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遅かれ早かれ(side美夜飛)
09
しおりを挟む約一ヶ月前の、妙に記憶に残った戯れが、今さらよみがえる。
照明の明かりを遮る兼嗣の身体。
俺を見つめる真摯な眼差し。
足首を掴まれたときの、手のひらの温度。
──そして、日記の内容。
俺のことを、舐めたいとかエッチだとか書いていた。
詳しい文言は脳みそが理解するのを拒んで、文字が滑って頭に入らなかったのに。
今、このタイミングで思い出す。
「じょ、冗談に決まってるだろ。こんな狭いところでふたりも寝れるかよ」
「みーちゃんのこと、抱き枕にしたら大丈夫だと思うよ」
『腕の中に抑えこんで』
『爪先から全身まで舐めたい』
あの日記の文章が、呪いみたいに脳裏をよぎる。
心臓が、喉の奥のすぐそこにあるみたいに、どくんと跳ねた。
「ばっ、馬鹿か! 誰がそんな気持ち悪いことさせるか! つーか花岡は? キモすぎてあいつだって引くだろ」
「今日は帰ってこないよ。別室の友達とパーティーって言ってた」
「ベッド余ってんじゃねえか! だったら尚更、俺とお前が同じ布団で寝る意味が分かんねえっつーの!」
「無断で人のベッド使うのよくないでしょ」
「うっせえ! 許可とってこい!」
まくし立てて、焦りのせいで過敏に尖った神経が、怒りのように表面に出た。
満更でもなさそうな兼嗣と、雲行きの怪しい話の方向に耐えられなくなって、勢いよく布団から起き上がる。
出口を塞ぐように、梯子の近くに居座る兼嗣を手加減して足で小突いた。
退け、俺はもう自分の部屋に帰る、という意味で。
なのに、
「うぉあ……っ?!」
足首あたりを掴まれ、バランスが崩れた。
下半身が浮いたせいで達磨のようにひっくり返る。
視界には真っ白な天井。それから、まっすぐにこちらを見下ろす兼嗣。
背中には柔らかなマットレスの感触。
一ヶ月前の既視感と危機感が、じわじわと、だけど鮮明に、現実味を帯びる。
「あ、でも、みーちゃんはそんなこと気にしないんだもんね」
「は……?」
俺はこんなにも焦って、いやな予感に支配されて、早くここから逃げたいのに。
兼嗣はむしろ柔らかな笑みさえ浮かべている。
なんでこの状況で笑えんの?
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