げようとした勇氏だった・・・・・・が、その時。なんの脈略もなく、頭の中にハトが浮かんだ。
(・・・・・・は?)
どうして、とハンドリフトに乗った現場猫が頭を走り去る間にも、頭の中ではどんどん平和の象徴は増殖していく。目の前のルシールも「なんでハト・・・・・・」と呟き、こめかみに親指を当て肘をつきうなだれている。
(コイツのせいじゃないのか。ま、メリットないもんな・・・・・・)
んじゃ誰が、と背後の喧騒に振り返るといましたよ。銀髪の少女が楽しそうに歌ってやがんの。
『ハ、ト、が来る♪ ハトが来る♪ 絶望と銀河を こ・え・て♪』
「うわっ、頭ん中がハトでぐるぐるしている! ランベール、こうなったらハトでEDMだ!」
「なるほど、ハトをハトで打ち消すというわけか!?」
「ダメだな、あいつ伴奏に回りやがった。毎回付き合って、よくもまぁ飽きないもんだねぇ・・・・・・」
「ってか誰だよソレイユに具体的な曲歌わせた奴! リクエストは抽象的な歌に限ると決めたよな!?」「勘弁してくれよ・・・・・・斉木楠雄のテレパしいたけじゃねえんだから・・・・・・」
ワイワイガヤガヤ言ってた連中も文句を言っていたが、次第に頭がハトまみれになっているのか黙りだす。
「・・・・・・静かになったみてえだな、じゃあやめていいぞ」
騒ぎが一落ち着きしたのを見計らい、ソレイユに曲を止めさせてヘッドホンを外すフーバルト。てめえがやったんかい、とツッコみたいのは山々だったが、話の腰を折られた眼前の借金取りが舌打ちと共にそっぽを向いたので良しとしよう。・・・・・・まぁ、こうなった元凶はてめえなんだが。
「さっき歌ったのがソレイユ、んであそこにいるのが最後の一人・・・・・・」
しかし。そしらぬ顔で説明に戻ろうとした教師に、物申す奴がいた。
「ちょっと待った、そんなおざなりな紹介は結構ッ! 自分の初登場シーンで目立てないようじゃ、エンターテイナーとは言わないからねぇ!! んじゃあさっそくいってみようか!!」
髪をかきあげた優男が机の上に飛び乗ると同時、一人残らず椅子やら教卓やらに飛び乗って踊りだす。・・・・・・・、いや違う、さっきまでエア演奏してたやつが一人だけ残ってる?
「それじゃ弟よ、音楽よろしく!」
「・・・・・・・まったくもう、しょうがないなアニキは。んじゃあいくよー」
ズダダダダン、ズダダダダン♪ チャッチャラッチャー♪ チャッチャラッチャー♪ チャーチャー♪
そんでもって始まる、ハレハレ☆ユカイ。机だの椅子だのの上で踊るもんだから、当然コケるだろ・・・・・・っと思ったらあら不思議、みんな全然グラつかないの。
人の身体を操る程度なら大したことはないのだが、バランス感覚まで、となるとかなりイカレた能力である。要は自分では操れない類の力まで引き出しているのだ、いわゆる「火事場のクソ力」を引き出すことだって可能になる。
「おいやめろ、やめてくれリースゥ!」
「お前に踊らされるとヘンな筋肉使うから身体中攣りまくるんだよ! 明日が怖えぇよ!」
「はっはっは、今日は調子がいいなぁ、全員同じ振り付けだったらもう一曲いけそうだ! おーい弟、次はキルミーよろしく頼むよ!」
「あいよー」
「おいてめえランベール、暴走するアニキを止めんのが弟の役目だろふざけんな!?」
「ふはははっ、全身くまなく鍛えてる俺には関係ないな! ・・・・・・ハウッ!?」
「えーっと、これで全部か? んじゃあ出席取るぞー」
調子に乗ってバランスを崩したのか、椅子の背もたれに股間を強かに打ち付けて転がるマックス。フーバルトのヤツは構わず出欠を取り始める。
「・・・・・・正気かこいつら・・・・・・、・・・・・・マジでやってらんねえ・・・・・・・」
ため息とともに勇氏がそりと零した愚痴は、喧騒に塗れて消えたのであった。
唐突な閃光に目を眩まされ、格ゲーで言うところの「ピョった」状態になった勇氏は怒鳴り、立ち上がる。ガヤガヤうるせえ、どこだここ?
「いや、正直こんくらい言わなくても余裕で対応出来るだろって思ってたもんでな。・・・・・・ってかお前ほんとにあの「白面」なのか? それとも尾ひれがついただけで、元からこの程度のもんか?」
「ああ、期待に添えなくて悪うございましたねぇ、最近ろくに動いてないから勘も身体も鈍りに鈍ってんですよッ! 麻婆神父だって十年動かなきゃただの泥投げおじさんになるんだから当然でしょうよォ! ってか人を試すような真似して何が楽しいですか、ええッ!?」
あまりの怒りに繕った敬語が剥げ落ち、元に戻りそうな口調を必死に押さえ込む勇氏。しかし対するフーバルトは特に悪びれた様子もなく、サングラスを外して冗談交じりに言葉を返す。
「おいおいそう怒るなよ、だったらなんだ、滅びの呪文でも言っとけってか? ラピュタ王家の末裔でも、第一飛行石も持ってねえ俺には無理な話だぜ?」
「んなこたぁどうだっていいんですよッ! でっけえ積乱雲見て「あの中にラピュタが・・・・・・」って思う奴はみんなラピュタの民なんです、心の中に飛行石持ってんですッ! ・・・・・・くそっ、あ~くらくらす、る・・・・・・、ッ?」
文句を言いながらも鮮明になっていく視界であたりを見渡し、勇氏は気付く。
そこには自分の腰ほどの高さの机が・・・・・・ってかこれ教卓じゃん。んで一段下がった床には机がずらっと並んでる、そしてその机には、ヒソヒソと話す少年少女たちが座って・・・・・・ってこれ、教室? え、いきなりすか。
「はいはい、注~目~! 俺がこの学校の校長兼担任、フーバルトだ。そしてこいつが一週間、お前らを率いる隊長の・・・・・・ほら、さっさと言いたまえ」
気付いたかとでも言うかのように、ニヤリと笑みを浮かべるフーバルトを軽く睨んでから、しかし言われたとおり自己紹介に乗っかる。思惑に乗せられたようで苛立ちはするものの、それ以上にこの場で言ってみたいセリフがあったからである。
「東中出身、我張勇氏《がはりゆうじ》。ただの人間には興味ありません、この中に宇宙人、未来人、異世界人がいたら、俺様の所へ来やがれ。以上ッ!」
・・・・・・しーんと静まりかえる教室、ほう、と眉を細めるフーバルト。そう、これはこのふざけた野郎に逆らえない俺の、ささやかな意趣返しである。
さて、それじゃあ振り返ってみよう。ついさっき、ラノベで言うなら数十行ほど前にこいつは言ったはずだ。従わない奴、逆らう奴がいたら片っ端から切って捨てて良いと。ならばこちらから積極的に猜疑心を抱かせ離反させればいい。んで自己紹介しろとくればこの文句、言うには絶好の機会である。
・・・・・・SOS団団長が放ったあの言葉で、クラスメイトの認識は一瞬にして「美」人から「変」人に変わった。他人の群れがそうまで忌避を覚えたのだ。直属の上司となろうものがこんなことを言って、信じるやつがいるだろうか? いやない。
(・・・・・・ああ、そうさ。たとえ異世界の門があって、魔法が使えて、闇の組織が跋扈していたとしても。・・・・・・このくだらねえ世界に、俺にとってのキョンはいてくれやしねえんだよ・・・・・・)
・・・・・・しかし、その時だった。冷めた心で一人思い耽り、諦観のため息をつく勇氏に、訝しみの欠片もない疑問は投げかけられた。
「え~、・・・・・・これ、笑うとこ?」
・・・・・・ん? 待て。そのセリフ、まさか――
驚愕に跳ねる眉。同時に、聞きなれたバックミュージックが何処からか流れ出す。
“テュイン♪ テュイン♪ テュイン♪ チャンチャランチャラチャ♪ チャンチャランチャララ~”
「えらいイケメンがそこにいた」
“~パンパンパン♪ パパパパンパン♪ パパパパンパン パパッパッ♪ チャーッチャーッ~”
「ああ、じゃあ次」
フーバルトの声と共にがたんと立ち上がり、自己紹介。マジか、あのワンシーンから座席の配置まで考察してんのか。
「東中から来ました、谷口です。趣味は・・・・・・・」
「結果から言うと、それはギャクでも笑いどころでもなかった。勇氏はいつも大マジなのだ」
“~トゥイイイイン バァアアン♪ トゥイイイン♪ バァアアン~”
「こうして俺たちは出会っちまったぁ~」
「しみじみと思うっ! 偶然だと信じたいと!!!」
“~チャラッチャー♪ チャラチャー♪ チャラチャ♪ チャンチャン♪ ・・・・・・・・トゥルルルルル チャーン~チャーンチャーン~”
「はい、それじゃあこのままAメロいきますっぜ! あワン☆ ツー♪ スリー? フォー! こたぇえええぇはぁああ~ いつもぉ わぁああぁたぁしぃいいの~・・・・・・・」
「いや待て、その前にすることがあるだろ」
「それもそうだな、んじゃあ野郎ども! しょっぱなからこんなドハデな自己紹介をしてくれやがった隊長殿に、惜しみない拍手を送ろうじゃねえか!」
「了解ですキャプテンバギー、皆の者ォ、起立ゥ!」
「むねにぃいいいいいぃ・・・・・・って、え?」
(歌っていた一名を除く)全員が揃って立ち上がり、始まるスタンディングオペレーション。たった三十秒の間であの伝説の始まりを再現され、勇氏は驚きに固まってしまっていた。
「いよっ、一週間よろしく頼むぜ大将!」「なあ、さっき“白面”って聞いたが、マジであんたがそうなのか!?」「なあ、どうしてみんな乗ってくれなかったんだ!? 一人だけ歌うのすっげえ気まずいんだけど!?」「シブイねェ・・・・・・まったくおたくシブいぜ」「やりますねぇ! やりますやります!」・・・・・・・ガヤガヤワイワイ以下略。
拍手の間に入り混じる挨拶が(挨拶なのかこれ?)、頭に入ってくるようで入ってこない。そうだ、これはあれだ、エヴァの最終話と同じだ。いきなり拍手からの賞賛で混乱してるみたいだ俺。そりゃあ混乱するわ、おめでとうって何がだよ。教えてくれよ庵野監督。
(何がなんだか分からんが、とりあえず絶対に言えることがひとつ。・・・・・・参ったな、こいつら筋金入ったバカだ・・・・・・)
“涼宮ハルヒの憂鬱”。今では教科書に載ってる程の作品だ、一般人でも名前を聞いたことくらいはあるだろう。
・・・・・・とはいえ、その第一話のプロローグを一言一句違えず再現したとなれば話は別である。先ほどから聞こえる会話の端々に混ざる言葉も、相当深い沼に沈んでなければ普通は出てこない。ってか一人HOMOがいる。誰だか知らんがとっとと出てきて、どうぞ。
(・・・・・・あー、それにしても困った、こいつらどうやって離反させんだよ・・・・・・はぁ、どしよ・・・・・・)
歓声と拍手があがる中、勇氏は困惑にぼりぼりと頭を掻く。極まったヲタクと言うのは、ある意味探求者と同じである。未知の物に忌避を覚えず、くだらない先入観やカビの生えた古い考えをぶち壊していく馬鹿野郎共である。そんな奴らに対し自分がどう応じようと、「そんな考えもあるのか!」と納得されて関の山になるのは目に見えている。
・・・・・・しかしなにより困ったことは、自分がこいつらを嫌いになれそうにないことである。こうなってしまえばどうしようもない。仕方なく、勇氏は一週間拘束される事実を受け入れた。
・・・・・・そういえば、先ほどから隣のおっさんが無言である。気になってその様子を見ると、フーバルトはこちらをじっとりと見つめ、何か言いたげな顔をしていた。
「・・・・・・なんです? 人が楽しそうな顔してるの見るのお嫌いで? 貴方は人の苦痛に愉悦を感じるフレンズだった、と」
「人をどこぞの外道神父みたいに言うな、あとケモフレの話はすんじゃねぇ。・・・・・・・そうだな、口で説明するよりも見せたほうが早いか。ってかお前を引っ張ってきたのはぶっちゃけそれが理由だし」
「いや面倒くさがらないで説明してくださいよ。大体見せるって一体何を・・・・・・」
「おーいてめえら、よく聞けー」
勇氏の言葉を無視し、フーバルトは問いを投げる。
「・・・・・・最近のFGOって、どう思う?」
・・・・・・その声量は決して大きいものではなかったが、喧騒は一瞬にして静まり返る・・・・・・
『最高に』
『『何を今更。そんなの』』 『『 決まってんじゃん』』
『最低に』
『『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、は?』』
・・・・・・が、しかし。それは単なる、嵐の前の静けさに過ぎなかった。
「大体まず前提として女体化しすぎ。なんでアーサー王が女なのよ。正直意味分からんね」
「・・・・・・おい、正気かお前。zeroもfateルートも一緒に見たじゃねえか、何でそんなことが言えるんだよ」
「第一zeroを並べることが論外だろ。staynightとの設定がガッバガバで気になって仕方なかった」
「はん、きのこの言葉を信じるようじゃまだ型月厨としては三流だな。矛盾? ゼロが後出なんだから設定そっちにかぶせれば良いだけじゃん。そう思い込め、思い込め、ほら思い込んだ! 僕って単純、偉いッ!!」
「ってかfgoの話だろ。何でstaynightの話になってんだ、ちなみに俺は凜派だ」
「凜? ふざけんな。桜ちゃんに決まってんだろ」
「ちがうね、凜は全ルート最高なんだよ。fateでは士郎の相棒、ubwでは恋人、hfではヒロインの姉! お前horrowの濡れ場見たか!? あのエロかわいさ脳味噌溶けるかと思ったわ殺す気か畜生ッ!」
「違うし、桜のほうが良いし! マシュを遥かに凌駕するTHE・後輩! 士郎を唯一人間に戻せる存在! 分かるか! 分かれよ!? 分かったと言えッ!!」
「・・・・・・ん? で、何を見せてくれるってんで? 何も起こらねえじゃないすか」
「良いから黙って見てろって」
「分かってねえな、ああ、てめえらぜんっぜんわかってねえ。いいか、アルトリアたんは女の子じゃないとだめなんだよ、武内の一言が奇跡を生んだんだ! んじゃなきゃあんな神キャラできやしねえ! 孤独と寂しさを背負ったあの小さな身体ッ!! ああああああおかわりちょうだいなぁッ!」
「いいや伝承なんてマシなほうだ、それよりも史実の人間の方がひでえよ! かわいい鯖だな♪ってネットで引いたら、出てきたのはおっさんの肖像画ッ! なあ、このやるせない気持ちを俺は一体どこに向ければ良いんだ!?」
「馬鹿野郎、発想の転換だ。バ美肉と同じなんだ」『バ美肉といえばかみやん。おいそこのお前、あの虹塗り美少女VTUBERに含まれるおっさん率は妻子持ちおっさん一人分だぜ!』『あああ・・・・・・あの嫁との惚気と哲学がすこなんじゃぁ・・・・・・』『本人の経歴振り返るとその分泣けるよなぁ・・・・・・』「クッパ姫と同じだ。『あったなそんなの・・・・・・』元がおっさんだと思えば鬼畜系の同人誌読んでも罪悪感薄れるようになるじゃねえか。ほら、いんぐりもんぐりし放題だろ」「なんて奴だ、コイツ天才か!?」
「・・・・・・ってか、なんか色々声が混ざってきてんですけど。これアレだよ、文章に書き起こしたらどうなるか全然分からなくなるやつじゃないです?」
「んなこたぁ当然じゃねえか。大勢が話す議論や会話が一つにまとまるなんてこたぁあるわけねえだろ。DON'T THINK, FEEL.ってやつだ」
「話を逸らすな、それじゃ根本的な解決になってない! 要は女体化させるんだったらそれなりの理由引っ張って来いって話なんだよ! リオ鯖はメイドインUDONだからOK!武蔵ちゃんはパラレルだし、ダヴィンチちゃんは本人じゃなくてモナリザだからこれもオーケー、ドレイクは黒ヒゲに免じて許すッ!『髭ドレ尊すぎィ!』『はっ、ニワカが。ドレイク初出はEXTRAからだっつの』三蔵ちゃんもノッブも頼光ママも何とかぎりぎり耐えられる解釈だし、沖田も女説出たのつい最近だけど寛大な心で認めてやる!『半世紀ってつい最近って言うんだっけ』・・・・・・だけどなぁ、だからって荊軻と義経も女なんだよわっけわっかんねえよ、あれのどこに女要素があるんだよ東出さんよぉッ!」『俺がいいたいのは最近実装されたガレスちゃんよ。円卓女体化は当然、ってか? あん? 手が綺麗だから女体化とかふざけすぎだろプレイヤー舐め腐りやがって。自分《てめえ》の設定《ケツ》も説明できねえタコ共が・・・変身の指輪でTSできるとかできただろ。恥を知れ恥を』『こんなんじゃ偉人デリヘルバトルなんて言われても弁解の仕様がないよねぇ・・・・・・』『まあまあ、作家の尻拭いをするのもわたしたちファンの仕事じゃない。どんな性別でも異世界パラレルかホムンクルスに脳内変換しとけば無問題よ』「まあ東出が作った鯖だから仕方ないと思え。始皇帝の件もそうだろ」「貴様ッ、御朕朕ランドの住民たる我を侮辱するか!?」「東出どれだけ書いてると思ってんだ、少しは休ませてやれよ!?」「そうだそうだ! それに東出は設定下手じゃねえ! 大英雄とか盛らないのだって、原作キャラを立てるためだッ! まさに書き手の鑑じゃねえか!」「アニメアポカリファの監督の件は? 原作とは違うようにするって言ってたのに?」「あの件は忘れろ!」
「・・・・・・それにしても、いきなり二十人近くとかキャラ出すぎじゃありません? これアレですよ、読者が頭パンクして“はい無理クソー”とか言い出すパターンですよ?」
「大丈夫だ、もしそうだとしてもんな竹書房にケンカ売る自称クソマンガみたいな反応はされねえ。それにスリーサイズまで決まってるネギまよりかはマシだ。暗殺教室だって売れただろ、読者を信じろ」
「・・・・・・いやぁ、でもあれどっちも中学生って設定無理がありません? なんか読んでてリーダー伝たけしを思い出すんですが・・・・・・」
「まぁわからなくもないわな。ボンチュー7歳、マミーですら中学生・・・・・・。あれは流石に無理があったが、マジでカッコよかったよ。年甲斐もなくおっさん興奮しちゃったね」
「ええ、バーバリアン編のボンチューは読んでてどこぞの大罪司教並に脳が震えましたよ……。最近の漫画家にもあれくらい中身のあるもん書いて欲しいですよほんとに。・・・・・・まあ、ジャンプには載ってないんですけど」
「しまぶーは“ハメた”っつーより“嵌められた”からなあれ、ご愁傷様だよかわいそうに・・・・・・。だがおかしな話だよ、なにも連載打ち切りにしなくてもいいだろが。作者が何しようとその作品の素晴らしさには関係ないに決まってる。 妻の危篤に不倫旅行に出かけたドストエフスキーもそう、2チャンでやらかした杉太と支蔵も然りだ」
「……最後の2つ、言う必要ありました? あと支蔵氏は無関係だっつってんのに正気ですかアンタ」
「いやぁあれはクロだと思うね俺は。被害者がそう言ったら誰だって加害者、世の中そんなもんだ。・・・・・・で、それがどうした? 逆に心が汚れてる奴こそ美を知り、尊い世界を作るのかもしれねえぞ? だったらクズさまサマってもんだなぁハッハー! 作品完結させたら作家は用済みなんだよ、だれもクリエイター本人に興味なんてありゃしねえんだ!」
「・・・・・・アーハイハイソウデスネー」
基地外の相手は面倒なので棒読みで対応しつつ、勇氏は目の前の喧騒を見やる。バカどもの狂宴は留まるところを知らず、言葉の数は増える一方であった。
「文句があるならまず桜井を責めろよ、俺は二章四章のことは忘れてねえぞ!?」「戦犯桜イエェ゛エエエエエエエァッ!!」「いい加減にしろ、桜井は悪くねえだろうが!? あれは単に文字量たりなかっただけだっつの、これ以上ほじくりかえすんじゃねぇッ!!」「それでも二章四章の罪は消えんよ、だって所詮碩学だし笑」「・・・・・・貴様、スチームパンク信者の俺に言ってはならないことを言いやがったなッ!? いいだろう表に出ろっ!!」「良いぜ、上等だ!」
「くそっ、三田と成田のダブル田さんに任せておけばこんなことにはッ!」「そいつは無理な幻想だな。東出には放り投げて桜井は共犯に巻き込んで三田に後押し付けて成田を後ろから刺す。これがfateの現状だ」「やめて、成田のライフはもうゼロよ!」「宙ぶらりんになったfakeキャスター・・・・・・岩窟王書きたくてわざわざ著者出したんだろうに・・・・・・(泣)」「成田は二次書く暇あったら早くバッカーノとデュラララ出してくれよ・・・・・・待ってんだよ・・・・・・」
「・・・・・・才ある者が造った世界には魂が宿る! トロッコ問題で作家一人と一般人五人を選べといわれたら、おいちゃんは迷わず作家を助けるね! 何のために生きているのか分からないような奴らをトロッコで轢き潰してでも読みてえんだよ読者は!
・・・・・・それなのにッ、あいつら作家はその覚悟があるのか!? 生み出したキャラクターの命を保障するのが作家の義務であり責務だろうがッ! 物語を紡ぐために、どんなことでもする覚悟があるのかッ!? 読者は作家の前じゃゴミになる! だがなぁ、書かねえ作家はそれ以下のゴミに決まってんだろうがよぉ!
・・・・・・七不思議オーバータイムから音沙汰ナシッ・・・・・・ 期待してんだよ待ってんだよ助けてくれよ谷河ッ、頼むから進捗報告ぐらいするのが筋ってもんだろうがよぉっ・・・・・・かのこんの西乃もストブラの神埼も何やってんだよッ・・・・・・人間いつ死ぬか分からないんだよ、はやく終わらせて俺を安心させろよ畜生ッ! 書けないなら書けない理由書きやがれ、そんでもって誰かに作品引き継がせろよ・・・・・・こっちは生きた心地しねえんだよ・・・・・ッ」
「まあまあ、いいじゃないすか書いてるらしいですし。まあ、あと五年かかる可能性も無きにしも非ずですがねぇ。・・・・・で、これいつまで続けるんです? さっきから呪いの館かってくらい昇天するヤツがいるんですが」
早口でサイコパスな思想を吐き散らすおっさんに、ポイント真ん中にすればトロッコは脱線して止まるぞと心中で突っ込みつつ、勇氏は気だるげに問う。
「ああ、もういいぞ? 見てみろ、それ」
涙目になったフーバルトに指さされ、勇氏は足元を見て・・・・・・首を傾げる。こうしてちゃんと立っているのだ、必ずあるはずの自分の足が透明になっているわけが・・・・・・いや、違う。存在、していない。
「は、い・・・・・・?」
「大体全部きのこが悪いんだ、自分の作品ならちゃんと自分で責任持って書き上げるべきだろうが!?」「フェイトらしくなくなったらすぐに軌道修正しろよ! なんのための監修なんだよ!」「フェイトこそがきのこ、きのここそがフェイト! というわけで、無能なクリエイターはさっさとお引取りくださいませぇ!」「っていうか本ッ当に月姫まだなのッ!? どれだけ待たせてるのッ!?」「リメイクするって言うから、待ちに待ったよこの十年!」「さっちんルートまだなの!? なあ、伝説のさっちんルート実装まだァ!?」「なあ武内よ、きのこを早く急かしてくれ! あれは二人の思い出の作品だろう!?」「それもまだカレー使徒の件根に持ってるの!? なあ!?」「なんでもいいからアニメリメイクはよしてくれ! “好きだから吸わない”がないとか頃すぞマジで!? 黒歴史をそのままにしないでくれッ!」「頼むよ、なあ頼むよ!? 親子でずっと心待ちにしてるユーザーだっているんだぞっ!? 金ならいくらでも積むから! なんなら好きな宝具一つ言って! 英雄王から貰ってきてそれあげるから! この雑種の命と引換に貰ってくるから!」
「うおおおおっ、なんだこれ!? 霊体化してる、俺の下半身霊体化してんだけど!!?? 」
「そりゃあそうだろ、今や天下のfate様にケチつけるなんてふざけた真似、業界やファンが許すと思うか?それに楽しまないユーザーは切り捨てるって発言した運営が、俺たちか弱い一般人を消さないわけがねえ。レイシフト決定だよんなもん」
「いやあれは違う意味・・・・・・って、それよりこれどうすればいいの、消えてる消えてる消えてるよ!? ってかあんたも消えてんじゃねえか他人事みたいに言ってんじゃねえ!」
「パニクんなよみっともねえ。さっき未練ないとか言ってたじゃねえか。・・・・・・・まあ俺のさっきの暴論も関係なきにしも非ずだが」
「いや絶対アンタも関係あるだろふざけんなッ!? いいからさっさとどうすりゃいいか教えてくれません!? 」
「おいおい忘れたのか? 夏に咲いた満開の桜並木も、白くなった神社のドバトもいっぺんになかったことにする魔法の言葉があるだろ」
「・・・・・・! そ、そうかっ、その手があったか!」
「そうそう、AUOといえば最近ごめんなさい事件があったな。みんなはあれ、どう思った?」「どうもこうもねえだろ、我らがギルガメッシュ様が謝罪なんてする訳ねえだろがダボ」「誰が書いたか知らんが命拾いしたな、名前なんか出してたら・・・・・・」「ってか批評がコワくて名前も出せねえビビリはライター辞めろ。責任持てなくて何が作家だ、氏に晒せ」「こんなんだからイキリ鯖太郎って言われんだよ・・・・・・」「はっ、まだまだ甘いなニワカども。ギルのキャラ崩壊は今に始まったことじゃねえ。そんなこと言うなら公式のタイころやトラぶる花札、カニファンなんて目も当てられねえよ」「型月厨は黙ってろ、きのこに調教されすぎだてめえら」
「この物語はフィクションです! 実在の人物、作品、エトセトラには一切関係ありません! この物語はフィクションですッ! 実在の人物、作品、エトセトラにはいッッさい関係ありませんッ!!!」
「そうだそうだ、大体ギャグのノリを本編に持ち込むのが間違ってる」「カニファンも花札も最初からギャグだろが」「 ホロウギルは?」「あれも事故だ忘れろ」「いや別に子供に優しいのはアリじゃね?」「 目が腐っているのか貴様。先ほどからふざけたことを抜かして、覚悟はできているんだろうな?」「ジーザス! どうかお許しを!」「私は許そう。・・・・・・だがトミーガンが許すかな!?」
「この物語はフィクションです! 実在の人物、作品、エトセトラには・・・・・・っておい、何も変わんねえじゃねえか!? もう足どころか腰まで消えてんだけどッ!?」
「いや、別にそれで治るとは一言も言ってねえし。 ってお前あれか、テンパるとスペックダダ落ちするタイプか。それよりお前の“どこか影がある俺TUEEE”的なキャラ、もうボロボロだぞ? 取り繕わなくていっいのっかな?」
「そんなこたぁどうでもいいですよっ! 気に障ったのなら謝りますから、ほらこのとーり! だから早くなんとかしてくださいよっ!」
「・・・・・・まったくぅ、しょうがないなぁのび太くんはぁ。・・・・・・ちなみに正解はこうするのでしたー」
一瞬の躊躇もなく勇氏は土下座する。頭上からフーバルトの得意げに鼻を鳴らす音が聞こえ、ぱちぱち手を叩く音が続く。
「へー、そうか。お前らそんなにfate嫌いなんだな。こりゃすまんかった」
『んなわけねえだろうがぁああああああああああッッ!!!!!』
・・・・・・自らの起こした騒動に終焉をもたらすべく口を開き、そして、その場の全員を叫ばせた。
「嫌い、嫌いだと!? そんなわけがあるかッ! fateこそは至高、fateこそが真理ッ! fateのブランドを下げるようなことはあってはならない!」「そう、だからこそ彼ら製作陣には2部や1.5部のライター、鯖の設定作成者を晒す義務がある! 自分の名前が載らないという責任逃れにはクオリティの低下が伴う! そこらのクズカスソシャゲと同格に成り下がってもらっては困るのだよ」「 一人の男が一人の天才を世に知らしめるべくその身を削り、会社を作った! それこそが型月、それこそがタイプ・ムーン! いい加減誰かこいつら書籍化してくれよ、空の境界初版七部しか売れなかったんだぞ! 一体何のサクセスストーリーだよ泣くわこんなんッ! リアルガチバクマンじゃねえか!?」「きの×武か武×きのか…悩みどころだわね・・・・・・」「いっそどっちかTSさせたらどうだ? 歴史の人物散々女体化させといて、自分たちはされないとか思ってるわけねえだろうし、なぁ?(ニチャァ)」「放課後☆路地裏同盟ッ!」「あああ武内いいい、きのこぉおおおお!!!!! お前ら最高だよ、愛してるッ!」「き☆み☆とッ、 一緒がぁあ・一番ッ! 好きよってぇ・、もっとぉッ! ぎゅううっ☆とねッ♪」「ネコネコアルク、ネコアルクッ! フォオオオオオオオッ!」「あなたの心にッ、マーブル☆ファンタズムッ!」「気まぐれな野良猫ぉおのようにぃいい、いたずらなまなぁああざぁしぃいいいい♪」
「お、おお・・・・・・? 戻ってる、なんで?」
じわじわと色が戻る自らの身体に、勇氏は次第に落ち着きを取り戻す。そしてそんな勇氏を見ながら、フーバルトはやれやれと言わんばかりにため息をついた。
「アホか、マイナス積んだらその分プラス積むのが定石だろうが」
「いや、それ以前にどうしてこんな摩訶不思議なことが起こるんですか・・・・・・」
「だからこいつら全員“特別”だっつったろ? 発したその言葉が互いに重なり合って、おれたち異世界人に直接干渉しちまうんだよ。ああ、お前がこうして異変に気づけるのは、こいつらより力が強いからだな。こいつら自身は何が起こってるかなんて知りもしねえだろうよ」
「 ・・・・・・だけどその言い分だと、お宅も僕と同じだけ強い能力を持ってるってことになるんですがね?」
「ああ、あるぜ? とびきりスペシャルなマジックパワーが。当ててみるか? 正解だったら答えてやるよ」
「いや、いいです。時間勿体ないんで遠慮しときます・・・・・・」
「なんでだ、なんで士凛本が少なねえんだよ!? セイバーや桜はあるのに、なんで凛だけアーチャーなんだよ! いや厳密に言えば同じかもしれないけどさぁ、違うんだよ! なんか違うんだよッ!」「切嗣も士郎もカッコよすぎるんだよちくしょうッ!!正義の味方とか反則だろ正義の味方とかよぉッ!!」「戦車男いつアニメ化するの!? なあ!?」「ああぁ、ウェィバーたん……あんなに立派になって…… 」「イリヤイリヤイリヤイ゛ェァアアアアアア!!!!!」「見つけたぁあああああ♪ プゥウウウウリィイイズゥウウムのなかぁあああああああぁ♪」
「・・・・・・いやいや、でもそれじゃ今までどうしてたんですか? こいつらの様子を察するに、こんなこと何度もあったでしょう?」
「それを制御してたとある兄妹がな、いま門の検問で引っかかってんのよ。こいつらも大概だが、そいつらは更にチート級でな。こっちに来るのにいろいろ制約かけなきゃいけねえ。で、その間の埋め合わせがお前ってわけ」
「なんつー行き当たりばったりな・・・・・・、僕がマンガもラノベも知らなかったらどうしてたんです?」
「なに、そんな時は固有名詞や人名ディスり始めたら止めるよう言うだけの話だ。まあお前のやってること事前に調べてたからな、その可能性はないだろうって決めつけてたが」
「まあそりゃあそうですね。自分でやってて何ですが、「あんなこと」マトモな人間はしようと思いませんから。・・・・・・それよりてめえら、さっきから一人めちゃくちゃ声がでけえ奴がいるが・・・、どいつだ?」
あまりに五月蝿かったので気になり、勇氏は連中に声を投げる。すると喧騒はぴたりと止み、一人の大柄な少年を口をそろえて指差した。
『あ、こいつです』
「なんでさ!? いや確かにそうだけど、そんな口を揃えて密告しなくてもっ・・・・・・うぉっ!?」
ガンガン耳に響くので、早速その広い背中に蹴りを入れる。スマホを見て確認確認、えーっと赤髪で筋肉質のコイツは・・・・・・
「うるせえ黙れ。・・・・・・えーっと、てめえがマックスでいいんだな?」
『ランサーが死んだ!? この人でなし!!』
「死んでないし勝手に殺さないでくれるかな、 俺の幸運Eじゃないっての!っていうかそれが言いたかっただけだよな!?」
そう言うと、勇氏が蹴った少年・・・・・・マックスは何事もなかったかのようにポンポンと膝を払い立ち上がった。
「……それにしてもひでぇなぁ、いきなり蹴り倒さなくてもいいじゃねえか!」
「いや悪い悪い。流石にそこまでするつもりはなかったんだが、お前の背後にいる奴らがこぞって “try kick hard ”→ って書いたパネル持ち始めたもんで、つい」
「はっはっは、冗談はやめてくれよ。そんなことあるわけが…ってあれぇー!? みんななにやってんのさ!?」
「しょうがないじゃないか、だってそこにいるのはうわさの英雄だろ!?」「だったらこの中で一番強いお前と一体どっちが強いのか、比べたくなるのが男ってもんじゃないか!」「それこそがロマン! あぁ、ドクターぁあ・・・・・・」「・・・・・・マックス、お前頭まで筋肉になっちまったのか・・・・・・」「こんな大事なことまで忘れるほどプロテインが好きか。はっ、見損なったぜ・・・・・・」
「え、はい、え、えっ? ……ま、まあ、しょうがないなぁ! 俺のこのッ、鍛え上げられた肉体がッ、どのくらい強いのかっ、試してみたかったっていうんだろう!? まったく、ほんとにッ、しょ、う、が、な、い、やつらだなぁ!」
その顔に満面の笑みを浮かべ上着を脱ぎ、言葉と共に何度もマッスルポーズを決め始めるマックス。なるほど確かに、こいつはしょうがないってレベルのバカだ。拍手や賞賛の声でいい気になって、誰1人としてまともに見てないのに気付いていな……
・・・・・・いや、いた、いたよ。これまたガタイのいい男が一人ガン見して頬を染めてる。えーっとこいつは・・・・・・・、おっと、確認確認っと・・・・・・。
とにかくこの連中を早急に把握せねば、そのうち面倒事が増えるのは目に見えている。先ほど身に染みて感じた恐怖を再び味わってなるものかと勇氏が手に取った端末を、しかしフーバルトはぶんどり、自らのポケットに突っ込んだ。
「あーもうまどろっこしい、確認のたびに画像とにらめっこするつもりかよおまえは? それにあいつは女だ。渡したデータなんか見てても分からねえよ」
「は、女??あのガチムチが??? 」
「ふっふっふ、そうだよ(便乗)! ・・・・・・おやぁ、もしやその心疑ってるね!? いいよ、それじゃ今から変身してみせたげようじゃないか! ヘクター、ランベール、頼むよ!」
「ほう、面白そうだねぇ。いいよ、手伝ってあげる」
「 OK、あのBGMだね」
「ふふっ、ふふふふふっ。見とけよ見とけよ~」
どこからか聞こえ始めたプリキュアの変身シーンな音楽にノリながら、どこからか出てきた光を纏いくるくる回り出すイイ男。勇氏は混乱した。なんだこれ、いやほんとになんだこれ。どうリアクションすればいいのだろうか。
「・・・・・・あの、何か始まったんですけど」
「んなのほっとけ時間の無駄だ。そんなことより喜べ、1回だけ俺が全員の名前教えてやる。・・・・・・だがその代わり、1度で覚えられなかったらこれ没収な。人の携帯潰しといてタダで済ますほど、おっちゃんは甘くねえ」
「・・・・・・あー、そのご好意返品できません?」
「残念だがこちらの商品クーリングオフ対象外となっております。というわけで早速行くぞ。今くるくるボン・クレーみたいに回ってるのがセシル。んであそこでニヤニヤしてんのがヘクター、エア演奏してるのがランベールな」
「お待たせしました、じゃーんじゃじゃーん! どうだ、すごいだろう ・・・・・・って、あっ! 元に戻るの忘れてた! これはちょっとまずいですよ・・・・・・」
現れたのは魔法少女……の服装を着てミッチミチのパッツンパッツンになったオニーサン(元のままである)。そして同時に同じ顔をした二人がダガン、と揃って机に頭を打ち付けた。とんだピタゴラスイッチである。見ている分には楽しいのだが、自分が引率すると考えればあら不思議、みるみるメンタルが削れていくではありませんか。教えてください百科おじさん。僕百科事典読めますから。
「うぉぇえっ、なんつーもん見せやがる! さっきの絶対わざとだろう、謝って!? わかってても毎回変身シーンから目を離せない、可哀想な俺たち双子に謝って!?」
「そうだそうだ、これじゃ“魔法少女 俺” だよ、“これはゾンビですか?”だよ!? ほら、欲しいのは何だ、チャカか手榴弾かミストルティンか、それともハルナちゃんお手製エクスカリバーマサムネか!?なんでも出してやるからさっさとメガロなり妖魔なり戦ってきやがれってのちくしょう!」
「っていうかよく見たら服着たまま着替えたのかよ、喧嘩売ってんのか、あぁん!? 見えそうにも見えないチラリズムくらい楽しませてくれてもいいじゃんかよ!」
「おいアホ妹、早くあいつに触って女にして服ダボダボにしてこい! あとついでに雰囲気エロスもよろしくぅ! ダンス用のポールなら兄ちゃんたちが用意するから!」
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「……おほほほほ、いきなり何を仰るのですかお兄様方、わたくしではなくソレイユに頼めばいいではないですか。それに、そんなこと言われてもわたくし全然意味がわかりませ・・・・・・」
「とぼけんじゃねぇ! この後に及んで我関せずなんて許さねえぜ、自分だけ清楚ぶりやがって!」
「ああ、死なばもろともってなあ! 『バラされたくなかったらあたしにも読ませろ。ってか今あるのこれだけ? 早く続き買ってきて』って脅して、俺たちが隠してた“ふたりエッチ”を読み漁ってた奴がなに言いやがる!?」
「・・・・・・しーん・・・・・・」
「んん、いっいのかなーサラよぉ、無視なんかしちゃってぇ!?」
いや無視してねえだろ、「しーん」って言ってるだろ。ってかそこは突っ込まないのね。
「おいサラ、てめえ俺たちがやった数々の成年コミック、同人誌の恩を忘れたのか! てめえも百合好きなら自分で百合百合しろよ!?」
「・・・・・・あ゛~、あ゛ッ、 う・る・さ・いぃッ!! リアルと2次元の区別ぐらいつけてよクズ兄貴’s!そんなんだから彼女もできないんだよばーかばーかッ!!」
「あんだとてめえ、やんのか!?」
「おう、久しぶりに泣かせてやる!」
「はっ、上等! 丸々太ったヒキニート2匹に私が負けるわけないっての! かかってきなさい、リア充の恐ろしさを教えてあげるから!」
「・・・・・・んで、いまアホな会話繰り広げてんのがある一家の長男ロベルト、次男レイボルト、そんでその妹のサラだ。見ての通りあの二人一卵性双生児だからな、違いがわからないから気をつけろ」
「たった数日の付き合いでしょう、だったら見分ける必要なんかありませんよ」
「そっか。・・・・・・ま、おまえがそういうんならそれでいいさ」
「それよりおいレイボルト、喧嘩ごときでポンポン銃火器を出すな!? なんだこのメチャクチャな構造、暴発したらどうする!? 」
「ああ大丈夫、別にブラザーが大して力込めてないからその心配はないぜ。仏作って魂入れずってやつだ」
「だとしてももうちょっと真面目にイメージしろ! なんだこの殺る気のない手榴弾、スーパーの果物売り場に置いてあっても気が付かんぞ!? 大体マジカル☆チャカは弾数無限設定だろうが! リボルバーかフルオートなら分かる、だがなんでよりにもよってフリントロックなのだ!」
「まあ、まあ、落ち着いて、グスタフ、ね? そんな怖い顔しないでよ・・・・・・」
「五月蝿い止めるなクリス、これは冒涜である! 貴様に分かるように言うなら、自称戦車ガチ勢がティガーのことをタイガーと呼ぶほどのな!」
「・・・・・・なにぃ、そいつぁあ許せねえ! これだから自分のことガチ勢言い出す輩は嫌いなんだ、てめえら大概ニワカだろが! 本当の玄人だったら知れば知るほど自分が知らないことが多いことに気づいて、口が裂けてもそんなふざけたこと言えねえんだよぉ!」
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「ん?あー、ごめん、寝てて聞いてなかった。・・・・・・はぁ~、腹減った・・・・・・」
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「んで、どう見てもミリオタな坊主頭がグスタフ、キレてべらんめぇ口調になったナヨナヨ目隠れがクリス。いきなり話題を変えた不思議長髪がテオドールで机と同化してる太ましい天パがアレックス、そしていまコイントスしてるボサボサ頭のギャンブル狂がギルザックだな」
「・・・・・・えーっと、今何人目ですかね? 人の顔と名前覚えるの死ぬほど苦手なんですが」
「なに、ここにいるのはあと3人だ。 ってか、このくらい出来て当然だろう? この年いったおっちゃんでもできるんだぜ?」
「はっ、買いかぶらないでくださいよ、誰にだって得意不得意はあるでしょうに・・・・・・それより、フーバルトさんでしたっけ」
「フッさん、な」
「・・・・・・じゃあ、フッさん。さっきからあんたの頭の上から文房具が現れては降ってくるのはどうしてです?」
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瞬間、勇氏の目の前からフーバルトが消えた。・・・いや違う、教室の隅に座るジト目のヘアバン少女の所にいる。フーバルトが動いたのではない。あの少女、ルシールが何か能力を使ったのだろうか?
「そう思うんなら早く支払いなさいよ。 地獄の沙汰も金次第っていうでしょ」
「あー、10万だっけ、そんくらいお安い御用だ。えーと確か、右のポケットに・・・・・・ああ、あったぜ。ほらよ」
そう言ってフーバルトは、ルシールの手のひらに何かを乗せる。なんだろうか? 小さすぎてよく見えない・・・・・・って、あ。
「なんのつもり、この小さな紙切れの束? こんなもの貰うためにアタシは何千kmも飛ばしてやったわけじゃない。取引反故にするつもりなら・・・・・・血の雨降らすけど?」
怒りを覚えたのか、声のトーンを下げるルシール。対するフーバルトはわざとらしくぶんぶんと両手を振り、その疑念を否定する。
「いやいや、それ本物だって。だが残念、なんという偶然だろうか。悲しいことにおっちゃんのポッケに入ってたものは全部、あそこにいるチミたちの隊長殿に先ほどにこんなふうにされちゃったからねぇ」
にやにやと笑いながら、こちらを指さしてくるフーバルト。こいつ俺のせいにするつもりでいやがると悟った勇氏は即座に弁明を試みようとするが、開こうとした口は喉元に突きつけられたカッターに閉ざされる。数メートル離れていたルシールがいま目の前にいることから察するに、どうやら自分もフーバルトと同様に彼女に引き寄せられたようだった。
「別に説明なんて求めてない。どういういきさつでこうなったかなんて、そんなことはどうだっていい。・・・・・・アタシが知りたいことはオニーサンがこれ戻せるのかってことと、できなかった場合払ってくれるのかってこと。ここの学長だっていうこのおっさんがケチるような額じゃない。そして、こんなことができるヤツはアタシらの中にいない。・・・・・・だったら消去法でオニーサンってことになるよね?」
責を問うような鋭い語気のせいか、ぷつんぷつんと切れる言葉。これから自分の上司になる者に対する態度ではない。
・・・・・・とはいえ非はこちらにあるわけだし、なにより相手は大貴族のご令嬢。一旦落ち着いてもらうため謝罪し、勇氏は自らを正当化する「弁明」から、正当な理由を提示する「弁解」に発言の方針を切り替えた。
「あー、いやー、すまん」
「謝罪はいらない。質問に答えて」
「いや、だがその、だな・・・・・・」
「だから、質問に答えて。戻すの、払うの、どっち?」
しかし言葉を探す数秒間も与えてはくれずに、目の前のデコ出し少女は高圧的な言葉を会話に差し込んでくる。
「・・・・・・確かにそれをやったのは俺だし、悪いとも思ってる。・・・・・・が、払う気も戻す気もねぇよ。第一てめえらが結んだ取引だ、フっさんから金をせしめるのが妥当だろうが」
「そうね。でも、今ここでアタシが引き下がったとして、この男が踏み倒さない可能性は? オニーサンにも不手際があるなら、建て替えるのが道理のはずでしょ?」
じっとりした目から放たれるいらだたしげな視線は、止むことなく勇氏を刺してくる。うーん、これが男ならうるせえタコと即座にケンカ売ってるもんだが、女子に正論振りかざされるとどうしようもない。
・・・・・・かといっておっさんには弱み握られてるから、カツアゲするわけにもなぁ。あれ? もしかして俺詰んだ?
なんにせよ最近ワインをアホほど買ったばかりだ、金の持ち合わせなどない。とりあえずこの場をやり過ごそうと媚びた笑みを浮かべ、頭を下げようとした勇氏だった・・・・・・が、その時。なんの脈略もなく、頭の中にハトが浮かんだ。
(・・・・・・は?)
どうして、とハンドリフトに乗った現場猫が頭を走り去る間にも、頭の中ではどんどん平和の象徴は増殖していく。目の前のルシールも「なんでハト・・・・・・」と呟き、こめかみに親指を当て肘をつきうなだれている。
(コイツのせいじゃないのか。ま、メリットないもんな・・・・・・)
んじゃ誰が、と背後の喧騒に振り返るといましたよ。銀髪の少女が楽しそうに歌ってやがんの。
『ハ、ト、が来る♪ ハトが来る♪ 絶望と銀河を こ・え・て♪』
「うわっ、頭ん中がハトでぐるぐるしている! ランベール、こうなったらハトでEDMだ!」
「なるほど、ハトをハトで打ち消すというわけか!?」
「ダメだな、あいつ伴奏に回りやがった。毎回付き合って、よくもまぁ飽きないもんだねぇ・・・・・・」
「ってか誰だよソレイユに具体的な曲歌わせた奴! リクエストは抽象的な歌に限ると決めたよな!?」「勘弁してくれよ・・・・・・斉木楠雄のテレパしいたけじゃねえんだから・・・・・・」
ワイワイガヤガヤ言ってた連中も文句を言っていたが、次第に頭がハトまみれになっているのか黙りだす。
「・・・・・・静かになったみてえだな、じゃあやめていいぞ」
騒ぎが一落ち着きしたのを見計らい、ソレイユに曲を止めさせてヘッドホンを外すフーバルト。てめえがやったんかい、とツッコみたいのは山々だったが、話の腰を折られた眼前の借金取りが舌打ちと共にそっぽを向いたので良しとしよう。・・・・・・まぁ、こうなった元凶はてめえなんだが。
「さっき歌ったのがソレイユ、んであそこにいるのが最後の一人・・・・・・」
しかし。そしらぬ顔で説明に戻ろうとした教師に、物申す奴がいた。
「ちょっと待った、そんなおざなりな紹介は結構ッ! 自分の初登場シーンで目立てないようじゃ、エンターテイナーとは言わないからねぇ!! んじゃあさっそくいってみようか!!」
髪をかきあげた優男が机の上に飛び乗ると同時、一人残らず椅子やら教卓やらに飛び乗って踊りだす。・・・・・・・、いや違う、さっきまでエア演奏してたやつが一人だけ残ってる?
「それじゃ弟よ、音楽よろしく!」
「・・・・・・・まったくもう、しょうがないなアニキは。んじゃあいくよー」
ズダダダダン、ズダダダダン♪ チャッチャラッチャー♪ チャッチャラッチャー♪ チャーチャー♪
そんでもって始まる、ハレハレ☆ユカイ。机だの椅子だのの上で踊るもんだから、当然コケるだろ・・・・・・っと思ったらあら不思議、みんな全然グラつかないの。
人の身体を操る程度なら大したことはないのだが、バランス感覚まで、となるとかなりイカレた能力である。要は自分では操れない類の力まで引き出しているのだ、いわゆる「火事場のクソ力」を引き出すことだって可能になる。
「おいやめろ、やめてくれリースゥ!」
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「ふはははっ、全身くまなく鍛えてる俺には関係ないな! ・・・・・・ハウッ!?」
「えーっと、これで全部か? んじゃあ出席取るぞー」
調子に乗ってバランスを崩したのか、椅子の背もたれに股間を強かに打ち付けて転がるマックス。フーバルトのヤツは構わず出欠を取り始める。
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タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
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イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
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楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
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アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
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