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第三章
優しい手
どれくらい時間が経ったのかわからない。
今頃は、レイジェルとミリアンナは仲良くやっているのかもしれない。
俺は結局いてもいなくても同じで、例え閉じ込められていたとしても、誰も気付いたりしない。
ずっとベッドでゴロゴロと時間を潰していた。
すると、扉をガチャガチャとする音が聞こえてベッドの上で体を起こして身構えた。
誰か来たのか──?
ガチャガチャする音が聞こえなくなったと思ったら、扉をドンドンと強く叩く音がしてびっくりしていた。
派手な音を立てて、勢いよく扉がバタンッと開いた。壊れた取手を見ると、どうやら扉を蹴破ったらしい。
「やっと開いたな……」
誰だと思って見れば、そこにいたのはテアロだった──。
見れば、いつもの簡素な服ではなく、きっちりと正装をしているように見える。
まるで貴族みたいだ……。
「ミオ……いて良かった。いなかったらジュドを半殺しにしている所だった」
俺を見つけてホッとすると、何やらブツブツと言いながら近くまで駆けてきた。
ベッドの端まで移動してテアロを見上げる。
「テ、テアロだよね……?」
テアロは俺の頭にぽんっと手を乗せた。
「そうだ。俺だ」
優しい手の感触と、優しく笑ったテアロの顔を見たら、今まで張り詰めていた糸がプツンと切れた気がする。
テアロがなんでここにいるだとか、どうしてそんな格好をしているのだとか全部どうでも良かった。テアロの顔を見てとにかく安心した。
「テ、テアロォ……」
ポロポロと大粒の涙をこぼして泣き出した俺を、テアロはギュッと抱きしめるように抱っこして、子供をあやすようにポンポンと背中を叩いた。俺は、テアロの首に縋りついて泣いた。
「色々大変だったな。俺が来たから大丈夫だ」
「うん……」
「もう大丈夫だから、そんなに泣くなよ」
「うん……っ」
苦笑いするテアロに、こくこくと頷けば、段々と落ち着いてくる。
「今、ここから出してやるからな」
テアロは、俺から離れると窓際まで歩く。
「窓、開かないよ?」
何度か試したけれど、開かなかった。
どうするのだろうと考えていれば、テアロは近くにあった一人用の椅子を持ってきた。
「こうすんだ──よっ!」
そのまま窓に向けて椅子を放り投げた。ガシャンッと音を立てて割れ、開いた窓を呆然と見ていた。
おぅ……ワイルド……。
「この部屋は見つかりづらい場所にあるし、パーティーやってるからな。多少大きな音がしたってわかんねぇよ」
確かに騒がれている感じはしない。
窓の外は二階程度の高さだった。
テアロは、右手にあった木を見つけて、そこにジャンプして飛び移ると、俺に手を伸ばしてきた。
「大丈夫だから、来い」
「う、うん……」
勇気を振り絞って窓からテアロへとジャンプした。しっかりと抱えられてホッとした。
テアロの指示を聞きながら先に木を降りれば、すぐに地面に辿り着いた。
それほど高くなくて良かった。
「こっからどうするかな? 抜け道とかあるのか?」
「あ……俺、知ってる。こっち」
場所的にもあまり目立たない所だ。
いつも使っている街への抜け道を使って城から抜け出した。
◆◇◆
店に着いて、奥にあるダイニングに座り、一息ついていた。
テアロは、着ていた服を街人の服に着替えると、グラスに水を入れて渡してくれた。それを飲んでホッとした。
隣に座ったテアロは、俺の方を見て微笑む。
「落ち着いたな。大丈夫か?」
「うん。テアロ見たら、なんか一気に安心しちゃって……ごめん」
「気にすんな」
「ふふっ。ありがとう」
微笑んでくれるテアロに微笑み返す。
「テアロは……貴族だったとか?」
「あー……違う」
「どうして俺の事……」
「お前には関係ない」
「そっか……」
視線を逸らすテアロを見ると、聞かれたくないという事なんだろう。俺の事をどうやって知ったのかも、あまり話したがらなそうだ。俺も今まで自分の事を話していなかった。お互い様だ。
黙って下を向いた。
「まぁ……なんだ。お前が無事で良かったよ」
そう言いながらポンッと頭を叩かれた。
優しい手つきにまたも鼻の奥がツンとして、グラスとそれを持つ手が涙で滲む。
「また……子供扱いして……」
テアロはいつも俺を子供扱いする。だからなのか、テアロには少し甘えてしまう。
「仕方ねぇだろ? 子供の時からの付き合いなんだから……」
ぶっきらぼうな言い方なのに、頭を撫でる手はどこまでも優しい。
色んな感情が溢れてくると同時に涙も頬を伝った。胸が痛くて熱くて苦しい……。
家族はやっぱり俺なんて必要なかった。身代わりとして使っておきながら、閉じ込められた。
必死で訴えても、俺の声は届かなかった……。
レイジェルにも謝れなかった。もう会うこともないんだろう。
これで良かったんだ……そう思うのに、胸の奥が苦しかった。
「テアロ……俺……」
どこにもいく所がない。
「ミオは家に戻らなくていい」
コクリと頷く。
「ここはお前の店だ。ここにいればいいんだ」
もう一度コクリと頷いた。
今頃は、レイジェルとミリアンナは仲良くやっているのかもしれない。
俺は結局いてもいなくても同じで、例え閉じ込められていたとしても、誰も気付いたりしない。
ずっとベッドでゴロゴロと時間を潰していた。
すると、扉をガチャガチャとする音が聞こえてベッドの上で体を起こして身構えた。
誰か来たのか──?
ガチャガチャする音が聞こえなくなったと思ったら、扉をドンドンと強く叩く音がしてびっくりしていた。
派手な音を立てて、勢いよく扉がバタンッと開いた。壊れた取手を見ると、どうやら扉を蹴破ったらしい。
「やっと開いたな……」
誰だと思って見れば、そこにいたのはテアロだった──。
見れば、いつもの簡素な服ではなく、きっちりと正装をしているように見える。
まるで貴族みたいだ……。
「ミオ……いて良かった。いなかったらジュドを半殺しにしている所だった」
俺を見つけてホッとすると、何やらブツブツと言いながら近くまで駆けてきた。
ベッドの端まで移動してテアロを見上げる。
「テ、テアロだよね……?」
テアロは俺の頭にぽんっと手を乗せた。
「そうだ。俺だ」
優しい手の感触と、優しく笑ったテアロの顔を見たら、今まで張り詰めていた糸がプツンと切れた気がする。
テアロがなんでここにいるだとか、どうしてそんな格好をしているのだとか全部どうでも良かった。テアロの顔を見てとにかく安心した。
「テ、テアロォ……」
ポロポロと大粒の涙をこぼして泣き出した俺を、テアロはギュッと抱きしめるように抱っこして、子供をあやすようにポンポンと背中を叩いた。俺は、テアロの首に縋りついて泣いた。
「色々大変だったな。俺が来たから大丈夫だ」
「うん……」
「もう大丈夫だから、そんなに泣くなよ」
「うん……っ」
苦笑いするテアロに、こくこくと頷けば、段々と落ち着いてくる。
「今、ここから出してやるからな」
テアロは、俺から離れると窓際まで歩く。
「窓、開かないよ?」
何度か試したけれど、開かなかった。
どうするのだろうと考えていれば、テアロは近くにあった一人用の椅子を持ってきた。
「こうすんだ──よっ!」
そのまま窓に向けて椅子を放り投げた。ガシャンッと音を立てて割れ、開いた窓を呆然と見ていた。
おぅ……ワイルド……。
「この部屋は見つかりづらい場所にあるし、パーティーやってるからな。多少大きな音がしたってわかんねぇよ」
確かに騒がれている感じはしない。
窓の外は二階程度の高さだった。
テアロは、右手にあった木を見つけて、そこにジャンプして飛び移ると、俺に手を伸ばしてきた。
「大丈夫だから、来い」
「う、うん……」
勇気を振り絞って窓からテアロへとジャンプした。しっかりと抱えられてホッとした。
テアロの指示を聞きながら先に木を降りれば、すぐに地面に辿り着いた。
それほど高くなくて良かった。
「こっからどうするかな? 抜け道とかあるのか?」
「あ……俺、知ってる。こっち」
場所的にもあまり目立たない所だ。
いつも使っている街への抜け道を使って城から抜け出した。
◆◇◆
店に着いて、奥にあるダイニングに座り、一息ついていた。
テアロは、着ていた服を街人の服に着替えると、グラスに水を入れて渡してくれた。それを飲んでホッとした。
隣に座ったテアロは、俺の方を見て微笑む。
「落ち着いたな。大丈夫か?」
「うん。テアロ見たら、なんか一気に安心しちゃって……ごめん」
「気にすんな」
「ふふっ。ありがとう」
微笑んでくれるテアロに微笑み返す。
「テアロは……貴族だったとか?」
「あー……違う」
「どうして俺の事……」
「お前には関係ない」
「そっか……」
視線を逸らすテアロを見ると、聞かれたくないという事なんだろう。俺の事をどうやって知ったのかも、あまり話したがらなそうだ。俺も今まで自分の事を話していなかった。お互い様だ。
黙って下を向いた。
「まぁ……なんだ。お前が無事で良かったよ」
そう言いながらポンッと頭を叩かれた。
優しい手つきにまたも鼻の奥がツンとして、グラスとそれを持つ手が涙で滲む。
「また……子供扱いして……」
テアロはいつも俺を子供扱いする。だからなのか、テアロには少し甘えてしまう。
「仕方ねぇだろ? 子供の時からの付き合いなんだから……」
ぶっきらぼうな言い方なのに、頭を撫でる手はどこまでも優しい。
色んな感情が溢れてくると同時に涙も頬を伝った。胸が痛くて熱くて苦しい……。
家族はやっぱり俺なんて必要なかった。身代わりとして使っておきながら、閉じ込められた。
必死で訴えても、俺の声は届かなかった……。
レイジェルにも謝れなかった。もう会うこともないんだろう。
これで良かったんだ……そう思うのに、胸の奥が苦しかった。
「テアロ……俺……」
どこにもいく所がない。
「ミオは家に戻らなくていい」
コクリと頷く。
「ここはお前の店だ。ここにいればいいんだ」
もう一度コクリと頷いた。
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