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第二章
最後の一人 ③ レイジェル視点
残されたミリアンナは、全てを見ていた為か、恐怖で震えていた。人並みに恐怖は感じるようだ。
それでも、そこからの行動に驚く。
『わ、わたくしは、レイジェル殿下を満足させられます!』
ミリアンナは、私に抱きついてきたのだ。なんという根性だ。
『わたくしは女ですわ! ミリオンとは違う女です! 胸もあるし、子供だって産めます! 絶対にわたくしの方がいいに決まってます! そうでしょう? ね?』
こちらを見上げるミリアンナをじっと見つめる。顔はそっくりだ……。
手を取られて頬に当てられた。頬の感触は女らしく柔らかい。だが、ただそれだけだ。
ニコッと笑ったミリアンナに驚くほど何も感じなかった。ミオに触れると高鳴る胸は、ミリアンナでは全く反応しなかった。自分の心も身体も正直過ぎて思わず笑ってしまう。
ミオに触れたあの時の感動を、まがい物で感じるはずがない。
見た目がそっくりな女でこれでは、どの女に触れても私の心も身体も反応しないだろう。
「ありがとう。君のおかげで大事な事がわかった」
『やっぱり魅力的なわたくしの事を気に入ったのね!』
ミリアンナに向かってニッコリ笑いながら、ミリアンナの両手を握って胸の辺りに出させる。
ラトに目配せすれば、ラトはそのままミリアンナの両手に素早く鉄製の手枷を嵌めた。
『な、何よ……これ……外して!』
誰が外そうなんて思うのか。
ミリアンナを突き飛ばして床に転がした。
「私は魅力なんて全く感じない」
『そんな事ないわ!』
「私は感じない──が、そんなお前じゃないとダメだと言うやつもいる。コルテス」
「はい」
我々がこのパーティーで待っていたのは借金取りだけではない。
もう一人、とても重要な人物を待っていた。
コルテスが部屋の外から連れてきた人物は、ミリアンナを見つけると側に駆け寄った。
「ミリアンナ様……」
『ローウェ…………ッ……けほっ……』
ミリアンナの声はもう出なくなったらしい。
ローウェンは、パクパクと口を開くだけになってしまったミリアンナの肩にそっと手を置いた。
「ミリアンナ様、もう大丈夫ですから」
ローウェンがニッコリ笑って言えば、ミリアンナはホッとしたらしい。
ローウェンは、私に向かって跪いて胸に手を当てて、真剣な顔を向けてきた。
「レイジェル殿下……この度はミリアンナ様をお譲り頂けるなんて、本当にありがとうございます」
『…………!?』
「ああ。ミリアンナがどうしてもローウェンがいいと言っていたからな」
「二人で暮らせる家まで用意して頂き、こんなに嬉しい事はありません……」
「君たちの力になりたかったんだ」
アスラーゼに到着したと同時に、コルテスはローウェンに会いに行った。
ローウェンは、ミリアンナに振られたことで憔悴しきっていて何も手につかず、仕事にも行けないような状態だったらしい。
そんなローウェンにコルテスは、甘い言葉を囁いた。
『ミリアンナ様は、ローウェン様と一緒にいたいのです。誰にも見つからない場所で二人きりでお過ごし頂けるのなら、ミリアンナ様をお返ししてもいいそうです』
ローウェンは一気に明るくなった。
二度と手に入らないと思っていた相手がまた戻ってくる。恋は盲目とは良く言ったもので、ローウェンはミリアンナしか見えていなかった。
家を構えて二人で暮らす事を誰よりも喜んでいた。そこはミリアンナにとっての牢獄。
何もない辺境の地にローウェンという看守を置いて、一生をそこで過ごしてもらう。
「この通り、病で喉をやられて喋れずに暴れるんだ。手枷は外さない方がいい。暴れたら多少は厳しくしないと大人しくならない。君に辛く当たるかもな」
「わかりました。私が全部面倒を見ます。どんな風になっても絶対に放しません」
「君の愛はとても深いな。君以外に任せられる人はいない。彼女は君のものだ──」
「私のもの……」
呟いてニタリと笑うローウェンも、少しばかり気が狂ってしまっていた。ミリアンナの事を二度と手放すつもりはないだろう。
「万が一ミリアンナが他の男と逃げたなんて噂になったらまずいからな。そこの木箱に詰めて荷物として運べ。コルテスが手伝ってくれる」
「はい! ありがとうございます」
どうにか逃げようと床を這いつくばろうとするミリアンナの顔の横にラトがドンッと足を置いて、ミリアンナを見下す。
「おっと。動くから踏んじゃいそうでした」
一瞬で動きを止めたミリアンナは、目に涙を溜めて泣き出した。
こんな風に扱われたことなどないのだろう。
『ッ…………うぅ……』
「ローウェン様に会えて嬉し泣きしているみたいです。早く二人きりになりたいのかも。たぁーぷり愛してあげるといいですよ。すぐに連れて行って下さい」
ラトの言葉に、ローウェンは嬉々としてミリアンナを抱え上げる。
ミリアンナは、ローウェンに気が狂うほど愛されて、ローウェンを愛する気持ちが芽生えるかもしれない。人を愛する気持ちがミリアンナにあれば──の話だがな。
ミリアンナは、先ほどのラトの行動で抵抗する気力を無くしたようだ。それに痺れ薬の効果で動けなくなりつつある。
泣いたままローウェンにされるがままだった。
全部片付いた。
ミオをすぐに迎えに行かなくては──。
「コルテス、後は頼んだ。ラト、行くぞ」
「「はい」」
椅子から立ち上がり、ミオのいるであろう部屋の鍵を握りしめた。
それでも、そこからの行動に驚く。
『わ、わたくしは、レイジェル殿下を満足させられます!』
ミリアンナは、私に抱きついてきたのだ。なんという根性だ。
『わたくしは女ですわ! ミリオンとは違う女です! 胸もあるし、子供だって産めます! 絶対にわたくしの方がいいに決まってます! そうでしょう? ね?』
こちらを見上げるミリアンナをじっと見つめる。顔はそっくりだ……。
手を取られて頬に当てられた。頬の感触は女らしく柔らかい。だが、ただそれだけだ。
ニコッと笑ったミリアンナに驚くほど何も感じなかった。ミオに触れると高鳴る胸は、ミリアンナでは全く反応しなかった。自分の心も身体も正直過ぎて思わず笑ってしまう。
ミオに触れたあの時の感動を、まがい物で感じるはずがない。
見た目がそっくりな女でこれでは、どの女に触れても私の心も身体も反応しないだろう。
「ありがとう。君のおかげで大事な事がわかった」
『やっぱり魅力的なわたくしの事を気に入ったのね!』
ミリアンナに向かってニッコリ笑いながら、ミリアンナの両手を握って胸の辺りに出させる。
ラトに目配せすれば、ラトはそのままミリアンナの両手に素早く鉄製の手枷を嵌めた。
『な、何よ……これ……外して!』
誰が外そうなんて思うのか。
ミリアンナを突き飛ばして床に転がした。
「私は魅力なんて全く感じない」
『そんな事ないわ!』
「私は感じない──が、そんなお前じゃないとダメだと言うやつもいる。コルテス」
「はい」
我々がこのパーティーで待っていたのは借金取りだけではない。
もう一人、とても重要な人物を待っていた。
コルテスが部屋の外から連れてきた人物は、ミリアンナを見つけると側に駆け寄った。
「ミリアンナ様……」
『ローウェ…………ッ……けほっ……』
ミリアンナの声はもう出なくなったらしい。
ローウェンは、パクパクと口を開くだけになってしまったミリアンナの肩にそっと手を置いた。
「ミリアンナ様、もう大丈夫ですから」
ローウェンがニッコリ笑って言えば、ミリアンナはホッとしたらしい。
ローウェンは、私に向かって跪いて胸に手を当てて、真剣な顔を向けてきた。
「レイジェル殿下……この度はミリアンナ様をお譲り頂けるなんて、本当にありがとうございます」
『…………!?』
「ああ。ミリアンナがどうしてもローウェンがいいと言っていたからな」
「二人で暮らせる家まで用意して頂き、こんなに嬉しい事はありません……」
「君たちの力になりたかったんだ」
アスラーゼに到着したと同時に、コルテスはローウェンに会いに行った。
ローウェンは、ミリアンナに振られたことで憔悴しきっていて何も手につかず、仕事にも行けないような状態だったらしい。
そんなローウェンにコルテスは、甘い言葉を囁いた。
『ミリアンナ様は、ローウェン様と一緒にいたいのです。誰にも見つからない場所で二人きりでお過ごし頂けるのなら、ミリアンナ様をお返ししてもいいそうです』
ローウェンは一気に明るくなった。
二度と手に入らないと思っていた相手がまた戻ってくる。恋は盲目とは良く言ったもので、ローウェンはミリアンナしか見えていなかった。
家を構えて二人で暮らす事を誰よりも喜んでいた。そこはミリアンナにとっての牢獄。
何もない辺境の地にローウェンという看守を置いて、一生をそこで過ごしてもらう。
「この通り、病で喉をやられて喋れずに暴れるんだ。手枷は外さない方がいい。暴れたら多少は厳しくしないと大人しくならない。君に辛く当たるかもな」
「わかりました。私が全部面倒を見ます。どんな風になっても絶対に放しません」
「君の愛はとても深いな。君以外に任せられる人はいない。彼女は君のものだ──」
「私のもの……」
呟いてニタリと笑うローウェンも、少しばかり気が狂ってしまっていた。ミリアンナの事を二度と手放すつもりはないだろう。
「万が一ミリアンナが他の男と逃げたなんて噂になったらまずいからな。そこの木箱に詰めて荷物として運べ。コルテスが手伝ってくれる」
「はい! ありがとうございます」
どうにか逃げようと床を這いつくばろうとするミリアンナの顔の横にラトがドンッと足を置いて、ミリアンナを見下す。
「おっと。動くから踏んじゃいそうでした」
一瞬で動きを止めたミリアンナは、目に涙を溜めて泣き出した。
こんな風に扱われたことなどないのだろう。
『ッ…………うぅ……』
「ローウェン様に会えて嬉し泣きしているみたいです。早く二人きりになりたいのかも。たぁーぷり愛してあげるといいですよ。すぐに連れて行って下さい」
ラトの言葉に、ローウェンは嬉々としてミリアンナを抱え上げる。
ミリアンナは、ローウェンに気が狂うほど愛されて、ローウェンを愛する気持ちが芽生えるかもしれない。人を愛する気持ちがミリアンナにあれば──の話だがな。
ミリアンナは、先ほどのラトの行動で抵抗する気力を無くしたようだ。それに痺れ薬の効果で動けなくなりつつある。
泣いたままローウェンにされるがままだった。
全部片付いた。
ミオをすぐに迎えに行かなくては──。
「コルテス、後は頼んだ。ラト、行くぞ」
「「はい」」
椅子から立ち上がり、ミオのいるであろう部屋の鍵を握りしめた。
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