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遅かれ早かれ(side美夜飛)
08
しおりを挟む違和感に首だけ向けると、困ったように眉を下げた兼嗣が梯子をのぼってすぐのところにいた。
その口は何か言っているのか、大きく動いている。
「え、なに」
イヤホンを外すと、焦りの混ざった呆れた声が聞こえた。
「だからっ、そこで寝ないでって!」
「はー? なんだよ急に。俺もう風呂入ってるし、汚れてねえけど」
「そういう意味じゃないから! みーちゃんそうやってよく寝ちゃうんだから、部屋に連れていく俺の身にもなってよ」
「あ、やっぱりお前だったのか。たまに寝落ちしたとき、部屋戻った覚えないのに変だなーと思ってたんだよな」
「そうだよ。みーちゃん起こさないように梯子おりるの、すごい大変なんだから」
「逆にどうやっておりてんの? すげーなお前。つか起こせばいいじゃん普通に」
「米俵みたいに担ぐの! みーちゃん、熟睡してて全然起きないときあるんだよ」
「米俵!」
ぶあっはは!と腹を抱える俺に、兼嗣は今にも頬を膨らまさんばかりに拗ねている。
だってその時のことを想像したらちょっと笑える。
米俵っていう、実際に見たことはないのに的を射た表現が出てくるのも可笑しかった。
たしかに俺はどちらかといえば小柄なほうで、逆に兼嗣は育ちすぎたプードルだ。
体格差は一目瞭然だが、こちとらもうすぐ成人男性。重くないわけがない。
俺は何も知らずに、いつも無傷で、何も覚えていないくらい安眠していた。
だからきっと、毎回苦労してベッドを行き来していたであろう兼嗣の姿が健気な家来みたいで、笑えた。
「いいじゃねーか別に。なんだったら一緒に寝るか?」
「えっ……?」
兼嗣の、目を丸くした顔を見て、ハッと我に返る。
上機嫌だったせいで、つい口が滑った。
もちろんただの冗談のつもりだ。
でもその台詞を言った瞬間、やつの明らかに狼狽えた様子に、今の軽口はまずかったと後悔した。
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