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第三章
家は嫌いだ テアロ視点
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店の窓から見える通りで呼ばれていたので店の外に出た。
誰も通らないような路地に入れば、姉貴が待っていた。
「テアロ、お見合い相手に会わなかったらしいじゃないの」
その話かと、うげっと思う。
「うるせぇな。俺はミオとあの店で平和に暮らすんだ。邪魔すんな」
「私は別にいいんだけどさ、レドベリル家に戻ったからには、ママの言う事は聞かないといけないわよ」
「帰った途端に見合いだなんてふざけんな」
レドベリル家──この大陸で昔から噂になっている便利屋だ。国に属さず、大陸全土に散らばっているという一族がそれだ。
レドベリル家は、ただ気まぐれに依頼を受ける。依頼の仕方はその土地によって変わる。
アスラーゼの場合、とある飲食店で一人きりで三日連続同じ個室を借りればいい。そんな不確かな噂を信じたやつだけが依頼できる。三日目に顔を隠した一族の誰かが話を聞きに行く。
依頼の内容は、大小関係なく、どんな事もする。暗殺も警護も、誘拐も捜索も、復讐も喧嘩の仲裁もなんでもだ。人も動物も物ですら全てが対象だ。
依頼を受けるかどうかは様々だ。大体は報酬や依頼者を気に入るかどうかだけで仕事を受ける。あとはその日の気分だったり、天気だったりだ。
俺からすれば、レドベリル家は自己中の快楽主義者の集まりだ。
今の一族の長は俺の親父だ。どんな依頼も親父なら確実にこなす。だから、レドベリル家に依頼すれば、必ず依頼を叶えてくれるなんて噂まである。
あのテレフベニアですら、親父に情報収集とその改ざんを依頼した事があるらしい。大金をふっかけたらしいが、どんな内容だったかは俺は知らない。
レドベリル家は、ありとあらゆる国から依頼を受けて、その弱みを握っている。所謂影の支配者だ。
そんな家の力を使ってあのパーティーに潜入した。レドベリルの名前を使えばできない事はない。
家に戻れば、情報はすぐに教えてもらえた。ミオがアスラーゼの王子で、胸糞悪い家族の話を聞いた。子供の時から働きたがっていた理由がわかった気がした。
「仕事の話なんだけど──やだ、怖いわよ」
仕事と言われて反射的に姉貴を睨んでいた。
子供の頃からいろんな事を仕込まれた。
どうやって人を殺すのか、いかにして人を生かすのか。あらゆるスポーツも習い事も全部やらされた。演技すら勉強したし、弾けない楽器はない。色んな本を読まされて、できないことはなくなった。色んな土地で暮らして、貧乏も裕福も学んだ。子供の時からあらゆる依頼をただ淡々とこなしてきた。
誰にでもなれて、なんでもできる俺は、自分が何者かわからなくなっていた。
ある時、ふと虚しくなった。俺は、家の為に生きているような気がして家を出た。
だが、すぐに居場所は見つかるし、すぐに誰かが連れ戻しに来た。もちろん返り討ちにして逃げた。
一族の中で俺を連れ戻せるのは親父だけだった。親父は忙しい。俺に付きっきりでいる訳にもいかず、親父が連れ戻しに来ても俺はすぐに逃げ出した。
そんな中でやってきたジュドも容赦なく返り討ちにしてやった。が、いくら返り討ちにしても喜ぶジュドのしつこさに疲れていて、荷物を盗まれる失態をした。
ドン底にいた時にミオに会った。俺は絶対に帰らないと決めた。
俺が本気でアスラーゼから離れないと知れば、家は、俺が自分から戻るまで俺を監視するだけに決めたようだ。
家は大嫌いだ……だから家出した。
けれど──ミオの為だったらそんな嫌いな家でも戻ってやる。
「──仕事はする。でも、見合いはしない」
家に戻ったせいで、仕事を回されるようになった。私生活にまで口を出されていい迷惑だ。
姉貴から仕事の内容を聞く。とある貴族に娘を連れてかれた親からの依頼だ。その娘の救出だ。昨日のパーティーに来ていた貴族にそんな奴がいたのかと思うと笑える。
「すぐ行ってくるから、ミオの店にテレフベニアのやつが来ないか見張っててくれよ」
「見張るだけでいいの?」
「言わせんな──排除だ」
「平和的に追い返すのよね」
姉貴に任せておけばとりあえずは大丈夫だろう。
『いつかこの店で暮らしていけたらいいな』
ミオのその言葉を聞いた時、何もなかった俺に目標が出来た。ミオの願いを叶えてやる事だ。
それなのに、ミオはあの店で暮らせるようになったのに、心はここに在らず……だ。
その原因が何かなんて考えたくもない。ミオの心を取り戻したい。レイに二度と会わせるつもりはない。
「今の俺は、最高に機嫌わりぃからな。全員ぶちのめしてやる」
「失敗するんじゃないわよ」
「誰に言ってんだ」
「まったく……」
面白そうに笑う姉貴を無視して歩き出す。
ミオは、ただ人形のように生きて、空っぽだった俺の光だった。
そんなミオと一緒にいたいと思って何が悪い!
俺がミオの為にできる事はなんでもしてやる。
ミオの隣にいるべきなのは俺だ──。
誰も通らないような路地に入れば、姉貴が待っていた。
「テアロ、お見合い相手に会わなかったらしいじゃないの」
その話かと、うげっと思う。
「うるせぇな。俺はミオとあの店で平和に暮らすんだ。邪魔すんな」
「私は別にいいんだけどさ、レドベリル家に戻ったからには、ママの言う事は聞かないといけないわよ」
「帰った途端に見合いだなんてふざけんな」
レドベリル家──この大陸で昔から噂になっている便利屋だ。国に属さず、大陸全土に散らばっているという一族がそれだ。
レドベリル家は、ただ気まぐれに依頼を受ける。依頼の仕方はその土地によって変わる。
アスラーゼの場合、とある飲食店で一人きりで三日連続同じ個室を借りればいい。そんな不確かな噂を信じたやつだけが依頼できる。三日目に顔を隠した一族の誰かが話を聞きに行く。
依頼の内容は、大小関係なく、どんな事もする。暗殺も警護も、誘拐も捜索も、復讐も喧嘩の仲裁もなんでもだ。人も動物も物ですら全てが対象だ。
依頼を受けるかどうかは様々だ。大体は報酬や依頼者を気に入るかどうかだけで仕事を受ける。あとはその日の気分だったり、天気だったりだ。
俺からすれば、レドベリル家は自己中の快楽主義者の集まりだ。
今の一族の長は俺の親父だ。どんな依頼も親父なら確実にこなす。だから、レドベリル家に依頼すれば、必ず依頼を叶えてくれるなんて噂まである。
あのテレフベニアですら、親父に情報収集とその改ざんを依頼した事があるらしい。大金をふっかけたらしいが、どんな内容だったかは俺は知らない。
レドベリル家は、ありとあらゆる国から依頼を受けて、その弱みを握っている。所謂影の支配者だ。
そんな家の力を使ってあのパーティーに潜入した。レドベリルの名前を使えばできない事はない。
家に戻れば、情報はすぐに教えてもらえた。ミオがアスラーゼの王子で、胸糞悪い家族の話を聞いた。子供の時から働きたがっていた理由がわかった気がした。
「仕事の話なんだけど──やだ、怖いわよ」
仕事と言われて反射的に姉貴を睨んでいた。
子供の頃からいろんな事を仕込まれた。
どうやって人を殺すのか、いかにして人を生かすのか。あらゆるスポーツも習い事も全部やらされた。演技すら勉強したし、弾けない楽器はない。色んな本を読まされて、できないことはなくなった。色んな土地で暮らして、貧乏も裕福も学んだ。子供の時からあらゆる依頼をただ淡々とこなしてきた。
誰にでもなれて、なんでもできる俺は、自分が何者かわからなくなっていた。
ある時、ふと虚しくなった。俺は、家の為に生きているような気がして家を出た。
だが、すぐに居場所は見つかるし、すぐに誰かが連れ戻しに来た。もちろん返り討ちにして逃げた。
一族の中で俺を連れ戻せるのは親父だけだった。親父は忙しい。俺に付きっきりでいる訳にもいかず、親父が連れ戻しに来ても俺はすぐに逃げ出した。
そんな中でやってきたジュドも容赦なく返り討ちにしてやった。が、いくら返り討ちにしても喜ぶジュドのしつこさに疲れていて、荷物を盗まれる失態をした。
ドン底にいた時にミオに会った。俺は絶対に帰らないと決めた。
俺が本気でアスラーゼから離れないと知れば、家は、俺が自分から戻るまで俺を監視するだけに決めたようだ。
家は大嫌いだ……だから家出した。
けれど──ミオの為だったらそんな嫌いな家でも戻ってやる。
「──仕事はする。でも、見合いはしない」
家に戻ったせいで、仕事を回されるようになった。私生活にまで口を出されていい迷惑だ。
姉貴から仕事の内容を聞く。とある貴族に娘を連れてかれた親からの依頼だ。その娘の救出だ。昨日のパーティーに来ていた貴族にそんな奴がいたのかと思うと笑える。
「すぐ行ってくるから、ミオの店にテレフベニアのやつが来ないか見張っててくれよ」
「見張るだけでいいの?」
「言わせんな──排除だ」
「平和的に追い返すのよね」
姉貴に任せておけばとりあえずは大丈夫だろう。
『いつかこの店で暮らしていけたらいいな』
ミオのその言葉を聞いた時、何もなかった俺に目標が出来た。ミオの願いを叶えてやる事だ。
それなのに、ミオはあの店で暮らせるようになったのに、心はここに在らず……だ。
その原因が何かなんて考えたくもない。ミオの心を取り戻したい。レイに二度と会わせるつもりはない。
「今の俺は、最高に機嫌わりぃからな。全員ぶちのめしてやる」
「失敗するんじゃないわよ」
「誰に言ってんだ」
「まったく……」
面白そうに笑う姉貴を無視して歩き出す。
ミオは、ただ人形のように生きて、空っぽだった俺の光だった。
そんなミオと一緒にいたいと思って何が悪い!
俺がミオの為にできる事はなんでもしてやる。
ミオの隣にいるべきなのは俺だ──。
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