廃課金最強厨が挑む神々の遊戯

葉簀絵 河馬

文字の大きさ
304 / 509
第七章

第三百三話 神戯の暗躍者

しおりを挟む
 デーモンとエルフの二人が手を取り合って、どれほどの時が経っただろうか。幾月幾年の時間が経過し、始めの頃は協力的で笑みを絶やさなかったデーモンは、すっかり笑顔を浮かべることが少なくなり、感情の抜け落ちた表情を見せることが多くなった。

 デーモン以外の六人は、デーモンから聞いた情報を元に神戯を勝ち抜くために最善を尽くしている。

 己の力を高めるためにベースレベル、スキルレベルの上昇に励み、レアアイテムの確保で装備を整えた。そうして異世界ファーアースの法則システム上で強力な存在になった後は、信仰心エネルギーFPを貯めるため、それぞれが国や組織などのコミニティを結成していった。

 エルフは『エルディン』と呼ばれるエルフの国を建国したほど、世界に溶け込んでいた。

 最初の神戯参加者七人の一人が言った。

「相談がある。急いで神戯に勝たなくても良いんじゃないか? この世界を開拓して、より良い世界にすることが大切だと思わないか?」

 それを言い出したのは、ドワーフだったかドラゴニュートだったか。

「この世界に生きている人間たちは、間違いなく命だ。彼らのために、俺たちはできる限りのことをすべきだと思っている」

 異世界ファーアースが創造された際、NPCとして様々な人間が同時に創造された。彼はそんな者たちにも命があると良い、守ろうと言い出した。

 驚くべきことに、その意見は最初の神戯参加者たちに好意的に受け入れられた。

 彼らが神戯に勝ちたいという意志が薄いのは感じていた。

 何せ元々天才と呼ばれた者たちであり、承認欲求は充分に満たされている。彼らは各々の分野では神の如く崇められていた者たちなのだ。今更、神に至れると言われたところで、何を目標にするのだろうか。

 それに納得できないのはデーモンだ。デーモンは神戯を終わらせて元の世界へ戻ることを目的にしている。

「何を言っているのですか? NPCたちは、所詮は神戯のために創造された偶像ですよ? 神戯が終われば消えてしまう泡沫の夢に過ぎません」

 異世界ファーアースのNPC、住人たちは神戯が終われば消える。それは最初に狐の神から説明された共通の事実。

 遙か未来で最強厨の魔王が、未だに知らない神戯の残酷なる仕様。

「だから、それを何とかする方法を、皆で協力して見つけ出さないか?」
「賛成だ。儂も、弟子たちを見捨てたくない」
「私もです。エルフの、あなたもそうでしょう? 今度、お子様が産まれると聞いています。奥様とお子様のためにも、協力して頂けますよね」
「僕は………」

 エルフがデーモンを見つめる。エルフはデーモンに対して、神戯を可能な限り早く終わらせて、デーモンを大切な人の元へ戻すと約束した。

「あなた方は、遊戯ゲームの一つくらいしたことがないのですか? ゲームが終われば、その世界のNPCも、大地も、すべてが消えるのです。それがゲームです。それを生かす方法を探すため、ゲームを続ける? 正気の沙汰とは思えません。神の如き力を得たから、己が神となったと勘違いしているのですか?」
「彼らはそれぞれ意思があり、命ですよ。我々と子供も作れるのです。人間以外の何なのですか」
「ゲームはクリアされるためにあります。攻略不可能などゲームとしての存在価値がありません。とっとと終わらせて、我々は元の世界へ戻り、元の生活を過ごしましょう」

 デーモンの言葉はある意味で正しいものだったけれど、ある意味で致命的に間違っていた。デーモン以外の最初の神戯参加者たちは、デーモンの言葉に誰一人賛成しない。

「そうですか。神に踊らされた愚か者ですね」
「言い過ぎだぞ。別に神戯のクリアを目指さないと言っている訳じゃない。NPCたちが生存できる方法を見つけて、それから神戯をクリアしても遅くはないと言っているだけだ。俺たちならそれもできるはずだ」
「すべてを救う完全なる勝利。我々天才七人なら不可能じゃない」

 盛り上がる者たちをよそ目に、デーモンは俯いた。そんなデーモンにエルフが話し掛ける。

「クレシェンド、僕は」
「セルヴァンス、あなたも同じ考えですか?」
「そんなことはない。僕は神戯の勝利を第一に考えている」
「だったら、今すぐ、あなたの妻と子供を殺してください」
「それは………」
「できるはずでしょう? どうせ神戯が終わったら消える存在ですよ。神戯の勝利を目指しているならば、できるはずだ」
「ごめん。それはできない。勝利の結果として消えるのと、僕の手でそれをするのは意味が違う」
「欺瞞ですね。あなたもその程度でしたか」
「聞いてくれ、僕は」
「もうあなた方に期待するのはやめました。最後に教授いたしましょう」

 デーモンの独白に最初の神戯参加者六人は注目する。

「私がこの神戯の内容を知り、強い力を持ってやって来た理由はただ一つ。この神戯を裏から操る者より、命令を受けていたのです」
「く、クレシェンド?」
「あなた方は始まる前から敗北していた。勝利するには、私の指示に従って、神戯を裏から操る者が現れる前に神戯を終わらせるしかなかった」



 デーモンは六人の元から消え、己の【拠点】まで戻った後に情報ウィンドウを起動する。

 デーモンが起動したのは、単なる情報ウィンドウではない。全体的に真っ黒なデザインで、プレイヤーが使いやすいようなアイコンや絵柄もなくタッチ操作も受け付けない特別なものだった。

 プレイヤーたちが使う情報ウィンドウを光の窓と表現するのであれば、闇の窓と言えるものだった。

「近衛天翔王光、舞台は整いましたよ。どうぞ、私の用意したものを活用して、瞬く間に神戯を終わらせてください。あのような神に至れるなどと驕った凡百な天才など嘲笑い、真の天才たる御身の力を示して頂きたい」

 デーモンが近衛天翔王光の名前を呼ぶと、返事がある。

『ふむ。ちょうど儂の神戯への参加準備も完了した。しかし瞬く間に終わらせるか。儂が負けることはないが、儂も万全を期すつもりだ。それにせっかく神々が創ったという遊戯を、少しくらい楽しんでやるつもりだ』
「それでは、このような手順はどうでしょう? まず私が残っている神戯参加者たちを皆殺しにして、FPを奪い取ります。近衛天翔王光は、その私を脱落させてすべてのFPを入手する。その後、あなたはFPを使うなり、神戯を楽しむなりする。私は姫桐様の元へ帰る」

 神戯において神クラスのレベルを上げる最も早い方法は、信仰心エネルギーFPを集めたプレイヤーを抹殺すること。

 クレシェンドは最初の神戯参加者たちに様々な仕様を教えて、異世界ファーアースで王や英雄、聖女と呼ばれるほどに信仰されるように仕向けた。

 すべては近衛天翔王光が神戯を勝利するための餌。

 あのような連中は、養豚場の豚に過ぎない。少しだけエルフのセルヴァンスの顔が頭をよぎったけれど関係無い。

『良い考えじゃな。お前はとりあえず今居る神戯参加者を全滅させてFPを集めろ。それは儂が貰う。そしてこちらの世界へ戻った後は、儂が居ない間、愛しい我が娘を任せるとしよう』
「言われるまでもありません。姫桐様は私のすべてです」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【魔物島】~コミュ障な俺はモンスターが生息する島で一人淡々とレベルを上げ続ける~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
【俺たちが飛ばされた魔物島には恐ろしいモンスターたちが棲みついていた――!?】 ・コミュ障主人公のレベリング無双ファンタジー! 十九歳の男子学生、柴木善は大学の入学式の最中突如として起こった大地震により気を失ってしまう。 そして柴木が目覚めた場所は見たことのないモンスターたちが跋扈する絶海の孤島だった。 その島ではレベルシステムが発現しており、倒したモンスターに応じて経験値を獲得できた。 さらに有用なアイテムをドロップすることもあり、それらはスマホによって管理が可能となっていた。 柴木以外の入学式に参加していた学生や教師たちもまたその島に飛ばされていて、恐ろしいモンスターたちを相手にしたサバイバル生活を強いられてしまう。 しかしそんな明日をも知れぬサバイバル生活の中、柴木だけは割と快適な日常を送っていた。 人と関わることが苦手な柴木はほかの学生たちとは距離を取り、一人でただひたすらにモンスターを狩っていたのだが、モンスターが落とすアイテムを上手く使いながら孤島の生活に順応していたのだ。 そしてそんな生活を一人で三ヶ月も続けていた柴木は、ほかの学生たちとは文字通りレベルが桁違いに上がっていて、自分でも気付かないうちに人間の限界を超えていたのだった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

完結 シシルナ島物語 少年薬師ノルド/ 荷運び人ノルド 蠱惑の魔剣

織部
ファンタジー
 ノルドは、古き風の島、正式名称シシルナ・アエリア・エルダで育った。母セラと二人きりで暮らし。  背は低く猫背で、隻眼で、両手は動くものの、左腕は上がらず、左足もほとんど動かない、生まれつき障害を抱えていた。  母セラもまた、頭に毒薬を浴びたような痣がある。彼女はスカーフで頭を覆い、人目を避けてひっそりと暮らしていた。  セラ親子がシシルナ島に渡ってきたのは、ノルドがわずか2歳の時だった。  彼の中で最も古い記憶。船のデッキで、母セラに抱かれながら、この新たな島がゆっくりと近づいてくるのを見つめた瞬間だ。  セラの腕の中で、ぽつりと一言、彼がつぶやく。 「セラ、ウミ」 「ええ、そうよ。海」 ノルドの成長譚と冒険譚の物語が開幕します! カクヨム様 小説家になろう様でも掲載しております。

召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~

さとう
ファンタジー
生まれながらにして身に宿る『召喚獣』を使役する『召喚師』 誰もが持つ召喚獣は、様々な能力を持ったよきパートナーであり、位の高い召喚獣ほど持つ者は強く、憧れの存在である。 辺境貴族リグヴェータ家の末っ子アルフェンの召喚獣は最低も最低、手のひらに乗る小さな『モグラ』だった。アルフェンは、兄や姉からは蔑まれ、両親からは冷遇される生活を送っていた。 だが十五歳になり、高位な召喚獣を宿す幼馴染のフェニアと共に召喚学園の『アースガルズ召喚学園』に通うことになる。 学園でも蔑まれるアルフェン。秀な兄や姉、強くなっていく幼馴染、そしてアルフェンと同じ最底辺の仲間たち。同じレベルの仲間と共に絆を深め、一時の平穏を手に入れる これは、全てを失う少年が最強の力を手に入れ、学園生活を送る物語。

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最初から最強ぼっちの俺は英雄になります

総長ヒューガ
ファンタジー
いつも通りに一人ぼっちでゲームをしていた、そして疲れて寝ていたら、人々の驚きの声が聞こえた、目を開けてみるとそこにはゲームの世界だった、これから待ち受ける敵にも勝たないといけない、予想外の敵にも勝たないといけないぼっちはゲーム内の英雄になれるのか!

異世界亜人熟女ハーレム製作者

†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です 【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。

処理中です...