廃課金最強厨が挑む神々の遊戯

葉簀絵 河馬

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第七章

第三百五十二話 太陽神の神威 後編

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『ご主人様、セフェさん!』

 キュウの声が聞こえた瞬間、フォルティシモの脳内にフラッシュバックのようなイメージが走った。太陽神がイベントダンジョン『ユニティバベル』ごと、元クレシェンドの肉体である巨大亜量子コンピュータを消し去ろうとしている。

 それはフォルティシモが神戯の勝利条件を達成したため、知覚が人間を超えたせいか。危機に瀕することでキュウの聞く能力が伝える能力へ進化したのか。その両方かは分からない。

 だがフォルティシモは、逃げる訳にはいかなかった。

 巨大亜量子コンピュータにはセフェールをインストールしていて、そこにはセフェールの魂が入っている。システム的に今の巨大亜量子コンピュータはアイテムではなく従者なので、インベントリに入れて動かすようなことはできない。それに拠点帰還用アイテム望郷の鍵などで瞬間移動できたとしても、移動先がない。こんなものを動かせる設備は、異世界ファーアースにはこの部屋しかない。

 フォルティシモは家族を見捨てない。それだけは絶対だ。

 急いで拠点攻防戦の勝利までは連絡を控えていた狐の神タマへ音声チャットを繋ぐ。

「タマ! 太陽神の攻撃方法を教えろ!」
『緊急事態かえ? 攻撃は許されていないゆえ、神威の発現だろう』
「どっちでも同じだ! 何をしてくる!?」
『言葉の通りだ。その領域に太陽が現れると考えよ』

 太陽の温度は千六百万度、そんなものが地上に現れたら、その瞬間にすべてが滅びる。

 それはもはや戦いにさえならない力だ。かつて地上最高の亜量子コンピュータのAIとして神戯に参加したクレシェンドも、人類に革命をもたらした天才近衛天翔王光も、太陽神にはついぞ届かなかった。

 出現するだけで、地上のあらゆる生物を焼き尽くす太陽の神。

『この世界、ファーアースはMAPの概念で区切られているゆえ、影響があるのはそのMAPだけだ』
「何の役にも立たない慰めだな」
『わてはフォルティシモは最強だと聞いたが?』
「フォルティシモは最強だ」

 フォルティシモはいつものように返答したものの、それは間違いなく強がりだった。

 『ユニティバベル』の最上階の部屋は目も開けるのも辛いほどの光に包まれ、肌が焼けるような温度へと上昇していく。

「考える時間くらい寄越せ! 識域エクステンソ最大マクシモ氷結コンヘラル!」

 とにかく何よりも温度に対抗しようと思いスキルを発動する。

『焼け石に水ってぇ、まさにこの状況ですねぇ。クラクラしてきましたぁ』
「AIがめまいを起こしてどうする!」

 フォルティシモはセフェールのAIらしからぬ言葉にツッコミを入れながらも、高温と焦燥感から滝のような汗が流れるのを止められなかった。

 太陽神と戦う準備はして来ている。今ここで【神殺し】を持つキュウを呼び出して、太陽神と戦うか。

 しかしそれは危険過ぎる。ここまで有り得ない特性を持っているなんて情報はなかった。海淵の蒼麒麟の海中戦闘なんて可愛く思える。太陽の中で戦うなんて想定外も良いところだ。

 そして徐々に姿を現そうとする太陽に対抗しようにも時間がなさすぎる。今までずっとフォルティシモの味方だった時間が、今は圧倒的に足りない。

 フォルティシモが覚悟を決めようかと思った時、自分でもどうかと思う閃きが走った。

 フォルティシモはインベントリから、光子メモリを取り出す。カリオンドル皇国の初代皇帝の墓所で見つかった、近衛天翔王光がフォルティシモへ遺したもの。現代リアルワールドで使われている記憶媒体は、少しずつだが解析を進めていた。

 しかし読み込むためのコンピュータがないため、量子ビットを一つ一つ解析する必要がある。一昔前で言えば機械語を人間の理解できる言語に翻訳する作業だ。例えば『11100011 10000011 10010101 11100011 10000010 10100001 11100011 10000011 10111100 11100011 10000010 10100010 11100011 10000011 10111100 11100011 10000010 10111001』は『ファーアース』となる翻訳を手作業で行う必要がある。解析は難航を極めていた。

 それに対して、今、目の前に巨大亜量子コンピュータがある。光子メモリをこれに差し込めば、手作業の解析なんてせずに内容を見ることが可能だ。

「セフェ、ここまでの解析結果から、おおまかな中身の予想は付いている。だが、もし、もし爺さんがウイルスを仕込んでいたら大変なことになる。具体的には俺の抹殺リストに爺さんが載る」
『もう時間がないのでぇ、やってくださいぃ』

 フォルティシモは光子メモリを巨大亜量子コンピュータセフェールへ差し込んだ。セフェールが超々高速で内容を読み出す。

『やはりこれはぁ。異世界ファーアースのソースコードですねぇ』
「………そうか」

 オウコーの遺産光子メモリの内容は、VRMMOファーアースオンラインではなく異世界で開催されている神戯のソースコード。

 オウコーは、現実を解析してVR空間を作成したように、女神の創った法則『異世界ファーアース』を人間が読み取れる文字に翻訳したのだ。

『これならぁ、フォルさんの権能と合わせてぇ、この部屋の座標を書き換えられるかも知れませんよぉ』
「いいから全部見せろ!」

 フォルティシモの周囲に数百枚の情報ウィンドウが表示されると、フォルティシモはそれらを俯瞰しながら詳細まで確認していく。神戯の勝利者へなったことで、AGIやINTがフォルティシモの感覚や脳にまで影響を与えていると思える速度だった。

 そして新しいスキル設定を完成させる。

識域エクステンソ自在リベルタ移動ムダールセ

 フォルティシモはこの部屋ごと、自分とセフェールを空間転移させる。

 行くべき場所は拠点攻防戦が始まる前に狐の神タマが教えてくれた。太陽の届かない地下だ。
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