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第五章
新しい医者 ① ラト視点
「すみませーん、湿布貰いたいんですけど」
訓練の終わりに医務室を訪ねた。
「こんにちは、ラトさん。怪我をなさったのですか? それは──注意力散漫ですね」
このテアロという医者は、俺に笑顔でそう言った。この医者は、ここに時々しか居ないのに、会うと俺に対して一言多い気がする。
「俺じゃないんですけどね……」
「別の方でしたか。その方は大丈夫ですか?」
心配する顔にコロリと変わった。俺だと思っていた時と態度が違うような気がしてならない。
「打身程度なんで、湿布を貰えれば大丈夫です」
「わかりました。少々お待ちくださいね」
椅子から立ち上がると、部屋の奥へ行って何やらゴソゴソとし始める。
しばらくすると、数日分の湿布を貰った。
「打身でも一度こちらに来るように言っておいて下さい。お大事に」
ニコッと笑顔を向けられた。
テアロという名前を聞いた時、真っ先に浮かんだのはアスラーゼのテアロだった。あの男は常に仏頂面で愛想のカケラもなかった。俺たちの事は常に気に入らないという態度が良くわかったし、ミリアンナ様にだけ懐いている猫のようなやつだった。
それに比べて、ここにいる人物は俺にも笑顔を向けてくるし、見た目も言葉使いも違う。良くある名前だし、あの男とは全くの別人なのだとすぐに思えた。
けれど──。
「ラトさんも、怪我をしたらいつでも来て下さいね」
俺が怪我をすると決めつけているような……?
悪気はないんだと思う。けれど、何か引っ掛かる言い方をする。俺が意識し過ぎなのか?
「俺は訓練で怪我をするような事はありません」
それぐらいの力量はあるつもりだ。
笑顔を向けられているので、ニコッと笑顔で返しておいた。
「そうでしたね。レイジェル様の護衛ですから怪我をしたら大変ですね。お強くて誰にも負けた事がないんでしょうね」
笑顔だし敵意は感じないのに、感じが悪い!
テアロという名前のやつは俺と相性が悪い。
品の良い笑顔を浮かべる医者に対して、引きつる笑顔を貼り付けて医務室を後にした。
◆◇◆
レイジェルの護衛の合間に騎士見習い達の訓練を見てやっていた。
「あれ? 団長、なんかフラフラしていません?」
訓練後に団員に声を掛けられた。
確かにずっと視界がぼやけているような気がしていた。
いつもより体に力が入らない。
「顔も赤いですし、もしかしたら風邪なのではないですか?」
え? 俺が……風邪?
「具合悪そうですね。医務室に行って薬もらった方がいいんじゃないですか?」
「そう……?」
そこにいたやつらに頷かれる。けれど、医務室にはあの男がいるかもしれない。
「いいや、部屋に行って休む……。レイジェル様には護衛に戻れないって伝えておいてくれ……」
「はい。ですが、本当に大丈夫ですか?」
「だい……じょう……ぶぅ……」
ふらつく足取りながらも、どうにか歩いて騎士塔にある自分の部屋に戻った。
掃除は暫くしていなくて物が散乱していたけれど、そんな事は気にしていられない。
着替えも面倒で騎士服をその辺に脱ぎ散らかして、シャツのままベッドへ直行した。
剣を手の届く範囲に置いて目を閉じればすぐに睡魔がやってきた。
訓練の終わりに医務室を訪ねた。
「こんにちは、ラトさん。怪我をなさったのですか? それは──注意力散漫ですね」
このテアロという医者は、俺に笑顔でそう言った。この医者は、ここに時々しか居ないのに、会うと俺に対して一言多い気がする。
「俺じゃないんですけどね……」
「別の方でしたか。その方は大丈夫ですか?」
心配する顔にコロリと変わった。俺だと思っていた時と態度が違うような気がしてならない。
「打身程度なんで、湿布を貰えれば大丈夫です」
「わかりました。少々お待ちくださいね」
椅子から立ち上がると、部屋の奥へ行って何やらゴソゴソとし始める。
しばらくすると、数日分の湿布を貰った。
「打身でも一度こちらに来るように言っておいて下さい。お大事に」
ニコッと笑顔を向けられた。
テアロという名前を聞いた時、真っ先に浮かんだのはアスラーゼのテアロだった。あの男は常に仏頂面で愛想のカケラもなかった。俺たちの事は常に気に入らないという態度が良くわかったし、ミリアンナ様にだけ懐いている猫のようなやつだった。
それに比べて、ここにいる人物は俺にも笑顔を向けてくるし、見た目も言葉使いも違う。良くある名前だし、あの男とは全くの別人なのだとすぐに思えた。
けれど──。
「ラトさんも、怪我をしたらいつでも来て下さいね」
俺が怪我をすると決めつけているような……?
悪気はないんだと思う。けれど、何か引っ掛かる言い方をする。俺が意識し過ぎなのか?
「俺は訓練で怪我をするような事はありません」
それぐらいの力量はあるつもりだ。
笑顔を向けられているので、ニコッと笑顔で返しておいた。
「そうでしたね。レイジェル様の護衛ですから怪我をしたら大変ですね。お強くて誰にも負けた事がないんでしょうね」
笑顔だし敵意は感じないのに、感じが悪い!
テアロという名前のやつは俺と相性が悪い。
品の良い笑顔を浮かべる医者に対して、引きつる笑顔を貼り付けて医務室を後にした。
◆◇◆
レイジェルの護衛の合間に騎士見習い達の訓練を見てやっていた。
「あれ? 団長、なんかフラフラしていません?」
訓練後に団員に声を掛けられた。
確かにずっと視界がぼやけているような気がしていた。
いつもより体に力が入らない。
「顔も赤いですし、もしかしたら風邪なのではないですか?」
え? 俺が……風邪?
「具合悪そうですね。医務室に行って薬もらった方がいいんじゃないですか?」
「そう……?」
そこにいたやつらに頷かれる。けれど、医務室にはあの男がいるかもしれない。
「いいや、部屋に行って休む……。レイジェル様には護衛に戻れないって伝えておいてくれ……」
「はい。ですが、本当に大丈夫ですか?」
「だい……じょう……ぶぅ……」
ふらつく足取りながらも、どうにか歩いて騎士塔にある自分の部屋に戻った。
掃除は暫くしていなくて物が散乱していたけれど、そんな事は気にしていられない。
着替えも面倒で騎士服をその辺に脱ぎ散らかして、シャツのままベッドへ直行した。
剣を手の届く範囲に置いて目を閉じればすぐに睡魔がやってきた。
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