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第四章
第百五十七話 プレイヤーたちの間違い
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ヒューマンの男は最初の神戯参加者であるデーモンの男に会って、アクロシア王国へ戻って来た。デーモンの男から天空のプレイヤーを倒すための秘策を与えられて。
その秘策を聞いたチームメンバーたちは、最初に喜んで、次第に表情を曇らせていった。
秘策の内容に問題がある。
それはあるダンジョンに強力なギミックがあり、それを使えば天空のプレイヤーを打倒できるというもの。
この秘策を実行するには、誰かがそのダンジョンでギミックが使える場所まで行き、しかもダンジョンに天空のプレイヤーをおびき寄せなければならない。
最低でも二人、天空のプレイヤーへ直接立ち向かう。ほとんどのチームメンバーが求めたのは、デーモンの男に頼んだら彼が天空のプレイヤーと戦って倒してくれることだった。そのための手伝いも、せいぜいアイテムを集めてくる程度しか考えていなかったのだ。
ヒューマンの男は最も危険な天空のプレイヤーをおびき寄せる役割を引き受けるつもりだった。だからチームメンバーの中から、ギミックを動かす役割とせめてダンジョンの往復を手伝ってくれるメンバーさえいれば良いと思っていた。
それも難しそうな雰囲気になってしまい、ヒューマンの男の口調が固くなっていく。しかし彼の予想に反して、しばらくすると複数人から手が挙がる。
「私やるわ。あの日から、怖くてよく眠れないの。自分で何とかするチャンスよ」
「あんな傍若無人な奴を放っておいたら、異世界が滅茶苦茶になっちまうからな」
「いいな、英雄になってやろうぜ」
「俺にもやらせてくれ、恩人の仇討ちだ」
実際に天空のプレイヤーの脅威を感じ取った者であれば、その危険性も理解している。少しくらい怖くたって、何とかしようと思うのだ。勇気を出した仲間たちの言葉を聞いたチームメンバーたちは、自分も自分もと言い出し、その時集まった全員が作戦への参加を表明した。
それからチームメンバーたちは一丸となって、装備や消費アイテムなど入念な準備を整える。大したレベル上げをしていなかったとは言え、人数がいれば色々な物が集まるものだ。
季節イベントの参加賞もあれば、ログインボーナスを使わず倉庫に詰め続けた者も居た。中には家具アイテムが欲しくてガチャを引いたら大当たりを出した者、仲良くなったトッププレイヤーから使わなくなった装備を貰った者まで。
寄せ集めと言えど、情報ウィンドウに表示されるレベルやステータス以上の強さを持つ集団ができあがる。
そうして彼らが向かったのは、大陸北部に位置する『樹氷連峰』というダンジョン。名前の通りいくつもの山が連なった場所で、起伏の激しい地形な上、溶けない氷の樹木がマップ全土で視界を阻んでいる。地面も木々も白一色の世界を雪山登山の格好をした一団が進んでいった。
出現する魔物のレベルは、通常モンスターで二〇〇〇程度。トッププレイヤーからすれば何てことはないダンジョンだろうけれど、彼らにとってはモンスター一匹さえも命を脅かす危険がある。
それでも皆に不安はない。必ずや攻略できると信じている。ファーアースオンラインの色んな場所に行くのが好きなチームメンバーたちは、モンスターと戦わずに進むためのスキルレベルだけは平均よりも高い。それに加えて、安全なルートを選んだり、場の雰囲気を読む技術に優れている。
彼らは途中で何度か避けられないモンスターに遭遇したものの、足止め用のアイテムを使って逃げたり、使い捨ての攻撃用課金アイテムを使ったりしながら、遙か格上のダンジョン『樹氷連峰』を確実に攻略していった。
「はは、俺らって結構強いんじゃね?」
「私らヤバイよ! 絶対ヤバイって!」
「ここまで来たらあと少しだ」
チームメンバーたちは安全地帯で休憩しながら、何でもない雑談に興じていた。何人かは安全地帯でも油断せずに周囲に気を配るのを忘れていないし、情報ウィンドウでここからの道のりを考えたりもしていたが、ほとんどはようやく気の抜ける機会を最大限に生かしている。
「あいつ倒したら、今度こそサーフィン行こうぜ!」
「あんたサーフィン推してるけど、やったことあるの?」
「さぁてね」
「スキューバとかできんのかな」
「酸素ボンベなんかないっしょ」
「スキルあるからボンベとか要らなくね」
「そういえばエルフのあの子、今回のこと、反対だって言ってからチームチャットにも連絡しないようになったけど、どうしてるか知ってる?」
「なんか冒険者始めたみたいで、この間ギルドに来たけど」
「そうなの? ということはアクロシアで冒険者? 今のエルフって大変じゃないの?」
数年ぶりにチームメンバーは一つの目標に向かって団結し、それを達成しようとしていた。彼らの心には大きな高揚感があったのは間違いない。
ただ間違いがあったとすれば。
天空のプレイヤーは、自分本位で天上天下唯我独尊を地で行き、気に入った女の子を奴隷にしていたし、大勢の奴隷を買い込んだのも嘘ではない。彼と出会ったプレイヤーのほとんどが死亡しているのも真実で、エルディンというエルフの国を丸ごと取り込んだのも本当だった。
ついでに最強厨で、従者たちから文句を言われるくらい考え無しで、親代わりのAIに怒られるのは当たり前、人の気持ちを考えずに無意識に煽る発言をするものだから、ファーアースオンラインの頃は大勢のプレイヤーから蛇蝎の如く嫌われていた。
けれど、天空のプレイヤーは正直者だった。ガチャ欲や性欲に忠実であるものの、天空のプレイヤーは大事なこと、特に命が懸かるようなものには決して嘘は吐かなかった。
だから天空のプレイヤーは、エルフや奴隷のことも否定しなかった。好みの女の子を囲っていることも、隠すどころか堂々と連れ回した。所構わず尻尾を掴んでいたのは、さすがに欲望に負け過ぎだと言わざるを得ない。
エルフの王を殺したことも、これから他のプレイヤーを殺す可能性があることも、事実なので何も言わなかった。異世界に来て初めての顔見知りである親友にも、己がプレイヤーを殺したのだとすぐに告白した。
善悪については別にして、天空のプレイヤーは自分のしてきたことと、これからすることに対して正直ではあったのだ。それは多くのプレイヤーを抹殺し、まるでそれが無かったかのように彼らチームメンバーと共闘を申し出る、最初の神戯参加者とは違う。
異世界へ転移した彼らは、それを見抜けなかった。それが彼らの間違いだ。
その秘策を聞いたチームメンバーたちは、最初に喜んで、次第に表情を曇らせていった。
秘策の内容に問題がある。
それはあるダンジョンに強力なギミックがあり、それを使えば天空のプレイヤーを打倒できるというもの。
この秘策を実行するには、誰かがそのダンジョンでギミックが使える場所まで行き、しかもダンジョンに天空のプレイヤーをおびき寄せなければならない。
最低でも二人、天空のプレイヤーへ直接立ち向かう。ほとんどのチームメンバーが求めたのは、デーモンの男に頼んだら彼が天空のプレイヤーと戦って倒してくれることだった。そのための手伝いも、せいぜいアイテムを集めてくる程度しか考えていなかったのだ。
ヒューマンの男は最も危険な天空のプレイヤーをおびき寄せる役割を引き受けるつもりだった。だからチームメンバーの中から、ギミックを動かす役割とせめてダンジョンの往復を手伝ってくれるメンバーさえいれば良いと思っていた。
それも難しそうな雰囲気になってしまい、ヒューマンの男の口調が固くなっていく。しかし彼の予想に反して、しばらくすると複数人から手が挙がる。
「私やるわ。あの日から、怖くてよく眠れないの。自分で何とかするチャンスよ」
「あんな傍若無人な奴を放っておいたら、異世界が滅茶苦茶になっちまうからな」
「いいな、英雄になってやろうぜ」
「俺にもやらせてくれ、恩人の仇討ちだ」
実際に天空のプレイヤーの脅威を感じ取った者であれば、その危険性も理解している。少しくらい怖くたって、何とかしようと思うのだ。勇気を出した仲間たちの言葉を聞いたチームメンバーたちは、自分も自分もと言い出し、その時集まった全員が作戦への参加を表明した。
それからチームメンバーたちは一丸となって、装備や消費アイテムなど入念な準備を整える。大したレベル上げをしていなかったとは言え、人数がいれば色々な物が集まるものだ。
季節イベントの参加賞もあれば、ログインボーナスを使わず倉庫に詰め続けた者も居た。中には家具アイテムが欲しくてガチャを引いたら大当たりを出した者、仲良くなったトッププレイヤーから使わなくなった装備を貰った者まで。
寄せ集めと言えど、情報ウィンドウに表示されるレベルやステータス以上の強さを持つ集団ができあがる。
そうして彼らが向かったのは、大陸北部に位置する『樹氷連峰』というダンジョン。名前の通りいくつもの山が連なった場所で、起伏の激しい地形な上、溶けない氷の樹木がマップ全土で視界を阻んでいる。地面も木々も白一色の世界を雪山登山の格好をした一団が進んでいった。
出現する魔物のレベルは、通常モンスターで二〇〇〇程度。トッププレイヤーからすれば何てことはないダンジョンだろうけれど、彼らにとってはモンスター一匹さえも命を脅かす危険がある。
それでも皆に不安はない。必ずや攻略できると信じている。ファーアースオンラインの色んな場所に行くのが好きなチームメンバーたちは、モンスターと戦わずに進むためのスキルレベルだけは平均よりも高い。それに加えて、安全なルートを選んだり、場の雰囲気を読む技術に優れている。
彼らは途中で何度か避けられないモンスターに遭遇したものの、足止め用のアイテムを使って逃げたり、使い捨ての攻撃用課金アイテムを使ったりしながら、遙か格上のダンジョン『樹氷連峰』を確実に攻略していった。
「はは、俺らって結構強いんじゃね?」
「私らヤバイよ! 絶対ヤバイって!」
「ここまで来たらあと少しだ」
チームメンバーたちは安全地帯で休憩しながら、何でもない雑談に興じていた。何人かは安全地帯でも油断せずに周囲に気を配るのを忘れていないし、情報ウィンドウでここからの道のりを考えたりもしていたが、ほとんどはようやく気の抜ける機会を最大限に生かしている。
「あいつ倒したら、今度こそサーフィン行こうぜ!」
「あんたサーフィン推してるけど、やったことあるの?」
「さぁてね」
「スキューバとかできんのかな」
「酸素ボンベなんかないっしょ」
「スキルあるからボンベとか要らなくね」
「そういえばエルフのあの子、今回のこと、反対だって言ってからチームチャットにも連絡しないようになったけど、どうしてるか知ってる?」
「なんか冒険者始めたみたいで、この間ギルドに来たけど」
「そうなの? ということはアクロシアで冒険者? 今のエルフって大変じゃないの?」
数年ぶりにチームメンバーは一つの目標に向かって団結し、それを達成しようとしていた。彼らの心には大きな高揚感があったのは間違いない。
ただ間違いがあったとすれば。
天空のプレイヤーは、自分本位で天上天下唯我独尊を地で行き、気に入った女の子を奴隷にしていたし、大勢の奴隷を買い込んだのも嘘ではない。彼と出会ったプレイヤーのほとんどが死亡しているのも真実で、エルディンというエルフの国を丸ごと取り込んだのも本当だった。
ついでに最強厨で、従者たちから文句を言われるくらい考え無しで、親代わりのAIに怒られるのは当たり前、人の気持ちを考えずに無意識に煽る発言をするものだから、ファーアースオンラインの頃は大勢のプレイヤーから蛇蝎の如く嫌われていた。
けれど、天空のプレイヤーは正直者だった。ガチャ欲や性欲に忠実であるものの、天空のプレイヤーは大事なこと、特に命が懸かるようなものには決して嘘は吐かなかった。
だから天空のプレイヤーは、エルフや奴隷のことも否定しなかった。好みの女の子を囲っていることも、隠すどころか堂々と連れ回した。所構わず尻尾を掴んでいたのは、さすがに欲望に負け過ぎだと言わざるを得ない。
エルフの王を殺したことも、これから他のプレイヤーを殺す可能性があることも、事実なので何も言わなかった。異世界に来て初めての顔見知りである親友にも、己がプレイヤーを殺したのだとすぐに告白した。
善悪については別にして、天空のプレイヤーは自分のしてきたことと、これからすることに対して正直ではあったのだ。それは多くのプレイヤーを抹殺し、まるでそれが無かったかのように彼らチームメンバーと共闘を申し出る、最初の神戯参加者とは違う。
異世界へ転移した彼らは、それを見抜けなかった。それが彼らの間違いだ。
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