廃課金最強厨が挑む神々の遊戯

葉簀絵 河馬

文字の大きさ
141 / 509
第四章

第百四十一話 神業と魔王

しおりを挟む
 ハンマーを持ったマグナが鉄火場に現れると、鍛冶師たちは早速騒ぎ出す。

「あんたがあの武具を作ったのか!?」
「頼む! 弟子にしてくれ!」
「お願いだ! この通り!」

 ここまでの話は何だったのだろうというくらい、鍛冶師たちの何人かが席を飛び出して、マグナへ対して土下座を敢行してみせた。

 マグナは容赦なく、そいつら全員の頭をハンマーで叩いて気絶させた。死んでも良いくらいの気持ちで頭を叩いたため、本当に死んでしまった者も居るかも知れないが、マグナの知ったことではない。あとでセフェールが蘇生してくれるはずだ。

 ハンマーを背負いながら鍛冶師たちを睨み付ける。

「他に用事のある奴は?」

 鉄火場が静まり返った。

 たしかにマグナは生産に特化したクラスだ。しかし戦闘力がまったくないわけではない。レベルは当然の九九九九で【覚醒】済、戦闘系のスキルこそ弱いものの、ステータスのSTRやVITは下手な前衛職よりも高いし、武具アイテム使用のボーナスもある。ファーアースオンラインの全従者で一対一の総当たり戦でもやれば、上位に食い込むだろう。

「よし。まあ、こいつらを可哀想とか思う必要はない。何せ、私からあんたらに教えることなんか、最初からないからだ。何故なら、あんたらには強力な武具を作るための前提が足りてない。未熟者共に教えることなんかないってことだ」

 鍛冶師たちへ向けて二本の指を立てるマグナ。本当は細かく言えば【拠点】のアシストとか、究極的には課金アイテムとかあるが、今回は分かり易く行く。

「それはスキルと素材だ。私はスキルを最高レベルまで上げて、最高の素材で千年の研鑽を積んで来てる。私に教えを請いたい? 百年早いんだよ、ひよっこ共!」

 この教導の寸前に、若いと舐められるのでマグナは千歳を超えているという設定になった。ドワーフの最上位種ハイエストドワーフであるため、見た目などから怪しまれる心配はない。それにマグナというAIの学習データを考えれば、千年はあながち嘘ではないどころか、万年と言っても過言ではないだろう。

 そんなマグナの言い分に対して、誇り高い騎士や自負のある商人であれば怒りを覚えて席を立つだろうが、彼らは頑固で偏屈な技術屋だ。自分たちよりも遙か高みに座し、そのために腕を長い間磨いてきた大先輩に対しての敬意は強い。

 鍛冶師たちはマグナの言い分に、むしろ目をギラつかせていた。

「よし」

 あと彼らの目の前で剣や盾など、いくつか作ってやれば満足するはずだと考える。

「ヘファイストスの炎」

 マグナが炉に炎を入れた。フォルティシモの【拠点】にあるマグナのためにカンストまで成長させてくれた鉄火場ではないため、火力が弱い上にMPの減りが早い。とは言え、レベル一〇〇〇以下用の装備品を作るのであれば充分だ。

「ほ、炎も魔術なのか。凄い火力だぞ」
「いや、炎を自在に操れるなら、完璧な温度で作業出来る」

 インベントリから取り出したのは、赤魔石と白魔石だ。このアイテムは様々な素材になる汎用アイテムで、基本的には採掘によって入手となる。【料理】スキルにとっての水や小麦粉みたいなものだ。

 レア度の高い魔石を使うつもりはなかったので、今回使う赤魔石と白魔石のレア度は採掘してもその場で捨てるようなスーパーレア等級である。

「錬金」

 錬金時に声を出す必要はないけれど、鍛冶師たちの手前だったので説明のために口にする。

 赤魔石と白魔石が一つとなり、赤みがかったミスリルとなった。マグナであってもレア度を上げる手段はないため、錬金して作成されたアイテムのレア度もスーパーレアのままだ。

 ただ素材にはレア度の他に品質という項目があり、その数値は最高の二五五を示している。

「赤い、ミスリルだと? 何という、美しいミスリルだ」
「ミスリルを、作った?」

 マグナが赤いミスリルを火に掛け、作業に入る。

 愛用のハンマーにMPとSPを流し込み、流す量を調整しながらミスリルを叩いていく。

 きんっきんっという音が流れ、鍛冶師たちは一瞬も見逃すまいと血走った目で全身に力を入れていた。

 形が整った辺りでタイミングを見計らって魔粉を振り掛け、慎重にハンマーの力を調節して馴染ませる。それを冷やす。【鑑定】でここまでの工程に問題のない事を確認。焼き入れの作業を繰り返す。一本の剣と成り、鑢を掛けて最後の仕上げをして完成だ。

 完成した剣を観覧席へ放る。作られたばかりの剣がカラカラと音を立てて床を滑る。鍛冶師たちは絶句していて、誰も言葉を発しないどころか動こうとすらしなかった。

 代わりにフォルティシモがその剣を拾う。

「目の前で見ると鍛冶ってのは、意外と迫力があるな。けど、これって最低限の工程じゃないか?」
「レベルの低い奴らに合わせただけだよ。このくらい、フォルさんだってできたでしょう?」

 昔からフォルティシモは、煽るのが上手い。というか、天然で煽る。

「まあな。こんなゴミなら“鍛冶師”じゃなくても作れるからな」

 フォルティシモは目の前で情報ウィンドウを操作して、今マグナが作った剣とほぼ同じ剣を作って見せた。アイテムを作り出すには技術を使わずスキルだけで行う方法もあるが、完成した武器の性能に差が出てしまう。しかしその差は、低レベルの頃はほとんど気にならない差である。

 この程度の剣は【鍛治師】クラスでなくても作成できる。言っては悪いが、アクロシアの鍛冶師たちは、少し鍛冶関連のスキルを学んだ騎士や冒険者のが良い武具を作れそうなレベルでしかないのだ。

 フォルティシモは両手で持った剣をそれぞれ振り、溜息を一つ。

「ほらな」

 フォルティシモは自分だってできるという言葉を証明したかったのだろうけれど、この場でわざわざ同じ剣を作るのは、喧嘩を売っているとしか思えない。

 マグナにはアクロシアの鍛冶師たちが呆気にとられたのが分かる。フォルティシモは全く気が付いておらず、代わりにキュウがぶるぶる震えていた。

「くくっ、いやフォルさん、私が目の前で作ったのをゴミって言うのはどうなの?」
「ゴミはゴミだろ。こんなもん、俺がレベル三〇〇だったとしても作り直せって言うぞ」
「納得いくまで何千何万回でも作り直させるのがフォルさんだからね」

 マグナは少しだけ自慢する気持ちで発言する。妥協を知らないフォルティシモの専属鍛冶師をしてきたという意味を、アクロシアの鍛冶師たちに知らしめてやりたい。

「さて、もういくつか作るところを見せてやる。ああ、今日作ったのはラナリアにやるから、訓練用の装備にでもして使ってくれ」
「有り難く頂戴致します、マグナさん」

 今回の目的を果たせたという意味を多分に含んだラナリアのお辞儀を見て、マグナはとりあえずの満足を得た。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

異世界亜人熟女ハーレム製作者

†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です 【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。

正しい聖女さまのつくりかた

みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。 同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。 一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」 そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた! 果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。 聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

処理中です...