身代わりおまけ王子は逃げ出したい

おみなしづき

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第四章

戻ってきた

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 テレフベニアに着いて、来た時と同じようにレイジェルと一緒にアデニスに挨拶した。
 二人とも膝をついての挨拶だ。
 やはり全ての国の頂点に立つ王様だけあって、肘掛けに肘をついて見下ろされると迫力がある。
 改めて見ると、絶対王者の風格は俺に恐怖を与えてくる。
 この人に認めてもらう……? 無理に思えてきた……もう既に逃げ出したい。

「報告はレイジェルから聞く。帰って早々だが、ミリアンナ殿下には、お茶会の主催をしてもらいたい。舞踏会やパーティーのように正式なものではなく、この国の主だった貴族の令嬢と子息を招いて、先に婚約者として紹介するだけだ。詳しい事はコルテスから聞くといい」
「はい」

 正式なものではないと言っても、俺主催のお茶会──緊張する。

「部屋に戻って休め」

 アデニスに労ってもらい、立ち上がる。
 レイジェルをチラリと見れば、軽く微笑んでくれる。

 広間から出て、部屋に戻った。
 窓に鉄格子の嵌まった部屋にまた戻る事になるとは思ってもいなかった。後で鉄格子は外してもらおう。
 結婚するまで部屋は別らしい。安心したような残念なような……複雑な気持ちだ。

 ロッシが護衛として俺と一緒にきてくれている。

「ロッシ、ありがとう」
「これからは離れません」

 やけに気合が入っている……。
 とりあえず笑顔で受け流そう。
 護衛と言っても、カインと交代で部屋の前で待機する程度らしい。出歩く時は付いてきてくれる。

 そのうちに、レイジェルがコルテスとラトと一緒にやってきた。
 コルテスから書類を渡された。

「こちらが招待客のリストです。貴族のご令嬢とご子息の特徴とその父親の爵位等が記載されているので覚えておいて下さい。」

 それほど人数はいなそうだけれど、見事に知らない人ばかりだ。当たり前か……。
 リストの一番下に空白の部分を見つけた。

「この空白の部分は何でしょう?」
「ミリアンナ様が個人的にお呼びになる方のスペースです」
「個人的に呼んでいいのですか?」
「いらっしゃれば……なので、無理に埋めなくも大丈夫です」

 コルテスよ。気を遣ってくれるな。
 テレフベニアに友達はいないので空白のままになりそうだ。

「気楽にして大丈夫だ。何かあれば、母上に聞いてみるといい」

 レイジェルの言葉に頷いて微笑む。
 王妃様なら、お茶会の主催を何度もしているだろう。

「それでは、我々は失礼致します」

 すぐに行こうとするコルテスにレイジェルが待ったをかけた。

「もう少し話だけでも──」
「ダメです。久しぶりに戻ってきてやる事がいっぱいです。もう行きますよ」

 名残惜しそうにしたレイジェルをコルテスが連れて行った。
 忙しそうなレイジェルを苦笑いしながら見送った。
 机に座って渡された書類に目を通す。
 それほど決まり事はないようだ。

「私も見ておきましょう」

 フロルも一緒にお勉強だ。

     ◆◇◆

 良く分からない所があってコルテスを呼んでもらって質問する。

「あの……この要注意度って何ですか?」

 人によって星が付いている。

「これはですね、そのままの意味です。五段階評価で五の人物は要注意です。星があるほどレイジェル様の嫌いな方だと思って下さい」

 女性はほぼ全員に付いている……。
 どう質問しようか迷っていれば、コルテスは察してくれた。

「レイジェル様は、大変な目に遭ってきたんですよ」
「一体どんな目に……?」
「たった一人の王子であの容姿です。幼少期からありとあらゆる女性に狙われていました。護衛の目を盗んでは、それはもう──色々されたのです」

 言い淀むコルテスに、テレフベニアの女性は怖いのだと理解する。

「そのせいか、レイジェル様は婚約者を決める事を拒み、結婚すらしないと言い出していたんです。基本的に女性は嫌いかもしれませんね。だから、陛下も他国の王女を集めるなんて手を使ったのでしょう」

 苦笑いするコルテスに俺も苦笑いする。
 モテすぎるのも可哀想だな……。
 思い出せば、最初の頃のレイジェルは怖いぐらいだった。今の優しいレイジェルがとても貴重に思える。

「レイジェル様が、心を寄り添え合える相手はこの世にいないのだと思っていました。ですから、支え合う相手ができた事を嬉しく思います」

 そんな風に言われるとは思わなくて、なんだか気恥ずかしくなる。

「レイジェル様をどうかよろしくお願いします──」

 コルテスは、まるで弟を想う兄のように微笑むと、深々と頭を下げた。
 コルテスにとってレイジェルは、友であり家族、あるいはそれ以上の存在だと言われたような気がした。
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