17 / 107
遅かれ早かれ(side美夜飛)
03
しおりを挟む顔がいいやつはこういうときズルい。超いい奴に見えてくるのが悔しい。
「でも俺イコール兼嗣って思われてんのはなんかちょっとヤだ。訂正してお詫びしろ」
「ははっ、クレーマーか。つかお前ら幼なじみなんだろ、じゃあ大丈夫だ」
他人事だと思って、無責任に何が大丈夫なんだ、と拗ねたまま米をかきこむと、やつはいつの間にか空っぽになった茶碗と豚汁の容器を持っておもむろに立ちあがった。
「美夜飛、唐揚げおかわりする?」
「……する」
「そか。んじゃそれ貸して。腹減ってたら戦できねえからな」
「いや何と戦うつもりだよ、俺ら」
思わず吹き出した俺に、廣瀬は嫌みなく男前に微笑む。
深入りはしない、さりげない気遣いが素直に嬉しかった。
有りがたくて、何だか心がふわりと軽くなった気がして。
そこで初めて、俺は自分が今までずっと気分が暗く落ち込んでいたことを自覚した。
──だけど結局、食堂では廣瀬に話せなかった。
兼嗣のプライベートのことだし、あいつの趣味にケチつけるつもりは昔も今も毛頭ない。
だがあの日記の内容を話すということは、必然的に俺があいつにそういう目で見られていると説明しなくてはならない。
俺自身が自分で、だ。
そこまではちょっと、勇気がなかった。
廣瀬の性格はきっと信用できる。それは分かってる。
だけど余計なことを言いふらして、自分のことを、それ以上に兼嗣を、軽蔑したり嫌悪する可能性が少しでもあるのが嫌だと思った。
でも廣瀬と他愛のない話をしながら食った飯は自分でも驚くほど美味くて、唐揚げも卵焼きも豚汁も、久しぶりに味を感じて。
目の前がひらけて、忘れていた活力がじわじわと湧いてくるようだった。
今まで何を塞ぎこんでいたのか、馬鹿馬鹿しくなるくらいに。
これなら兼嗣と自然に接することができるかもしれない。
たぶんまた、前みたいに戻れるはず。
日ごろ家来みたいに扱ってはいたが、やつを大事な幼なじみだと思う気持ちは、一応それなりにある。
兼嗣の気持ちも、そばに俺しかいないから勘違いしてるだけで、誰でもかかる麻疹みたいなもんだ。
今は狭苦しい寮生活で男ばかりだが、学校卒業して世界が広がったら、放っておいても他に好きなやつくらいできるだろう。
だからとりあえず、明日、兼嗣に話しかけてみようと思う。今までと同じように。
5
あなたにおすすめの小説
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)
優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。
本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる