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第三章
森のクマさん?
テアロと一緒に朝ご飯を食べる。
「ミオ、俺がいない間に外に出るな」
「え? なんで?」
「外には怖い人がいっぱいいるからだ」
「ははっ。何それ? この辺は知り合いばっかりじゃないの?」
「人攫いがいる。まだ捕まっていない」
パンを齧りながら、テアロを窺う。
冗談かと思ったけれど、特に変わった様子はない。
「本当にいるの? 人攫い……」
「ああ。銀色の髪に青い瞳のやつは連れてかれる」
「俺じゃん……」
やけに具体的だ……。
俺を怖がらせるために言ってるんだろう。やっぱり冗談かな。
「外に用があるなら俺が済まして来てやる」
「わかった」
テアロは過保護だ。
可愛い女の子ならまだしも、男の俺を攫うだなんて有り得ない。
そうして、朝食を食べ終わり、洗濯をしてからテアロと一緒に店を開ける。
半日なんてあっという間だった。
テアロは、買い物に行ったけれど、俺は何をしようか。
店の在庫を確認すると、赤い生地が少ない。
「生地を染めないとだな……」
でも、テアロに外に出るなと言われている。
人攫い……冗談にしか聞こえなかった。
「まさかな」
いたとしても、俺なんかを攫ってもなんの得もない。
俺は王子だったけれど、知っている人はいない。
それに、街の外れの森はほとんど誰も来ない。
少しの間だけなら平気だろう。森で花だけ摘んで帰ってこようとテアロに置き手紙を書いて店を出た。
◆◇◆
久しぶりに森に来ていた。
「あ~かい花はど~こかな~♪ ──あ! あった!」
しゃがみ込んで花を摘んでカゴに入れる。
摘みすぎると花が咲かなくなってしまうのでほどほどで。
「~~♪」
鼻歌だって歌っちゃうってもんだ。
レイジェルに会えなくても──やっていける。
柔らかい金の髪も、優しい眼差しも、全然思い出したりしない──……嘘だ。今思い出してるじゃないか……。
忘れるようにぶんぶんと顔を横に振る。
「花摘まなきゃ……」
目の前の花は何事もなく咲いていて綺麗だ。
綺麗な花を見れば、気持ちも上がっていたはずなのに、今はどうしたのか……。
考えるな。無心になって花を摘む。
「こんなもんかな」
ある程度花を摘んだら、青い花も発見する。
すぐに帰った方がいいだろうけれど、周りをキョロキョロと確認する。
「誰もいるわけないよな。他の色も摘んじゃおっと」
移動して青い花も摘みながらまた鼻歌を歌う。
「~~♪」
色々ありすぎて穏やかに過ごす事を忘れていた気がする。
本来の俺は、これが通常だったはずだ。
俺は、この先も仕立て屋として過ごして──そこまで考えて、ザッザッと草花を踏んで歩くような音がしてピタリと動きを止めた。
動物? 誰かいる? まさか……人攫い?
「あ、あり得ない……」
もしかしたら、テアロが手紙を読んで来てくれたのかもしれない。
動物だったりするのかも。クマとか?
クマだったら、それはそれで危ない。
「テアロ?」
名前を呼んでみたけれど、返事がなくて不安になった。聞こえなかったのかもしれない。
花の入った籠を持って立ち上がる。
こちらに近付く音が大きくなってきた。
音が聞こえる方をじっと見つめる。
「クマさんですかー!?」
クマが返事をするわけはない。
怖くなって訳のわからない事を言ってしまった!
「──!」
よく聞こえなかったけれど、何か言った!
クマじゃない!? テアロかな!? 本当に人攫い!?
こんな所に人攫いが来るなんて聞いていない!
一人で来るんじゃなかった。テアロの言う事を聞いておくべきだった!
レイジェルにもまだ謝っていないのに!
俺は、怖くなって逃げようと走り出した。
「ミオ、俺がいない間に外に出るな」
「え? なんで?」
「外には怖い人がいっぱいいるからだ」
「ははっ。何それ? この辺は知り合いばっかりじゃないの?」
「人攫いがいる。まだ捕まっていない」
パンを齧りながら、テアロを窺う。
冗談かと思ったけれど、特に変わった様子はない。
「本当にいるの? 人攫い……」
「ああ。銀色の髪に青い瞳のやつは連れてかれる」
「俺じゃん……」
やけに具体的だ……。
俺を怖がらせるために言ってるんだろう。やっぱり冗談かな。
「外に用があるなら俺が済まして来てやる」
「わかった」
テアロは過保護だ。
可愛い女の子ならまだしも、男の俺を攫うだなんて有り得ない。
そうして、朝食を食べ終わり、洗濯をしてからテアロと一緒に店を開ける。
半日なんてあっという間だった。
テアロは、買い物に行ったけれど、俺は何をしようか。
店の在庫を確認すると、赤い生地が少ない。
「生地を染めないとだな……」
でも、テアロに外に出るなと言われている。
人攫い……冗談にしか聞こえなかった。
「まさかな」
いたとしても、俺なんかを攫ってもなんの得もない。
俺は王子だったけれど、知っている人はいない。
それに、街の外れの森はほとんど誰も来ない。
少しの間だけなら平気だろう。森で花だけ摘んで帰ってこようとテアロに置き手紙を書いて店を出た。
◆◇◆
久しぶりに森に来ていた。
「あ~かい花はど~こかな~♪ ──あ! あった!」
しゃがみ込んで花を摘んでカゴに入れる。
摘みすぎると花が咲かなくなってしまうのでほどほどで。
「~~♪」
鼻歌だって歌っちゃうってもんだ。
レイジェルに会えなくても──やっていける。
柔らかい金の髪も、優しい眼差しも、全然思い出したりしない──……嘘だ。今思い出してるじゃないか……。
忘れるようにぶんぶんと顔を横に振る。
「花摘まなきゃ……」
目の前の花は何事もなく咲いていて綺麗だ。
綺麗な花を見れば、気持ちも上がっていたはずなのに、今はどうしたのか……。
考えるな。無心になって花を摘む。
「こんなもんかな」
ある程度花を摘んだら、青い花も発見する。
すぐに帰った方がいいだろうけれど、周りをキョロキョロと確認する。
「誰もいるわけないよな。他の色も摘んじゃおっと」
移動して青い花も摘みながらまた鼻歌を歌う。
「~~♪」
色々ありすぎて穏やかに過ごす事を忘れていた気がする。
本来の俺は、これが通常だったはずだ。
俺は、この先も仕立て屋として過ごして──そこまで考えて、ザッザッと草花を踏んで歩くような音がしてピタリと動きを止めた。
動物? 誰かいる? まさか……人攫い?
「あ、あり得ない……」
もしかしたら、テアロが手紙を読んで来てくれたのかもしれない。
動物だったりするのかも。クマとか?
クマだったら、それはそれで危ない。
「テアロ?」
名前を呼んでみたけれど、返事がなくて不安になった。聞こえなかったのかもしれない。
花の入った籠を持って立ち上がる。
こちらに近付く音が大きくなってきた。
音が聞こえる方をじっと見つめる。
「クマさんですかー!?」
クマが返事をするわけはない。
怖くなって訳のわからない事を言ってしまった!
「──!」
よく聞こえなかったけれど、何か言った!
クマじゃない!? テアロかな!? 本当に人攫い!?
こんな所に人攫いが来るなんて聞いていない!
一人で来るんじゃなかった。テアロの言う事を聞いておくべきだった!
レイジェルにもまだ謝っていないのに!
俺は、怖くなって逃げようと走り出した。
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