76 / 110
第四章
馬車の中……再び
テレフベニアに行く馬車の中、相変わらずのレイジェルのポジションに困っている。
「あのさ……もっと離れてくれるかな?」
「どうしてだ? くっついて寝た仲だろう」
だからこそ、こうやって顔を合わせていると恥ずかしさが込み上げてくる。
「その……馬車の中はなんか違う……」
二人きりの空間というものを意識する。しかも長い時間一緒だ。
「照れているのか?」
「逆に照れないの?」
「まぁ……恥ずかしいと言えばそうか……だが、喜びの方が上を行っている」
少し頬を染めてニコニコするレイジェルに胸がキュンとする。
俺の心臓は正直者だった……。
「わかったから……あんまり見つめないで……」
恥ずかしくなって視線をそらす。
「それなら、話をしよう」
「どんな?」
「これからの事だな」
コクリと頷く。
「まずは、ミオ自身を少しずつ国に認めてもらうようにしよう」
「そうだね」
「後の事はそれから考えても遅くない。ミオはあまり考え込まないでくれ」
「わかった」
本当は、女の方がいいんじゃないかと今でも思う。
それでも、あんなに一生懸命に俺を好きだと言ってくれた人を信じたい。
「私は、ミオ以外考えられなかったんだ。私の人生に巻き込んですまない。一緒に来てくれてありがとう」
「テレフベニアの王太子なんて大変なんだけど……それでも一緒にいたいと思っちゃったんだもん……」
「私は嬉しいよ」
本当に嬉しそうにするから、こっちも嬉しくなる。
「俺が決めた事だし……」
「それでも、ありがとう」
「改めてお礼とか……いらない。前向いて」
やたらと恥ずかしい。
残念そうにしながらも前を向いたレイジェルの肩にコテンと頭を乗せる。
レイジェルは、クスリと笑ってからそっと手を握ってきた。その手を握り返した。
「俺は、この瞬間のためにここにいるだけだよ」
「ありがとう──」
やっぱり感謝してくれるのかと思うと微笑ましかった。
手のひらから伝わる熱に胸が熱くなった。
俺の気持ちも伝わるといい。
段々とレイジェルの隣にいることに慣れてきていた。
◆◇◆
「部屋は一緒でいいですよね?」
その日の宿でラトに言われる。
俺は別に構わない。
「その場合、私もご一緒でよろしいのですか?」
フロルが言えば、ラトが微笑む。
「フロルさんは、俺たちと一緒に──」
「獅子団は、数人の男たちで一部屋ですよね? あり得ません」
アスラーゼに行った時と同様に宿屋は貸切状態で部屋数が少ない。
「俺たちがバラけるんでフロルさんは一人部屋で──」
「私は侍女です。他の方がみんな一緒なのに一人部屋などとおこがましいです」
ラトが困っている。
「来た時と同じようにしましょう。私はフロルと一緒でいいです」
見かねて口を挟んでしまった。
「それが一番いいだろう」
レイジェルも賛同してくれた。
「レイジェル様がいいのであれば、そうしましょう」
俺とフロルで部屋に入って、ホッと一息つく。
ソファに寝転がる。
「ミリアンナ様、気を抜く癖をおやめ下さい」
「そのお説教も懐かしいよ」
女装してると、だらけ癖が抜けない。
「よろしかったのですか?」
「何が?」
少し気遣うようなフロルに首を傾げる。
「テレフベニアに戻る事です」
真剣に言ってくれて微笑む。
「それを言うなら、フロルもでしょ? そのままアスラーゼにいる事もできたのに、また俺と一緒に来てくれたのはどうして?」
フロルは、一度コホンと咳払いをした。
「そんな態度でソファにゴロゴロしている主人を誰が世話をするのですか?」
「そうだね……」
ゴロゴロをやめて、そっと起き上がって姿勢を正す。
「私たち、元から命懸けで女装してましたよね」
フロルの言葉に頷く。
「そうそう。レイジェルにバレたら処刑されるかと思ってたぐらいだもんね」
「ええ。アスラーゼは終わりかと思っていましたからね」
「それが婚約者として戻ってくる事になるなんて笑っちゃうね」
フロルと一緒にあははと笑い合う。
「ですが、認められる前にバレたら今度こそ終わりですね」
フロルのおほほという笑い声だけが部屋に響く。
「だ、大丈夫さ。今回はレイジェルも味方だからね」
「どうでしょう。レイジェル様もご一緒に処罰されないことを祈りましょう」
フロルのニッコリ笑う顔が怖かった……。
自分が処罰されるとは思っているけれど、レイジェルまで処罰されるとは思っていないかったかもしれない。レイジェルは、そういう事を言わないから──。
「男と結婚するってやっぱり大変なんだ……」
「それはそうです。認められなければ、レイジェル様も幽閉されるかもしれませんね。あるいは、無理矢理結婚させられて、子供を作る道具にされるかもしれませんよ。テレフベニアに正統な後継者ができれば、レイジェル様は用済みとして──」
「ストップ! 考え方が怖いよ……」
フロルはいつも脅すような事を言うんだ……。
「可能性の一つですよ。認められればいい話ですね。頑張りましょう」
現実を突きつけてから励ますのやめて……。
俺はまたとんでもない事をしているのだと思い知らされた……。
「あのさ……もっと離れてくれるかな?」
「どうしてだ? くっついて寝た仲だろう」
だからこそ、こうやって顔を合わせていると恥ずかしさが込み上げてくる。
「その……馬車の中はなんか違う……」
二人きりの空間というものを意識する。しかも長い時間一緒だ。
「照れているのか?」
「逆に照れないの?」
「まぁ……恥ずかしいと言えばそうか……だが、喜びの方が上を行っている」
少し頬を染めてニコニコするレイジェルに胸がキュンとする。
俺の心臓は正直者だった……。
「わかったから……あんまり見つめないで……」
恥ずかしくなって視線をそらす。
「それなら、話をしよう」
「どんな?」
「これからの事だな」
コクリと頷く。
「まずは、ミオ自身を少しずつ国に認めてもらうようにしよう」
「そうだね」
「後の事はそれから考えても遅くない。ミオはあまり考え込まないでくれ」
「わかった」
本当は、女の方がいいんじゃないかと今でも思う。
それでも、あんなに一生懸命に俺を好きだと言ってくれた人を信じたい。
「私は、ミオ以外考えられなかったんだ。私の人生に巻き込んですまない。一緒に来てくれてありがとう」
「テレフベニアの王太子なんて大変なんだけど……それでも一緒にいたいと思っちゃったんだもん……」
「私は嬉しいよ」
本当に嬉しそうにするから、こっちも嬉しくなる。
「俺が決めた事だし……」
「それでも、ありがとう」
「改めてお礼とか……いらない。前向いて」
やたらと恥ずかしい。
残念そうにしながらも前を向いたレイジェルの肩にコテンと頭を乗せる。
レイジェルは、クスリと笑ってからそっと手を握ってきた。その手を握り返した。
「俺は、この瞬間のためにここにいるだけだよ」
「ありがとう──」
やっぱり感謝してくれるのかと思うと微笑ましかった。
手のひらから伝わる熱に胸が熱くなった。
俺の気持ちも伝わるといい。
段々とレイジェルの隣にいることに慣れてきていた。
◆◇◆
「部屋は一緒でいいですよね?」
その日の宿でラトに言われる。
俺は別に構わない。
「その場合、私もご一緒でよろしいのですか?」
フロルが言えば、ラトが微笑む。
「フロルさんは、俺たちと一緒に──」
「獅子団は、数人の男たちで一部屋ですよね? あり得ません」
アスラーゼに行った時と同様に宿屋は貸切状態で部屋数が少ない。
「俺たちがバラけるんでフロルさんは一人部屋で──」
「私は侍女です。他の方がみんな一緒なのに一人部屋などとおこがましいです」
ラトが困っている。
「来た時と同じようにしましょう。私はフロルと一緒でいいです」
見かねて口を挟んでしまった。
「それが一番いいだろう」
レイジェルも賛同してくれた。
「レイジェル様がいいのであれば、そうしましょう」
俺とフロルで部屋に入って、ホッと一息つく。
ソファに寝転がる。
「ミリアンナ様、気を抜く癖をおやめ下さい」
「そのお説教も懐かしいよ」
女装してると、だらけ癖が抜けない。
「よろしかったのですか?」
「何が?」
少し気遣うようなフロルに首を傾げる。
「テレフベニアに戻る事です」
真剣に言ってくれて微笑む。
「それを言うなら、フロルもでしょ? そのままアスラーゼにいる事もできたのに、また俺と一緒に来てくれたのはどうして?」
フロルは、一度コホンと咳払いをした。
「そんな態度でソファにゴロゴロしている主人を誰が世話をするのですか?」
「そうだね……」
ゴロゴロをやめて、そっと起き上がって姿勢を正す。
「私たち、元から命懸けで女装してましたよね」
フロルの言葉に頷く。
「そうそう。レイジェルにバレたら処刑されるかと思ってたぐらいだもんね」
「ええ。アスラーゼは終わりかと思っていましたからね」
「それが婚約者として戻ってくる事になるなんて笑っちゃうね」
フロルと一緒にあははと笑い合う。
「ですが、認められる前にバレたら今度こそ終わりですね」
フロルのおほほという笑い声だけが部屋に響く。
「だ、大丈夫さ。今回はレイジェルも味方だからね」
「どうでしょう。レイジェル様もご一緒に処罰されないことを祈りましょう」
フロルのニッコリ笑う顔が怖かった……。
自分が処罰されるとは思っているけれど、レイジェルまで処罰されるとは思っていないかったかもしれない。レイジェルは、そういう事を言わないから──。
「男と結婚するってやっぱり大変なんだ……」
「それはそうです。認められなければ、レイジェル様も幽閉されるかもしれませんね。あるいは、無理矢理結婚させられて、子供を作る道具にされるかもしれませんよ。テレフベニアに正統な後継者ができれば、レイジェル様は用済みとして──」
「ストップ! 考え方が怖いよ……」
フロルはいつも脅すような事を言うんだ……。
「可能性の一つですよ。認められればいい話ですね。頑張りましょう」
現実を突きつけてから励ますのやめて……。
俺はまたとんでもない事をしているのだと思い知らされた……。
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます
七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。
歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。
世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。
気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放
大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。
嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。
だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。
嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。
混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。
琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う――
「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」
知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。
耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
ストーカーから逃げ切ったのも束の間、転移後はヤンデレ騎士団に殺されかけている現実!
由汰のらん
ファンタジー
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。
しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。
そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。
「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」
やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった。しかしハルの血が特殊だと知ったダンピールはハルを連れ帰って?
いっそ美味しい『血』(治癒)と『体液』(バフ)と『癒し』を与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!