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第一章
報復は見えないところで レイジェル視点
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※しばらくレイジェル視点が続きます。
────────────
「レイジェル殿下! なぜあの王女なのですか!?」
ベルエリオ公爵は、その場では何も言わなかったものの、後々抗議をしてきた。
執務室に向かう途中の廊下で声を掛けられてしまった。
「私が王太子妃として相応しいと思ったからだ」
「見誤ってはいけませんぞ……」
「結婚しないと言った私に、妃は子が産めれば誰でもいいと言ったのは他ならぬお前達だ。だから、この馬鹿らしい審査をしたんだ。選んだ相手に異議を言うのはお門違いだ」
「それは……そうですが……」
言い淀む公爵にため息をつく。
「他に用は?」
「いえ……」
「ならば、もういいか? 私は忙しい」
「…………はい」
納得いかないような公爵の話を切り上げて執務室に逃げた。
自分の椅子に座りながらため息をつく。
私は妃をミリアンナに決めた。弱小国家だからと問題はありそうだが、もう決めた事だ。
そもそもミリアンナ本人が納得いってない様子だったのを思い出して笑みがこぼれる。
ミリアンナは、私と結婚したくないらしい。それも想定内だ。徐々に歩み寄れたらいいと思う。
見た目だけじゃなく、声も似ていると思っていた。だから、彼女の歌を聴いてみたいと思った。
もう既にミリアンナに決めていたが、第四審査を受けさせたのは、ヴァイオリンよりも歌が聴きたくてだ。ヴァイオリンが壊れていなくても歌ってもらうつもりだった。
ミリアンナの歌声は、やはり似ていた。それどころか、私の記憶の初恋相手よりも深みのある綺麗な声だった。
ミリアンナの歌をすぐに止めたのは、他の人に聞かせたくなかったからだ。誰もがあの声に聞き惚れていた。
「あの変な歌詞はともかく、ミリアンナ様って歌上手でしたね」
ラトがうっとりしながらそんな事を言ってきた。
「あの場で歌わせたのは間違いだったな……」
誰もがみんなミリアンナに興味が湧いていそうで気に入らない。
「レイジェル様は、そんなにミリアンナ様が好きですか?」
ラトにニヤニヤとそんな事を言われてコホンッと咳払いして話を終わりにする。
「報告を──」
「「はい」」
報告に来たのはカーラの護衛とコルテスだ。
まずはカーラの護衛からの報告を聞いた。
カーラの護衛は、カーラの部屋に出入りしていた侍女が怪しいと言った。
「カーラ自身は、僕の目がある場所では特に変化はありませんでした。ですが、部屋の外に出される事も多かったです。気になるのはカーラの侍女です。部屋の外に出される時は、ほとんどその侍女がいました。部屋を出入りする回数も多かったように思います。カーラ自身が動いていたのではなく、カーラの命令でその侍女が動いていたのではないでしょうか」
それが一番有力だな。
「わかった。何人かでその侍女を捕まえてこい」
「はい!」
カーラが言い逃れなどできないように証人にしよう。
「コルテスも報告しろ」
「はい。ヤハネへの交易をしばらく取りやめる旨を通知しました。カーラを迎えに来るというよりは、我々に謝りたいと必死になるはずです」
ヤハネは、カーラの国だ。
ドレスを引き裂いた犯人だとわかった瞬間から、彼女と彼女の国に報復する事は決めていた。
「絶対に許すな。交易を再開する条件は、カーラが降嫁する事だ。それも爵位などない臣下のところにな。それと、実行犯の侍女への刑罰は、脅されていた場合を除き、クラドラの娼館で一年タダ働きだ」
「はい」
クラドラの娼館は、テレフベニアの中で最底辺の娼館だ。低賃金で、どんなやつも相手にしなきゃならない。
「そんな甘いので良かったんですか? 前だったら降嫁どころじゃなく、王家を潰して奴隷に落としてるところですよ。そのまま領土もテレフベニアに吸収しちゃえばいいのに。その侍女だって腕ぐらい切り落としてやればいいんですよ」
ラトが言いたい事もわかる。
敵は徹底的に潰さないとどこかで綻びが出る。テレフベニアが甘くみられない為に、そういう精神でやってきた。
「ヤハネの領土など必要ない。それに、ミリアンナ殿下が国同士の揉め事にはしたくなかったみたいだからな。色々と考慮した」
「そうですね。それで納得出来ちゃうから、ミリアンナ様の存在はすごいですね」
ラトはそう言いながら楽しそうだ。
「ミリアンナ殿下にはくれぐれも気付かれないようにな。私に怒鳴られてでも守ろうとしたカーラがそんな事になったと知ったら彼女が心を痛めてしまう」
「わかってますよ。ミリアンナ様が許しても、我々が許すはずないですよね~」
ラトは、ニヤリと笑う。その通りだ。
報復はきっちりとさせてもらおう。
「犯人が自ら名乗り出てくれて良かった」
「ミリアンナ様に捜さないって言ってましたもんね」
ラトが書類を渡してくる。それを確認しつつ笑う。
ミリアンナのドレスの裾を踏んだ時、ドレスを破った犯人ではないかと思い、ミリアンナにすぐに駆け寄りたい衝動を我慢した。そのままにしておけば、カーラは何かボロを出すじゃないかと思ったが正解だった。
「捜さないとは言ったが、報復しないとは言っていない。知ってしまったからにはそのままにはしない。嘘はついてないだろ?」
「レイジェル様のそういうとこ、怖いですよね」
ラトは、そう言いながらケタケタと笑う。
「ところで、いつミリアンナとお呼びするんですか?」
「まだ早い……」
「婚約者になるんですから遅いも早いもないでしょう」
なんとなく「ミリアンナ……」とボソリと呟いてみる。
ラトにブハッと笑われてしまう。また揶揄われた……。
コルテスがラトを厳しく睨む。
「ラトはレイジェル様で遊ぶ癖をやめなさい」
「だって面白すぎるだろ? やっぱり呼びたいのがバレバレだもん」
恥ずかしくなってラトを睨めば、まぁまぁと誤魔化された。
「これなら初恋相手だって忘れられるんじゃないですか?」
ふと問い掛けられた質問に考え込む。
「忘れられはしない──ただ……ここ最近は、考える事が少なくなったかもしれない……」
思い出すのは綺麗な銀の髪と雨上がりの空のような澄んだ瞳──。
私の初恋は、苦い思い出と共に心に残っている。
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「レイジェル殿下! なぜあの王女なのですか!?」
ベルエリオ公爵は、その場では何も言わなかったものの、後々抗議をしてきた。
執務室に向かう途中の廊下で声を掛けられてしまった。
「私が王太子妃として相応しいと思ったからだ」
「見誤ってはいけませんぞ……」
「結婚しないと言った私に、妃は子が産めれば誰でもいいと言ったのは他ならぬお前達だ。だから、この馬鹿らしい審査をしたんだ。選んだ相手に異議を言うのはお門違いだ」
「それは……そうですが……」
言い淀む公爵にため息をつく。
「他に用は?」
「いえ……」
「ならば、もういいか? 私は忙しい」
「…………はい」
納得いかないような公爵の話を切り上げて執務室に逃げた。
自分の椅子に座りながらため息をつく。
私は妃をミリアンナに決めた。弱小国家だからと問題はありそうだが、もう決めた事だ。
そもそもミリアンナ本人が納得いってない様子だったのを思い出して笑みがこぼれる。
ミリアンナは、私と結婚したくないらしい。それも想定内だ。徐々に歩み寄れたらいいと思う。
見た目だけじゃなく、声も似ていると思っていた。だから、彼女の歌を聴いてみたいと思った。
もう既にミリアンナに決めていたが、第四審査を受けさせたのは、ヴァイオリンよりも歌が聴きたくてだ。ヴァイオリンが壊れていなくても歌ってもらうつもりだった。
ミリアンナの歌声は、やはり似ていた。それどころか、私の記憶の初恋相手よりも深みのある綺麗な声だった。
ミリアンナの歌をすぐに止めたのは、他の人に聞かせたくなかったからだ。誰もがあの声に聞き惚れていた。
「あの変な歌詞はともかく、ミリアンナ様って歌上手でしたね」
ラトがうっとりしながらそんな事を言ってきた。
「あの場で歌わせたのは間違いだったな……」
誰もがみんなミリアンナに興味が湧いていそうで気に入らない。
「レイジェル様は、そんなにミリアンナ様が好きですか?」
ラトにニヤニヤとそんな事を言われてコホンッと咳払いして話を終わりにする。
「報告を──」
「「はい」」
報告に来たのはカーラの護衛とコルテスだ。
まずはカーラの護衛からの報告を聞いた。
カーラの護衛は、カーラの部屋に出入りしていた侍女が怪しいと言った。
「カーラ自身は、僕の目がある場所では特に変化はありませんでした。ですが、部屋の外に出される事も多かったです。気になるのはカーラの侍女です。部屋の外に出される時は、ほとんどその侍女がいました。部屋を出入りする回数も多かったように思います。カーラ自身が動いていたのではなく、カーラの命令でその侍女が動いていたのではないでしょうか」
それが一番有力だな。
「わかった。何人かでその侍女を捕まえてこい」
「はい!」
カーラが言い逃れなどできないように証人にしよう。
「コルテスも報告しろ」
「はい。ヤハネへの交易をしばらく取りやめる旨を通知しました。カーラを迎えに来るというよりは、我々に謝りたいと必死になるはずです」
ヤハネは、カーラの国だ。
ドレスを引き裂いた犯人だとわかった瞬間から、彼女と彼女の国に報復する事は決めていた。
「絶対に許すな。交易を再開する条件は、カーラが降嫁する事だ。それも爵位などない臣下のところにな。それと、実行犯の侍女への刑罰は、脅されていた場合を除き、クラドラの娼館で一年タダ働きだ」
「はい」
クラドラの娼館は、テレフベニアの中で最底辺の娼館だ。低賃金で、どんなやつも相手にしなきゃならない。
「そんな甘いので良かったんですか? 前だったら降嫁どころじゃなく、王家を潰して奴隷に落としてるところですよ。そのまま領土もテレフベニアに吸収しちゃえばいいのに。その侍女だって腕ぐらい切り落としてやればいいんですよ」
ラトが言いたい事もわかる。
敵は徹底的に潰さないとどこかで綻びが出る。テレフベニアが甘くみられない為に、そういう精神でやってきた。
「ヤハネの領土など必要ない。それに、ミリアンナ殿下が国同士の揉め事にはしたくなかったみたいだからな。色々と考慮した」
「そうですね。それで納得出来ちゃうから、ミリアンナ様の存在はすごいですね」
ラトはそう言いながら楽しそうだ。
「ミリアンナ殿下にはくれぐれも気付かれないようにな。私に怒鳴られてでも守ろうとしたカーラがそんな事になったと知ったら彼女が心を痛めてしまう」
「わかってますよ。ミリアンナ様が許しても、我々が許すはずないですよね~」
ラトは、ニヤリと笑う。その通りだ。
報復はきっちりとさせてもらおう。
「犯人が自ら名乗り出てくれて良かった」
「ミリアンナ様に捜さないって言ってましたもんね」
ラトが書類を渡してくる。それを確認しつつ笑う。
ミリアンナのドレスの裾を踏んだ時、ドレスを破った犯人ではないかと思い、ミリアンナにすぐに駆け寄りたい衝動を我慢した。そのままにしておけば、カーラは何かボロを出すじゃないかと思ったが正解だった。
「捜さないとは言ったが、報復しないとは言っていない。知ってしまったからにはそのままにはしない。嘘はついてないだろ?」
「レイジェル様のそういうとこ、怖いですよね」
ラトは、そう言いながらケタケタと笑う。
「ところで、いつミリアンナとお呼びするんですか?」
「まだ早い……」
「婚約者になるんですから遅いも早いもないでしょう」
なんとなく「ミリアンナ……」とボソリと呟いてみる。
ラトにブハッと笑われてしまう。また揶揄われた……。
コルテスがラトを厳しく睨む。
「ラトはレイジェル様で遊ぶ癖をやめなさい」
「だって面白すぎるだろ? やっぱり呼びたいのがバレバレだもん」
恥ずかしくなってラトを睨めば、まぁまぁと誤魔化された。
「これなら初恋相手だって忘れられるんじゃないですか?」
ふと問い掛けられた質問に考え込む。
「忘れられはしない──ただ……ここ最近は、考える事が少なくなったかもしれない……」
思い出すのは綺麗な銀の髪と雨上がりの空のような澄んだ瞳──。
私の初恋は、苦い思い出と共に心に残っている。
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